時間と恋

冬上幸

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第一章 始まり

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それは突然の出来事だった。
俺の名前は佐藤夏樹。今年で25歳になる社会人だ。大学を卒業して早くも3年、最近歳をとるのが早く感じる。俺も老けたものだ。そして今は何をしているかというと引越しの準備をしている。なぜかって?実は今一人暮らしをしているアパートから職場に近いところに引っ越そうと思っている。通勤時間が短くなるので自由な時間が増えると思ったからだ。一緒に住んでいる彼女もいないので自分一人で自由な生活を送っている。そんな生活をしているからか、最近母親がうるさい…なにかと会うたびに、「彼女はできたか」や「いい人はいないのか」「合コンに行ってみろ」など口うるさいことばかり言ってくる。今は一人の時間を楽しんでいるというのに。しかし、彼女が欲しくないと言えば嘘になる。実は彼女いない歴=年齢なのだ。さすがにまずい。しかし外見に自信があるというわけでもなく、話が面白いというわけでもない。そう、至って「普通」の人生を送ってきた。そんなことを思いながら部屋を片付けていると、「懐かしいな」高校の時のアルバムが出てきたのである。今思えばあの頃が一番楽しかったのかもしれない。「あいつも元気にしているかな」そう言い一枚の写真を見る。「うわ、この時の俺若いなー、この時が一番青春していたなー」その手には当時、一番仲が良かった女子、小山秋花とのツーショットを見る。今思うとなぜこんな美人と仲良かったのかよくわからない。そうして少し懐かしい思い出に浸った後、だいたいの荷物を整理してその日は眠りについた。
そして目が覚めた時、そこはいつもと違う天井があった。もう少し細かくいうと「懐かしい」天井だった。隣には目覚ましが鳴り響く時計があり時刻は7時を指している。そうして俺は叫んだ。「なんだこれ!!」下から母親の声と共に美味しそうな匂いが流れてきた。おかしい。俺は一人暮らしで二階なんてなかったはず…困惑しつつも俺は下に降りて朝食が置かれてある席に座る。そして俺は母親に恐る恐る聞いてみる。「なぁ、今って俺は何歳?」そう言うと母親は呆れたような声で「17歳よ、寝ぼけてないで早くご飯食べなさい、遅刻するわよ」俺は突然の出来事に頭が追いつかなかった。そして洗面所に行き顔を見るとそこには25歳のサラリーマンの顔ではなく、若々しい高校生の顔があった。見慣れた顔のはずなのに信じられない。とりあえず学校に行くか。
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