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第9話 過去からの来訪者と揺れる心
新たに現れた魔法陣は、これまでのものとは全く異なっていた。温かく優しい光を放ち、見る者の心を安らげる神々しさを湛えている。
「この魔法陣は……」
セラフィールが困惑した表情を浮かべた。
「私でも見たことがない。一体どこから……」
光が収まると、そこに現れたのは一人の女性だった。
長い金髪を風になびかせ、白い装束に身を包んだその女性は、美月とよく似た優しい雰囲気を持っていた。しかし、その美しさは人間を超越した、まさに女神のような神々しさがあった。
「美月……」
女性が美月の名前を呼んだ瞬間、美月の胸の奥で何かが共鳴した。懐かしいような、切ないような感情が湧き上がってくる。
「あなたは……」
「私はセレスティア。かつて『愛の聖女』と呼ばれた者です」
セレスティアと名乗った女性が微笑んだ。その笑顔は美月のものと瓜二つだった。
「愛の聖女……まさか」
アルトが息を呑んだ。
「伝説の聖女ご本人が……」
「伝説などではありません。私は確かに存在し、かつてこの世界を愛で満たしました」
セレスティアが美月に歩み寄る。
「そして、美月。あなたは私の……」
「私の、何ですか?」
美月が震え声で尋ねると、セレスティアは優しく微笑んだ。
「私の魂の分身。私の愛の力を受け継ぐ者です」
その言葉に、一同が驚愕した。
「分身だと……」
レオンが呟く。
「つまり、美月は……」
「はい。美月は私の力と記憶を受け継いで、現代に転生した存在なのです」
セレスティアの説明に、美月は混乱した。
「転生……私、元は別の人だったんですか?」
「いいえ、美月は美月です」
セレスティアが美月の手を取った。
「ただ、私の愛の力を受け継いでいるだけ。あなたの人格や記憶は、すべてあなた自身のものです」
その時、美月の心に映像が流れ込んできた。
遠い昔、一人の聖女が多くの男性に愛されながらも、最終的に誰一人選ぶことができずに孤独な最期を迎える姿。それがセレスティアの過去だった。
「あなたも……選べなかったんですね」
美月の言葉に、セレスティアの表情が暗くなった。
「はい。私は多くの人に愛されましたが、全員を愛してしまったがゆえに、誰一人として選ぶことができませんでした」
セレスティアが五人を見回す。
「そして、最終的には皆を傷つけてしまった。愛する人たちを争わせ、悲しませ……」
「そんな……」
美月の胸が締め付けられた。自分もいずれ、セレスティアと同じ道を歩むことになるのだろうか。
「しかし、美月。あなたには可能性があります」
セレスティアが美月を見つめる。
「あなたの愛の力は、私を遥かに超えている。もしかすると、私にはできなかった選択ができるかもしれません」
「選択……」
美月が五人を見回した。レオン、アルト、カイル、エリア、セラフィール。皆、美月を愛おしそうに見つめている。
「でも、どうやって……みんな大切なのに」
美月の苦悩を見て、セレスティアは提案した。
「美月、少し時間をかけて、それぞれと向き合ってみてはいかがでしょうか」
「向き合う?」
「一人ずつ、じっくりと話をしてみるのです。そうすれば、あなたの本当の気持ちが見えてくるかもしれません」
セレスティアの提案に、五人が同時に反応した。
「それは良いアイデアですね」(レオン)
「私は賛成です」(アルト)
「俺も異存はねえ」(カイル)
「私も同感です」(エリア)
「面白い。受けて立とう」(セラフィール)
こうして、美月が五人と個別に時間を過ごすことが決まった。
-----
レオンとの時間
最初に選ばれたのはレオンだった。二人は王宮の屋上庭園で、夕陽を眺めながら語り合った。
「美月、覚えていますか?初めて会った時のことを」
レオンが振り返る。
「はい。あの時のレオンは、とても冷たくて……」
「恥ずかしい限りです」
レオンが苦笑いを浮かべた。
「でも、あなたに触れた瞬間、すべてが変わりました。長年抱えていた孤独感が、一瞬で消えたんです」
レオンが美月を見つめる。
「美月、私は王子として生まれました。でも、それは同時に孤独への運命でもあった。誰も私の本当の気持ちを理解してくれない」
「レオン……」
「でも、あなたは違う。あなたといると、ただの一人の男性でいられる」
レオンが美月の手を取った。
「私は美月を愛しています。王子としてではなく、一人の男性として」
美月の胸がドキドキした。レオンの真摯な想いが、ひしひしと伝わってくる。
-----
アルトとの時間
翌日は、アルトと図書館で過ごした。
「美月、これを見てください」
アルトが古い書物を開く。
「これは愛について書かれた哲学書です。しかし、どの理論も実際の恋愛には当てはまらない」
「どうしてですか?」
「愛は理論では解明できないからです」
アルトが美月を見つめる。
「私は長年、知識こそが全てだと思っていました。でも、美月に出会って、感情の素晴らしさを知った」
アルトが美月の頬に優しく触れる。
「あなたは私に、心の豊かさを教えてくれました。私の人生に色彩を与えてくれた」
「アルト……」
「美月、私はあなたと共に、新しい知識を探求したい。愛という名の、最も美しい学問を」
アルトの知的でありながら情熱的な告白に、美月は心を動かされた。
-----
カイルとの時間
三日目は、カイルと街を散策した。
「お嬢さん、こういう庶民的な場所は初めてか?」
カイルが美月を市場に案内する。
「はい。でも、とても賑やかで楽しいですね」
美月が笑顔で答えると、カイルの顔が綻んだ。
「俺、実はこういう普通の暮らしに憧れてたんだ」
カイルが空を見上げる。
「盗賊をやってた頃は、毎日が戦いだった。でも、お嬢さんに出会ってから、平和な日常の素晴らしさを知った」
「カイル……」
「俺は言葉が下手だし、お嬢さんにふさわしい男じゃねえかもしれない。でも……」
カイルが美月を真っ直ぐ見つめる。
「お嬢さんと一緒に、普通の幸せを築きたいんだ」
カイルの飾らない真心に、美月の心は温かくなった。
-----
エリアとの時間
四日目は、エリアと訓練場で過ごした。
「美月、実は私……」
エリアが剣を止めて振り返る。
「女性を愛するなんて、おかしいですよね」
「そんなことありません」
美月が首を横に振る。
「愛に形なんてないと思います」
エリアの瞳に涙が浮かんだ。
「ありがとう……あなたがそう言ってくれると、救われます」
エリアが美月に近づく。
「私、最初はあなたを妬んでいました。レオン殿下を奪われると思って」
「エリア……」
「でも、あなたに触れて分かったんです。私が本当に愛していたのは、レオン殿下ではなく……」
エリアが美月の手を握る。
「あなただったんです」
エリアの純粋な愛に、美月は胸を熱くした。
-----
セラフィールとの時間
最後の日は、セラフィールと星空の下で語り合った。
「美月、私は千年の時を生きてきました」
セラフィールが夜空を見上げる。
「その間、多くのものを見てきましたが、あなたのような存在は初めてです」
「私……そんなに特別じゃありません」
「いいえ、あなたは特別です」
セラフィールが美月を見つめる。
「あなたの愛は、時間も空間も超越している。それは神々ですら持ち得ない力です」
セラフィールが美月の前に跪いた。
「私に、あなたを永遠に愛させてください」
セラフィールの畏敬に満ちた愛に、美月は戸惑った。
-----
五日間を終えて、美月は深く考え込んでいた。
それぞれとの時間は、どれも特別で美しいものだった。しかし、だからこそ選択は困難になっている。
「美月」
セレスティアが現れた。
「どうでしたか?」
「みんな……本当に素敵な人たちです」
美月が答えると、セレスティアは複雑な表情を浮かべた。
「そうですね。だからこそ、選択は困難なのです」
そのとき、急に美月の身体が光り始めた。
「美月!」
五人が駆け寄ってきた。美月を心配する彼らの想いが、美月の力をさらに増幅させている。
「まさか……」
セレスティアが驚愕した。
美月の光が、今度は新たな何かを生み出そうとしていた。愛の力が、これまでにない奇跡を起こそうとしているのだ。
美月の選択は、想像を超えた結末を迎えようとしていた。
「この魔法陣は……」
セラフィールが困惑した表情を浮かべた。
「私でも見たことがない。一体どこから……」
光が収まると、そこに現れたのは一人の女性だった。
長い金髪を風になびかせ、白い装束に身を包んだその女性は、美月とよく似た優しい雰囲気を持っていた。しかし、その美しさは人間を超越した、まさに女神のような神々しさがあった。
「美月……」
女性が美月の名前を呼んだ瞬間、美月の胸の奥で何かが共鳴した。懐かしいような、切ないような感情が湧き上がってくる。
「あなたは……」
「私はセレスティア。かつて『愛の聖女』と呼ばれた者です」
セレスティアと名乗った女性が微笑んだ。その笑顔は美月のものと瓜二つだった。
「愛の聖女……まさか」
アルトが息を呑んだ。
「伝説の聖女ご本人が……」
「伝説などではありません。私は確かに存在し、かつてこの世界を愛で満たしました」
セレスティアが美月に歩み寄る。
「そして、美月。あなたは私の……」
「私の、何ですか?」
美月が震え声で尋ねると、セレスティアは優しく微笑んだ。
「私の魂の分身。私の愛の力を受け継ぐ者です」
その言葉に、一同が驚愕した。
「分身だと……」
レオンが呟く。
「つまり、美月は……」
「はい。美月は私の力と記憶を受け継いで、現代に転生した存在なのです」
セレスティアの説明に、美月は混乱した。
「転生……私、元は別の人だったんですか?」
「いいえ、美月は美月です」
セレスティアが美月の手を取った。
「ただ、私の愛の力を受け継いでいるだけ。あなたの人格や記憶は、すべてあなた自身のものです」
その時、美月の心に映像が流れ込んできた。
遠い昔、一人の聖女が多くの男性に愛されながらも、最終的に誰一人選ぶことができずに孤独な最期を迎える姿。それがセレスティアの過去だった。
「あなたも……選べなかったんですね」
美月の言葉に、セレスティアの表情が暗くなった。
「はい。私は多くの人に愛されましたが、全員を愛してしまったがゆえに、誰一人として選ぶことができませんでした」
セレスティアが五人を見回す。
「そして、最終的には皆を傷つけてしまった。愛する人たちを争わせ、悲しませ……」
「そんな……」
美月の胸が締め付けられた。自分もいずれ、セレスティアと同じ道を歩むことになるのだろうか。
「しかし、美月。あなたには可能性があります」
セレスティアが美月を見つめる。
「あなたの愛の力は、私を遥かに超えている。もしかすると、私にはできなかった選択ができるかもしれません」
「選択……」
美月が五人を見回した。レオン、アルト、カイル、エリア、セラフィール。皆、美月を愛おしそうに見つめている。
「でも、どうやって……みんな大切なのに」
美月の苦悩を見て、セレスティアは提案した。
「美月、少し時間をかけて、それぞれと向き合ってみてはいかがでしょうか」
「向き合う?」
「一人ずつ、じっくりと話をしてみるのです。そうすれば、あなたの本当の気持ちが見えてくるかもしれません」
セレスティアの提案に、五人が同時に反応した。
「それは良いアイデアですね」(レオン)
「私は賛成です」(アルト)
「俺も異存はねえ」(カイル)
「私も同感です」(エリア)
「面白い。受けて立とう」(セラフィール)
こうして、美月が五人と個別に時間を過ごすことが決まった。
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レオンとの時間
最初に選ばれたのはレオンだった。二人は王宮の屋上庭園で、夕陽を眺めながら語り合った。
「美月、覚えていますか?初めて会った時のことを」
レオンが振り返る。
「はい。あの時のレオンは、とても冷たくて……」
「恥ずかしい限りです」
レオンが苦笑いを浮かべた。
「でも、あなたに触れた瞬間、すべてが変わりました。長年抱えていた孤独感が、一瞬で消えたんです」
レオンが美月を見つめる。
「美月、私は王子として生まれました。でも、それは同時に孤独への運命でもあった。誰も私の本当の気持ちを理解してくれない」
「レオン……」
「でも、あなたは違う。あなたといると、ただの一人の男性でいられる」
レオンが美月の手を取った。
「私は美月を愛しています。王子としてではなく、一人の男性として」
美月の胸がドキドキした。レオンの真摯な想いが、ひしひしと伝わってくる。
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アルトとの時間
翌日は、アルトと図書館で過ごした。
「美月、これを見てください」
アルトが古い書物を開く。
「これは愛について書かれた哲学書です。しかし、どの理論も実際の恋愛には当てはまらない」
「どうしてですか?」
「愛は理論では解明できないからです」
アルトが美月を見つめる。
「私は長年、知識こそが全てだと思っていました。でも、美月に出会って、感情の素晴らしさを知った」
アルトが美月の頬に優しく触れる。
「あなたは私に、心の豊かさを教えてくれました。私の人生に色彩を与えてくれた」
「アルト……」
「美月、私はあなたと共に、新しい知識を探求したい。愛という名の、最も美しい学問を」
アルトの知的でありながら情熱的な告白に、美月は心を動かされた。
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カイルとの時間
三日目は、カイルと街を散策した。
「お嬢さん、こういう庶民的な場所は初めてか?」
カイルが美月を市場に案内する。
「はい。でも、とても賑やかで楽しいですね」
美月が笑顔で答えると、カイルの顔が綻んだ。
「俺、実はこういう普通の暮らしに憧れてたんだ」
カイルが空を見上げる。
「盗賊をやってた頃は、毎日が戦いだった。でも、お嬢さんに出会ってから、平和な日常の素晴らしさを知った」
「カイル……」
「俺は言葉が下手だし、お嬢さんにふさわしい男じゃねえかもしれない。でも……」
カイルが美月を真っ直ぐ見つめる。
「お嬢さんと一緒に、普通の幸せを築きたいんだ」
カイルの飾らない真心に、美月の心は温かくなった。
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エリアとの時間
四日目は、エリアと訓練場で過ごした。
「美月、実は私……」
エリアが剣を止めて振り返る。
「女性を愛するなんて、おかしいですよね」
「そんなことありません」
美月が首を横に振る。
「愛に形なんてないと思います」
エリアの瞳に涙が浮かんだ。
「ありがとう……あなたがそう言ってくれると、救われます」
エリアが美月に近づく。
「私、最初はあなたを妬んでいました。レオン殿下を奪われると思って」
「エリア……」
「でも、あなたに触れて分かったんです。私が本当に愛していたのは、レオン殿下ではなく……」
エリアが美月の手を握る。
「あなただったんです」
エリアの純粋な愛に、美月は胸を熱くした。
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セラフィールとの時間
最後の日は、セラフィールと星空の下で語り合った。
「美月、私は千年の時を生きてきました」
セラフィールが夜空を見上げる。
「その間、多くのものを見てきましたが、あなたのような存在は初めてです」
「私……そんなに特別じゃありません」
「いいえ、あなたは特別です」
セラフィールが美月を見つめる。
「あなたの愛は、時間も空間も超越している。それは神々ですら持ち得ない力です」
セラフィールが美月の前に跪いた。
「私に、あなたを永遠に愛させてください」
セラフィールの畏敬に満ちた愛に、美月は戸惑った。
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五日間を終えて、美月は深く考え込んでいた。
それぞれとの時間は、どれも特別で美しいものだった。しかし、だからこそ選択は困難になっている。
「美月」
セレスティアが現れた。
「どうでしたか?」
「みんな……本当に素敵な人たちです」
美月が答えると、セレスティアは複雑な表情を浮かべた。
「そうですね。だからこそ、選択は困難なのです」
そのとき、急に美月の身体が光り始めた。
「美月!」
五人が駆け寄ってきた。美月を心配する彼らの想いが、美月の力をさらに増幅させている。
「まさか……」
セレスティアが驚愕した。
美月の光が、今度は新たな何かを生み出そうとしていた。愛の力が、これまでにない奇跡を起こそうとしているのだ。
美月の選択は、想像を超えた結末を迎えようとしていた。
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