【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?

きゅちゃん

文字の大きさ
9 / 17

第9話 過去からの来訪者と揺れる心

新たに現れた魔法陣は、これまでのものとは全く異なっていた。温かく優しい光を放ち、見る者の心を安らげる神々しさを湛えている。

「この魔法陣は……」

セラフィールが困惑した表情を浮かべた。

「私でも見たことがない。一体どこから……」

光が収まると、そこに現れたのは一人の女性だった。

長い金髪を風になびかせ、白い装束に身を包んだその女性は、美月とよく似た優しい雰囲気を持っていた。しかし、その美しさは人間を超越した、まさに女神のような神々しさがあった。

「美月……」

女性が美月の名前を呼んだ瞬間、美月の胸の奥で何かが共鳴した。懐かしいような、切ないような感情が湧き上がってくる。

「あなたは……」

「私はセレスティア。かつて『愛の聖女』と呼ばれた者です」

セレスティアと名乗った女性が微笑んだ。その笑顔は美月のものと瓜二つだった。

「愛の聖女……まさか」

アルトが息を呑んだ。

「伝説の聖女ご本人が……」

「伝説などではありません。私は確かに存在し、かつてこの世界を愛で満たしました」

セレスティアが美月に歩み寄る。

「そして、美月。あなたは私の……」

「私の、何ですか?」

美月が震え声で尋ねると、セレスティアは優しく微笑んだ。

「私の魂の分身。私の愛の力を受け継ぐ者です」

その言葉に、一同が驚愕した。

「分身だと……」

レオンが呟く。

「つまり、美月は……」

「はい。美月は私の力と記憶を受け継いで、現代に転生した存在なのです」

セレスティアの説明に、美月は混乱した。

「転生……私、元は別の人だったんですか?」

「いいえ、美月は美月です」

セレスティアが美月の手を取った。

「ただ、私の愛の力を受け継いでいるだけ。あなたの人格や記憶は、すべてあなた自身のものです」

その時、美月の心に映像が流れ込んできた。

遠い昔、一人の聖女が多くの男性に愛されながらも、最終的に誰一人選ぶことができずに孤独な最期を迎える姿。それがセレスティアの過去だった。

「あなたも……選べなかったんですね」

美月の言葉に、セレスティアの表情が暗くなった。

「はい。私は多くの人に愛されましたが、全員を愛してしまったがゆえに、誰一人として選ぶことができませんでした」

セレスティアが五人を見回す。

「そして、最終的には皆を傷つけてしまった。愛する人たちを争わせ、悲しませ……」

「そんな……」

美月の胸が締め付けられた。自分もいずれ、セレスティアと同じ道を歩むことになるのだろうか。

「しかし、美月。あなたには可能性があります」

セレスティアが美月を見つめる。

「あなたの愛の力は、私を遥かに超えている。もしかすると、私にはできなかった選択ができるかもしれません」

「選択……」

美月が五人を見回した。レオン、アルト、カイル、エリア、セラフィール。皆、美月を愛おしそうに見つめている。

「でも、どうやって……みんな大切なのに」

美月の苦悩を見て、セレスティアは提案した。

「美月、少し時間をかけて、それぞれと向き合ってみてはいかがでしょうか」

「向き合う?」

「一人ずつ、じっくりと話をしてみるのです。そうすれば、あなたの本当の気持ちが見えてくるかもしれません」

セレスティアの提案に、五人が同時に反応した。

「それは良いアイデアですね」(レオン)

「私は賛成です」(アルト)

「俺も異存はねえ」(カイル)

「私も同感です」(エリア)

「面白い。受けて立とう」(セラフィール)

こうして、美月が五人と個別に時間を過ごすことが決まった。

-----

レオンとの時間

最初に選ばれたのはレオンだった。二人は王宮の屋上庭園で、夕陽を眺めながら語り合った。

「美月、覚えていますか?初めて会った時のことを」

レオンが振り返る。

「はい。あの時のレオンは、とても冷たくて……」

「恥ずかしい限りです」

レオンが苦笑いを浮かべた。

「でも、あなたに触れた瞬間、すべてが変わりました。長年抱えていた孤独感が、一瞬で消えたんです」

レオンが美月を見つめる。

「美月、私は王子として生まれました。でも、それは同時に孤独への運命でもあった。誰も私の本当の気持ちを理解してくれない」

「レオン……」

「でも、あなたは違う。あなたといると、ただの一人の男性でいられる」

レオンが美月の手を取った。

「私は美月を愛しています。王子としてではなく、一人の男性として」

美月の胸がドキドキした。レオンの真摯な想いが、ひしひしと伝わってくる。

-----

アルトとの時間

翌日は、アルトと図書館で過ごした。

「美月、これを見てください」

アルトが古い書物を開く。

「これは愛について書かれた哲学書です。しかし、どの理論も実際の恋愛には当てはまらない」

「どうしてですか?」

「愛は理論では解明できないからです」

アルトが美月を見つめる。

「私は長年、知識こそが全てだと思っていました。でも、美月に出会って、感情の素晴らしさを知った」

アルトが美月の頬に優しく触れる。

「あなたは私に、心の豊かさを教えてくれました。私の人生に色彩を与えてくれた」

「アルト……」

「美月、私はあなたと共に、新しい知識を探求したい。愛という名の、最も美しい学問を」

アルトの知的でありながら情熱的な告白に、美月は心を動かされた。

-----

カイルとの時間

三日目は、カイルと街を散策した。

「お嬢さん、こういう庶民的な場所は初めてか?」

カイルが美月を市場に案内する。

「はい。でも、とても賑やかで楽しいですね」

美月が笑顔で答えると、カイルの顔が綻んだ。

「俺、実はこういう普通の暮らしに憧れてたんだ」

カイルが空を見上げる。

「盗賊をやってた頃は、毎日が戦いだった。でも、お嬢さんに出会ってから、平和な日常の素晴らしさを知った」

「カイル……」

「俺は言葉が下手だし、お嬢さんにふさわしい男じゃねえかもしれない。でも……」

カイルが美月を真っ直ぐ見つめる。

「お嬢さんと一緒に、普通の幸せを築きたいんだ」

カイルの飾らない真心に、美月の心は温かくなった。

-----

エリアとの時間

四日目は、エリアと訓練場で過ごした。

「美月、実は私……」

エリアが剣を止めて振り返る。

「女性を愛するなんて、おかしいですよね」

「そんなことありません」

美月が首を横に振る。

「愛に形なんてないと思います」

エリアの瞳に涙が浮かんだ。

「ありがとう……あなたがそう言ってくれると、救われます」

エリアが美月に近づく。

「私、最初はあなたを妬んでいました。レオン殿下を奪われると思って」

「エリア……」

「でも、あなたに触れて分かったんです。私が本当に愛していたのは、レオン殿下ではなく……」

エリアが美月の手を握る。

「あなただったんです」

エリアの純粋な愛に、美月は胸を熱くした。

-----

セラフィールとの時間

最後の日は、セラフィールと星空の下で語り合った。

「美月、私は千年の時を生きてきました」

セラフィールが夜空を見上げる。

「その間、多くのものを見てきましたが、あなたのような存在は初めてです」

「私……そんなに特別じゃありません」

「いいえ、あなたは特別です」

セラフィールが美月を見つめる。

「あなたの愛は、時間も空間も超越している。それは神々ですら持ち得ない力です」

セラフィールが美月の前に跪いた。

「私に、あなたを永遠に愛させてください」

セラフィールの畏敬に満ちた愛に、美月は戸惑った。

-----

五日間を終えて、美月は深く考え込んでいた。

それぞれとの時間は、どれも特別で美しいものだった。しかし、だからこそ選択は困難になっている。

「美月」

セレスティアが現れた。

「どうでしたか?」

「みんな……本当に素敵な人たちです」

美月が答えると、セレスティアは複雑な表情を浮かべた。

「そうですね。だからこそ、選択は困難なのです」

そのとき、急に美月の身体が光り始めた。

「美月!」

五人が駆け寄ってきた。美月を心配する彼らの想いが、美月の力をさらに増幅させている。

「まさか……」

セレスティアが驚愕した。

美月の光が、今度は新たな何かを生み出そうとしていた。愛の力が、これまでにない奇跡を起こそうとしているのだ。

美月の選択は、想像を超えた結末を迎えようとしていた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※表紙はAIにより作成したものです。 ※小説内容にはAI不使用です。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」「カクヨム」様にも掲載しております。

【長編版】孤独な少女が異世界転生した結果

下菊みこと
恋愛
身体は大人、頭脳は子供になっちゃった元悪役令嬢のお話の長編版です。 一話は短編そのまんまです。二話目から新しいお話が始まります。 純粋無垢な主人公テレーズが、年上の旦那様ボーモンと無自覚にイチャイチャしたり様々な問題を解決して活躍したりするお話です。 小説家になろう様でも投稿しています。

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

【完結】氷狼魔術師長様と私の、甘い契約結婚~実は溺愛されていたなんて聞いていません!~

雨宮羽那
恋愛
 魔術国家アステリエで事務官として働くセレフィアは、義理の家族に給料を奪われ、婚期を逃した厄介者として扱われていた。  そんなある日、上司である魔術師長・シリウスが事務室へやってきて、「私と結婚してください」と言い放った!  詳しく話を聞けば、どうやらシリウスにも事情があるようで、契約結婚の話を持ちかけられる。  家から抜け出るきっかけだと、シリウスとの結婚を決意するセレフィア。  同居生活が始まるが、シリウスはなぜかしれっとセレフィアを甘やかしてくる!? 「これは契約結婚のはずですよね!?」 ◇◇◇◇  恋愛小説大賞に応募しています。  お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます( . .)"  モチベになるので良ければ応援していただけると嬉しいです! ※この作品は「小説家になろう」様にも掲載しております。 ※表紙はAIイラストです。文字入れは「装丁カフェ」様を使用しております。 ※小説内容にはAI不使用です。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜

鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。 そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。 秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。 一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。 ◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

【完結】辺境伯の溺愛が重すぎます~追放された薬師見習いは、領主様に囲われています~

深山きらら
恋愛
王都の薬師ギルドで見習いとして働いていたアディは、先輩の陰謀により濡れ衣を着せられ追放される。絶望の中、辺境の森で魔獣に襲われた彼女を救ったのは、「氷の辺境伯」と呼ばれるルーファスだった。彼女の才能を見抜いたルーファスは、アディを専属薬師として雇用する。