【完結】婚約破棄された悪役令嬢ですが、もう王子には興味ありません

きゅちゃん

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第9話 「新たな力の覚醒」

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 王都から戻って一週間が経った。

 レオンの言葉通り、修行は以前にも増して厳しくなった。

「もっと集中しろ!魔力が分散している!」

 レオンの叱咤が飛ぶ。

 私は汗を拭いながら、再び魔法陣に向かって魔力を放つ。

 標的は、空中に浮かぶ十個の球体。それぞれを同時に、異なる物質に変換しなければならない。

 一つ目は石から金属へ。二つ目は水から氷へ。三つ目は木から水へ——

 集中力が切れ、魔法が暴発した。

 球体の一つが爆発し、破片が飛び散る。

「くっ……」

「休憩だ」

 レオンが水を差し出してくれた。

「お前、焦りすぎだ」

「でも、まだ全然できていません」

「一ヶ月前のお前を思い出せ。あの時は単純な変換すらできなかっただろう」

 確かに、その通りだ。

 今は、少なくとも五つの球体は同時に変換できるようになった。

「進歩してる。でも、満足するな。まだまだ先は長い」

「はい」

 水を飲み、呼吸を整える。

 その時、山道から人の気配がした。

 ルナが耳を立て、低く唸る。

「誰か来るのか?」

 レオンも警戒の表情を浮かべた。

 しばらくすると、一人の若い男性が姿を現した。

 二十代前半くらいだろうか。金髪に青い瞳、整った顔立ち。高級そうな旅装束を着ている。

 貴族だ。

「失礼します。レオンハルト様のお住まいは、こちらでしょうか?」

 丁寧な口調だったが、どこか緊張している様子だった。

「そうだが、何の用だ?」

 レオンが警戒しながら答える。

「私、辺境伯家の次男、カイル・フォン・アルトシュタットと申します」

 男性が深く頭を下げた。

「お願いがあって、参りました」

「辺境伯家の?わざわざこんな山奥まで?」

「はい。実は、妹が重い病にかかっておりまして……どの治癒魔法使いも匙を投げたのですが、レオンハルト様なら、もしかしたらと」

 カイルの声には、切実さが滲んでいた。

「妹の病?」

「ええ。魔力の暴走による内臓の損傷です。このままでは、あと数ヶ月の命だと」

 魔力の暴走。

 それは、魔法使いにとって最も恐れられる症状の一つだ。制御できない魔力が体内で暴れ、臓器を破壊していく。

「それは……大変だな」

 レオンの表情が、少し和らいだ。

「だが、私は治癒魔法の専門家じゃない。期待に応えられるかどうか」

「それでも、お願いします。妹を、助けてください」

 カイルが頭を下げる。その肩が、小刻みに震えていた。

 レオンは、しばらく考え込んでいた。

 そして、私を見た。

「エリアナ、お前はどう思う?」

「え?私ですか?」

「ああ。お前の意見を聞きたい」

 突然の質問に戸惑ったが、私は正直に答えた。

「助けられるなら、助けるべきだと思います」

「理由は?」

「レオンは、力を持っています。それを必要としている人がいる。なら、使うべきです」

 レオンは、小さく笑った。

「相変わらず、お人好しだな」

 そして、カイルに向き直る。

「わかった。診てみよう。ただし、保証はできない」

「ありがとうございます!」

 カイルの顔が、明るくなった。

「妹は、麓の街の宿に泊まっています。今すぐ、来ていただけますか?」

「ああ。エリアナ、お前も来い」

「私も?」

「治癒魔法の実地訓練だ。見て学べ」

 私たちは、カイルに案内され山を下った。

 麓の街、ノルトハイムは、フェルトハイム村より大きな町だった。石畳の道、商店が立ち並ぶ通り、行き交う人々。

 カイルが案内したのは、町で一番立派な宿だった。

「こちらです」

 二階の部屋に入ると、ベッドに一人の少女が横たわっていた。

 十五、六歳くらいだろうか。金髪を三つ編みにした、可愛らしい顔立ちの少女。でも、その顔色は青白く、呼吸も浅い。

「ソフィア……」

 カイルが妹の名を呼ぶ。

 少女がゆっくりと目を開けた。

「お兄様……?」

「ああ。医者を連れてきたよ」

 ソフィアの視線が、レオンと私に向く。

「初めまして。私はレオンハルト。こちらは弟子のエリアナだ」

「よろしく、ソフィア」

 私が微笑むと、ソフィアも弱々しく笑い返してくれた。

「診察するぞ」

 レオンがソフィアの手首に手を当てる。

 彼の手が、淡く光った。

 魔力を流し込んで、体内の状態を調べているのだろう。

 しばらくして、レオンが難しい顔をした。

「かなり進行しているな。魔力が心臓と肺を圧迫している」

「治せますか?」

 カイルが、すがるような目で聞く。

「時間はかかるが、不可能じゃない」

 その言葉に、カイルとソフィアの顔が明るくなった。

「本当ですか!」

「ただし、条件がある」

 レオンが真剣な顔で言った。

「治療には、無属性魔法を使う。お前たち、それを受け入れられるか?」

 カイルの表情が、一瞬固まった。

「無属性魔法……ですか?」

「ああ。通常の治癒魔法では、魔力の暴走は止められない。無属性魔法なら、暴走した魔力を中和できる」

「でも、無属性魔法は……」

 カイルの声が震える。

 無属性魔法への恐れと偏見。それは、この世界に深く根付いている。

「危険だと思うなら、断ってもいい。他を当たれ」

 レオンは冷たく言った。

「ただし、他に方法はないと思うがな」

 カイルは、妹を見た。

 ソフィアは、苦しそうに呼吸している。

 長い沈黙の後、カイルが言った。

「お願いします。妹を、助けてください」

「後悔するなよ」

「しません」

 レオンは頷くと、私を見た。

「エリアナ、よく見ておけ」

「はい」

 レオンは両手をソフィアの胸の上にかざした。

 銀色の光が、彼の手から放たれる。

 光はゆっくりとソフィアの体を包み込んでいく。

 ソフィアが、小さく呻いた。

「痛みは一時的だ。我慢しろ」

 レオンの額に、汗が浮かぶ。

 光が、徐々に強くなっていく。

 私は、レオンの魔力の流れを感じ取ろうとした。

 彼は、ソフィアの体内の暴走した魔力を、一つ一つ丁寧に中和している。まるで、絡まった糸をほどくように。

 それは、気が遠くなるほど繊細な作業だった。

 三十分が経過した頃、レオンが手を離した。

「今日はここまでだ」

 彼の顔は、疲労で青白くなっていた。

「レオン!大丈夫?」

 私が駆け寄ると、レオンは小さく笑った。

「大丈夫だ。ただの疲労だ」

 ソフィアは、少し楽になったようだった。呼吸が深くなり、顔色も少し良くなっている。

「すごい……本当に、楽になりました」

「完治には、あと五回は治療が必要だ。一週間後、また来る」

「ありがとうございます!」

 カイルが深く頭を下げた。

 宿を出ると、日が傾き始めていた。

「レオン、あの治療……すごかったです」

「あれが、無属性魔法の真髄だ。全ての属性を理解し、調和させる」

 レオンは、空を見上げた。

「いつか、お前にもできるようになる」

「本当ですか?」

「ああ。お前には、その素質がある」

 その言葉が、嬉しかった。

 山に戻る道すがら、私はカイルとソフィアのことを考えていた。

 無属性魔法への偏見を乗り越えて、レオンを信じてくれた。

 そして、レオンの魔法は、確かに人を救った。

 これが、魔法の本当の力なんだ。

 破壊するためじゃなく、救うための力。

「エリアナ」

 レオンが立ち止まった。

「お前、あの治療を見てどう思った?」

「感動しました。魔法で、人を助けられるんだって」

「なら、お前も同じことができるようになれ」

 レオンが私の肩に手を置く。

「お前の無属性魔法は、まだ未熟だ。でも、可能性は無限だ。正しく学べば、お前は多くの人を救える魔法使いになれる」

「頑張ります」

「ああ、頑張れ」

 家に戻ると、もう暗くなっていた。

 レオンは、疲れた様子でベッドに倒れ込んだ。

「今日は、もう休め。明日から、治癒魔法の訓練を追加する」

「はい!」

 私は、自分の部屋で一人、手のひらに光を灯した。

 銀色の光。

 この光で、いつか誰かを救えるようになる。

 その日が来るまで、私は学び続ける。

 窓の外では、月が静かに輝いていた。

 ルナが、私の足元で眠っている。

 全てが、穏やかだった。

 でも、私の心は燃えていた。

 もっと強くなりたい。

 もっと、人の役に立ちたい。

 その気持ちが、私を突き動かしていた。

 翌朝、レオンは言った通り、治癒魔法の基礎を教え始めた。

「まずは、植物の傷を治すことから始める」

 レオンが用意したのは、枝が折れた小さな木だった。

「この折れた部分を、元に戻してみろ」

 私は木に手をかざし、魔力を流し込む。

 イメージする。細胞が再生し、組織が繋がっていく様子を。

 銀色の光が、木を包み込む。

 折れた枝が、ゆっくりと動き始めた。

 繊維が絡み合い、繋がっていく。

 そして——

 完全に元通りになった。

「やった!」

「いい調子だ。次は、動物で試そう」

 レオンが連れてきたのは、足を怪我した小鳥だった。

「この子の骨を、治してやれ」

 より繊細な作業だ。

 私は慎重に魔力を流し込む。

 小鳥の小さな骨が、少しずつ繋がっていく。

 十分後、小鳥は元気に羽ばたき始めた。

「成功ね!」

「合格だ。お前、治癒魔法の才能もあるな」

 レオンの褒め言葉に、顔が緩む。

「次のソフィアの治療、お前も手伝え」

「本当ですか?」

「ああ。実地で学ぶのが一番だ」

 一週間後、再びノルトハイムを訪れた。

 ソフィアは、前回より元気そうだった。

「レオンハルト様、エリアナ様!」

 笑顔で迎えてくれた。

「調子はどうだ?」

「すごくいいです。あの日から、呼吸が楽になって」

「よし、二回目の治療を始める。エリアナ、お前も魔力を流せ」

「はい」

 レオンと私、二人でソフィアに魔力を流し込む。

 レオンが主導し、私が補助する形だ。

 暴走した魔力を中和していく。

 私の魔力が、レオンの魔力と調和する。

 不思議な感覚だった。

 二つの魔力が、まるで一つになったように感じる。

 治療が終わると、ソフィアはさらに元気になっていた。

「ありがとうございます!本当に、体が軽いです!」

 カイルも、涙を流して感謝してくれた。

「あと三回だ。必ず治してやる」

 レオンの言葉に、二人は何度も頭を下げた。

 帰り道、私はレオンに聞いた。

「あの二人、いい人たちですね」

「ああ。本当に妹を思う兄だ」

「レオンは、昔から人を助けてきたんですか?」

「まあな。それが、魔法使いの使命だと師匠に教わった」

 レオンの目が、優しくなった。

「力は、人を守るためにある。傷つけるためじゃない」

 その言葉が、深く心に刻まれた。

 私も、そんな魔法使いになりたい。

 人を守り、救える魔法使いに。

 山に戻ると、マリアが訪ねてきていた。

「エリ!聞いたわよ、辺境伯家の令嬢を治療しているって!」

「マリア、どうして知ってるの?」

「噂よ。町中で話題になってるわ。無属性魔法で人を救ったって」

 マリアは嬉しそうに笑った。

「みんな、少しずつ理解し始めてる。無属性魔法は怖くないって」

 その言葉に、希望を感じた。

 少しずつでも、世界は変わっていく。

 私たちの行動が、人々の心を動かしている。

 それが、何より嬉しかった。
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