【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん

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第2話「新しい世界、新しい私」

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意識が戻った時、美咲は柔らかなベッドの上にいた。

「あれ……?」

天井を見上げると、見慣れない装飾が施された木造の梁が目に入った。薄汚れた会社のオフィスとは大違いの、温かみのある空間だった。

体を起こそうとして、美咲は驚いた。体が軽い。慢性的な肩こりも腰痛も消え去っていた。それどころか、力が漲っているような感覚さえあった。

「鏡……鏡はどこ?」

部屋を見回すと、立派な姿見が壁際に置かれていた。美咲は恐る恐る鏡の前に立つ。

「え……?」

鏡に映っていたのは、見知らぬ美少女だった。艶やかな銀髪に、透き通るような白い肌。そして何より印象的だったのは、深い青色の瞳だった。

「これ、私……?」

手を上げると、鏡の中の少女も同じように手を上げる。間違いなく、これが今の自分だった。

突然、頭の中に大量の記憶が流れ込んできた。

この世界は「アルカディア」と呼ばれる異世界。魔法が存在し、モンスターが跋扈し、剣と魔法の冒険者たちが活躍する世界。

そして自分は、セリア・アルクライト。辺境の村の領主の娘として生まれた十七歳の少女。幼い頃から魔法の才能を示し、この世界でも稀に見る魔力を持つとされていた。

「魔法使い……私が?」

美咲──いや、セリアは自分の手のひらを見つめた。確かに、体の奥底から何かが湧き上がってくるような感覚があった。

「試してみようかな」

前世の記憶と、この世界での記憶が融合している。魔法の基本的な使い方も、なんとなく理解できた。

セリアは手のひらを上に向け、意識を集中した。

「光よ」

すると、手のひらの上に美しい光の球が浮かんだ。温かく、優しい光だった。

「すごい……本当に魔法が使えるんだ」

感動に震える声で呟いた時、部屋のドアがノックされた。

「セリア様、お目覚めでしょうか?」

「あ、はい! 入ってください」

扉が開くと、中年の女性が入ってきた。メイド服を着た、優しそうな女性だった。記憶を辿ると、幼い頃から世話をしてくれているアンナという名前だった。

「セリア様、三日間もお眠りになられて……心配いたしました」

「三日間?」

「はい。突然倒れられて、お医者様も原因が分からないとおっしゃって。でも、お元気そうで何よりです」

アンナの表情は、心から安堵している様子だった。この人は、本当に自分を大切に思ってくれているのだろう。前世では、こんな風に心配してくれる人が職場にいただろうか。

「ありがとう、アンナ。もう大丈夫よ」

「それでしたら、お食事をお持ちしましょうか? きっとお腹が空いていらっしゃるでしょう」

「お願いします」

アンナが去った後、セリアは窓辺に向かった。外を見ると、緑豊かな森と、遠くに見える山々が広がっていた。空気が澄んでいて、鳥のさえずりが聞こえる。

「なんて美しい世界……」

前世では、コンクリートに囲まれた殺風景な景色しか見えなかった。休日も疲れ切っていて、自然を楽しむ余裕なんてなかった。

やがてアンナが豪華な食事を運んできた。新鮮な野菜のサラダ、焼きたてのパン、ジューシーな肉料理。どれも美味しそうで、体が自然と反応した。

「いただきます」

一口食べた瞬間、セリアは涙が出そうになった。こんなに美味しいものを、いつ最後に食べただろうか。前世では、いつもコンビニ弁当か、カップ麺ばかりだった。

「セリア様、お味はいかがですか?」

「とても美味しいわ。ありがとう、アンナ」

食事をしながら、セリアは自分の状況を整理した。前世の田中美咲の記憶と、この世界のセリア・アルクライトの記憶が共存している。そして、この世界では魔法という絶対的な力を持っている。

「今度こそ、自分らしく生きよう」

前世では、理不尽に耐え続けるだけだった。でも今度は違う。力がある。この世界で、誰にも屈することなく、自分の信念を貫いて生きていこう。

食事を終えると、セリアはベランダに出た。夕日が美しく、心が洗われるようだった。

「まずは、この力がどの程度のものか確かめないとね」

手を空に向けると、再び光の球を作り出した。今度は意識してみる。すると、光は次第に大きくなり、眩しいほどの輝きを放った。

「うわっ」

慌てて魔法を解くと、光は消えた。でも、今の感覚で分かった。自分の魔力は、この世界の基準でも相当に強力だということが。

「これなら……」

セリアの心に、希望が湧いてきた。前世では無力だった。でも今は違う。この力があれば、理不尽な目に遭っている人たちを助けることができる。困っている人の力になることができる。

そして何より、二度と誰かに理不尽な扱いを受けることはない。

その時、村の方角から黒い煙が上がっているのが見えた。

「火事?」

いや、違う。記憶の中にある知識が警告を発していた。あれは魔物の襲撃による煙だ。

「村が襲われてる!」

セリアは迷わず部屋を飛び出した。アンナが驚いた声を上げたが、構わず屋敷の外へ向かった。

「待ってて、みんな。今度は私が守る番よ」

前世では誰も守れなかった。でも今度は違う。この力を使って、大切な人たちを守ろう。理不尽な暴力に屈することなく、正しいことのために戦おう。

セリアの新しい人生が、今、始まろうとしていた。
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