【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん

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第3話「初めての魔法、その圧倒的な威力」

村に向かって走りながら、セリアの心は高鳴っていた。前世では、緊急事態に遭遇しても何もできなかった。電車の痴漢を見ても、パワハラを目撃しても、見て見ぬ振りをするしかなかった。

でも今は違う。

「今度こそ、誰かを守れる」

村に近づくにつれて、状況が見えてきた。巨大な狼のような魔物──ダイアウルフが数匹、村人たちを追い回している。家々からは煙が上がり、悲鳴と怒号が響いていた。

「セリア様! 危険です!」

後ろからアンナの声が聞こえたが、セリアは振り返らずに村の中心部へ向かった。

広場では、村の男性たちが武器を持って魔物に立ち向かっていたが、圧倒的に不利だった。農具しか持たない彼らに、どうして巨大な魔物と戦えるだろうか。

「くそっ! なんでこんな時に!」

「子供たちを先に逃がせ!」

村人たちの必死の声が聞こえる。その時、セリアの目に飛び込んできたのは、角に追い詰められた母子の姿だった。

「お母さん!」

小さな女の子が泣きながら母親にしがみついている。母親は自分の体で娘を庇いながら、迫りくるダイアウルフを見つめていた。その表情には、絶望と、それでも子供を守ろうとする母の強い意志があった。

セリアの胸に、熱いものが込み上げた。

「絶対に、させない」

セリアは両手を前に向け、意識を集中した。魔力が体の奥底から湧き上がってくる。前世では感じたことのない、圧倒的な力の感覚。

記憶の中にある攻撃魔法の知識が蘇る。でも、威力を計算している余裕はなかった。

「炎よ、邪悪を焼き尽くせ──ファイアボール!」

セリアの手から放たれた炎の球は、彼女の予想を遥かに超える大きさだった。直径二メートルはある巨大な火球が、轟音と共にダイアウルフに向かって飛んでいく。

「え?」

魔物は炎に包まれ、一瞬で灰になって消え去った。その威力は凄まじく、周囲の地面まで焦がしていた。

村人たちが唖然として立ち尽くした。

「い、今のは……」

「セリア様の魔法?」

しかし、セリアに休む間はなかった。まだ他にも魔物がいる。

「氷よ、敵を貫け──アイスランス!」

今度は氷の槍が宙に現れ、別のダイアウルフを一撃で倒した。氷の槍は魔物を貫通し、後ろの木まで凍らせてしまった。

「風よ、刃となりて──ウィンドカッター!」

最後の一匹に向けて放った風の刃は、魔物を真っ二つに切り裂いた。

村に静寂が戻った。

「すごい……」

「セリア様が……」

村人たちは、セリアを見つめて言葉を失っていた。彼女自身も、自分の力の強さに驚いていた。

「魔法って、こんなに強力なの?」

記憶の中では、もっと小規模な魔法ばかりだった。でも今使った魔法は、明らかに規格外の威力だった。

「セリア様! ありがとうございます!」

最初に助けた母親が、娘と一緒に駆け寄ってきた。

「本当に、ありがとうございました。あなたがいなければ、私たちは……」

母親の目には涙が浮かんでいた。娘も小さな手でセリアのスカートを握り、上目遣いで見上げている。

「ありがとう、お姉ちゃん」

その瞬間、セリアの心は温かいもので満たされた。前世では、誰かにこんな風に感謝されることなんてなかった。仕事でどんなに頑張っても、認められることはなかった。

でも今は違う。自分の力で、確実に誰かを救うことができた。

「大丈夫よ。みんなを守るのは当然のことだから」

セリアの言葉に、村人たちは再び驚いた。領主の娘が、こんなに謙虚で優しいなんて。

「セリア様、怪我をされた方がいらっしゃいます」

村の長老が血まみれの腕を押さえながら歩いてきた。他にも、魔物の攻撃で傷を負った人々がいた。

「回復魔法は使えるかしら」

セリアは記憶を探った。確かに、治癒系の魔法の知識もある。

「光よ、傷を癒せ──ヒール」

セリアが手をかざすと、温かい光が傷口を包んだ。そして、見る間に傷が塞がっていく。

「なんということじゃ……」

長老は自分の腕を見つめて呟いた。深い裂傷が完全に治っている。

セリアは次々と負傷者を治療していった。その度に、村人たちの表情が明るくなっていく。

「本当に、セリア様は私たちの救世主ですね」

「こんなに強い魔法使いがいてくださって、心強いです」

村人たちの感謝の言葉を聞きながら、セリアは思った。

これが、本当の仕事の意味なのかもしれない。前世では、誰のためになっているのか分からない仕事ばかりだった。でも今は違う。自分の力が、確実に誰かの役に立っている。

「村長さん、今後のことを相談しましょう」

セリアは村長に声をかけた。魔物の襲撃は、きっと一度では終わらない。村を守るための対策を考えなければ。

「はい、もちろんです。セリア様のおかげで、村は救われました」

その時、村の入り口から馬の蹄の音が響いてきた。騎士の一団が到着したのだった。

「遅かったか……」

騎士たちの隊長らしき人物が、辺りを見回して呟いた。魔物の死骸を見て、明らかに困惑している。

「一体、誰がこの魔物たちを……」

「私よ」

セリアが名乗り出ると、騎士たちは驚愕した。

「君が? しかし、君はまだ……」

「十七歳よ。でも、魔法なら使えるわ」

騎士の隊長は、魔物の死骸を改めて調べた。どれも一撃で倒されている。こんな芸当ができる魔法使いは、王都でも数えるほどしかいない。

「失礼いたしました。私は王国騎士団のリーダー、ガレット・ハーヴェイと申します」

「セリア・アルクライトです」

「アルクライト家の……それでは、あなたがこの辺境では有名な天才魔法使いの」

セリアは苦笑した。記憶では、確かにそう呼ばれていたらしい。でも、今日使った魔法は、記憶にある過去の自分の魔法とは比べ物にならないほど強力だった。

「今日からは、もっと頼りにしてもらえると思うわ」

その夜、村では祝宴が開かれた。セリアを囲んで、村人たちが心からの感謝を示してくれた。前世では味わったことのない、充実感と達成感がセリアの心を満たしていた。

これが、新しい人生の始まりだった。
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