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第5話「冒険者ギルドへの登録」
王都に到着したセリアは、その規模の大きさに目を見張った。前世で見た東京のような高層ビル群こそないものの、石造りの立派な建物が立ち並び、大勢の人々が行き交っている。
「やっぱり都市部は活気があるのね」
前世では、満員電車と殺伐とした通勤ラッシュしか記憶になかったが、この世界の王都は違った。商人たちの威勢のいい声、子供たちの笑い声、街角で演奏する吟遊詩人の歌声。生きる喜びに満ちていた。
「セリア様、冒険者ギルドはあちらです」
アンナが指差す方向に、一際大きな建物が見えた。「冒険者ギルド王都本部」と書かれた看板が掲げられている。
建物の中に入ると、様々な装備をした冒険者たちで賑わっていた。受付カウンターでは、若い女性職員が忙しそうに対応している。
「いらっしゃいませ。新規登録でしょうか?」
「はい。セリア・アルクライトと申します」
受付の女性──名札にはリナと書かれている──は、セリアの上品な身なりを見て少し驚いた様子だった。
「アルクライト家の……それでは、貴族の方でいらっしゃいますね。失礼ですが、なぜ冒険者に?」
「困っている人を助けたいんです。そのためには、冒険者として正式に活動した方が良いと聞きまして」
リナは微笑んだ。時々、こうした高い理想を持つ貴族の子弟が来ることがあった。ただし、大抵は現実の厳しさを知って、すぐに辞めてしまうのだが。
「分かりました。それでは、まず実力査定をさせていただきます。通常は最下位のGランクからスタートですが、実力次第ではより高いランクからの登録も可能です」
「実力査定?」
「はい。魔法使いの方でしたら、魔力測定と実技試験を行います。こちらへどうぞ」
案内されたのは、ギルドの地下にある広い訓練場だった。そこには既に、ギルドの査定官らしき中年男性が待機していた。
「私はギルド査定官のマルコです。本日はよろしくお願いします」
マルコは礼儀正しく挨拶したが、その目には明らかに疑念があった。こんな若い貴族令嬢に、一体どれほどの実力があるというのか。
「まずは魔力測定から始めましょう」
マルコが持ってきたのは、水晶でできた球体だった。
「この測定器に手を当てて、魔力を込めてください。光の強さで魔力レベルが分かります」
セリアは言われた通り、水晶球に手を当てた。軽く魔力を込めると……
「な、なんだこれは!」
水晶球が眩いばかりの光を放った。その光は訓練場全体を照らし、見学に来ていた他の冒険者たちも目を細めるほどだった。
「ちょ、ちょっと待ってください! 測定器が壊れてしまいます!」
慌てたマルコに言われて、セリアは魔力の供給を止めた。しかし、水晶球はまだ余韻で光り続けている。
「申し訳ございません。加減が分からなくて……」
「い、いえ……こちらこそ失礼いたしました」
マルコは震え声で答えた。三十年間査定官をやってきたが、こんな魔力レベルは見たことがなかった。Sランクの冒険者でも、ここまでの数値は出ない。
「それでは、実技試験に移りましょう。あちらの的に向かって、適当な攻撃魔法を……」
「分かりました。ファイアボール」
セリアが軽く唱えると、手のひらから火球が飛び出した。しかし、その火球は彼女が予想していたよりもはるかに大きく……
轟音と共に、的は跡形もなく消し飛んだ。それだけでなく、訓練場の壁にも大きな焦げ跡が残った。
訓練場が静寂に包まれた。
「す、すみません……手加減が上手くできなくて」
セリアが恐縮していると、マルコは慌てて首を振った。
「い、いえ! 素晴らしい威力です! これほどの実力なら……」
マルコは書類に何かを記入すると、上階へ駆け上がっていった。しばらくして、彼はギルドマスターらしき威厳のある男性と共に戻ってきた。
「私はこのギルドのマスター、ロバート・クレイグです。あなたがセリア・アルクライトさんですね」
「はい。よろしくお願いします」
「早速ですが、査定結果をお伝えします。あなたの冒険者ランクは……Sランクです」
周囲にいた冒険者たちがざわめいた。新規登録でいきなりSランクなど、前代未聞だった。
「Sランクと言いますと……」
「最高ランクです。王国でも数名しかいない、最上級の冒険者に与えられるランクです」
ロバートは感激した様子で続けた。
「正直申し上げて、あなたの実力はSランクをも超えているかもしれません。しかし、制度上Sが最高ランクとなっておりますので……」
「ありがとうございます」
セリアは素直に喜んだ。前世では、どんなに頑張っても正当な評価を受けることはなかった。むしろ、成果を上司に横取りされることすらあった。
でも今度は違う。自分の実力が、きちんと認められている。
「それでは、ギルドカードをお渡しします」
手渡されたカードには、「セリア・アルクライト Sランク冒険者」と刻まれていた。
「これで正式に冒険者として活動できます。Sランクの依頼は通常、国家レベルの重要任務ですので、報酬も相応に高額です」
「報酬はそれほど重要ではありません。困っている人を助けることができれば」
セリアの言葉に、ロバートは感動した表情を浮かべた。
「素晴らしい心構えです。きっと、多くの人々を救ってくださることでしょう」
その時、ギルドの入り口から騒がしい声が聞こえてきた。
「頼む! 誰か助けてくれ!」
血相を変えた男性が飛び込んできた。
「どうしました?」
ロバートが駆け寄ると、男性は必死に説明した。
「商人ギルドの連中が、また無茶苦茶な要求を……僕たちのような小さな商店は、もう生きていけません!」
セリアの目が鋭くなった。理不尽な権力者による弱者の搾取。まさに前世で自分が経験した構図だった。
「詳しく聞かせてもらえる?」
セリアが前に出ると、男性は驚いた。
「あ、あなたは……」
「冒険者のセリアよ。あなたを助けたい」
男性の目に希望の光が宿った。
「本当ですか? ありがとうございます!」
ロバートがセリアに向かって言った。
「これは丁度良い。あなたの最初の依頼になりそうですね」
セリアは頷いた。前世の鬱憤を晴らすような、理不尽な権力者との戦いが始まろうとしていた。
今度は、絶対に負けない。
「やっぱり都市部は活気があるのね」
前世では、満員電車と殺伐とした通勤ラッシュしか記憶になかったが、この世界の王都は違った。商人たちの威勢のいい声、子供たちの笑い声、街角で演奏する吟遊詩人の歌声。生きる喜びに満ちていた。
「セリア様、冒険者ギルドはあちらです」
アンナが指差す方向に、一際大きな建物が見えた。「冒険者ギルド王都本部」と書かれた看板が掲げられている。
建物の中に入ると、様々な装備をした冒険者たちで賑わっていた。受付カウンターでは、若い女性職員が忙しそうに対応している。
「いらっしゃいませ。新規登録でしょうか?」
「はい。セリア・アルクライトと申します」
受付の女性──名札にはリナと書かれている──は、セリアの上品な身なりを見て少し驚いた様子だった。
「アルクライト家の……それでは、貴族の方でいらっしゃいますね。失礼ですが、なぜ冒険者に?」
「困っている人を助けたいんです。そのためには、冒険者として正式に活動した方が良いと聞きまして」
リナは微笑んだ。時々、こうした高い理想を持つ貴族の子弟が来ることがあった。ただし、大抵は現実の厳しさを知って、すぐに辞めてしまうのだが。
「分かりました。それでは、まず実力査定をさせていただきます。通常は最下位のGランクからスタートですが、実力次第ではより高いランクからの登録も可能です」
「実力査定?」
「はい。魔法使いの方でしたら、魔力測定と実技試験を行います。こちらへどうぞ」
案内されたのは、ギルドの地下にある広い訓練場だった。そこには既に、ギルドの査定官らしき中年男性が待機していた。
「私はギルド査定官のマルコです。本日はよろしくお願いします」
マルコは礼儀正しく挨拶したが、その目には明らかに疑念があった。こんな若い貴族令嬢に、一体どれほどの実力があるというのか。
「まずは魔力測定から始めましょう」
マルコが持ってきたのは、水晶でできた球体だった。
「この測定器に手を当てて、魔力を込めてください。光の強さで魔力レベルが分かります」
セリアは言われた通り、水晶球に手を当てた。軽く魔力を込めると……
「な、なんだこれは!」
水晶球が眩いばかりの光を放った。その光は訓練場全体を照らし、見学に来ていた他の冒険者たちも目を細めるほどだった。
「ちょ、ちょっと待ってください! 測定器が壊れてしまいます!」
慌てたマルコに言われて、セリアは魔力の供給を止めた。しかし、水晶球はまだ余韻で光り続けている。
「申し訳ございません。加減が分からなくて……」
「い、いえ……こちらこそ失礼いたしました」
マルコは震え声で答えた。三十年間査定官をやってきたが、こんな魔力レベルは見たことがなかった。Sランクの冒険者でも、ここまでの数値は出ない。
「それでは、実技試験に移りましょう。あちらの的に向かって、適当な攻撃魔法を……」
「分かりました。ファイアボール」
セリアが軽く唱えると、手のひらから火球が飛び出した。しかし、その火球は彼女が予想していたよりもはるかに大きく……
轟音と共に、的は跡形もなく消し飛んだ。それだけでなく、訓練場の壁にも大きな焦げ跡が残った。
訓練場が静寂に包まれた。
「す、すみません……手加減が上手くできなくて」
セリアが恐縮していると、マルコは慌てて首を振った。
「い、いえ! 素晴らしい威力です! これほどの実力なら……」
マルコは書類に何かを記入すると、上階へ駆け上がっていった。しばらくして、彼はギルドマスターらしき威厳のある男性と共に戻ってきた。
「私はこのギルドのマスター、ロバート・クレイグです。あなたがセリア・アルクライトさんですね」
「はい。よろしくお願いします」
「早速ですが、査定結果をお伝えします。あなたの冒険者ランクは……Sランクです」
周囲にいた冒険者たちがざわめいた。新規登録でいきなりSランクなど、前代未聞だった。
「Sランクと言いますと……」
「最高ランクです。王国でも数名しかいない、最上級の冒険者に与えられるランクです」
ロバートは感激した様子で続けた。
「正直申し上げて、あなたの実力はSランクをも超えているかもしれません。しかし、制度上Sが最高ランクとなっておりますので……」
「ありがとうございます」
セリアは素直に喜んだ。前世では、どんなに頑張っても正当な評価を受けることはなかった。むしろ、成果を上司に横取りされることすらあった。
でも今度は違う。自分の実力が、きちんと認められている。
「それでは、ギルドカードをお渡しします」
手渡されたカードには、「セリア・アルクライト Sランク冒険者」と刻まれていた。
「これで正式に冒険者として活動できます。Sランクの依頼は通常、国家レベルの重要任務ですので、報酬も相応に高額です」
「報酬はそれほど重要ではありません。困っている人を助けることができれば」
セリアの言葉に、ロバートは感動した表情を浮かべた。
「素晴らしい心構えです。きっと、多くの人々を救ってくださることでしょう」
その時、ギルドの入り口から騒がしい声が聞こえてきた。
「頼む! 誰か助けてくれ!」
血相を変えた男性が飛び込んできた。
「どうしました?」
ロバートが駆け寄ると、男性は必死に説明した。
「商人ギルドの連中が、また無茶苦茶な要求を……僕たちのような小さな商店は、もう生きていけません!」
セリアの目が鋭くなった。理不尽な権力者による弱者の搾取。まさに前世で自分が経験した構図だった。
「詳しく聞かせてもらえる?」
セリアが前に出ると、男性は驚いた。
「あ、あなたは……」
「冒険者のセリアよ。あなたを助けたい」
男性の目に希望の光が宿った。
「本当ですか? ありがとうございます!」
ロバートがセリアに向かって言った。
「これは丁度良い。あなたの最初の依頼になりそうですね」
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今度は、絶対に負けない。
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