【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん

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第6話「成敗」

「商人ギルドが何をしているのか、詳しく教えて」

セリアは依頼人の男性──パン屋を営むトムに優しく声をかけた。トムは三十代半ばで、誠実そうな人柄が表情から読み取れた。

「最近、商人ギルドが新しい『営業税』なるものを導入したんです。小さな商店からも、売上の三割を徴収すると……」

「三割? それは酷いわね」

前世の日本でも、様々な税金があったが、それでも三割というのは法外だった。しかも、これは正式な国の税金ではなく、商人ギルドが勝手に決めたものらしい。

「それだけじゃありません。支払いが遅れると、ギルドの『調査員』と称する連中がやってきて、店の商品を勝手に持っていくんです」

「それって、ただの恐喝じゃない」

セリアの声に怒りが込もった。前世でも、理不尽な上司からのパワハラや、会社の横暴な決定に何度も苦しめられた。でも今度は、自分が力を持っている。

「僕だけじゃありません。街の小さな商店のほとんどが、同じ目に遭っています。でも、商人ギルドは王都でも有力な組織で、誰も逆らえないんです」

トムの表情は絶望に満ちていた。

「逆らえる人がいるわよ。私がいるじゃない」

セリアの言葉に、トムの顔が明るくなった。

「本当ですか? でも、相手は商人ギルド長のザックス・マネーウェルです。王宮にも顔が利く権力者で……」

「権力者だろうと何だろうと、理不尽なことをしているなら正さなくちゃ」

ロバートがセリアに近づいてきた。

「セリアさん、商人ギルドとの争いは複雑な問題ですよ。政治的な影響も考慮しなければ……」

「大丈夫よ。私には良いアイデアがあるの」

セリアは微笑んだ。前世で培った社会人としての知識と、この世界での圧倒的な魔法力。この組み合わせがあれば、どんな理不尽も正せるはずだ。

「トム、今日の午後、商人ギルドに行きましょう。一緒に来てもらえる?」

「は、はい! でも、大丈夫でしょうか……」

「任せて。絶対に何とかするから」

午後、セリアとトムは商人ギルドの本部を訪れた。立派な大理石造りの建物で、明らかに小さな商店から搾取した金で建てられたものだった。

受付の女性に用件を告げると、しばらく待たされた後、応接室に通された。

「お待たせしました」

入ってきたのは、太った中年男性だった。高価そうな服を着て、指には宝石の指輪を複数はめている。これがザックス・マネーウェルだった。

「私がギルド長のザックスだ。それで、何の用だ?」

その態度は横柄そのものだった。セリアを一瞥しただけで、明らかに軽視している。

「営業税について相談があります」

セリアが丁寧に切り出すと、ザックスは鼻で笑った。

「営業税? あれは正当な手続きで決定されたものだ。不満があるなら、さっさと商売を畳め」

「三割という税率は、適正だと思われますか?」

「適正だと? お嬢ちゃん、ここは子供の遊び場じゃないんだよ。大人の世界には大人のルールがあるんだ」

セリアの目が細くなった。この態度、この話し方。前世の嫌な上司たちと全く同じだった。

「では、その『大人のルール』とやらの根拠を教えてください。法的な裏付けはあるのですか?」

「法的な裏付けだと? ハハハ! お嬢ちゃん、ここでは俺が法律だ。俺の決めたことが、この街のルールなんだよ」

トムが震え上がっている。しかし、セリアは冷静だった。

「つまり、法的根拠は一切ないということですね」

「そうだ、それが何だ? 気に入らないなら、出て行け」

ザックスは立ち上がると、セリアとトムを睨み付けた。

「それなら、こちらにも考えがあります」

セリアも立ち上がった。その瞬間、室内の温度が下がったような気がした。

「何だと?」

「私は冒険者ギルドのSランク冒険者、セリア・アルクライトです。不正行為の告発と是正を求めます」

「冒険者だと? ハハハ、お嬢ちゃんが冒険者? 嘘もいい加減にしろ」

ザックスが高笑いした時、セリアは静かに手を上げた。

「ライトニング」

小さな電撃がザックスの足元を走った。彼は驚いて飛び跳ねた。

「な、何をする!」

「これは警告です。不正な徴税を直ちに中止し、これまでに搾取した金額を返還してください」

「ふざけるな! 衛兵を呼ぶぞ!」

ザックスが呼び鈴を鳴らすと、武装した衛兵が数名駆け込んできた。

「ギルド長、何かございましたか?」

「この女を捕らえろ! ギルドに対する反逆行為だ!」

衛兵たちがセリアに向かってきた時、セリアは軽くため息をついた。

「アイスバインド」

瞬間、衛兵たちの足が氷に包まれ、身動きが取れなくなった。

「な、なんだこれは!」

「魔法だ! こいつは魔法使いだ!」

衛兵たちが慌てふためく中、セリアは冷静にザックスに向き直った。

「もう一度聞きます。営業税の撤回と返還に応じますか?」

「だ、誰がそんなことを……」

その時、ギルドの外から大きな声が聞こえてきた。

「商人ギルドは不正な徴税をやめろ!」

「私たちの生活を返せ!」

窓から外を見ると、大勢の商店主たちが集まっているのが見えた。セリアの行動を見て、勇気を出して声を上げ始めたのだった。

「これは……」

ザックスの顔が青ざめた。

「民衆の声です。あなたの不正は、もう隠せません」

セリアは窓を開けると、外に向かって声をかけた。

「皆さん、安心してください。不正な徴税は必ず止めさせます!」

群衆から歓声が上がった。

「ザックス・マネーウェル、最後の機会です。自発的に不正を認めて謝罪するか、それとも……」

セリアの手に、小さな炎が宿った。しかし、その炎からは凄まじい熱が発せられている。

「わ、分かった! 分かったから、その魔法をやめてくれ!」

ザックスは完全に屈服した。

「営業税は撤回する! これまでに徴収した分も返還する!」

「本当ですね?」

「本当だ! 約束する!」

セリアは炎を消すと、微笑んだ。

「賢明な判断です」

外の群衆に向かって大きな声で発表した。

「商人ギルドが営業税の撤回と返還を約束しました!」

街全体に歓喜の声が響いた。

トムは涙を流していた。

「ありがとうございます、セリアさん。本当に、ありがとうございます」

「当然のことをしただけよ。理不尽なことは、絶対に許さない」

セリアの心は、前世では決して味わえなかった満足感で満たされていた。今度こそ、理不尽な権力者を屈服させることができた。

これが、新しい人生の始まりだった。
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