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第7話「ルークとの出会い」
商人ギルドでの一件から三日後、セリアは王都の街を歩いていた。あの出来事以来、街の小さな商店主たちから感謝の言葉をかけられることが多くなった。
「セリア様、ありがとうございました」
「おかげで商売を続けられます」
道行く人々の笑顔を見ながら、セリアは前世では味わえなかった充実感を感じていた。自分の行動が、確実に誰かの役に立っている。これこそが、本当の仕事の意味なのかもしれない。
そんな時、前方から騒がしい声が聞こえてきた。
「やめろ! そんなことをしても何も解決しない!」
「うるさい! 貴族どもが俺たちの苦しみを分かるか!」
角を曲がると、数人の男たちが一人の若い騎士を取り囲んでいる光景が目に飛び込んできた。騎士は剣を抜いているが、それを向けているのは男たちではなく、地面だった。
「頼む、剣を収めてくれ。話し合いで解決しよう」
騎士の声は真摯で、相手を傷つけたくないという気持ちが伝わってきた。しかし、男たちは聞く耳を持たない。
「話し合いだと? 俺たちの仲間が貴族に殺されても、まだそんなことを言うのか!」
「それは誤解だ。調査の結果、事故だったことが……」
「嘘をつくな! 貴族の犬め!」
男の一人が剣を抜いた。明らかに殺意を込めた一撃を、騎士に向けて振り下ろす。
騎士は避けることができたはずだった。しかし、彼は避けなかった。避ければ、反撃しなければならない。そうすれば、この男たちを傷つけることになってしまう。
「危ない!」
セリアは反射的に魔法を唱えた。
「ウィンドバリア!」
風の壁が騎士の前に現れ、剣撃を防いだ。男は勢い余って転倒する。
「何だ?」
「魔法使いか?」
男たちが困惑している隙に、セリアは騎士の前に立った。
「大丈夫?」
騎士を見上げると、セリアは思わず息を呑んだ。整った顔立ちと、真っ直ぐな瞳。そして何より、その目に宿る優しさと正義感が印象的だった。
「あ、ありがとうございます。でも、危険ですから下がっていてください」
騎士は慌てたようにセリアの前に出ようとしたが、セリアは微笑んで首を振った。
「大丈夫よ。私の方が強いから」
「え?」
その時、男たちの一人が再び剣を振り上げた。
「邪魔をするな、女!」
「アイスバインド」
男の足元が瞬時に氷に覆われ、身動きが取れなくなった。
「な、なんだこれは!」
「落ち着いて話を聞いて」
セリアは優しく、しかし毅然とした声で言った。
「あなたたちが怒っているのは、仲間を失ったからよね。その気持ちは分かるわ。でも、この人を襲っても、仲間は戻ってこない」
男たちの表情が、少しずつ変わってきた。
「それに、この騎士さんはあなたたちを傷つけまいとして、自分が危険な目に遭っても剣を振るわなかった。そんな人が、本当に悪い人だと思う?」
騎士が驚いたようにセリアを見つめた。短時間で、彼の本質を見抜いたのだ。
「俺たちは……ただ……」
男の一人が声を詰まらせた。
「悲しくて、悔しくて、誰かに当たりたかっただけなのね」
セリアの言葉に、男は項垂れた。
「仲間の死を無駄にしたくないなら、真実を明らかにすることから始めましょう。この騎士さんも、きっと協力してくれるはず」
セリアが振り返ると、騎士は力強く頷いた。
「もちろんです。私は王国騎士団のルーク・ヴァンハイムと申します。真実を明らかにするために、全力で協力させていただきます」
男たちは互いに顔を見合わせ、やがて一人が口を開いた。
「すまなかった……騎士殿。俺たちは間違っていた」
「いえ、お気になさらず。大切な仲間を失われた悲しみは、よく分かります」
ルークの言葉に嘘はなかった。心からの共感が込められていた。
氷の魔法を解くと、男たちは深々と頭を下げた。
「ありがとうございました、お嬢さん。あなたのおかげで、俺たちは取り返しのつかないことをせずに済みました」
男たちが去った後、ルークはセリアに向き直った。
「改めて、ありがとうございました。あなたがいなければ、私は彼らを傷つけることになっていたでしょう」
「どういたしまして。でも、あなたも立派だったわ。相手を傷つけまいとして、自分が犠牲になろうとするなんて」
ルークは照れたように頬を染めた。
「それが騎士の務めですから」
「ルーク・ヴァンハイムさんね。私はセリア・アルクライト。冒険者をしているの」
「セリア・アルクライト……まさか、最近話題のSランク冒険者の?」
「あら、有名になってる?」
「商人ギルドの件は、騎士団内でも話題になっています。素晴らしい働きでした」
ルークの目には、明らかな尊敬の念が宿っていた。しかし、それは単なる実力への敬意だけではなく、セリアの正義感に対する共感も含まれているようだった。
「あなたこそ、立派な騎士ね。きっと多くの人を守っているのでしょう」
「まだまだ未熟です。セリアさんのように、根本的な問題を解決する力はありません」
「でも、一人一人に向き合う優しさがある。それも大切な力よ」
二人は自然と並んで歩き始めた。
「もしよろしければ、お茶でもいかがですか? お礼をさせてください」
「それは良いアイデアね」
近くの喫茶店で、二人は向かい合って座った。
「ルークさんは、どうして騎士に?」
「幼い頃、盗賊に襲われた時に騎士に助けられたんです。その時の騎士のように、困っている人を助けたくて」
ルークの表情は、その時の記憶を思い出しているかのように輝いていた。
「素敵な動機ね。私も似たようなものかも」
「セリアさんも?」
「ええ。理不尽な目に遭った経験があるから、同じような思いをしている人を助けたいの」
セリアは前世のことを思い出していた。あの時の無力感、理不尽さ。それがあるからこそ、今の自分がある。
「きっと、セリアさんなら多くの人を救えるでしょうね」
「一人では限界があるわ。でも、あなたのような人と一緒なら……」
二人の目が合った瞬間、何か特別なものを感じた。前世では、こんな風に心を通わせることができる人には出会えなかった。
「もしよろしければ、今度一緒に仕事をしませんか? 騎士団と冒険者ギルドの合同任務もありますし」
「ぜひお願いします」
セリアは微笑んだ。新しい世界で、新しい仲間ができた。そして、その仲間は前世では出会えなかったような、心優しい人だった。
この出会いが、セリアの人生にどのような変化をもたらすのか。彼女はまだ知らなかった。
「セリア様、ありがとうございました」
「おかげで商売を続けられます」
道行く人々の笑顔を見ながら、セリアは前世では味わえなかった充実感を感じていた。自分の行動が、確実に誰かの役に立っている。これこそが、本当の仕事の意味なのかもしれない。
そんな時、前方から騒がしい声が聞こえてきた。
「やめろ! そんなことをしても何も解決しない!」
「うるさい! 貴族どもが俺たちの苦しみを分かるか!」
角を曲がると、数人の男たちが一人の若い騎士を取り囲んでいる光景が目に飛び込んできた。騎士は剣を抜いているが、それを向けているのは男たちではなく、地面だった。
「頼む、剣を収めてくれ。話し合いで解決しよう」
騎士の声は真摯で、相手を傷つけたくないという気持ちが伝わってきた。しかし、男たちは聞く耳を持たない。
「話し合いだと? 俺たちの仲間が貴族に殺されても、まだそんなことを言うのか!」
「それは誤解だ。調査の結果、事故だったことが……」
「嘘をつくな! 貴族の犬め!」
男の一人が剣を抜いた。明らかに殺意を込めた一撃を、騎士に向けて振り下ろす。
騎士は避けることができたはずだった。しかし、彼は避けなかった。避ければ、反撃しなければならない。そうすれば、この男たちを傷つけることになってしまう。
「危ない!」
セリアは反射的に魔法を唱えた。
「ウィンドバリア!」
風の壁が騎士の前に現れ、剣撃を防いだ。男は勢い余って転倒する。
「何だ?」
「魔法使いか?」
男たちが困惑している隙に、セリアは騎士の前に立った。
「大丈夫?」
騎士を見上げると、セリアは思わず息を呑んだ。整った顔立ちと、真っ直ぐな瞳。そして何より、その目に宿る優しさと正義感が印象的だった。
「あ、ありがとうございます。でも、危険ですから下がっていてください」
騎士は慌てたようにセリアの前に出ようとしたが、セリアは微笑んで首を振った。
「大丈夫よ。私の方が強いから」
「え?」
その時、男たちの一人が再び剣を振り上げた。
「邪魔をするな、女!」
「アイスバインド」
男の足元が瞬時に氷に覆われ、身動きが取れなくなった。
「な、なんだこれは!」
「落ち着いて話を聞いて」
セリアは優しく、しかし毅然とした声で言った。
「あなたたちが怒っているのは、仲間を失ったからよね。その気持ちは分かるわ。でも、この人を襲っても、仲間は戻ってこない」
男たちの表情が、少しずつ変わってきた。
「それに、この騎士さんはあなたたちを傷つけまいとして、自分が危険な目に遭っても剣を振るわなかった。そんな人が、本当に悪い人だと思う?」
騎士が驚いたようにセリアを見つめた。短時間で、彼の本質を見抜いたのだ。
「俺たちは……ただ……」
男の一人が声を詰まらせた。
「悲しくて、悔しくて、誰かに当たりたかっただけなのね」
セリアの言葉に、男は項垂れた。
「仲間の死を無駄にしたくないなら、真実を明らかにすることから始めましょう。この騎士さんも、きっと協力してくれるはず」
セリアが振り返ると、騎士は力強く頷いた。
「もちろんです。私は王国騎士団のルーク・ヴァンハイムと申します。真実を明らかにするために、全力で協力させていただきます」
男たちは互いに顔を見合わせ、やがて一人が口を開いた。
「すまなかった……騎士殿。俺たちは間違っていた」
「いえ、お気になさらず。大切な仲間を失われた悲しみは、よく分かります」
ルークの言葉に嘘はなかった。心からの共感が込められていた。
氷の魔法を解くと、男たちは深々と頭を下げた。
「ありがとうございました、お嬢さん。あなたのおかげで、俺たちは取り返しのつかないことをせずに済みました」
男たちが去った後、ルークはセリアに向き直った。
「改めて、ありがとうございました。あなたがいなければ、私は彼らを傷つけることになっていたでしょう」
「どういたしまして。でも、あなたも立派だったわ。相手を傷つけまいとして、自分が犠牲になろうとするなんて」
ルークは照れたように頬を染めた。
「それが騎士の務めですから」
「ルーク・ヴァンハイムさんね。私はセリア・アルクライト。冒険者をしているの」
「セリア・アルクライト……まさか、最近話題のSランク冒険者の?」
「あら、有名になってる?」
「商人ギルドの件は、騎士団内でも話題になっています。素晴らしい働きでした」
ルークの目には、明らかな尊敬の念が宿っていた。しかし、それは単なる実力への敬意だけではなく、セリアの正義感に対する共感も含まれているようだった。
「あなたこそ、立派な騎士ね。きっと多くの人を守っているのでしょう」
「まだまだ未熟です。セリアさんのように、根本的な問題を解決する力はありません」
「でも、一人一人に向き合う優しさがある。それも大切な力よ」
二人は自然と並んで歩き始めた。
「もしよろしければ、お茶でもいかがですか? お礼をさせてください」
「それは良いアイデアね」
近くの喫茶店で、二人は向かい合って座った。
「ルークさんは、どうして騎士に?」
「幼い頃、盗賊に襲われた時に騎士に助けられたんです。その時の騎士のように、困っている人を助けたくて」
ルークの表情は、その時の記憶を思い出しているかのように輝いていた。
「素敵な動機ね。私も似たようなものかも」
「セリアさんも?」
「ええ。理不尽な目に遭った経験があるから、同じような思いをしている人を助けたいの」
セリアは前世のことを思い出していた。あの時の無力感、理不尽さ。それがあるからこそ、今の自分がある。
「きっと、セリアさんなら多くの人を救えるでしょうね」
「一人では限界があるわ。でも、あなたのような人と一緒なら……」
二人の目が合った瞬間、何か特別なものを感じた。前世では、こんな風に心を通わせることができる人には出会えなかった。
「もしよろしければ、今度一緒に仕事をしませんか? 騎士団と冒険者ギルドの合同任務もありますし」
「ぜひお願いします」
セリアは微笑んだ。新しい世界で、新しい仲間ができた。そして、その仲間は前世では出会えなかったような、心優しい人だった。
この出会いが、セリアの人生にどのような変化をもたらすのか。彼女はまだ知らなかった。
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