【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん

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第13話「王子の結婚相手選びに巻き込まれる」

エリスとの友情を深めた翌週、セリアは王宮で予想外の知らせを受けた。

「王子殿下がお呼びです」

侍従の言葉に、セリアは首をかしげた。第一王子のアレクサンダーとは、まだ正式に会ったことがなかった。

謁見の間に向かうと、そこには二十代半ばほどの金髪の男性が立っていた。整った顔立ちで、王族らしい気品があるが、どこか疲れたような表情をしている。

「セリア・アルクライト、参上いたしました」

「こちらこそ、お忙しい中をありがとう。私がアレクサンダーだ」

王子は意外にも気さくな話し方をした。

「実は、君に相談したいことがあるんだ」

「相談ですか?」

「結婚の件でね」

セリアは内心で苦笑した。また政略結婚の話かと思ったが、王子の表情は深刻だった。

「父上が、私の結婚相手を選ぶために舞踏会を開催することを決めた。各国の王女や有力貴族の令嬢を招いて、その中から花嫁を選べと」

「それは……王子としては当然のことかと」

「表面上はそうだ。でも、実際は政治的な思惑ばかりが優先されている。私の気持ちなど、誰も考慮してくれない」

王子の声には、エリスと同じような苦悩があった。

「王子殿下にも、お慕いしている方が?」

「いや、そういうわけではない。ただ……」

アレクサンダーは窓の外を見つめた。

「私は、心から愛し合える相手と結婚したいんだ。政治的な利害のためではなく、一人の人間としてね」

セリアは頷いた。前世でも、体面や自分勝手な欲求のためだけにパートナーがほしい、という人たちをたくさん見てきた。本当の愛情に基づく関係の大切さは、それなりに理解しているつもりではあった。

「それで、私に何をお求めですか?」

「舞踏会の際に、君に同席してもらいたい。客観的な視点で、候補者たちを見てくれないだろうか」

「客観的な視点?」

「君は貴族社会の外から来た人だ。政治的な思惑に囚われず、人となりを見極めることができるはずだ」

セリアは少し困惑した。これは非常にデリケートな問題だった。

「でも、王子の結婚相手選びに、私のような者が関わるのは……」

「いや、だからこそ君でなければならない。君なら、きっと公正な判断をしてくれる」

その時、謁見の間の扉が開いた。現れたのは、豪華なドレスを着た美しい女性だった。

「アレクサンダー様、お忙しそうですわね」

「ヴィクトリア……」

王子の表情が微妙に変わった。それは困惑に近いものだった。

「こちらは?」

ヴィクトリアがセリアを見て尋ねた。その視線は、明らかに値踏みするものだった。

「宮廷魔法使いのセリア・アルクライトだ」

「ああ、例の平民出身の魔法使いですのね。お噂は伺っておりますわ」

ヴィクトリアの声には、微かな軽蔑が込められていた。

「ヴィクトリア・ランカスター侯爵令嬢です。よろしくお願いいたします」

礼儀正しい挨拶だったが、セリアは直感的に警戒心を抱いた。この女性には、どこか計算高い雰囲気がある。

「アレクサンダー様、明日の舞踏会の件でご相談が」

「舞踏会? もう決まったのか?」

「ええ、陛下からお聞きになっていませんの? 明後日に開催されますわ」

王子の表情が困惑した。

「私、候補者の一人として参加させていただきますの。とても楽しみですわ」

ヴィクトリアの笑顔は美しかったが、その奥に野心が見え隠れしていた。
加えて、自分が有力な候補であることを疑いもしない傲慢さも。

「それでは、準備がございますので失礼いたします」

ヴィクトリアが颯爽と去った後、王子は深いため息をついた。

「あの方も候補者の一人ですか?」

「そうだ。父上の一押しでもある。ランカスター家は有力な貴族で、政治的にも重要なパートナーになるからな」

「でも、王子殿下はどう思われますか?」

「正直に言うと……あまり良い印象はない。いつも計算づくで話している気がする」

セリアは頷いた。前世でも、そういう人間をたくさん見てきた。表面上は完璧に振る舞うが、本心が見えない人たち。

「分かりました。舞踏会に同席させていただきます」

「ありがとう。君がいてくれれば、心強い」

二日後の夜、王宮の大広間で舞踏会が開催された。各国で選びぬかれたであろう王女や貴族令嬢たちが集まり、華やかな雰囲気に包まれていた。

セリアは端の方で、候補者たちの様子を観察していた。どの女性も美しく、教養もある。表面上は完璧に見えた。

「セリア!」

エリスが近づいてきた。彼女も招待されていたのだった。

「今日は観察役?」

「そんなところね。エリスはどう思う?」

「正直に言うと……みんな表面的すぎる気がするわ。王子殿下の人となりを知ろうとしているというより、王妃の座にしか興味がなさそう」

セリアも同じ印象を抱いていた。権謀術数の渦巻く宮廷世界では、それも仕方がないことかもしれない。
しかし、それではあまりに王子が不憫に思える。

その時、ヴィクトリアが王子と踊っているのが見えた。完璧なステップで、周囲の注目を集めている。

「あの方、確かにひときわ美しいけれど……」

エリスが呟いた。

「何か気になることでも?」

「さっき、侍女に対する態度を見たの。表では優雅に振る舞っているけれど、人の見ていないところでは随分と冷たい態度だった」

セリアの目が鋭くなった。どこの世界でも、いつの時代でも、人の本性はそういう場面で現れる。

「他の候補者はどう?」

「隣国のエリザベス王女は穏やかな方だけど、よく耳を傾ければ政治的な発言が多いわ。結婚よりも同盟関係に興味があるみたい」

セリアは各候補者を注意深く観察し続けた。そして気づいたのは、誰も王子の内面に本当に興味を示していないということだった。

舞踏会が終わりに近づいた頃、王子がセリアに近づいてきた。

「どうだった?」

「率直に申し上げてもよろしいですか?」

「もちろんだ」

「誰も殿下の本当の幸せを考えていません。皆、自分の利益ばかりです」

王子は悲しそうに微笑んだ。

「やはりそうか……」

「でも、諦める必要はありません」

「え?」

「本当に殿下を愛してくれる人は、きっとこの中にはいないでしょう。でも、必ずどこかにいるはずです」

「そう思うかい?」

「はい。殿下は優しく、誠実な方です。そんな殿下を真に理解してくれる人が、必ずいます」

王子の表情が明るくなった。

「ありがとう、セリア。君の言葉で救われた気がする」

しかし、この舞踏会は始まりに過ぎなかった。翌日、王はセリアを呼び出し、意外な提案をしてきたのだった。
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