【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん

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第16話「第一王子からの求婚」

王宮の医務室に急行すると、アレクサンダー王子が包帯を巻かれてベッドに横たわっていた。意識はあるが、顔色が悪い。

「殿下、大丈夫ですか?」

セリアが駆け寄ると、王子は弱々しく微笑んだ。

「セリア……来てくれたのか」

「当然です。何があったのですか?」

会話しつつさりげなく治癒魔法を詠唱する。
宮廷医師たちの手前、堂々とやるのは憚られたので、こっそりだ。

「城内で何者かに襲われた。暗殺者のようだった」

ルークが前に出た。

「犯人は捕らえられたのですか?」

「いや、逃げられてしまった。しかし、驚いたことに……」

王子は言いづらそうに口を開いた。

「犯人は、ヴィクトリアと一緒にいた侍女の一人だった」

セリアの目が鋭くなった。

「やはり、まだ城内にスパイが潜んでいたのね」

「そうらしい。君の予想通り、ヴィクトリアの一件は終わっていなかった」

会話の途中で、おずおずと宮廷医師が近づいてきた。

「殿下、もうお休みになられた方が」

「分かった。しかし、セリア、明日話したいことがある。時間を作ってもらえるか?」

「もちろんです」

翌日、セリアはふたたび王子の私室を訪れた。王子はかなり回復しており、普通に話ができる状態だった。

「昨日はありがとう。君が治癒魔法をかけてくれたおかげで、回復が早かった」

「あら、バレてましたか....お役に立てて良かったです」

「実は……君に大切な話がある」

王子は真剣な表情になった。

「昨日の襲撃で、改めて自分の立場を考えさせられた。いつ命を落とすか分からない身だ」

「殿下……」

「そして気づいたんだ。本当に大切な人が誰なのかを」

セリアは胸の奥がぎゅっとなる感覚に襲われた。ある種の直感だ。

「セリア、君と結婚したい」

予想していたとはいえ、実際に言われると衝撃だった。

「殿下、それは……」

「君は美しく、聡明で、そして強い。王妃にふさわしいのは君だけだ」

王子の言葉は本心からのもののようだった。しかし、セリアの答えは決まっていた。

「お気持ちは光栄ですが、お受けできません」

王子の表情が困惑した。

「なぜだ? 君に失礼なことをしただろうか?」

「いえ、殿下は素晴らしい方です。でも……」

セリアは慎重に言葉を選んだ。

「私には、すでに心に決めた人がいます」

「心に決めた人?」

「はい。ルーク・ヴァンハイムです」

王子は驚いたように目を見開いた。

「ルークが? しかし、彼は君に告白したのか?」

「昨日、愛を告白してくれました」

「そうか……」

王子は深々とため息をついた。

「彼は良い男だ。君にふさわしい」

「ありがとうございます」

「しかし、セリア、考え直してもらえないだろうか」

諦めきれないのか、王子は懇願するような表情を見せた。

「君と結婚すれば、この国はもっと良くなる。君の力と知恵があれば、多くの問題を解決できる」

「それは政略結婚ということですか?」

「い、いや、そうではない。僕は君を心から愛している」

セリアは困惑した。王子の気持ちも理解できるが、自分の心は既に決まっていた。

「殿下、率直にお聞きします。もし私に魔法の力がなかったら、それでも求婚されましたか?」

王子は一瞬だけ言葉に詰まった。

「それは……」

「やはり、私の力に惹かれているのですね」

「それは違う!君のすべてに惹かれているんだ!」

「でも、最初に私に興味を持たれたのは、宮廷魔法使いとしてでしょう?」

王子は否定できなかった。それが王子の実直なところでもあるのだが。

「ルークは違います。彼は私の力を知る前から、一人の人間として接してくれました」

セリアは前世を思い出していた。あの頃も、男性たちは彼女の表面的な部分や肉体にしか興味を向けてこなかった。本当の自分を見てくれる人はいなかったのだ。

「殿下、私はただひとりの女性として愛されたいのです。特別な力があるからではなく、ありのままの私として」

王子の表情が悲しそうになった。

「君の気持ちは分かった。しかし、もう一度考えてみてくれないか?」

「申し訳ございませんが、答えは変わりません」

その時、扉がノックされた。

「殿下、ルーク・ヴァンハイムがお目にかかりたいと」

「通してくれ」

ルークが入ってくると、部屋の重い空気を察知した。

「殿下、セリア、何かあったのですか?」

王子がルークを見つめた。

「ルーク、君はセリアを愛しているのか?」

突然の質問に、ルークは戸惑った。

「は、はい。心から愛しています」

「そうか……」

王子は立ち上がると、ルークの前に立った。

「君にセリアを託そう。彼女を幸せにしてくれ」

「殿下?」

「実は、僕もセリアに求婚したんだ。しかし、断られた」

ルークは驚いた表情でセリアを見た。

「本当ですか?」

「ええ。私の心は、もう決まっているから」

ルークの顔が明るくなった。

「ありがとう、セリア」

王子は二人を見て、複雑な表情を浮かべた。

「君たちを見ていると、羨ましく思う。純粋な愛情で結ばれているのだから」

「殿下も、きっと真の愛を見つけられます」

セリアが慰めると、王子は微笑んだ。

「そうだろうか? 僕の周りには、地位や権力を狙う人ばかりだ」

「大丈夫です。殿下の優しさと誠実さを理解してくれる人が、必ずいます」

「君の言葉を信じよう」

その時、再び扉がノックされた。

「殿下、エリス・フォンテーヌ嬢がお見えです。緊急の報告があるとのことです」

「通してくれ」

エリスが慌てて入ってきた。

「殿下、大変です! ヴィクトリアが隣国で新たな陰謀を企てているという情報が入りました!」

「何だって?」

「今度は、複数の国を巻き込んだ大規模な戦争を起こそうとしているようです」

セリアとルークは顔を見合わせた。

「詳しく聞かせてくれ」

エリスの報告を聞きながら、セリアは思った。ヴィクトリアとの戦いは、まだ終わっていない。しかし、今度は一人ではない。ルークがいる。エリスがいる。そして、アレクサンダー王子も味方でいてくれる。

「みんなで協力しましょう」

セリアの言葉に、全員が頷いた。

新たな戦いが始まろうとしていたが、セリアの心は前向きだった。大切な人たちと一緒なら、どんな困難も乗り越えられる。

前世では得られなかった、本当の絆がここにあった。
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