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第20話「不正商人たちを魔法で懲らしめる」
商業ギルドとの正面対決に勝利してから数日後、セリアとガルドは新たな問題に直面していた。
「おかしいな……原材料の納期が遅れている」
ガルドが困惑した表情で呟いた。
「どの業者?」
「魔法石の供給業者だ。いつもは約束の日にちゃんと届けてくれるのに」
セリアは嫌な予感がした。
「他の業者はどう?」
「実は……鉄鉱石の業者も、金属加工の業者も、みんな理由をつけて納期を延ばしてくる」
「やはりね。商業ギルドが裏で手を回したのよ」
前世でも、同じような嫌がらせを見たことがあった。直接的な攻撃ができなくなると、今度は間接的な妨害工作に出る。
「でも、証拠がないだろう?」
「確かめてみましょう」
セリアたちは商業ギルド本部の近くまで出向き、透視魔法を使って敵情を視察することにした。財力に物を言わせてか、魔術的な防御も張り巡らされているようだったが、セリアの魔力の前では児戯でしかない。
対抗呪文で魔法防御をあっさり無効化してしまえば、あとは盗聴も透視も造作のないことだった。
案の定、バルトロメオが複数の業者と密談している様子が見える。
「やはり……彼らが各業者に圧力をかけているわ」
「くそ、卑怯な真似を」
「でも、これで証拠が掴めた。今度こそ、完全に叩き潰してやりましょう」
セリアの目に、危険な光が宿った。
その夜、セリアは一人で行動を開始した。ガルドに余計な心配をかけたくはない。
彼は腕のいい職人だが、だからこそこういう裏ごとには向いていない。
ゆえに、これはセリアの仕事だった。
まず向かったのは、魔法石供給業者のボリス商会だ。
建物の中に侵入すると、ボリス会長がバルトロメオと会談している最中だった。
「約束通り、ガルドへの供給を停止している」
「よろしい。これで、あの小僧も諦めるだろう」
「しかし、本当に大丈夫でしょうか?相手は宮廷魔法使いですよ」
「問題ない。直接的な攻撃ではないからな。証拠も残らない」
セリアは冷笑した。証拠なら、今まさに目の前にある。
「風よ、声を運べ」
セリアは魔法を使って、念のため会話を記録した。
次に向かったのは、鉄鉱石業者のハンマー商会だった。ここでも、同様の密談が行われていた。
「ガルドとの取引を停止すれば、今後の優遇取引を約束する」
「分かりました。明日から理由をつけて、納期を延ばします」
全ての証拠を集めた後、セリアは行動を開始する。
まず、ボリス商会へ足を運ぶ。
「こんばんは、ボリスさん」
「う、うわあ! 誰だ!」
突然現れたセリアに、ボリスは仰天した。
「宮廷魔法使いのセリア・アルクライトです」
「な、なんでここに……」
「あなたたちの密談を聞かせてもらいました」
セリアは魔法で録音した会話を再生した。ボリスの顔がたちまち青ざめた。
「これは……その……」
「商業ギルドから圧力をかけられて、ガルドとの取引を停止したのですね」
「そ、それは……」
「正直に答えてください。嘘をつくと、もっと大変なことになりますよ」
セリアは軽く手を上げた。すると、小さな雷が指先で踊った。
もちろんただの脅しだ。しかし、この世界における魔法の位置づけを思えば、それは十分な圧力になる。
「ひいい! 分かりました! 全部白状します!」
ボリスは完全に恐れをなした。
「バルトロメオ副会長から脅されたんです! 従わなければ、ギルドから除名すると言われて!」
「そうですか。それなら、これからはどうしますか?」
「も、もちろん、元通りガルドさんとの取引を再開します!」
「賢明な判断です。ただし、条件があります」
「条件?」
「今後、このような不正な圧力を受けた場合は、必ず私に報告してください」
「は、はい! 必ず!」
同様の手法で、他の業者たちも次々と降伏させた。皆、セリアの魔法を見ると、あっさりと白状した。
みな商売人だけに、命あっての物種ということはよくわかっているようだった。
最後に向かったのは、バルトロメオの自宅だ。
真夜中、バルトロメオが書斎で一人でいるところに現れた。
自らの陰湿な攻撃が奏功しているのに満足しているのか、高価な酒を楽しんでいるようだった。
「こんばんは、バルトロメオさん」
「うわあああ!お、お化けか!」
「残念ながら人間です」
セリアは静かに微笑んだ。しかし、その笑顔は氷のように冷たかった。
「せ、セリア・アルクライト……どうやってここに?」
「魔法使いですから」
「な、何の用だ?」
「あなたの不正行為について、お話ししましょう」
セリアは録音した全ての証拠を再生した。バルトロメオの顔が真っ青になった。
「これで、あなたの犯罪は証明されました」
「ば、馬鹿な!これくらいのことは、商売では当たり前だ!」
「当たり前? 独占禁止法違反が当たり前ですか?」
「独占禁止法なんて、まだ制定されていない!」
「明日、制定されます」
セリアの言葉に、バルトロメオは絶句した。
「そして、法律には遡及効果があります。過去の行為も処罰の対象になります」
これは嘘だったが、法律に詳しくないバルトロメオには分からなかった。
それに、法律が遡って適用されないのはあくまでも現代の民主国家の大原則であって、王権あらたかなこの国においては、その気になればいくらでも訴求させられるだろう。
ましてや、すでに王の信任があついセリアだ。そのように進言すればどうにでもなる。
「そ、そんな馬鹿な……」
「さて、どうしますか? このまま犯罪者として処罰されるか、それとも……」
「それとも?」
「心から反省して、被害者に謝罪し、今後は真っ当な商売をするか」
バルトロメオは震え上がっていた。
「わ、分かった! 謝罪する!もう二度と、こんなことはしない!」
「本当ですね?」
「本当だ!誓って言う!」
「それなら、明日の朝一番で、ガルドの店に謝罪に行ってください」
「分かった!必ず行く!」
セリアは満足そうに頷いた。
「それから、他の業者たちへの圧力も、全て取り下げてください」
「もちろんだ!すぐに連絡する!」
「良い判断です」
セリアは振り返ると、窓に向かって歩いた。
「あ、あの……どうやって帰るんですか?」
「もちろん、魔法で」
セリアは窓から飛び出すと、空中に浮かんだ。バルトロメオは腰を抜かした。
馬鹿馬鹿しいようなパフォーマンスだが、シンプルに効果てきめんだったようだ。
翌朝、約束通りバルトロメオがガルドの店にやってきた。
心底縮み上がったのか、かつての精気がまるでなかった。
「昨日は申し訳ございませんでした! 心から謝罪いたします!」
土下座しながら謝るバルトロメオを見て、ガルドは困惑した。
「え、えーと……」
「今後は、公正な商売を心がけます! 決してご迷惑をおかけいたしません!」
「あ、ああ……分かった。分かったなら助かるよ」
バルトロメオが去った後、ガルドはセリアを見た。
「一体、何をしたんだ?」
「ほんのちょっと話し合いをしただけよ」
セリアは悪戯っぽく微笑んだ。
「話し合い?」
「ええ。とても建設的な話し合いをね」
その日から、原材料の納期は正常に戻った。それどころか、これまで以上に良い条件で取引ができるようになった。
「すごいな、セリア。一体どんな魔法を使ったんだ?」
「恐怖よ」
「恐怖?」
「相手に、逆らったらどうなるかを想像させる最高の魔法のこと」
セリアは前世を思い出していた。あの頃は、理不尽な圧力に屈するしかなかった。でも今は違う。
圧倒的な力で、理不尽な連中を黙らせることができる。
この爽快感こそ、新しい人生の醍醐味だった。
「おかしいな……原材料の納期が遅れている」
ガルドが困惑した表情で呟いた。
「どの業者?」
「魔法石の供給業者だ。いつもは約束の日にちゃんと届けてくれるのに」
セリアは嫌な予感がした。
「他の業者はどう?」
「実は……鉄鉱石の業者も、金属加工の業者も、みんな理由をつけて納期を延ばしてくる」
「やはりね。商業ギルドが裏で手を回したのよ」
前世でも、同じような嫌がらせを見たことがあった。直接的な攻撃ができなくなると、今度は間接的な妨害工作に出る。
「でも、証拠がないだろう?」
「確かめてみましょう」
セリアたちは商業ギルド本部の近くまで出向き、透視魔法を使って敵情を視察することにした。財力に物を言わせてか、魔術的な防御も張り巡らされているようだったが、セリアの魔力の前では児戯でしかない。
対抗呪文で魔法防御をあっさり無効化してしまえば、あとは盗聴も透視も造作のないことだった。
案の定、バルトロメオが複数の業者と密談している様子が見える。
「やはり……彼らが各業者に圧力をかけているわ」
「くそ、卑怯な真似を」
「でも、これで証拠が掴めた。今度こそ、完全に叩き潰してやりましょう」
セリアの目に、危険な光が宿った。
その夜、セリアは一人で行動を開始した。ガルドに余計な心配をかけたくはない。
彼は腕のいい職人だが、だからこそこういう裏ごとには向いていない。
ゆえに、これはセリアの仕事だった。
まず向かったのは、魔法石供給業者のボリス商会だ。
建物の中に侵入すると、ボリス会長がバルトロメオと会談している最中だった。
「約束通り、ガルドへの供給を停止している」
「よろしい。これで、あの小僧も諦めるだろう」
「しかし、本当に大丈夫でしょうか?相手は宮廷魔法使いですよ」
「問題ない。直接的な攻撃ではないからな。証拠も残らない」
セリアは冷笑した。証拠なら、今まさに目の前にある。
「風よ、声を運べ」
セリアは魔法を使って、念のため会話を記録した。
次に向かったのは、鉄鉱石業者のハンマー商会だった。ここでも、同様の密談が行われていた。
「ガルドとの取引を停止すれば、今後の優遇取引を約束する」
「分かりました。明日から理由をつけて、納期を延ばします」
全ての証拠を集めた後、セリアは行動を開始する。
まず、ボリス商会へ足を運ぶ。
「こんばんは、ボリスさん」
「う、うわあ! 誰だ!」
突然現れたセリアに、ボリスは仰天した。
「宮廷魔法使いのセリア・アルクライトです」
「な、なんでここに……」
「あなたたちの密談を聞かせてもらいました」
セリアは魔法で録音した会話を再生した。ボリスの顔がたちまち青ざめた。
「これは……その……」
「商業ギルドから圧力をかけられて、ガルドとの取引を停止したのですね」
「そ、それは……」
「正直に答えてください。嘘をつくと、もっと大変なことになりますよ」
セリアは軽く手を上げた。すると、小さな雷が指先で踊った。
もちろんただの脅しだ。しかし、この世界における魔法の位置づけを思えば、それは十分な圧力になる。
「ひいい! 分かりました! 全部白状します!」
ボリスは完全に恐れをなした。
「バルトロメオ副会長から脅されたんです! 従わなければ、ギルドから除名すると言われて!」
「そうですか。それなら、これからはどうしますか?」
「も、もちろん、元通りガルドさんとの取引を再開します!」
「賢明な判断です。ただし、条件があります」
「条件?」
「今後、このような不正な圧力を受けた場合は、必ず私に報告してください」
「は、はい! 必ず!」
同様の手法で、他の業者たちも次々と降伏させた。皆、セリアの魔法を見ると、あっさりと白状した。
みな商売人だけに、命あっての物種ということはよくわかっているようだった。
最後に向かったのは、バルトロメオの自宅だ。
真夜中、バルトロメオが書斎で一人でいるところに現れた。
自らの陰湿な攻撃が奏功しているのに満足しているのか、高価な酒を楽しんでいるようだった。
「こんばんは、バルトロメオさん」
「うわあああ!お、お化けか!」
「残念ながら人間です」
セリアは静かに微笑んだ。しかし、その笑顔は氷のように冷たかった。
「せ、セリア・アルクライト……どうやってここに?」
「魔法使いですから」
「な、何の用だ?」
「あなたの不正行為について、お話ししましょう」
セリアは録音した全ての証拠を再生した。バルトロメオの顔が真っ青になった。
「これで、あなたの犯罪は証明されました」
「ば、馬鹿な!これくらいのことは、商売では当たり前だ!」
「当たり前? 独占禁止法違反が当たり前ですか?」
「独占禁止法なんて、まだ制定されていない!」
「明日、制定されます」
セリアの言葉に、バルトロメオは絶句した。
「そして、法律には遡及効果があります。過去の行為も処罰の対象になります」
これは嘘だったが、法律に詳しくないバルトロメオには分からなかった。
それに、法律が遡って適用されないのはあくまでも現代の民主国家の大原則であって、王権あらたかなこの国においては、その気になればいくらでも訴求させられるだろう。
ましてや、すでに王の信任があついセリアだ。そのように進言すればどうにでもなる。
「そ、そんな馬鹿な……」
「さて、どうしますか? このまま犯罪者として処罰されるか、それとも……」
「それとも?」
「心から反省して、被害者に謝罪し、今後は真っ当な商売をするか」
バルトロメオは震え上がっていた。
「わ、分かった! 謝罪する!もう二度と、こんなことはしない!」
「本当ですね?」
「本当だ!誓って言う!」
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セリアは満足そうに頷いた。
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セリアは窓から飛び出すと、空中に浮かんだ。バルトロメオは腰を抜かした。
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翌朝、約束通りバルトロメオがガルドの店にやってきた。
心底縮み上がったのか、かつての精気がまるでなかった。
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土下座しながら謝るバルトロメオを見て、ガルドは困惑した。
「え、えーと……」
「今後は、公正な商売を心がけます! 決してご迷惑をおかけいたしません!」
「あ、ああ……分かった。分かったなら助かるよ」
バルトロメオが去った後、ガルドはセリアを見た。
「一体、何をしたんだ?」
「ほんのちょっと話し合いをしただけよ」
セリアは悪戯っぽく微笑んだ。
「話し合い?」
「ええ。とても建設的な話し合いをね」
その日から、原材料の納期は正常に戻った。それどころか、これまで以上に良い条件で取引ができるようになった。
「すごいな、セリア。一体どんな魔法を使ったんだ?」
「恐怖よ」
「恐怖?」
「相手に、逆らったらどうなるかを想像させる最高の魔法のこと」
セリアは前世を思い出していた。あの頃は、理不尽な圧力に屈するしかなかった。でも今は違う。
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