【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん

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第22話「エリスと共同経営開始」

「セリア、大事なパートナーが私なんかで本当に大丈夫なの?」

王宮での産業革命構想発表から三日後、セリアの執務室でエリスが心配そうにセリアを見つめている。机の上には、ヴィクトリアの手下が王都に潜入しているという情報資料が散らばっていた。

「むしろ、あなただからこそよ。一人では対処しきれない規模になってきている」

セリアは微笑みながら答える。王から産業革命の責任者を任された今、信頼できるパートナーがどうしても必要だった。

「エリスの政略結婚阻止作戦を見ていて確信したの。あなたの経営センスと交渉力は本物よ」

前世で男性中心の会社で苦労した経験から、セリアには女性が活躍できる環境を作りたいという思いもあった。

「それに、王様から任された産業革命構想を実現するには、あなたの力が絶対に必要なの」

エリスの表情が引き締まる。

「産業革命...確かに、一人では到底無理な規模ね」

「そういうこと。代理店制度、職業訓練所、新しい工場システム...全部を同時に進めるには、信頼できるパートナーがいないと」

そこへガルドが慌てた様子で入ってきた。

「た、大変だ!従来の商人たちが大挙して押し寄せてきて!」

「何ですって?」

セリアは立ち上がる。予想していた反発が、ついに表面化したようだ。

「どうやら、『新しい産業に転職しろ』という話が広まって、怒った商人たちが直談判に来たようで...」

「分かったわ。エリス、早速パートナーとしての実力を見せてもらうわよ」

「え?」

「交渉よ。あなたの得意分野でしょう?」

セリアとエリスは急いで一階の商談室に向かった。そこには、確かに十数人の商人たちが険しい表情で待っていた。

「皆さん、お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます」

セリアが部屋に入りつつ丁重に挨拶をすると、商人たちからどよめきが起こった。

「セリア・アルクライト!お前のせいで我々の商売が成り立たなくなったんだぞ!」

一人の中年商人が声を荒らげる。

「おっしゃる通りです。私の商品が原因で、ご迷惑をおかけしていることは承知しています」

セリアが素直に謝罪すると、商人たちは拍子抜けしたような表情を見せた。
怒る相手に真っ向から反論をしても無意味なことを、セリアはよく知っている。
まずはガスを抜くことの大切さを、前世のクレーム対応で嫌というほど学んでいた。

「それで、今日は皆さんに新しい提案をしたいと思います」

「提案?」

「はい。実は、私たちの事業が急成長しているため、人手が圧倒的に不足しているんです」

エリスが資料を配り始める。さすが、阿吽の呼吸だ。
出鼻をくじかれた怒りのエネルギーは、やがて興味に変わっていく。
そのタイミングを捉えるには、最適のタイミングを図る必要があるが、エリスは見事に空気の流れを読んだ。
やはり、天性の才能があるようだった。

「この資料をご覧ください。代理店制度の詳細です」

「だいりてん?」

「はい。皆さんに、私たちの商品の独占販売権をお渡しします。利益率は従来の商品よりも高く設定されています」

商人たちの目の色が変わった。やはり、並の人間たちよりは利に聡いようだ。
セリアは、そこに説得のチャンスがあると踏んでいた。

「本当か?」

「もちろんです。ただし、条件があります」

「条件?」

条件を聞き始めたら、もうこちらのペースだ。
彼らの関心はすでに自分たちの危機から、条件に移行している。
この流れができたのなら、もう交渉は成功したも同然だった。

「品質管理と顧客サービスの研修を受けていただきます。新しい時代に相応しい商売のやり方を学んでいただきたいのです」

これが職業訓練所の構想の一部だった。

「なるほど...」

「さらに、製造部門でも人材を募集しています。工場長候補として、経験豊富な商人の方々に来ていただきたい」

別の商人が手を挙げた。

「待ってくれ。我々は商売にはそれなりに自信があるが、製造は素人だぞ」

「大丈夫です。技術指導はこちらで行います。重要なのは、現場を管理する能力と、品質に対する責任感です」

「つまり、皆さんの経験とノウハウを、新しい分野で活かしていただきたいということです」

「確かに、それなら...」

商人たちの表情が次第に明るくなってきた。
将来への不安が軽減すれば、新たな商売の面白さに目が向く。
それがビジネスーひいては人と働くことの魅力だ。
セリアは、前世でなしえなかった「働く喜び」をこの時代の人々とともに築き上げていきたいと思い始めていた。

「ただし」セリアが続ける。

「これは産業革命の一環です。変化を恐れず、新しいことに挑戦していただく必要があります」

「産業革命...」

「王様から直接命じられた事業です。成功すれば、この王国の商業は世界一になります」

商人たちの間に、興奮の空気が流れた。
もともと自分で商売をやっていた人間たちだ。気骨や気概は十分に持っている。

「分かった!やってみよう!」

「私も参加したい!」

次々と手が挙がる。

「ありがとうございます。詳細は後日、個別にご相談させていただきます」

すっかり明るい表情を取り戻した商人たちが帰った後、エリスが安堵の息をついた。

「うまくいったわね」

「エリスのフォローが完璧だったからよ。さすがパートナー」

「ありがとう。でも、これで本当に大丈夫かしら?」

「どういう意味?」

「ヴィクトリアの手下が潜入してるって話よ。こんなに注目されて、大丈夫なの?」

セリアは窓の外を見る。確かに、街の向こうには見えない敵が潜んでいる。

「むしろ、これが狙いよ」

「狙い?」

「ヴィクトリアは必ず仕掛けてくる。でも、今度は私たちの方が準備万端。彼女の手下がどんな妨害工作をしてきても、対処できるわ」

実際、産業革命構想は経済発展だけでなく、セキュリティの強化も含んでいた。

「それに、エリスという心強いパートナーもいるし」

「私?」

「貴族社会の情報ネットワークは、ヴィクトリアの動向を探るのに最適よ」

エリスの表情が決意に満ちたものに変わった。

「分かったわ。私も全力で協力する」

「ありがとう。これで、本当の意味でパートナーになれたわね」

二人で握手を交わす。

「そうそう、忘れるところだった」

ガルドが奥から美容魔法器具の試作品を持ってきた。

「女性向け事業部門の第一弾だ。これもエリスどのの担当になります」

「わあ、これが例の美顔器?」

エリスが興味深そうに手に取る。

「ぜんせ......古文書で仕入れた知識で作ったの。貴族の奥様方に大人気間違いなしよ」

「なるほど。これなら私のコネクションを活かせそう」

「そういうこと。産業革命と美容事業、両方を成功させましょう」

セリアたちの新しい挑戦が、今始まろうとしていた。

---

その夜、セリアたちは今後の戦略を練っていた。

「代理店制度はうまくいきそうね」エリスが資料を整理しながら言う。

「問題は、ヴィクトリアの手下がどんな妨害をしてくるかよ」

「彼女の目的は何なの?」

「王国の経済基盤を破壊して、混乱に乗じて侵攻する計画よ。でも、私たちの産業革命が成功すれば、王国は今まで以上に強くなる」

「だから妨害してくるのね」

「そういうこと。でも、今度は私たちの方が準備万端。どんな手を使ってきても、必ず迎え撃つわ」

エリスが決意に満ちた表情で頷く。

「分かったわ。私も全力でサポートする」

「ありがとう。これで、本当の意味でパートナーになれたわね」

翌日、「アルクライト・フォンテーヌ商会」の看板が王都の商業地区に掲げられた。女性が主導する産業革命の象徴として、大きな注目を集めることになった。

しかし、セリアは知っていた。これは平和な日常の終わりでもあることを。ヴィクトリアとの最終決戦は、もうすぐ始まろうとしていた。
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