【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん

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第25話「経済戦争の勝利」

美容サロン襲撃事件から一週間後、セリアの執務室には王国の主要商人たちが集まっていた。机の上には、ベルモント王国との貿易に関する重要な書類が山積みになっている。

「セリア様、大変な事態です」

商工会議所の会頭マーカス卿が深刻な表情で口を開いた。

「ベルモント王国が、我が国との全貿易を停止すると通告してきました」

「予想通りね」

セリアは冷静に答える。ヴィクトリアの手下が捕らえられた以上、この報復は当然の流れだった。

「しかし、これは深刻な問題です。我が国の輸出入の三割はベルモント王国が占めているのですよ」

別の商人が不安そうに声を上げる。

「特に、魔法石の輸入が完全に停止されれば、国内の魔法道具産業は壊滅的な打撃を受けます」

「それに、彼らは周辺諸国にも我が国との取引を控えるよう働きかけているという情報もあります」

エリスが資料を見ながら補足する。

「つまり、経済封鎖ですか」

ガルドが重い口調で言った。

「そういうことね。でも、これは想定していたシナリオよ」

セリアは立ち上がると、壁の地図を指差した。

「皆さん、これを見てください。我が国とベルモント王国の貿易関係を分析した結果です」

地図には、複雑な貿易ルートと商品の流れが矢印で示されている。

「確かに、表面上は我が国の方が依存度が高く見えます。しかし、実際はどうでしょうか?」

セリアが別の資料を取り出す。

「これは、ベルモント王国の内部経済状況です。彼らは我が国から輸入している農産物と繊維製品なしには、国民生活が成り立ちません」

商人たちが驚いた表情を見せる。

「そんな...しかし、それならなぜ彼らは貿易停止に踏み切ったのですか?」

「ヴィクトリアの判断ミスよ。彼女は軍事的な思考しかできないから、経済の相互依存関係を理解していない」

セリアは不敵に微笑む。

「それに、彼女は私たちの真の実力を知らない」

「真の実力?」

マーカス卿が首をかしげる。

「エリス、例の計画を発表して」

「はい」

エリスが大きな図表を広げる。そこには「代替貿易ネットワーク構想」と書かれていた。

「これは、ベルモント王国を経由しない新しい貿易ルートです」

「新しい貿易ルート?」

「はい。東方諸国、南方の島嶼国家、そして北方の山岳民族との直接取引を確立します」

エリスが説明を続ける。

「セリア様の革新的な魔法道具は、これらの国々で非常に高い評価を受けています。特に、通信機器と自動調理器は、どの国も欲しがっている商品です」

「しかし、そんな短期間で新しい貿易関係を築けるものでしょうか?」

「実は、もう始まっているのです」

セリアが別の書類を見せる。

「この一週間で、東方のアカツキ帝国、南方のコーラル諸島連邦、北方のドワーフ王国から、正式な貿易協定の申し出が届いています」

商人たちがどよめく。

「なんと...」

「しかも、提示されている条件は、ベルモント王国との取引よりもはるかに有利です」

ガルドが嬉しそうに報告する。

「特に、ドワーフ王国からは高品質な魔法石を、従来の半額で提供するという申し出があります」

「半額?それは素晴らしい!」

「それだけではありません」

セリアが続ける。

「アカツキ帝国は、我が国の農産物を従来の三倍の価格で購入したいと言っています」

「三倍?」

「彼らの国では、我が国特産の『ムーンライト小麦』が不老長寿の薬草として珍重されているそうです」

これは前世の知識を活用した、マーケティング戦略の成果だった。セリアは各国の文化と需要を詳しく分析し、最適な商品を提案していたのだ。

「つまり」マーカス卿が興奮して言う。「ベルモント王国との貿易が停止しても、我が国は損失どころか利益を得られるということですか?」

「その通りです。しかも、新しい貿易相手はより信頼できる国々です」

エリスが補足する。

「ベルモント王国のように、政治的理由で突然取引を停止するようなことはありません」

そのとき、執務室の扉が開いて、ルークが駆け込んできた。

「セリア!大変だ!」

「どうしたの?そんなに慌てて」

「ベルモント王国から緊急の使者が来た。貿易停止を撤回したいと言っている!」

商人たちが再びどよめく。

「撤回?なぜ急に?」

「詳しい理由は分からないが、相当切羽詰まった様子だった」

セリアは納得したように頷く。

「予想より早かったわね」

「予想?」

「ベルモント王国の内政が行き詰まったのよ。我が国からの輸入が止まって、国内で暴動が起きているはず」

実際、セリアの分析は正確だった。ベルモント王国では、食料不足と物価高騰により、各地で民衆の蜂起が発生していた。

「でも、今さら取引を再開する必要はないわ」

「え?」

商人たちが驚く。

「新しい貿易相手の方が条件が良いもの。わざわざ不安定な相手と取引する理由がない」

「しかし、それでは相手国との関係が...」

「心配ありません」

セリアが地図を指差す。

「ベルモント王国は、遠からず内政の混乱で自滅します。ヴィクトリアの無謀な政策のせいで、国力が急速に衰退している」

「そこまで分かるのですか?」

「前世で学んだ経済学の知識よ。独裁的な軍事政権は、必ず経済を破綻させる」

セリアの予測は、まさに的中していた。

「それより、我々は次の段階に進みましょう」

「次の段階?」

「教育改革です。新しい貿易システムを支える人材を育成する必要がある」

エリスが新しい資料を取り出す。

「セリア様と私で計画した、『王立商業学院』の設立構想です」

「商業学院?」

「はい。現代的な経営学、国際貿易、そして魔法道具技術を教える総合教育機関です」

マーカス卿が感動したような表情を見せる。

「素晴らしい...これなら、我が国の商業は世界一になれるかもしれません」

「なれますよ。必ず」

セリアが力強く断言する。

「前世では、理不尽な会社に潰されました。でも今度は、私が理想の経済システムを作る」

その夜、セリアとエリスは二人きりで今後の計画を話し合っていた。

「本当にすごいわ、セリア。あなたの知識があれば、どんな困難も乗り越えられるのね」

「でも、これは始まりに過ぎないわ。ヴィクトリアは必ず反撃してくる」

「今度は軍事的な攻撃?」

「それもあるでしょうね。でも、もっと巧妙な手を使ってくる可能性もある」

セリアは窓の外を見つめる。

「例えば、我が国の内部に工作員を送り込んで、政治的な混乱を起こすとか」

「内部工作...」

「だからこそ、教育改革が重要なの。国民の知識レベルを上げて、簡単に騙されないようにしなければ」

エリスが決意に満ちた表情で頷く。

「分かったわ。私も全力でサポートする」

「ありがとう。でも、エリスにはもう一つお願いがあるの」

「何?」

「商業学院の学院長になってもらいたいの」

「え?私が?」

「あなたほど適任者はいないわ。貴族社会の常識と、新しい商業知識の両方を理解している」

エリスが照れたような表情を見せる。

「光栄だわ。でも、私にできるかしら?」

「大丈夫よ。私がサポートするから」

二人が握手を交わしたとき、執務室の扉が静かに開いた。

「失礼します」

入ってきたのは、見慣れない老人だった。長い白髭を蓄え、深いローブを纏っている。

「どちら様ですか?」

セリアが警戒しながら尋ねる。

「私はアルカナス。王立魔法学院の学院長です」

「魔法学院の?」

「はい。実は、お二人にお話ししたいことがあって参りました」

アルカナスが厳粛な表情で続ける。

「商業学院の設立について、魔法学院としても協力したいのです」

「協力?」

「はい。魔法と商業を融合した新しい教育システムを、共同で開発しませんか?」

セリアとエリスが顔を見合わせる。

「それは興味深い提案ですね」

「詳しいお話を聞かせていただけますか?」

こうして、セリアたちの教育改革は、思わぬ協力者を得ることになった。

ヴィクトリアとの経済戦争は、セリアの完全勝利に終わった。しかし、これは新たな戦いの始まりでもあった。

今度の戦場は、若者たちの心と未来を賭けた、教育の現場なのである。
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