【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん

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第29話「学院間競技大会への挑戦」

ダミアンの処罰から一か月後、王立魔法学院は見違えるように変わっていた。

「先生、今日の実用魔法の課題はこれで大丈夫でしょうか?」

リリアが自信に満ちた表情で、手作りの魔法道具を見せてくる。それは小さな植木鉢だったが、魔法陣が刻まれており、植物の成長を促進する効果があった。

「素晴らしいわ、リリア。これなら農家の人たちにとって、とても役立つ道具になる」

セリアが微笑みながら褒める。

「ありがとうございます!みんなで協力して作ったんです」

リリアの周りには、以前は別々のグループにいた貴族出身と平民出身の学生たちが、一緒に課題に取り組んでいる。

「協力?」

「はい。貴族の子たちは理論に詳しくて、私たち平民の子は実用的なアイデアが得意なんです。一緒にやると、すごくいいものができるんですよ」

エリスが感動したような表情を見せる。

「素晴らしい変化ね、セリア。一か月前とは別の学院みたい」

「当然の結果よ。差別がなくなれば、本来の才能が発揮されるもの」

セリアは満足げに教室を見回す。かつて敵対していた学生たちが、今では協力して学習に取り組んでいる。

そのとき、アルカナス学院長が慌てた様子で教室に入ってきた。

「セリア先生、緊急事態です」

「どうなさいましたか?」

「『三王国魔法学院競技大会』の開催が決定しました」

「三王国競技大会?」

セリアが首をかしげる。

「はい。我がアステル王国、ベルモント王国、そしてグランディア帝国の三国で行われる、最高峰の学術競技会です」

アルカナスが説明を続ける。

「五年に一度開催され、各国の魔法学院が威信をかけて競い合います。優勝国には巨額の研究資金と、三国間での学術交流の主導権が与えられます」

「つまり、教育界での覇権を決める大会ということね」

「その通りです。そして今回の大会は、特別な意味を持っています」

アルカナスの表情が深刻になる。

「ベルモント王国が、『新時代の魔法教育』というテーマを提案してきたのです」

セリアの表情が鋭くなる。

「ヴィクトリアの仕業ね」

「恐らく。彼女は軍事的な侵攻に失敗した後、教育分野での影響力拡大を狙っているようです」

エリスが不安そうに言う。

「でも、我が学院の準備は間に合うの?大会まであと二か月しかないわよ」

「それが問題なのです」

アルカナスが頭を抱える。

「従来の戦闘魔法中心の教育では、他国に太刀打ちできません。特にグランディア帝国の『皇立魔導学院』は、伝統的に最強と言われています」

「でも」セリアが立ち上がる。「我々には秘密兵器があるわ」

「秘密兵器?」

「実用魔法よ。他の学院が戦闘魔法ばかりに注力している間に、我々は実社会で役立つ魔法を極めてきた」

セリアが黒板に競技大会の想定内容を書き出す。

「『新時代の魔法教育』がテーマなら、きっと実用性も評価されるはず」

「しかし、相手も準備してくるでしょう」

アルカナスが心配する。

「特にベルモント王国は、何か秘策を用意しているに違いありません」

その夜、セリアが研究室で大会の対策を考えていると、窓の外から小さな魔法の光が見えた。

「誰かしら?」

窓を開けると、小さな紙切れが飛び込んできた。そこには「明日の夜、学院裏の古い図書館でお待ちしています。重要なお話があります—E.V.」と書かれている。

翌日の夜、セリアとエリスは約束の場所に向かった。古い図書館は普段使われておらず、人目につくことはない。

「本当に来るのかしら?」

エリスが不安そうに呟いたとき、影の中から人影が現れた。深緑のローブを纏った、威厳のある老女だった。

「お忙しい中、お時間をいただき恐縮です。私はグランディア帝国皇立魔導学院の副学院長、エルザ・フォン・ヴィンターベルクです」

「グランディア帝国の?」

セリアが驚く。

「なぜ、このような密会を?」

「実は、表立ってはお話しできない重要なことがあり、参りました」

エルザ副学院長が厳粛な表情で続ける。

「ベルモント王国の動きが、非常に危険なのです」

「危険?」

「はい。彼らは今回の大会を利用して、他国の魔法教育に干渉しようと企んでいます」

エルザが詳しく説明する。

「もし彼らが優勝すれば、我々二国の魔法教育の権威が著しく損なわれます」

セリアが鋭く反応する。

「つまり、国際社会での発言力や影響力の問題ということね」

「その通りです。この大会の結果は、各国の魔法技術力の象徴として扱われます。ベルモント王国が圧勝すれば、他国は『劣等な魔法教育しかできない国』という烙印を押されてしまいます」

エリスが青ざめる。

「それでは、我が国の国際的な地位が...」

「外交においても、学術交流においても、常に下位に置かれることになります。そして何より、優秀な魔法使いたちがベルモント王国に流出してしまうでしょう」

エルザが続ける。

「だからこそ、我々二国が協力して、ベルモント王国の一人勝ちを阻止する必要があるのです」

「協力?」

「はい。建前上は競争相手ですが、真の敵はベルモント王国です」

アルカナスが考え込む。

「しかし、どのような協力を?」

「情報交換と、共同での対策会議です。そして—」

エルザがセリアを見つめる。

「セリア・アルクライト先生にお願いがあります」

「私に?」

「我が学院の学生たちに、実用魔法を指導していただけませんか?」

一同が驚く。

「グランディア帝国ほどの名門校が、我々に指導を求めるとは...」

「名門だからこそ、プライドに縛られて革新的な教育ができずにいたのです」

エルザが率直に認める。

「しかし、先生の教育改革の成果を見て、我々も変わらなければならないと痛感しました」

セリアが考えを巡らせる。

「分かりました。ただし、条件があります」

「どのような?」

「相互交流です。我が学院の学生たちにも、皇立魔導学院の高度な理論魔法を教えていただきたい」

「もちろんです」

エルザが快諾する。

「それは我々にとっても有益です」

こうして、思わぬ同盟関係が成立した。

翌日から、本格的な大会準備が始まった。

「リリア、あなたは実用魔法部門のエースよ」

セリアが特別訓練を指導する。

「え?私がエース?」

「あなたの植物魔法は、農業分野で革命的な成果をもたらす。自信を持って」

一方、グランディア帝国からは精鋭の学生たちが訪れ、合同訓練が行われていた。

「君たちの実用魔法は素晴らしい」

グランディア帝国の学生代表、アレクサンダー皇子が感嘆する。

「僕たちは理論ばかりで、実際の応用を軽視していた」

「でも、あなたたちの理論知識は圧倒的です」

アステル王国の学生が応じる。

「お互いの長所を学び合いましょう」

セリアは満足そうに訓練の様子を見守っていた。

「良い化学反応が起きているわね」

エリスも頷く。

「これなら、ベルモント王国に対抗できそう」

しかし、その夜、衝撃的な情報がもたらされた。

「セリア先生、大変です!」

ルークが血相を変えて駆け込んできる。

「ベルモント王国の参加学生のリストを入手しました」

「それがどうかしたの?」

「ヴィクトリア・ランカスター本人が、学生として参加すると記載されています!」

一同が息を呑む。

「まさか...」

「年齢を偽って学生登録し、堂々と大会に出場するつもりのようです」

セリアの表情が厳しくなる。

「やはり、正面からの勝負を挑んできたわね」

「どうします?彼女の実力は未知数ですが、相当な強敵であることは間違いありません」

セリアが窓の外を見つめる。

「面白いじゃない。今度こそ、決着をつけましょう」

「でも、大丈夫?」

エリスが心配する。

「大丈夫よ。私には最強の武器がある」

「最強の武器?」

「仲間たちよ」

セリアが教室を見回す。そこには、身分の壁を越えて協力し合う学生たちの姿があった。

「一人の天才より、団結した仲間たちの方が強い。それを証明してみせるわ」

三王国魔法学院競技大会まで、あと一か月。

セリアと学生たちの最大の挑戦が、いよいよ始まろうとしていた。

ヴィクトリアとの因縁に、ついに決着がつく時が来る。

しかし、それは同時に、新しい時代の幕開けでもあった。古い価値観に縛られた魔法教育から、真に人々の役に立つ魔法教育への転換点となるのである。
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