【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん

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第33話「選択の時、そして新たな脅威」

王都に戻って一週間後、セリアは王宮の薔薇園でルークと二人きりで向き合っていた。夕陽が庭園を金色に染め、薔薇の香りが優しく漂う中、長い間保留にしていた答えを伝える時が来ていた。

「セリア、君はこの一年で本当に変わったね」

ルークが感慨深そうに言う。彼の騎士服は夕陽を受けて輝き、真摯な瞳がセリアを見つめている。

「いえ、私は変わったんじゃないの。本来の自分を取り戻しただけ」

セリアが微笑む。前世では圧し潰されてしまった自分の意志と理想を、この世界で実現できたことへの充実感が、彼女の表情を輝かせていた。

「だからこそ、ルーク、あなたにお伝えしたいことがあるの」

セリアが一歩前に出る。ルークの表情が緊張に引き締まった。

「私、あなたのお気持ちを受け入れたいと思います」

ルークの瞳が大きく見開かれる。

「本当に?セリア、君は...」

「ええ。でも、条件があるの」

セリアの言葉に、ルークが首をかしげる。

「条件?」

「私は今の仕事を続けたい。教育改革も、商業活動も、すべて続けていきたいの」

セリアの瞳に強い意志が宿る。

「ぜん...昔は、結婚と同時にキャリアを諦めざるを得なかった女性をたくさん見てきました。でも今度は違う。愛情と仕事、両方を手に入れたい」

ルークが驚いたような表情を見せる。この時代、結婚した女性が社会活動を続けることは珍しかった。

「それは...つまり...」

「新しい結婚スタイルよ。お互いを尊重し、支え合いながら、それぞれの夢を追いかける」

セリアが手を差し伸べる。

「一緒に、新時代の模範的な夫婦になりませんか?」

ルークが一瞬戸惑いを見せた後、温かい笑顔を浮かべた。

「君らしい提案だね。もちろん、喜んで受け入れるよ」

ルークがセリアの手を取る。

「僕も実は、君にそのまま活動を続けてほしいと思っていたんだ。君の仕事は、この国にとって、いや世界にとって必要不可欠なものだから」

「ルーク...」

セリアが感動で声を詰まらせる。前世では理解してもらえなかった自分の価値観を、この時代の男性が受け入れてくれる。それは何にも代えがたい喜びだった。

二人が抱き合おうとしたその時、薔薇園の入り口で馬のいななきと、慌ただしい足音が響いた。

「セリア様!大変です!」

ガルドが血相を変えて駆け込んできた。その後ろには、見慣れない壮年の男性が続いている。

「ガルド?どうしたの、そんなに慌てて」

「この方をご紹介します。東方アカツキ帝国の特使、タケシ・ヤマダ様です」

紹介された男性は、東洋風の装束を身にまとい、深刻な表情を浮かべていた。

「セリア・アルクライト様ですね。突然の訪問をお許しください」

タケシが丁寧に一礼する。その所作は洗練されており、相当な身分の人物であることが窺える。

「アカツキ帝国の特使がなぜここに?確か、我が国との正式な外交関係は...」

ルークが疑問を投げかける。

「実は緊急事態なのです」

タケシの表情がさらに深刻になる。

「我が帝国の東方、遥か彼方の大陸で異変が起きています」

「異変?」

セリアが身を乗り出す。

「『魔王復活』の兆候が現れているのです」

薔薇園に重い沈黙が落ちる。魔王—それは千年前にこの世界を恐怖に陥れた、絶対的な邪悪の存在だった。

「まさか...魔王なんて、もう伝説の存在では...」

ルークが困惑する。

「我々もそう思っていました」

タケシが重々しく頷く。

「しかし、現実に起きている現象を見れば、疑う余地はありません」

タケシが懐から古い巻物を取り出す。そこには、不気味な象形文字と図形が描かれていた。

「これは我が帝国に伝わる古代文書の写しです。魔王復活の前兆として記されている現象が、東方大陸で次々と現実化しています」

セリアが巻物を受け取り、内容を精査する。そこに書かれているのは、確かに深刻な内容だった。

「動物の異常行動、原因不明の疫病、そして—」

「『空間の歪み』です」

タケシが補足する。

「東方大陸の各地で、空間が歪曲する現象が報告されています。まるで、別の次元から何かが侵入しようとしているかのような」

セリアの表情が急変する。彼女の前世の記憶の中に、似たような現象に関する知識があった。

「これは...次元破綻現象ね」

「次元破綻?」

ルークが聞き返す。

「異なる次元間の境界が不安定になる現象よ。もしこれが事実なら、魔王は単に復活するのではなく、別次元から侵入してくる可能性がある」

セリアの分析に、タケシが驚愕の表情を見せる。

「まさか、セリア様がそこまで詳しい知識をお持ちとは...」

「で、アカツキ帝国は何を求めているの?」

セリアが核心を突く。

「率直に申し上げます」

タケシが深く頭を下げる。

「セリア様の力をお借りしたいのです。この危機を乗り越えられるのは、三王国競技大会で示された、あなたの規格外の力だけです」

「でも、私一人では...」

「もちろん、アカツキ帝国も総力を挙げて対処いたします。しかし、魔王という存在に対抗するには、従来の常識を超えた力が必要なのです」

セリアが深く考え込む。彼女の心の中では、様々な思いが駆け巡っていた。

ようやく手に入れた平和な日常。ルークとの新しい関係。そして、まだ道半ばの教育改革事業。

しかし、一方で世界の危機を見過ごすことはできない。前世での後悔—本当に困っている人を助けられなかった記憶が、彼女の良心を刺激する。

「ルーク」

セリアが振り返る。

「どう思う?」

ルークが一瞬躊躇した後、きっぱりと答える。

「君の判断に従うよ。ただし、一人で行かせるつもりはない」

「ルーク...」

「僕も同行する。君を守り、支えることが、僕の使命だから」

セリアの瞳に涙が浮かぶ。この男性は、本当に自分を理解してくれている。

「ガルドはどうする?」

「もちろん、セリア様についていきます」

ガルドが即答する。

「商売なんていつでもできますが、世界の危機はそうはいきません」

セリアが微笑む。頼れる仲間たちがいる。前世のように一人で抱え込む必要はない。

「分かりました、タケシ様」

セリアがタケシに向き直る。

「お受けします。ただし、条件があります」

「どのような?」

「この件について、三国同盟にも協力を要請してください。ヴィクトリアの研究成果も必要になるかもしれません」

「ヴィクトリア・ランカスター?しかし、彼女は...」

「今は改心して、平和のために研究をしています。彼女の禁術知識は、魔王対策に有効なはずです」

タケシが感嘆の表情を見せる。

「敵でさえも味方に変える...流石はセリア様です」

「敵味方の区別にこだわっている場合ではありません。世界の存亡がかかっているのですから」

その夜、王宮では緊急会議が開かれた。エドワード王、アルカナス学院長、そして各大臣たちが集まり、東方の危機について議論する。

「つまり、セリアが東方に向かうということですね」

エドワード王が確認する。

「はい。ただし、これは王国の意志ではなく、私個人の決断です」

セリアが明確に区別する。

「いや、これは王国としても支援すべき事案です」

エドワード王が力強く宣言する。

「世界の平和は、我が国の平和でもあります。必要な支援は惜しみません」

「ありがとうございます」

会議の結果、セリアたちの東方遠征が正式に決定された。同時に、グランディア帝国とベルモント王国にも協力要請が送られることになった。

翌日の朝、セリアは出発準備を整えながら、エリスと最後の打ち合わせをしていた。

「本当に行ってしまうのね」

エリスが寂しそうに言う。

「学院の運営はあなたに任せるわ。必要があれば、リリアも頼りにして」

「分かったわ。でも、必ず帰ってきてよ」

「もちろん。今度は一人じゃないもの」

セリアがルークを見る。彼は既に旅装を整え、剣を腰に帯びていた。

「それに」セリアが続ける。「きっとこれが最後の大きな戦いになる。これを乗り越えれば、本当の平和な時代が来るはず」

「その時は盛大な結婚式をあげましょうね」

エリスがいたずらっぽく笑う。

「もちろんよ。世界一幸せな花嫁になってみせるわ」

港では、アカツキ帝国の高速船が待機していた。それは魔法で推進力を得る、この世界の最新技術を駆使した船舶だった。

「それでは、出発いたします」

タケシが合図すると、船がゆっくりと港を離れる。

セリアは甲板に立ち、遠ざかる王都を見つめていた。そこには彼女が築き上げた新しい世界があった。

「必ず守ってみせるわ」

セリアが心の中で誓う。

「私の大切な人たち、そして私が愛するこの世界を」

船は東方の水平線に向かって進んでいく。そこには未知の脅威が待ち受けているが、セリアの心に恐れはなかった。

なぜなら、彼女には仲間がいる。そして、これまで培ってきた力と知識がある。

何より、守るべきものがあるのだから。

新たな冒険が始まろうとしていた。しかし、それは同時に、セリア・アルクライトという女性の物語の、最も重要な章の始まりでもあった。

魔王との対決。それは彼女にとって、真の意味で過去と決別し、未来を掴むための、最後の試練なのかもしれない。
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