なけなしの石で引いたガチャから出てきた娘がただのレアだった件

きゅちゃん

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第21話 苦闘

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「くそがあぁ!!!これで死んどけぇぇぇ!」

怒り狂ったアベルが、俺たちではなくリッチに向かって斬りかかる。
リッチを怒らせ、俺たちごと巻き込むつもりなのだ。

「…」

リッチが意にも介さず鎌でアベルを一閃し、子供をあしらうように弾き飛ばした。
残りわずかだったアベルのHPがゼロになり、消滅エフェクトとともにその姿が消えてゆく。

「ハハハ…せいぜいがんばれや…」

そう捨て台詞を残し、完全に消失していくアベル。
…最後の最後までゲスな野郎だ。

ゆらり、とリッチが表情のない瞳をこちらに向ける。
今の一撃で、完全に俺たちを敵と認識しているようだ。

「…俺もリッチなんぞと戦ったことはない。正直どうすればいいかわからん」

珍しく小野寺さんが弱気な言葉を口にする。
激戦をくぐり抜けてきた俺たちは、アイテムやMP、スキルの使用残回数もかなり心もとない。

「それでも、やるしかありません」

俺は強がりの言葉を口にする。
気持ちが相手に圧されてしまえば、本当に勝ち目がなくなってしまう気がしたからだ。

「…そうだな。そうだとも」

「俺が撹乱します。小野寺さんは、クリティカルの一発狙いでお願いします」

「やってみよう」

「アイシャさんとニアは空間転移に備えて、いつでも遠距離攻撃を出せるように待機で!」

こくり、と頷く二人の顔にも、緊張が見て取れた。

「うぉぉぉっ!!」

とにかく一歩も立ち止まらないことだけを考え、リッチの鎌をめがけて両手の剣を交互に繰り出す。しかし、ただの一撃も刃が届かない。

俺の力量を測るかのように、リッチはことも無げにただ剣戟を受け流してくる。
くそっ…隙を作るどころか、反撃する価値もないと見下されているかのようだ。

「いまだ…さがれリョウキ!」

背後から小野寺さんの怒声が響き、とっさに俺はバックステップでリッチから距離を取る。
入れ替わるようにしてトールハンマーを発動した小野寺さんが、リッチの懐に飛び込み、斧を振り上げた。
リッチが鎌で受けようとした瞬間、狙いを定めて待っていたアイシャが狙撃する。

「エイミングショットッ!」

斧を受けようとした鎌がアイシャの一点集中型の弓技によって弾かれた瞬間、小野寺さんのトールハンマーがリッチの胴体を直撃する。

「グォォォ…」

それまで一言も発さなかったリッチが、怒りとも苦悶ともつかぬ昏い声を上げた。

「…やったか?」

しかしさすがにレアモンスターだけあって、HPゲージが3分の1ほど減ったものの、倒すには至らなかった。

「トールハンマー直撃でこれか…」

立ちはだかる壁のあまりの高さに、小野寺さんが呻く。

「でも…一撃入れられたんです。希望はある!」

そう言って俺は剣を構えなおし、再びリッチに向かって斬りかかろうとする。

「コォォ…」

先ほどまでとは異なり、リッチは鎌で剣を受けようとはしない。
…どういうつもりだ。
心の片隅で警鐘が鳴るが、ここで引くわけにもいかない。

「ツインソードスラッシュ!」

双剣の一撃がリッチのローブを引き裂いた…と思った瞬間、剣が空を斬り、バランスを崩した俺はよろめいた。

「なっ…」

先ほどまでリッチが確かにいた空間は、今はもぬけの殻だ。

「…空間転移スキルだ!気をつけろ!」

小野寺さんが警戒の叫びを上げるやいなや、後ろにいたニアの背後に、ゆらりとリッチが出現する。

「ニアさん、避けて!」

絶叫とともにアイシャが矢を放ち、咄嗟に転がるようにして回避行動を取ったニアを援護する。
すんでのところで振り下ろされる鎌に矢が当たり、少しだけ軌道がそれた。

「くあっ…!」

ニアが苦悶の声を上げる。
鎌の直撃こそ避けたものの、身体の一部を掠めていたのだ。

フルだったニアのHPがみるみる減少し、半分ほどになってしまう。

「ニア、回復いそげ!」

俺は絶叫し、ニアに駆け寄る。

「は、はい…なんとか、大丈夫です」

即座に回復魔法を詠唱し、ニアのHPゲージが少しずつ戻っていく。

「貴様…よくも!」

怒りに任せて踏み込むが、再びリッチの姿はすぅ…と消えてしまう。
なんていうチート級の能力だ…
俺は歯噛みしながら周囲を見渡すが、転移中のリッチの姿を感知することなどできるはずもない。
パスファインダーのような超高レベルの探索スキル持ちなら或いは分かるのかもしれないが、今はどうしようもない。

「コォォ…」

死者の呼び声のような虚無感に満ちたリッチの声が谺する。

「うぉぉぉッ!?」

警戒する小野寺さんの背後に現れ、鎌が一閃。
巨躯ゆえに反応が遅れ、小野寺さんが軽々と吹き飛ばされる。
必死にニアが回復するものの、まだ上級魔法が使えないため、全回復には至らない。

「…そろそろ、MPが尽きます」

悲壮な表情で、ニアが告げる。

「…そうか」

いよいよ、これは覚悟を決めるときかもしれない。
一か八かで階段を駆け上がり、上のフロアに逃げ込めないだろうか?
そんな考えも脳裏を掠めるが、ルンデスは近くに敵がいると扉が開かない仕様だったことを思い出す。
…逃げたところで全員死ぬだけだ。

どうする…
再び転移し、リッチの姿を見失った俺たちに、重苦しい緊張がのしかかる。
次こそは、誰かが死ぬかもしれないのだ。
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