26 / 32
第26話 包囲
しおりを挟む
「エリス、危ないッ!」
考えるより先に身体が動く。
ダブルブーストで急加速、硬直するエリスの前に出る。
目の前には大量に降り注ぐ矢。
「おらぁぁぁっ!」
必死に双剣を振り回し、束のように襲い来る矢を叩き落とす。
防ぎきれなかった何本かが、肩や手足を掠める。
…痛くはないが、それなりにダメージが蓄積していく。
「リョウキ、無茶するな!」
ようやく小野寺さんの援護が追いつき、トールハンマーが後続の矢を全て落としてくれた。
…助かった。
あのまま矢を防ぎきれていなかったら、危なかったかもしれない。
エリスを振り返れば、気まずそうな顔でこちらをチラチラ見ている。
「む、無茶すんじゃないわよ。私はあれぐらいの矢どうってことないんだから」
「…そうかもしれないけど。独りで突っ込まないでくれ」
「…わかったわよ」
ふてくされるエリスをチェンジし、ニアに回復魔法をかけてもらう。
「ともあれ二人とも無事でよかったじゃないですか」
ニアは寛大だ。
誰にでも優しい…もう少し、俺にだけ優しくてもいいのにな、なんてことを思う。
「…リョウキ、どうやらあのスイッチで出てくるのは、矢だけじゃなかったようだぞ」
「…まじっすか」
気がつけば、無数に光る目が周囲を取り囲んでいる。
「もちろん…転移不可が発動してますよね?」
「ご明察。罠の効果だな」
小野寺さんが渋い声で応える。
転移魔法も封じられ、周囲にはリザードマンの大部隊。
…どうしてこう毎度、ピンチの連続なのか。
何も言わないうちに、ニアがフルバフをかけてくれる。
「…ありがと、いつも」
「私にできるのは、これぐらいですから。それに、リョウキなら…わたしたちなら、絶対乗り切れると信じてますから」
そうニアが微笑んだ。
優しいだけではない、いつのまにか身につけた芯の強さが今は頼もしい。
「ああ、そうだな。乗り切ってみせるから、待っててくれ!」
「…はい!」
俺たちは頷きをかわし、チェンジ。
エフェクトとともに金髪の女騎士が再び現れる。
相変わらず少し拗ねたような表情なのは、現在の窮状を招いた責任を自覚しているからだろうか。
「消耗戦になったらいずれやられる。エリスを先頭に切り込み、一転突破でいきましょう」
「それがいいだろう。俺とリョウキが側面と背後を固める」
「…私がなんとかするわよ!」
ヤケになったようにエリスが叫ぶ。
「みんなで乗り切るんだ」
「こうなったのも私のせいなんだし。責任とってなんとかするって言ってんでしょ!」
「…とにかく、切り込み隊長は任せる。援護するから背後は気にしなくていい」
「…せいぜい遅れないことね」
そんな捨て台詞とともにエリスが抜剣し、次の瞬間にはつむじ風のように敵陣へ斬り込んでいく。
エルフ族の特性である身のこなしの軽さに、風属性魔法による身体強化が上乗せされているのだろう。
その素早さは、俺の加速スキルとはレベルが違う。
自然、エリス、俺、小野寺さんの順に斬り込んでいくことになる。
「どけ!」
ガスッ、とリザードマンの頭が凹む。
「この!」
ゲシッ、とリザードマンが吹き飛ぶ。
「クソトカゲがっ!」
ズパッ、とリザードマンの首と胴が離れる。
怒りを戦闘力に変えたかのように、罵声とともに敵を次々と斬り払うエリス。
まさに八つ当たり全開であった。
獅子奮迅ともいうべきその働きに、俺と小野寺さんは半ば呆気に取られつつ危惧も覚える。
「無茶しすぎだぞエリス!」
「それでは長くは持たん!」
口々に諌めるが、美しい戦女神は聞く耳を持たないように剣戟を繰り出す手を止めない。
「わたしは!」
2体まとめてリザードマンをなぎ払う。
「SSRで!」
返す刀で、背後に迫っていた槍の穂先を切り落とし。
「強くて!」
体の勢いを殺さず、槍を失ったリザードマンを蹴り飛ばす。
「美しいんだから!」
蹴りの反動か、柳のようにしなやかだったエリスが一瞬だけ硬直した。
「危ない!」
その隙を狙って繰り出された別の槍に、エリスの反応が一瞬遅れる。
咄嗟に右手の剣を投げつけ、運良くぶつかった衝撃で穂先をなんとか逸らす。
態勢を立て直したエリスが剣を振るい、危ういところを切り抜けたようだ。
「よ、余計なこと…」
悪態をつきかけたエリスだが、ぐっと飲み込み、その先はなんだかモゴモゴ言っていたが聞こえない。
後ろでは小野寺さんが暴れているが、次々と押し寄せるリザードマンが途切れる気配はなかった。
「くそ…このままじゃ突破も無理か」
思わず弱音が漏れる。
敵の数が多すぎるのだ。
せめて…せめてあと一人いればかなり違うのだが…。
「仕方ない…本当はあまり使いたくはなかったんだが」
小野寺さんが何かを決意したように、そう呟いた。
考えるより先に身体が動く。
ダブルブーストで急加速、硬直するエリスの前に出る。
目の前には大量に降り注ぐ矢。
「おらぁぁぁっ!」
必死に双剣を振り回し、束のように襲い来る矢を叩き落とす。
防ぎきれなかった何本かが、肩や手足を掠める。
…痛くはないが、それなりにダメージが蓄積していく。
「リョウキ、無茶するな!」
ようやく小野寺さんの援護が追いつき、トールハンマーが後続の矢を全て落としてくれた。
…助かった。
あのまま矢を防ぎきれていなかったら、危なかったかもしれない。
エリスを振り返れば、気まずそうな顔でこちらをチラチラ見ている。
「む、無茶すんじゃないわよ。私はあれぐらいの矢どうってことないんだから」
「…そうかもしれないけど。独りで突っ込まないでくれ」
「…わかったわよ」
ふてくされるエリスをチェンジし、ニアに回復魔法をかけてもらう。
「ともあれ二人とも無事でよかったじゃないですか」
ニアは寛大だ。
誰にでも優しい…もう少し、俺にだけ優しくてもいいのにな、なんてことを思う。
「…リョウキ、どうやらあのスイッチで出てくるのは、矢だけじゃなかったようだぞ」
「…まじっすか」
気がつけば、無数に光る目が周囲を取り囲んでいる。
「もちろん…転移不可が発動してますよね?」
「ご明察。罠の効果だな」
小野寺さんが渋い声で応える。
転移魔法も封じられ、周囲にはリザードマンの大部隊。
…どうしてこう毎度、ピンチの連続なのか。
何も言わないうちに、ニアがフルバフをかけてくれる。
「…ありがと、いつも」
「私にできるのは、これぐらいですから。それに、リョウキなら…わたしたちなら、絶対乗り切れると信じてますから」
そうニアが微笑んだ。
優しいだけではない、いつのまにか身につけた芯の強さが今は頼もしい。
「ああ、そうだな。乗り切ってみせるから、待っててくれ!」
「…はい!」
俺たちは頷きをかわし、チェンジ。
エフェクトとともに金髪の女騎士が再び現れる。
相変わらず少し拗ねたような表情なのは、現在の窮状を招いた責任を自覚しているからだろうか。
「消耗戦になったらいずれやられる。エリスを先頭に切り込み、一転突破でいきましょう」
「それがいいだろう。俺とリョウキが側面と背後を固める」
「…私がなんとかするわよ!」
ヤケになったようにエリスが叫ぶ。
「みんなで乗り切るんだ」
「こうなったのも私のせいなんだし。責任とってなんとかするって言ってんでしょ!」
「…とにかく、切り込み隊長は任せる。援護するから背後は気にしなくていい」
「…せいぜい遅れないことね」
そんな捨て台詞とともにエリスが抜剣し、次の瞬間にはつむじ風のように敵陣へ斬り込んでいく。
エルフ族の特性である身のこなしの軽さに、風属性魔法による身体強化が上乗せされているのだろう。
その素早さは、俺の加速スキルとはレベルが違う。
自然、エリス、俺、小野寺さんの順に斬り込んでいくことになる。
「どけ!」
ガスッ、とリザードマンの頭が凹む。
「この!」
ゲシッ、とリザードマンが吹き飛ぶ。
「クソトカゲがっ!」
ズパッ、とリザードマンの首と胴が離れる。
怒りを戦闘力に変えたかのように、罵声とともに敵を次々と斬り払うエリス。
まさに八つ当たり全開であった。
獅子奮迅ともいうべきその働きに、俺と小野寺さんは半ば呆気に取られつつ危惧も覚える。
「無茶しすぎだぞエリス!」
「それでは長くは持たん!」
口々に諌めるが、美しい戦女神は聞く耳を持たないように剣戟を繰り出す手を止めない。
「わたしは!」
2体まとめてリザードマンをなぎ払う。
「SSRで!」
返す刀で、背後に迫っていた槍の穂先を切り落とし。
「強くて!」
体の勢いを殺さず、槍を失ったリザードマンを蹴り飛ばす。
「美しいんだから!」
蹴りの反動か、柳のようにしなやかだったエリスが一瞬だけ硬直した。
「危ない!」
その隙を狙って繰り出された別の槍に、エリスの反応が一瞬遅れる。
咄嗟に右手の剣を投げつけ、運良くぶつかった衝撃で穂先をなんとか逸らす。
態勢を立て直したエリスが剣を振るい、危ういところを切り抜けたようだ。
「よ、余計なこと…」
悪態をつきかけたエリスだが、ぐっと飲み込み、その先はなんだかモゴモゴ言っていたが聞こえない。
後ろでは小野寺さんが暴れているが、次々と押し寄せるリザードマンが途切れる気配はなかった。
「くそ…このままじゃ突破も無理か」
思わず弱音が漏れる。
敵の数が多すぎるのだ。
せめて…せめてあと一人いればかなり違うのだが…。
「仕方ない…本当はあまり使いたくはなかったんだが」
小野寺さんが何かを決意したように、そう呟いた。
0
あなたにおすすめの小説
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」
チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。
だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。
魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。
だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。
追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。
訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。
そして助けた少女は、実は王国の姫!?
「もう面倒ごとはごめんだ」
そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる