27 / 32
第27話 援軍
しおりを挟む
「ずいぶんご無沙汰ね、マイダーリン」
小野寺さんが呼び出したのはパートナーキャラだ。
アイシャがロストして以来、意図的に空席にしていたその場所に、豪奢な紫髪の美女が忽然と姿を表す。
「…見ての通り、大ピンチだ。力を借りたい」
苦い顔で、小野寺さんが美女に頼んだ。
「あら、アタシとあなたの仲じゃない…なにも遠慮することなくってよ」
そういって婉然と微笑む美女。
「SSR アスト クラス:ハーミット」
「アイシャがいなくなったから、アタシを呼んだのね…まぁいいわ」
迫り来るリザードマンの軍団を一睨みすると、すぐさま詠唱に入る。
周囲の空間に、目に見えない圧力がかかりはじめた。
凄まじい魔力が、アストの両手に流れ込んでいく気配がある。
「天国と地獄、まとめて味わえるお徳パックよ…ヘルアンドヘヴン!」
アストの左腕からは漆黒の波動が、右腕からは純白の波動がそれぞれ放たれた。
中途で入り混じり、光と闇の入り混じった奔流を形成する大魔法が、リザードマン軍団の中枢で破裂した。
「グギギ!?」
「グギャ!!!」
爬虫類らしい耳障りな悲鳴とも怒号ともつかぬ声を発しながら、リザードマンたちが次々と消滅していく。
…恐るべき威力だな、これは。
光と闇の相反する属性を上級クラス、ハーミットの超必殺大魔法。
思わず感服するが、当のアストは事も無げに手をひらひらと振った。
「これでMPゼロだから、あとはアンタたちで適当にやりなさいよ」
「…言われるまでもないわ」
呆然と魔法を見守っていたエリスが、我に返ったように敵陣へと突進する。
俺と小野寺さんもあとに続き、混乱する残敵の掃討に加わった。
「…なんとか切り抜けたな」
「…ええ」
「アタシに感謝のキスぐらいくれたっていいのに」
そういって流し目をくれるアストに、小野寺さんは返事をしない。
あれだけ女好きっぽいのに、なぜかアストのことは苦手みたいだ。
「これ、よかったらどぞ」
ニア用のMP回復ドリンクを差し出す。
「あら、気が利くボーヤね」
受け取ったアストがわざとらしくウィンクしてくるので、思わず赤面する。
「ちょっと…なに赤くなってんの」
「いたた…足を踏むな足を」
エリスがグリグリとブーツのヒールをねじ込んできた。
「あらら…お嬢ちゃんの玩具を取りあげる気はなくってよ。アタシ、年上にしか興味ないし」
「な…そんなんじゃ!」
エリスの耳が赤いのは気のせいだろうか。
ぼんやりとそんなことを思っていると、アストがニヤリとほくそ笑む。
「ふふん…お互い苦労しそうね」
そういってぽんぽん、とエリスの肩を叩いた。
「ちょ、どういう意味?!」
「さ、さっさと先に行きましょ。恋する乙女に、こんなところで油売ってる暇はないのよ」
「わけわかんないこと言わないでよ!」
すっかりペースを呑まれ、からかわれるエリスの様子がおかしくて、思わずクスリと笑ってしまう。
「なに笑ってんのよ?」
見とがめたエリスがギロリ、と睨んでくる。
「い、いや、アストがあんまりに面白いんで…」
「おもしろくない!」
そう言い捨てるや否や、ふてくされたようにいきなり座り込む。
「疲れたからチェンジしてよ!」
「はいはい」
入れ替わるようにして現れたニアが、目の前に突然出現していた紫髪の美女に驚く。
「あ、あのはじめまして…ニアです、宜しくお願いします」
「あら…こちらは礼儀を弁えた素敵なお嬢さんね。かわいいじゃない」
そういっていきなりニアを抱きしめた。
豊かな胸がニアの顔におおいかぶさり、なんとも羨ましい状況になっている。
「わふ…大きいです」
「ひょっとして本命はこちらかしら?」
「な、なんのことでしょう」
いきなり急所を突かれ、俺はドキドキしながらしらばっくれる。
「うんうん、命短し恋せよ若者ってね…」
どこか悟ったような表情で呟き、その豊かな胸からニアを解放した。
渋い顔のままなにも言わない小野寺さんを不思議に思い、俺は話しかける。
「こんな美女SSRを隠し持ってるとは…すごいですね」
「どこが美女だか…」
「え、小野寺さんの好みじゃないんですか?」
小野寺さんの渋面が一層濃くなった。
「…あれはオトコなの!オトコ!」
聞き咎めたアストが、ちっちっと指を振って訂正する。
「心は可憐な乙女、不幸にして身体はオトコ…その名は、アスト・エル・エンペルージュよ!」
小野寺さんが呼び出したのはパートナーキャラだ。
アイシャがロストして以来、意図的に空席にしていたその場所に、豪奢な紫髪の美女が忽然と姿を表す。
「…見ての通り、大ピンチだ。力を借りたい」
苦い顔で、小野寺さんが美女に頼んだ。
「あら、アタシとあなたの仲じゃない…なにも遠慮することなくってよ」
そういって婉然と微笑む美女。
「SSR アスト クラス:ハーミット」
「アイシャがいなくなったから、アタシを呼んだのね…まぁいいわ」
迫り来るリザードマンの軍団を一睨みすると、すぐさま詠唱に入る。
周囲の空間に、目に見えない圧力がかかりはじめた。
凄まじい魔力が、アストの両手に流れ込んでいく気配がある。
「天国と地獄、まとめて味わえるお徳パックよ…ヘルアンドヘヴン!」
アストの左腕からは漆黒の波動が、右腕からは純白の波動がそれぞれ放たれた。
中途で入り混じり、光と闇の入り混じった奔流を形成する大魔法が、リザードマン軍団の中枢で破裂した。
「グギギ!?」
「グギャ!!!」
爬虫類らしい耳障りな悲鳴とも怒号ともつかぬ声を発しながら、リザードマンたちが次々と消滅していく。
…恐るべき威力だな、これは。
光と闇の相反する属性を上級クラス、ハーミットの超必殺大魔法。
思わず感服するが、当のアストは事も無げに手をひらひらと振った。
「これでMPゼロだから、あとはアンタたちで適当にやりなさいよ」
「…言われるまでもないわ」
呆然と魔法を見守っていたエリスが、我に返ったように敵陣へと突進する。
俺と小野寺さんもあとに続き、混乱する残敵の掃討に加わった。
「…なんとか切り抜けたな」
「…ええ」
「アタシに感謝のキスぐらいくれたっていいのに」
そういって流し目をくれるアストに、小野寺さんは返事をしない。
あれだけ女好きっぽいのに、なぜかアストのことは苦手みたいだ。
「これ、よかったらどぞ」
ニア用のMP回復ドリンクを差し出す。
「あら、気が利くボーヤね」
受け取ったアストがわざとらしくウィンクしてくるので、思わず赤面する。
「ちょっと…なに赤くなってんの」
「いたた…足を踏むな足を」
エリスがグリグリとブーツのヒールをねじ込んできた。
「あらら…お嬢ちゃんの玩具を取りあげる気はなくってよ。アタシ、年上にしか興味ないし」
「な…そんなんじゃ!」
エリスの耳が赤いのは気のせいだろうか。
ぼんやりとそんなことを思っていると、アストがニヤリとほくそ笑む。
「ふふん…お互い苦労しそうね」
そういってぽんぽん、とエリスの肩を叩いた。
「ちょ、どういう意味?!」
「さ、さっさと先に行きましょ。恋する乙女に、こんなところで油売ってる暇はないのよ」
「わけわかんないこと言わないでよ!」
すっかりペースを呑まれ、からかわれるエリスの様子がおかしくて、思わずクスリと笑ってしまう。
「なに笑ってんのよ?」
見とがめたエリスがギロリ、と睨んでくる。
「い、いや、アストがあんまりに面白いんで…」
「おもしろくない!」
そう言い捨てるや否や、ふてくされたようにいきなり座り込む。
「疲れたからチェンジしてよ!」
「はいはい」
入れ替わるようにして現れたニアが、目の前に突然出現していた紫髪の美女に驚く。
「あ、あのはじめまして…ニアです、宜しくお願いします」
「あら…こちらは礼儀を弁えた素敵なお嬢さんね。かわいいじゃない」
そういっていきなりニアを抱きしめた。
豊かな胸がニアの顔におおいかぶさり、なんとも羨ましい状況になっている。
「わふ…大きいです」
「ひょっとして本命はこちらかしら?」
「な、なんのことでしょう」
いきなり急所を突かれ、俺はドキドキしながらしらばっくれる。
「うんうん、命短し恋せよ若者ってね…」
どこか悟ったような表情で呟き、その豊かな胸からニアを解放した。
渋い顔のままなにも言わない小野寺さんを不思議に思い、俺は話しかける。
「こんな美女SSRを隠し持ってるとは…すごいですね」
「どこが美女だか…」
「え、小野寺さんの好みじゃないんですか?」
小野寺さんの渋面が一層濃くなった。
「…あれはオトコなの!オトコ!」
聞き咎めたアストが、ちっちっと指を振って訂正する。
「心は可憐な乙女、不幸にして身体はオトコ…その名は、アスト・エル・エンペルージュよ!」
0
あなたにおすすめの小説
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」
チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。
だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。
魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。
だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。
追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。
訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。
そして助けた少女は、実は王国の姫!?
「もう面倒ごとはごめんだ」
そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる