【完結】パラレルハーレム・トラベラー

きゅちゃん

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眠りと対話

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青い砂漠に広がる水晶の門が静かに閉じ、四つ目の試練を終えた俺たちはブレスレットに青い欠片を吸い込んだ。アルテミシアとの戦闘と、レイラをえっちにかわいがった余韻が残る中、砂漠の風が青い砂を運び、紫色の空に星が瞬いていた。とろとろと燃えるキャンプの火を見ていると、ここが異世界であることを忘れそうになる。火が人間を安心させるというのは、どこの世界でも同じかもしれない。

そう思った直後、突然、強烈な眠気が仲間たちを襲う。リリアが「ね、眠い……」と呟き、レイラが「何!?」と声を上げた瞬間、彼女たちが次々と倒れ込む。ミレアが剣を握ったまま「悠斗、気をつ……」と言いかけて崩れ落ち、サフィーラが「何だ、これ……」と呟きかけたころで力尽きていた。セリーナも書物を抱えたまま眠りに落ちてしまったようだ。

俺だけが眠気の虜になっていない。ということは、何らかの攻撃かもしれない。警戒しながら火のそばで立ち上がる。

「誰かいるのか!?」

すると、砂漠の闇からアルテミシアが単身現れる。長い銀髪が風に揺れ、白いローブに金色の刺繍が輝いていた。彼女は冷たく笑い、紫の空の下で俺に近づいてくる。

「選ばれし者よ、今宵はお前と話をしてみたい。だからお前の仲間たちを眠らせた。邪魔はさせん」

俺がブレスレットを握り、言う。

「アルテミシア、何だ? また戦う気か?」

彼女が光の鞭を手に軽く振り、否定のジェスチャーをする。

「戦う? そのつもりならとうにお前の首をもらっている。だが、お前の意志は、少し興味深い。先程も言った通り、ただお前と話したいだけだ。手土産に、創造神の計画を少しだけ明かしてやろう」

俺が彼女を見据え、言う。

「計画? 世界を終わらせるってことか? お前が言った欲望のエネルギーって何だ?」  

アルテミシアが優雅に髪をかき上げ、冷たく笑う。

「創造神はこの世界を何度も終わらせては、新たに再生してきた。お前たちが鍵を集める旅は、そのサイクルを繰り返すためのものだ。鍵は世界が再生するたびにバラバラになり、異邦ーお前のような存在に再び集め直させる。お前がハーレムで欲望のエネルギーを増大させることで、新たな世界の糧となる。それが創造神の狙いだ」

彼女が一瞬、目をそらし、続ける。

「さっき、あの女が仲間にかわいがられてるのを見た。あの喘ぎ、身体の震え……だが、汚れた欲望にまみれてはいなかった。なぜか、私の身体が疼いた。理由が分からん。お前なら、その理由を知ってるのか?」

俺が目を細め、言う。

「疼いた? お前、レイラを見て何を感じたんだ? 欲望のエネルギーって、俺たちの仲間の...その...イチャつきが関係してるってことか?」

アルテミシアが俺をじっと見つめ、冷たく笑う。

「下位の虫けらに理解できるとは思わんがな。お前たちが仲間と絡み合い、欲望を膨らませるたび、そのエネルギーは鍵に宿る。鍵が揃えば、世界は終わり、新たな創造が始まる。お前たちは贄としてその糧を捧げる運命だ。だが、私があんな光景を見て疼くなんて……なぜだ? 教えてみろ」

彼女が微かに頬を赤らめたような気がするが、すぐに冷たい表情に戻る。  

俺はブレスレットを握って言い換えした。

「俺たちが贄なら、なぜ俺たちを直接殺さない? お前たちの計画、どこかおかしいぞ。それからお前が疼いた理由なんぞ俺には分からんが、お前が人間の感情を知らないからじゃないか?」

アルテミシアが嘲るように笑う。

「直接殺す? 愚かだな。お前たちの欲望がなければ、鍵は力を発揮しない。お前が旅を続け、仲間と絡むことでエネルギーが溜まる。それがなければ、新たな世界は生まれん。しかし、お前たちの意志が強すぎるから、私はお前を傀儡に戻そうとした。だが……感情だと? 私がそんな下位のものに影響されるはずがない! なのに、なぜお前を見ると胸がざわつく?」

彼女が言葉を切り、再び俺に目を向ける。

「この世界の秘密を一つ教えてやろう。カルディスの遺跡、あれは前回の贄が残したものだ。あの女が言った通り、サイクルは何度も繰り返されてきた。お前たちはその一部に過ぎん」

俺が言う。

「なら、俺たちがサイクルを止められる可能性もあるってことか? お前、俺たちを試してるのか?」

アルテミシアが一瞬黙り、紫の瞳を俺に固定する。

「試す? 笑わせるな。お前たちの意志、少し面白いと思っただけだ。だが、私が引いた理由は……分からん。何か、お前を見ると胸がざわつく。こんな感覚、知らんぞ。だが次に会う時、お前を潰す。それで終わりだ」

彼女が光の鞭を軽く振り、あっという間に砂漠の闇に消える。  
それからしばらくもしないうちに仲間たちが目を覚ましはじめた。アルテミシアが遠ざかったことで術の効果が切れたのだろう。仲間たちが無事目を覚ましたことに安心しつつ、俺は火を見つめながら考える。

「創造神の狙い、欲望のエネルギーか……レイラの知ってる話と一致する。俺たちはどうすればいい?」

レイラが俺に目を向け、言う。

「アルテミシアが来てたのか? お前の意志が奴を揺らしてるなら、創造神の計画を止められるかもしれない。私はお前たちを信じ始めてるよ」

リリアが目をこすりながら笑う。

「悠斗、私、眠っちゃってたけど、レイラちゃん、また仲良ししたいな」

レイラが「やめろ!」と叫ぶが、リリアが笑いながら近づく。サフィーラがセリーナに寄りかかり、言う。

「セリーナちゃん、私たちも仲良ししようよ」

セリーナが「サフィーラ、やめてってば!」と抵抗する中、ミレアが笑う。

「悠斗、この騒がしさ、試練の後でも変わらないな。私、この世界を守るよ」

俺が言う。

「アルテミシアが次に来るまでに、俺たちはもっと強くなる。創造神のサイクルとやら、止める方法を見つけようぜ」  

ブレスレットの脈動が次の試練を予感させる中、アルテミシアとの対話が胸に甦る。
この世界を終わらせないような選択をした場合...俺達は、そしてこの世界はどうなるんだろうか。
まぁ、考えすぎても仕方がない。自分の信じる道を進むとしよう。
――続く
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