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第5話 運命の魔力測定日
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魔力測定の朝、私は一睡もできなかった。
鏡を見ると、目の下に隈ができている。とても聖女には見えない。
「ルーナ様、大丈夫ですか?」
アンナが心配そうに尋ねる。
「ええ、大丈夫よ」
嘘だ。全然大丈夫じゃない。今日で全てが終わるかもしれないのに。
でも、アルベルトの告白を思い出すと、胸が温かくなった。
彼が私を愛してくれている。たとえ偽物の私でも——
(いや、だからこそ辛いのよ)
測定会場の大広間には、すでに多くの貴族や民衆が集まっていた。年に一度の大イベントで、聖女の魔力を確認する重要な儀式だ。
壇上に設置された魔力測定器は、水晶でできた美しい球体だった。聖女が手を触れると、魔力に応じて光る仕組みになっている。
「それでは、聖女ルーナ様、お願いします」
司会の神官が私を呼んだ。
壇上に上がると、会場がシーンと静まり返った。全ての視線が私に注がれている。
その中に、アルベルトの姿も見えた。彼は心配そうに私を見つめている。
(ごめんなさい、アルベルト様)
水晶球に近づく。手を伸ばした瞬間——
「待ってください!」
大声が響いた。会場がざわめく。声の主を見ると——
なんと、昨日城に引き取ったトムだった。彼が大広間に駆け込んできている。
「何事だ!」
兵士たちが慌てる。
「あの人は盗賊です!」
でも、トムは必死に叫んだ。
「聖女様は本物です! 俺たちを救ってくれた! 魔法なんて使わなくても、本当の聖女様だ!」
会場が混乱した。トムの言葉に、昨日の他の子たちも駆けつけてくる。
「そうです! 聖女様は俺たちに仕事をくれました!」
「魔法より大切なものを教えてくれました!」
彼らの声援に、胸が熱くなった。
でも、これで魔力測定を逃れられるわけじゃない。いずれは——
「静粛に!」
神官が声を上げた。
「聖女様、測定を続けてください」
逃げ場はない。
私は覚悟を決めて、水晶球に手を置いた。
一秒、二秒......
何も起こらない。
会場がざわめき始めた。聖女なら即座に光るはずなのに。
「あれ? おかしいですね」
神官が首をかしげる。
「機械の故障でしょうか?」
その時、アルベルトが壇上に上がってきた。
「確認させてください」
彼が水晶球を調べる。私は冷や汗をかいていた。
ついに、バレる時が来たのだ。
「機械に異常はありません」
アルベルトが宣言した。
会場が静まり返る。つまり、私に魔力がないということが——
「ただし」
アルベルトが続けた。
「この測定器は、通常の魔力しか測定できません」
「え?」
「ルーナ様の魔力は、おそらく特殊な性質を持っています。人を癒やし、心を救う......そんな魔力は、機械では測定できないのでしょう」
会場がどよめいた。
「確かに!」
「聖女様は魔法を使わずに人を救った!」
「それこそ真の聖女の力だ!」
民衆が口々に叫ぶ。トムたちの証言もあって、私の評価は逆に上がってしまった。
(アルベルト様......なんで?)
彼は確実に私の正体に気づいている。それなのに、なぜ庇ってくれるのか。
「それでは、測定は成功ということで」
神官が宣言した。
「聖女ルーナ様の特殊な魔力は、機械を超越したものと認定いたします!」
会場が拍手に包まれた。私は何が何だかわからないまま、壇上に立ち尽くしていた。
儀式が終わった後、アルベルトが私のもとにやってきた。
「お疲れ様でした」
「アルベルト様......なぜ?」
彼は優しく微笑んだ。
「なぜ、とは?」
「私の正体......気づいているでしょう?」
アルベルトは頷いた。
「ええ、薄々と」
「それなのに、なぜ庇ってくれたのですか?」
彼は少し考えてから答えた。
「あなたは確かに、魔力を持っていないかもしれません。でも——」
「でも?」
「あなたほど人を愛し、人のために行動する聖女を、私は知りません」
その言葉に、涙が溢れそうになった。
「魔力があるかどうかなんて、どうでもいいことです。大切なのは——」
アルベルトが私の手を取った。
「その心です」
「アルベルト様......」
「ルーナ様......いえ、ルナ」
彼が私の本名を呼んだ。
「あなたがどんな出身であろうと、どんな過去があろうと、私の気持ちは変わりません」
「でも、私は嘘つきです」
「嘘をついてでも、人を救おうとした。それは立派なことです」
彼の優しさに、もう我慢できなくなった。
「私......あなたを愛しています」
生まれて初めて、本当の気持ちを言葉にした。
「私も、愛しています」
アルベルトが私を抱きしめた。その腕の中で、私は初めて安らぎを感じた。
偽物の聖女だった私が、本物の愛を見つけた瞬間だった。
「でも......これからどうしましょう?」
私は不安になった。
「いつか、本当の正体がバレてしまいます」
「その時は、その時です」
アルベルトが私の髪を撫でた。
「私たちなら、きっと乗り越えられます」
彼の言葉に、勇気をもらった。
そうだ。二人なら、どんな困難も——
「聖女様!」
突然の声に振り返ると、見知らぬ女性が立っていた。
美しい金髪に、輝くような青い瞳。そして——
「私が、真の聖女エリス・パーフェクトです」
圧倒的な魔力を感じた。本物だ。
「あなたの正体、全て知っています」
エリスが冷たく微笑んだ。
私の幸せな時間は、終わりを告げようとしていた。
鏡を見ると、目の下に隈ができている。とても聖女には見えない。
「ルーナ様、大丈夫ですか?」
アンナが心配そうに尋ねる。
「ええ、大丈夫よ」
嘘だ。全然大丈夫じゃない。今日で全てが終わるかもしれないのに。
でも、アルベルトの告白を思い出すと、胸が温かくなった。
彼が私を愛してくれている。たとえ偽物の私でも——
(いや、だからこそ辛いのよ)
測定会場の大広間には、すでに多くの貴族や民衆が集まっていた。年に一度の大イベントで、聖女の魔力を確認する重要な儀式だ。
壇上に設置された魔力測定器は、水晶でできた美しい球体だった。聖女が手を触れると、魔力に応じて光る仕組みになっている。
「それでは、聖女ルーナ様、お願いします」
司会の神官が私を呼んだ。
壇上に上がると、会場がシーンと静まり返った。全ての視線が私に注がれている。
その中に、アルベルトの姿も見えた。彼は心配そうに私を見つめている。
(ごめんなさい、アルベルト様)
水晶球に近づく。手を伸ばした瞬間——
「待ってください!」
大声が響いた。会場がざわめく。声の主を見ると——
なんと、昨日城に引き取ったトムだった。彼が大広間に駆け込んできている。
「何事だ!」
兵士たちが慌てる。
「あの人は盗賊です!」
でも、トムは必死に叫んだ。
「聖女様は本物です! 俺たちを救ってくれた! 魔法なんて使わなくても、本当の聖女様だ!」
会場が混乱した。トムの言葉に、昨日の他の子たちも駆けつけてくる。
「そうです! 聖女様は俺たちに仕事をくれました!」
「魔法より大切なものを教えてくれました!」
彼らの声援に、胸が熱くなった。
でも、これで魔力測定を逃れられるわけじゃない。いずれは——
「静粛に!」
神官が声を上げた。
「聖女様、測定を続けてください」
逃げ場はない。
私は覚悟を決めて、水晶球に手を置いた。
一秒、二秒......
何も起こらない。
会場がざわめき始めた。聖女なら即座に光るはずなのに。
「あれ? おかしいですね」
神官が首をかしげる。
「機械の故障でしょうか?」
その時、アルベルトが壇上に上がってきた。
「確認させてください」
彼が水晶球を調べる。私は冷や汗をかいていた。
ついに、バレる時が来たのだ。
「機械に異常はありません」
アルベルトが宣言した。
会場が静まり返る。つまり、私に魔力がないということが——
「ただし」
アルベルトが続けた。
「この測定器は、通常の魔力しか測定できません」
「え?」
「ルーナ様の魔力は、おそらく特殊な性質を持っています。人を癒やし、心を救う......そんな魔力は、機械では測定できないのでしょう」
会場がどよめいた。
「確かに!」
「聖女様は魔法を使わずに人を救った!」
「それこそ真の聖女の力だ!」
民衆が口々に叫ぶ。トムたちの証言もあって、私の評価は逆に上がってしまった。
(アルベルト様......なんで?)
彼は確実に私の正体に気づいている。それなのに、なぜ庇ってくれるのか。
「それでは、測定は成功ということで」
神官が宣言した。
「聖女ルーナ様の特殊な魔力は、機械を超越したものと認定いたします!」
会場が拍手に包まれた。私は何が何だかわからないまま、壇上に立ち尽くしていた。
儀式が終わった後、アルベルトが私のもとにやってきた。
「お疲れ様でした」
「アルベルト様......なぜ?」
彼は優しく微笑んだ。
「なぜ、とは?」
「私の正体......気づいているでしょう?」
アルベルトは頷いた。
「ええ、薄々と」
「それなのに、なぜ庇ってくれたのですか?」
彼は少し考えてから答えた。
「あなたは確かに、魔力を持っていないかもしれません。でも——」
「でも?」
「あなたほど人を愛し、人のために行動する聖女を、私は知りません」
その言葉に、涙が溢れそうになった。
「魔力があるかどうかなんて、どうでもいいことです。大切なのは——」
アルベルトが私の手を取った。
「その心です」
「アルベルト様......」
「ルーナ様......いえ、ルナ」
彼が私の本名を呼んだ。
「あなたがどんな出身であろうと、どんな過去があろうと、私の気持ちは変わりません」
「でも、私は嘘つきです」
「嘘をついてでも、人を救おうとした。それは立派なことです」
彼の優しさに、もう我慢できなくなった。
「私......あなたを愛しています」
生まれて初めて、本当の気持ちを言葉にした。
「私も、愛しています」
アルベルトが私を抱きしめた。その腕の中で、私は初めて安らぎを感じた。
偽物の聖女だった私が、本物の愛を見つけた瞬間だった。
「でも......これからどうしましょう?」
私は不安になった。
「いつか、本当の正体がバレてしまいます」
「その時は、その時です」
アルベルトが私の髪を撫でた。
「私たちなら、きっと乗り越えられます」
彼の言葉に、勇気をもらった。
そうだ。二人なら、どんな困難も——
「聖女様!」
突然の声に振り返ると、見知らぬ女性が立っていた。
美しい金髪に、輝くような青い瞳。そして——
「私が、真の聖女エリス・パーフェクトです」
圧倒的な魔力を感じた。本物だ。
「あなたの正体、全て知っています」
エリスが冷たく微笑んだ。
私の幸せな時間は、終わりを告げようとしていた。
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