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第18話 運命の結婚式
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結婚式の朝、私は誰よりも早く目を覚ました。
窓の外には美しい青空が広がっており、まさに式にふさわしい天気だった。でも、私の心は複雑だった。
今日は人生で最も幸せな日になるはずなのに、同時に最も危険な日でもある。
「ルーナ様、お目覚めですね」
メリッサが静かに入ってきた。
「今日はいよいよですね」
「ええ……」
「大丈夫ですか? お顔が少し青ざめていますが」
「緊張しているだけです」
半分は本当だった。結婚式への緊張と、深淵の王への警戒——両方で心臓が早鐘を打っている。
「お支度を始めましょう」
メリッサと他の侍女たちが、丁寧に私を着飾ってくれた。真っ白なウェディングドレス、繊細なベール、そして母から受け継いだ真珠のネックレス。
鏡に映った自分は、まるでお伽話のお姫様のようだった。
「美しい……」
メリッサが感嘆の声を上げた。
「アルベルト様、きっと言葉を失われますよ」
その時、扉がノックされた。
「ルーナ、エリスです」
「どうぞ」
エリスが入ってきた時、彼女もまた美しいドレスを着ていた。淡いブルーのドレスが、彼女の金髪によく似合っている。
「素敵ですね、ルーナ」
「エリス様も、とてもお美しいです」
「ありがとう」
エリスが私に近づいてきた。
「準備はいかがですか?」
彼女の「準備」は、結婚式だけのことではないとわかった。戦いへの準備のことだ。
「はい。覚悟はできています」
「何があっても、私がお守りします」
エリスが真剣な表情で言った。
「今日は、あなたの大切な日ですから」
胸が熱くなった。
「ありがとうございます」
教会に向かう馬車の中で、私は城下町の様子を見ていた。街には多くの人々が集まっており、皆が私たちの結婚を祝福してくれている。
「聖女様、お幸せに!」
「素敵な式になりますように!」
人々の笑顔を見ていると、絶対にこの平和を守らなければという気持ちが強くなった。
教会に到着すると、既に多くの招待客が集まっていた。王様、大司教、城の職員たち、そしてトムをはじめとする子どもたちも、晴れ着を着て嬉しそうに待っている。
「聖女様!」
トムが駆け寄ってきた。
「すっごく綺麗です!」
「ありがとう、トム」
でも、私の目は会場の周囲を警戒していた。騎士たちが要所要所に配置されているのが見える。表面上は祝福に包まれているが、実際は戦場に近い緊張感があった。
教会の中に入ると、美しいオルガンの音色が響いていた。バージンロードの向こうに、アルベルトが立っている。
彼は礼装に身を包み、いつも以上にハンサムに見えた。私を見つめる瞳には、愛情と決意が込められている。
ゆっくりとバージンロードを歩きながら、私は幸せを噛み締めていた。
一年前、偽物の聖女として怯えながら生きていた私が、今こうして愛する人と結ばれようとしている。
祭壇の前まで来ると、アルベルトが微笑みかけてくれた。
「美しいです、ルーナ」
大司教が厳かに式を始めた。
「親愛なる皆様、今日はこの幸せなカップルの門出を祝うために——」
その時だった。
教会の扉が勢いよく開かれた。
「待て」
現れたのは、深淵の王だった。昨夜よりもさらに禍々しいオーラを纏っている。
会場がざわめいた。招待客たちが恐怖に震えている。
「何者だ!」
騎士たちが剣を抜いて警戒した。
「私は深淵の王」
男が堂々と名乗った。
「愛の聖女よ、ついにお前の幸福を終わらせる時が来た」
私はアルベルトの前に立った。
「何が目的ですか?」
「簡単なことだ」
深淵の王が邪悪に笑った。
「この世界から光を消し去ること。そのために、希望の象徴である愛の聖女を絶望に突き落とすのだ」
「させません」
「本当にできるかな?」
深淵の王が手をかざすと、教会の窓が全て黒い霧で覆われた。外からの光が完全に遮断される。
「みんな、逃げて!」
私は招待客に向かって叫んだ。
でも、扉も霧で塞がれてしまった。完全に閉じ込められている。
「逃がしはしない」
深淵の王が宣言した。
「全員、ここで絶望の底に沈むのだ」
その時、エリスが前に出た。
「あなたの相手は私です」
彼女の体が光に包まれる。暗闇の中で、その光は眩いほどに美しかった。
「真の聖女の力、見せてあげましょう」
エリスが光の槍を放った。それは深淵の王に向かって一直線に飛んでいく。
しかし——
「甘い」
深淵の王が片手で光の槍を掴み、握りつぶしてしまった。
「エリス様!」
「私程度では相手になりませんね」
エリスが苦笑いした。
「ルーナ、あなたの出番です」
私は深く息を吸った。
ついに、最後の戦いが始まる。
「アルベルト様」
私は振り返った。
「私を信じてくれますか?」
「もちろんです」
彼が私の手を握った。
「何があっても、あなたを信じています」
その言葉が、私に力を与えてくれた。
「深淵の王」
私は敵に向き直った。
「あなたの言う通り、私は愛の聖女です」
「それがどうした?」
「愛の力を、お見せしましょう」
私の体から、温かい光が溢れ出した。
それは、今まで体験したことがないほど強く、美しい光だった。
教会全体が、私の愛の光で満たされていく。
「な、何だ? この力は……」
深淵の王が動揺している。
「これが、本当の愛の力です」
私の光が、深淵の王の闇を押し返していく。
最終決戦が、ついに始まった。
窓の外には美しい青空が広がっており、まさに式にふさわしい天気だった。でも、私の心は複雑だった。
今日は人生で最も幸せな日になるはずなのに、同時に最も危険な日でもある。
「ルーナ様、お目覚めですね」
メリッサが静かに入ってきた。
「今日はいよいよですね」
「ええ……」
「大丈夫ですか? お顔が少し青ざめていますが」
「緊張しているだけです」
半分は本当だった。結婚式への緊張と、深淵の王への警戒——両方で心臓が早鐘を打っている。
「お支度を始めましょう」
メリッサと他の侍女たちが、丁寧に私を着飾ってくれた。真っ白なウェディングドレス、繊細なベール、そして母から受け継いだ真珠のネックレス。
鏡に映った自分は、まるでお伽話のお姫様のようだった。
「美しい……」
メリッサが感嘆の声を上げた。
「アルベルト様、きっと言葉を失われますよ」
その時、扉がノックされた。
「ルーナ、エリスです」
「どうぞ」
エリスが入ってきた時、彼女もまた美しいドレスを着ていた。淡いブルーのドレスが、彼女の金髪によく似合っている。
「素敵ですね、ルーナ」
「エリス様も、とてもお美しいです」
「ありがとう」
エリスが私に近づいてきた。
「準備はいかがですか?」
彼女の「準備」は、結婚式だけのことではないとわかった。戦いへの準備のことだ。
「はい。覚悟はできています」
「何があっても、私がお守りします」
エリスが真剣な表情で言った。
「今日は、あなたの大切な日ですから」
胸が熱くなった。
「ありがとうございます」
教会に向かう馬車の中で、私は城下町の様子を見ていた。街には多くの人々が集まっており、皆が私たちの結婚を祝福してくれている。
「聖女様、お幸せに!」
「素敵な式になりますように!」
人々の笑顔を見ていると、絶対にこの平和を守らなければという気持ちが強くなった。
教会に到着すると、既に多くの招待客が集まっていた。王様、大司教、城の職員たち、そしてトムをはじめとする子どもたちも、晴れ着を着て嬉しそうに待っている。
「聖女様!」
トムが駆け寄ってきた。
「すっごく綺麗です!」
「ありがとう、トム」
でも、私の目は会場の周囲を警戒していた。騎士たちが要所要所に配置されているのが見える。表面上は祝福に包まれているが、実際は戦場に近い緊張感があった。
教会の中に入ると、美しいオルガンの音色が響いていた。バージンロードの向こうに、アルベルトが立っている。
彼は礼装に身を包み、いつも以上にハンサムに見えた。私を見つめる瞳には、愛情と決意が込められている。
ゆっくりとバージンロードを歩きながら、私は幸せを噛み締めていた。
一年前、偽物の聖女として怯えながら生きていた私が、今こうして愛する人と結ばれようとしている。
祭壇の前まで来ると、アルベルトが微笑みかけてくれた。
「美しいです、ルーナ」
大司教が厳かに式を始めた。
「親愛なる皆様、今日はこの幸せなカップルの門出を祝うために——」
その時だった。
教会の扉が勢いよく開かれた。
「待て」
現れたのは、深淵の王だった。昨夜よりもさらに禍々しいオーラを纏っている。
会場がざわめいた。招待客たちが恐怖に震えている。
「何者だ!」
騎士たちが剣を抜いて警戒した。
「私は深淵の王」
男が堂々と名乗った。
「愛の聖女よ、ついにお前の幸福を終わらせる時が来た」
私はアルベルトの前に立った。
「何が目的ですか?」
「簡単なことだ」
深淵の王が邪悪に笑った。
「この世界から光を消し去ること。そのために、希望の象徴である愛の聖女を絶望に突き落とすのだ」
「させません」
「本当にできるかな?」
深淵の王が手をかざすと、教会の窓が全て黒い霧で覆われた。外からの光が完全に遮断される。
「みんな、逃げて!」
私は招待客に向かって叫んだ。
でも、扉も霧で塞がれてしまった。完全に閉じ込められている。
「逃がしはしない」
深淵の王が宣言した。
「全員、ここで絶望の底に沈むのだ」
その時、エリスが前に出た。
「あなたの相手は私です」
彼女の体が光に包まれる。暗闇の中で、その光は眩いほどに美しかった。
「真の聖女の力、見せてあげましょう」
エリスが光の槍を放った。それは深淵の王に向かって一直線に飛んでいく。
しかし——
「甘い」
深淵の王が片手で光の槍を掴み、握りつぶしてしまった。
「エリス様!」
「私程度では相手になりませんね」
エリスが苦笑いした。
「ルーナ、あなたの出番です」
私は深く息を吸った。
ついに、最後の戦いが始まる。
「アルベルト様」
私は振り返った。
「私を信じてくれますか?」
「もちろんです」
彼が私の手を握った。
「何があっても、あなたを信じています」
その言葉が、私に力を与えてくれた。
「深淵の王」
私は敵に向き直った。
「あなたの言う通り、私は愛の聖女です」
「それがどうした?」
「愛の力を、お見せしましょう」
私の体から、温かい光が溢れ出した。
それは、今まで体験したことがないほど強く、美しい光だった。
教会全体が、私の愛の光で満たされていく。
「な、何だ? この力は……」
深淵の王が動揺している。
「これが、本当の愛の力です」
私の光が、深淵の王の闇を押し返していく。
最終決戦が、ついに始まった。
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