【完結】偽物聖女ですが、恋だけは本物です

きゅちゃん

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第19話 愛と闇の最終決戦

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 教会全体が私の愛の光で満たされていく。
 温かく、優しく、そして強い——それは、今まで感じたことのない力だった。
 
「くっ......この光は......」
 深淵の王が苦しそうに顔を歪めた。
 
「これが愛の力です」
 私は一歩前に進んだ。
 「憎しみや絶望ではなく、人を思いやる心から生まれる力」
 
「そんなものに......負けるものか!」
 
 深淵の王が両手を広げると、黒いエネルギーが渦巻き始めた。教会の床が震え、窓ガラスがひび割れていく。
 
「みんな、伏せて!」
 
 黒い光線が私に向かって放たれた。その瞬間——
 
「させない!」
 
 アルベルトが私の前に立ちはだかった。
 
「アルベルト様、危ない!」
 
 でも、彼は微動だにしなかった。代わりに、私の手を強く握った。
 
「一人じゃない。僕も一緒に戦います」
 
 その瞬間、奇跡が起きた。
 
 私とアルベルトの手を繋いだ部分から、さらに強い光が溢れ出したのだ。二人の愛が一つになって、巨大な盾を作り上げた。
 
 黒い光線は、その盾に当たって消滅した。
 
「馬鹿な......二人の愛が共鳴している......」
 深淵の王が驚愕の表情を見せた。
 
「そうです」
 私は確信を持って言った。
 「愛は一人では完成しません。互いに愛し合うことで、無限の力になるのです」
 
 エリスも私たちの側に来た。
 
「私も加わります」
 
 エリスが私たちの手に触れた瞬間、光がさらに強くなった。
 
「仲間の愛、友情の愛......全ての愛が、力になります」
 
 トムたち子どもたちも、恐怖を押し殺して立ち上がった。
 
「俺たちも!」
 「聖女様のために!」
 
 子どもたちが手を繋いで輪を作る。その輪が、私たちを中心に広がっていく。
 
 招待客たちも、次々と立ち上がって手を繋ぎ始めた。
 
「聖女様を信じています!」
 「みんなで力を合わせましょう!」
 
 教会全体が、愛の光で包まれていく。
 
 深淵の王が後ずさりした。
 
「そんな......こんなはずでは......」
 
「深淵の王」
 私は彼に歩み寄った。
 「あなたは、なぜそこまで光を憎むのですか?」
 
「それは......」
 
 初めて、彼の表情に迷いが見えた。
 
「かつて、私も愛を信じていた」
 
 深淵の王が静かに語り始めた。
 
「大切な人がいた。家族も、友人も。だが——」
 
 彼の声が震えた。
 
「戦争で全てを失った。愛する者たちは皆、光の名の下に殺されたのだ」
 
「それは......」
 
「光の神を信じる国が、闇の神を信じる国を侵略した」
 深淵の王の瞳に涙が浮かんだ。
 「正義という名の虐殺。希望という名の絶望」
 
 私は息を飲んだ。彼もまた、被害者だったのだ。
 
「だから、私は全ての光を憎んだ。愛を信じた自分を憎んだ」
 
「でも——」
 私は優しく言った。
 「それは本当の光ではありません」
 
「何?」
 
「人を傷つける光なんて、偽物です」
 私は彼の手を取った。
 「本当の光は、全ての人を照らします。光も闇も、分け隔てなく」
 
 深淵の王の手が震えた。
 
「あなたも、愛されるべき存在なのです」
 
 私の光が、彼の心に触れた。
 
 すると、深淵の王の体から黒いエネルギーが抜けていく。まるで、長年の呪縛が解けるように。
 
「私は......私は......」
 
 彼が膝をついた。涙が頬を伝っている。
 
「許してくれ......私は、間違っていた......」
 
「もう大丈夫です」
 私は彼を抱きしめた。
 「これからは、一緒に生きましょう」
 
 深淵の王——いや、一人の人間が、子どものように泣いていた。
 
 その時、教会の霧が晴れ始めた。窓から暖かい光が差し込んでくる。
 
 戦いは終わった。
 
 大司教が進み出た。
 
「素晴らしい......これこそ、真の愛の力です」
 
 招待客たちから、拍手が起こった。
 
「聖女様!」
 「愛の力で、闇を救った!」
 
 私はアルベルトを見つめた。
 
「ありがとうございます。一緒に戦ってくれて」
 
「当然です」
 彼が微笑んだ。
 「僕たちは、これから夫婦になるのですから」
 
 そうだ。まだ、結婚式は終わっていない。
 
 大司教が再び祭壇の前に立った。
 
「それでは、式を続けましょう」
 
 改めて、私とアルベルトは向かい合った。
 
「アルベルト・クリア」
 大司教が厳かに問う。
 「あなたは、ルーナ・スミスを妻として、病める時も健やかなる時も、愛することを誓いますか?」
 
「誓います」
 
「ルーナ・スミス」
 今度は私に向かって。
 「あなたは、アルベルト・クリアを夫として、病める時も健やかなる時も、愛することを誓いますか?」
 
「誓います」
 
 大司教が微笑んだ。
 
「それでは、指輪の交換を」
 
 アルベルトが私の薬指に指輪をはめる。私も、彼の指に指輪をはめた。
 
「神の御名において、二人が夫婦であることを宣言します」
 
 そして——
 
「新郎は新婦にキスをしてもよろしい」
 
 アルベルトが私を抱き寄せた。
 
「愛しています、ルーナ」
 
「私も、愛しています」
 
 優しいキスが、私たちの永遠の愛を封印した。
 
 教会が拍手と歓声に包まれる。
 
 外では、鐘が鳴り響いていた。
 
 偽物の聖女だった私が、本物の愛を見つけた。
 
 そして今、新しい人生が始まろうとしていた。
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