【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん

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近衛騎士団

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翌朝、ザイフェルト家の屋敷は黄金色の朝日に照らされていた。ベルティアは早くに目を覚まし、部屋の窓から庭園を眺めていた。三つの宝玉による結界が薄く輝き、屋敷全体を包み込んでいる。

静かにドアがノックされ、侍女が朝食を知らせにきた。食堂へ向かう廊下で、ベルティアはヴァルター侯爵と遭遇した。

「おはよう、ベルティア」彼は穏やかに挨拶した。普段の厳格な表情とは異なり、朝の柔らかな光の中で彼の表情は優しく見えた。

「おはよう、侯爵」彼女は微笑み返した。「よくお休みになれましたか?」

「ああ、久しぶりに安眠できた」ヴァルターは窓の外を見やった。「この結界があると思えば、安心感が違うな」

食堂では、ウィルヘルム伯爵がすでに待っていた。三人は朝食をとりながら、これからの戦略について話し合う。

「エルミナージュ家からの使者が到着した」ウィルヘルムは伝書を広げた。「フェリックス伯爵は予定通り、今日の午後にはここに到着する予定だ」

「四つ目の宝玉も揃う」ヴァルターは頷いた。「これで完全な防御陣が張れる」

「それだけでは不十分です」ベルティアは真剣な表情で言った。「守るだけでは、エリーゼたちの計画を止められません。私たちは王太子の婚礼を阻止しなければ」

「だが、どうやって?」ウィルヘルムは眉をひそめた。「王太子の婚礼は国家行事だ。我々が公然と反対すれば、それこそ反逆罪に問われる」

「私には考えがあります」ベルティアは静かに言った。「エリーゼが王太子を操っているのは、禁忌魔法『愛の支配』のせいだと思います。その魔法を解けば、王太子は真実に気づくはず」

「だが、その魔法を解く方法は?」ヴァルターが尋ねた。

ベルティアは手元の風の宝玉を見つめた。「宝玉には、禁忌魔法を打ち消す力があるはずです。私はリーデンで学んだ『浄化の風』という魔法と組み合わせれば...」

彼女の言葉が途切れた。屋敷の警報が鳴り響いたのだ。

「何が?」ウィルヘルムは立ち上がった。

慌てふためいた執事が駆け込んできた。「伯爵様!こ、近衛騎士団の旗印にございます!領地の境界に集結しております!王太子殿下のご命令として、ベルティア令嬢の身柄を引き渡すよう要求しています!」

三人は急いで屋敷の塔へと上り、遠くを見据えた。確かに、物々しさと優雅さを兼ね備えた近衛騎士団の一団が境界線に集結していた。彼らの旗には帝国の紋章が輝いている。

「およそ百名...」ヴァルターは状況を分析した。「並の騎士なら我々の結界を破ることはできない。しかし...」

彼は眉をひそめた。「騎士団の中央に怪しい集団がいる。黒いローブを身にまとった者たちだ」

「結社の魔術師たち!」ベルティアは息を呑んだ。「彼らは結界を破る方法を知っているかもしれません」

ウィルヘルムは即座に命令を下した。「全軍に防衛態勢を取らせろ!そして、エルミナージュ伯爵への伝書を送れ。状況を伝える」

ベルティアは決断した。「私が彼らと交渉します」

「何を言っている?」ヴァルターが驚いた。「それは危険すぎる!」

「でも、このままでは凄惨な戦闘になります」彼女は静かに言った。「無実の騎士たちが犠牲になるかもしれない。彼らはただ命令に従っているだけで、結社の計画など知らないはず」

「ベルティア...」ヴァルターは彼女の決意に満ちた瞳を見つめた。「無茶はするな」

「大丈夫です」彼女は微笑んだ。「私は逃げも隠れもしません。ただ、時間を稼ぐだけです」

ベルティアはウィルヘルムとヴァルターの了承を得て、結界の内側まで進み、近衛騎士団と対峙した。境界の向こう側には、金の甲冑に身を包んだ騎士たちが整列していた。その中央には、禍々しい黒いローブを纏った魔術師たちがいた。

「私はベルティア・フォン・ロゼンクロイツです!」彼女は堂々と名乗り出た。「何のご用でしょうか?」

騎士団の隊長が一歩前に出た。「ベルティア・フォン・ロゼンクロイツ、王太子クレイン殿下の命により、国家反逆罪の容疑で逮捕する!直ちに投降せよ!」

「何の証拠があって、私を反逆者と呼ぶのですか?」ベルティアは毅然として問いかけた。

「証拠はすでに揃っている」

隊長の後ろから、一人の女性が現れた。エリーゼ・ネクロンだった。彼女は純白のドレスに身を包み、まるで聖女のような佇まいだったが、その目には爬虫類のように冷酷な光が宿っていた。

「ベルティア、お久しぶり」エリーゼは優雅に微笑んだ。「随分と遠くまで逃げたものね」

「エリーゼ...」ベルティアは冷静さを保った。「私は逃げてなどいない。真実を守るために行動しているだけです」

「真実?」エリーゼは芝居がかった驚きの表情を見せた。「あなたの真実とやらを聞かせてもらえるかしら?」

騎士たちの視線が二人の間を行き来した。彼らは混乱しているようだった。ベルティアはそれを好機と捉えた。

「エリーゼ・ネクロン、あなたは闇の結社の一員です。あなたの目的は四大宝玉を集め、魔王を復活させることでしょう?」

エリーゼの表情が一瞬強張った。彼女は周囲の騎士たちの反応を窺い、すぐに愛らしい笑顔を取り戻した。

「何を言っているの?私はエリーゼ・ブラウンよ。ネクロンなんて名前は聞いたこともないわ」彼女は騎士たちに向かって言った。「ほら、見てください。彼女は妄想に取り憑かれているのです」

「恥ずべき嘘つきね」ベルティアは静かに、しかし力強く言った。「グレゴリー教授は真実を話してくれました。そして、あなたは彼を殺した」

エリーゼの目が氷のように冷たくなった。「隊長、これ以上時間を無駄にする必要はありません。彼女を連行するのです」

隊長は命令に従おうとしたが、結界によって阻まれた。「な、何だ?この力は...」

「これは四大精霊の守りです」ベルティアは高らかに宣言した。「帝国を守護する力であり、あなた方騎士たちが本来守るべきものです」

彼女は風の宝玉を掲げた。翠緑色の宝石が光を放ち、風が周囲を舞った。

「近衛騎士の皆さまがた、よく聞いていただきたい。私は国家の反逆者ではありません。むしろ、帝国を救おうとしているのです。エリーゼ・ネクロンこそが、帝国の危機をもたらす者です」

もともと急な命令に疑念はあったのだろう。四大貴族の威信を知らぬわけもない騎士たちの間で動揺が急速に広がり始めた。それを感じ取ったエリーゼは焦りの表情を浮かべている。

「隊長、彼女は魔法で貴方たちを惑わせようとしています!すぐに結界を破りなさい!」

「しかし、王太子妃殿下...この力は...」

「黙りなさい!」エリーゼの声が鋭く変わった。「私の言うことを聞きなさい!」

その瞬間、彼女の目が赤く光り、隊長の表情が空虚になった。エリーゼは彼を操り始めたのだ。

「そこまでだ、エリーゼ」

背後から声がした。振り返ると、そこにはレイヴンとエレノアの姿があった。そして彼らの後ろには、フェリックス・エルミナージュ伯爵と、水の宝玉を護持する騎士団が控えていた。

「援軍が...」ベルティアは安堵の表情を見せた。

いまや本性を露わにしたエリーゼの顔が怒りで歪んだ。「貴方たちが何をしようと無駄よ!王太子は私のもの、そしてすぐに帝国も私のものになる!」

彼女は黒いローブの魔術師たちに合図を送った。「結界を破りなさい!そして、宝玉を奪え!」

魔術師たちは一斉に暗黒魔法を展開し始めた。強大な闇の力が結界にぶつかり、弾かれていく。しかし、彼らの執拗な攻撃に、結界はわずかにひび割れ始めた。

「結界が...」ベルティアは不安そうに言った。

「心配するな」フェリックスが前に出て、水の宝玉を掲げた。「今、四つ目の力を加える」

彼の手から青い光が放たれ、結界に融合した。緑、赤、黄、そして青。四色の光が交わり、完全な防御陣が形成された。

「四大精霊の完全なる守り...」エレノアが感嘆の声を上げた。

エリーゼは怒りに震えていた。「このままでは計画が...」

突然、彼女は表情を変え、優雅な微笑みを浮かべた。「いいでしょう。今日のところは引きます。でも覚えておきなさい。一週間後の婚礼の日には、すべてが変わるわ」

彼女は黒いローブの魔術師たちに目配せし、撤退の合図を送った。

「隊長、今日の任務は終了です。王都に戻りましょう」

近衛騎士団は混乱した様子ながらも、エリーゼの指示に従って撤退していった。エリーゼは最後にベルティアを振り返り、冷たい視線を送った。

「次は逃がさないわよ、ベルティア」

彼女たちが去った後、ベルティアは緊張から解放され、膝から崩れ落ちそうになった。ヴァルターが駆け寄り、彼女を支えた。

「大丈夫か?」

「はい...」彼女は微かに微笑んだ。「ただ、緊張で力が抜けただけです」

ヴァルターは彼女をしっかりと支え、屋敷へと導いた。その腕の中で、ベルティアは不思議な安心感を覚えた。

「とても立派だった」彼は静かに言った。「あのような場で冷静に対応できる者はまずおらぬ」

「ありがとう...でも、これでエリーゼの計画を止められたわけではありません」ベルティアは真剣な表情に戻った。「婚礼まであと一週間...私たちは何としても阻止しなければ」

ヴァルターは彼女を見つめた。その目には、尊敬と、そしてもう一つ、彼女が読み取れない感情が宿っていた。

「必ず阻止しよう」彼は静かに言った。「そのために、私はどんな犠牲も厭わない」

その言葉に、ベルティアの心が妙な高鳴りを覚えた。彼女は急いで視線を逸らし、屋敷へと歩を進めた。

これから始まる最終決戦に向け、彼女の心は決意と、そして名前のつけられない感情で揺れ動いていた。​​​​​​​​​​​​​​​​
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