転生者Ｇ－転生前はゴキブリでした－

Ⅷ 死期と式

ファランの怒り

「ぐぬぬぬぬ。
だから私は不審者などではない。
マラカーンが領主、ファラン=ロズラファエルだと言っておろう!」
「騙されるな、お前達。
こいつも反乱軍の仲間に違いないぞ!」
「この下級兵めがぁっ!
マリエッタ、王家からの招待状をこいつの鼻っ面に突きつけてやれ!」
「はい、これです!」

差し出された手紙に王家の紋章を確認し、兵士長は目を剥いて驚いた。
その場で全員が敬礼する。

「こ、これは御無礼を致しました!
ロズラファエル公爵」
「全員、そこになおれ!
こんな体たらくではとても、有事に国王をお護りする事など出来んぞ」
「も、申し訳御座いません」

平身低頭で謝罪する兵士長。

「まったく、これだけ人員がいるならもっと寄越せば良いものを。
よく聞け、下級兵。
招待状は確かに受け取ったが、私はあの王子が大嫌いでな」
「え?
それはどういう……」
「H、スケッチ、サーティワンタッチ!」

光の枠が兵士達を囲み、身ぐるみ一式がすべて原材料へと姿を変える。

「こ、こ、これは?!」

丸裸となった三十一人の男達が前屈みになって逃げ出した。
その背中にすかさず光弾が撃ち込まれる。

「バラけていた兵士共を一ヶ所に集めたいと言う事だったが、あんな感じで良かったかな。
ハルナーフ嬢」

ファランはご満悦な様子で言った。

「はい、ご協力感謝しますわ～」

隠れていた廃屋から姿を見せたのはハルナーフと反乱軍の同志達だ。

「あの王子。
王都に来なけれは税を二倍に増やすなどと、マラカーンの惨状を見ている者とは到底思えぬ招待状を寄越しおって。
こうなったらＧの為にも、徹底的に結婚式を邪魔してくれるわ!」
「あら、心強い。
では場所を変えて、同じ手順で参りましょう～」

思わぬ援軍の登場で益々活気付いた反乱軍は兵力差もなんのその、王国軍と互角に渡り合っていた。
城壁の上からファラン達の活躍を見ていたＧは、改めて仲間達に感謝した。
ふわりとマントを翻し、大聖堂の庭へと着地する。
結婚式が始まってから、どれくらい時間が過ぎただろうか。
外の喧騒に気付いていない訳ではないだろうが、あのクレードがこんな事で式を中止するとは思えない。
強さと美しさを兼ね備えた王子が宿す、異常なまでのユリカへの執着心。
その歪んだ愛情をこのまま成就させる訳にはいかなかった。
侵入者に気付いた警備兵の一団を軽めのＧショックで倒すと、Ｇは大聖堂の扉を開いた。