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第4章
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リオには、礼儀作法の講師だけでも、3人がつけられた。
歩き方、話し方、食事の作法、茶会の作法、夜会の作法…
平民として暮らしてきたリオは、全てを一から学んでいかねばならない。
他にも、国の歴史、公爵家の歴史、国と公爵家の関わり、他の貴族との関わり、力関係、覚えるべきことはいくらでもあり、朝から晩まで、リオの時間は分単位で拘束されていた。
ラグアルといられる時間は、夕食から目覚めるまで、その時間だけだ。
それでも、リオは弱音を吐くことなく、悪態をつくこともなく、ただ黙って、黙々と、ひたすらに、取り組んでいた。
毎夜丁寧に湯浴みをさせられ、日に焼けてボロボロになっていた肌には香油を塗り込まれる。
伸ばし放題で、ぱさぱさと傷んだ髪にも同じように香油を揉み込まれ、肩上で整えられた。
本来の健康的な乳白色の頬には、ほんのりと赤みがさし、薄茶色の髪はリオが動くと、ふわふわと柔らかく靡く。
何より、薄茶色の、いつもどこか潤んでいるその大きな瞳が、周囲の者の目を引いた。
公爵も夫人も、使用人たちも、リオの日に日に愛らしさを増すその姿に、ただただ、驚くばかりだった。
ラグアルだけは驚くことはない。元から愛らしく、愛おしくてたまらないからだ。
どんな姿のリオも、ラグアルにとっては、
同じように、愛らしく、愛おしいものだ。
今夜は、公爵夫妻と初めて夕食を共にする。
緊張するリオの前には、たくさんのカトラリーが並んでいた。
リオはこの1月学んできた作法を思い出しながら、ゆっくりとカトラリーを手に取った。
「リオ、そんなに緊張しないで。大丈夫。とても上手になっているよ。」
ラグアルが優しくリオを見守る。
まだ拙さが残るが、目に余る程ではない。むしろひと月でここまで出来るようになったリオの努力に、公爵夫妻は感心していた。
無事に食事が終わると、早く自室へと戻りたがるラグアルを公爵が引き留めた。
「ラグアル、リオくん、教会へと申請を出した。向こうの都合がつき次第、君たちが本物の運命の番かどうか、確認のための儀式に臨んでもらう予定だ。」
「わたしたちは、信じているのよ。でもね、そうではない方々も少なからずいるの。」
「教会に認められれば、誰も何も言いようがないのだ。これは、決定事項だ。」
部屋に戻ると、ラグアルはいつものようにリオを膝に乗せ、その匂いに酔いしれていた。
リオが不安に感じている様子は、ラグアルにも伝わっている。
「大丈夫だよ、リオ。わたしたちは、間違いなく、運命だ。運命の番なんだよ。心配しなくてもいい。」
そう、間違いなく運命で、番だ。
教会で認められれば、リオはラグアルのまごう事なき『運命の番』として、世に認められる。
でも、万が一、万が一、違っていたら?
『運命の番』ではなく、ただの番だと言われたら、ラグアルはどんな反応を示すのか。
認められることへの期待と、認められないことへの不安とで、リオはそれからずっと落ち着かない日々を過ごした。
それだけに、教会で認められた、その日、リオは深く安堵し、心の底から運命に感謝し、喜びで胸が満ち溢れていた。
だから、気が付くことができなかった。
嬉しさで、高揚したリオの隣で、
その日、ラグアルが感じていた微かな心の揺れを。
教会に認められたとの報告を聞き、公爵夫妻も覚悟を決めていた。
あの2人を支えていこうと。
「ラグアルの運命の子だ。あの子なら、きっと、大丈夫だろう。」
「そうですわね。…きっと、大丈夫ですわ。」
2人は静かに、果実酒を口にした。
少し、甘く、それでいて、微かな酸味が口に拡がる。
2人は何も言わずとも、同じことを考えていた。
リオにとって、貴族となるべく厳しい教育を受けることは辛いことかもしれない。
でも、この先1番辛いことは…………
ラグアルがこれまで、こよなく愛し、慈しんできた、美しく聡明な、あの
ユアンと比べ続けられることだろう、と。
歩き方、話し方、食事の作法、茶会の作法、夜会の作法…
平民として暮らしてきたリオは、全てを一から学んでいかねばならない。
他にも、国の歴史、公爵家の歴史、国と公爵家の関わり、他の貴族との関わり、力関係、覚えるべきことはいくらでもあり、朝から晩まで、リオの時間は分単位で拘束されていた。
ラグアルといられる時間は、夕食から目覚めるまで、その時間だけだ。
それでも、リオは弱音を吐くことなく、悪態をつくこともなく、ただ黙って、黙々と、ひたすらに、取り組んでいた。
毎夜丁寧に湯浴みをさせられ、日に焼けてボロボロになっていた肌には香油を塗り込まれる。
伸ばし放題で、ぱさぱさと傷んだ髪にも同じように香油を揉み込まれ、肩上で整えられた。
本来の健康的な乳白色の頬には、ほんのりと赤みがさし、薄茶色の髪はリオが動くと、ふわふわと柔らかく靡く。
何より、薄茶色の、いつもどこか潤んでいるその大きな瞳が、周囲の者の目を引いた。
公爵も夫人も、使用人たちも、リオの日に日に愛らしさを増すその姿に、ただただ、驚くばかりだった。
ラグアルだけは驚くことはない。元から愛らしく、愛おしくてたまらないからだ。
どんな姿のリオも、ラグアルにとっては、
同じように、愛らしく、愛おしいものだ。
今夜は、公爵夫妻と初めて夕食を共にする。
緊張するリオの前には、たくさんのカトラリーが並んでいた。
リオはこの1月学んできた作法を思い出しながら、ゆっくりとカトラリーを手に取った。
「リオ、そんなに緊張しないで。大丈夫。とても上手になっているよ。」
ラグアルが優しくリオを見守る。
まだ拙さが残るが、目に余る程ではない。むしろひと月でここまで出来るようになったリオの努力に、公爵夫妻は感心していた。
無事に食事が終わると、早く自室へと戻りたがるラグアルを公爵が引き留めた。
「ラグアル、リオくん、教会へと申請を出した。向こうの都合がつき次第、君たちが本物の運命の番かどうか、確認のための儀式に臨んでもらう予定だ。」
「わたしたちは、信じているのよ。でもね、そうではない方々も少なからずいるの。」
「教会に認められれば、誰も何も言いようがないのだ。これは、決定事項だ。」
部屋に戻ると、ラグアルはいつものようにリオを膝に乗せ、その匂いに酔いしれていた。
リオが不安に感じている様子は、ラグアルにも伝わっている。
「大丈夫だよ、リオ。わたしたちは、間違いなく、運命だ。運命の番なんだよ。心配しなくてもいい。」
そう、間違いなく運命で、番だ。
教会で認められれば、リオはラグアルのまごう事なき『運命の番』として、世に認められる。
でも、万が一、万が一、違っていたら?
『運命の番』ではなく、ただの番だと言われたら、ラグアルはどんな反応を示すのか。
認められることへの期待と、認められないことへの不安とで、リオはそれからずっと落ち着かない日々を過ごした。
それだけに、教会で認められた、その日、リオは深く安堵し、心の底から運命に感謝し、喜びで胸が満ち溢れていた。
だから、気が付くことができなかった。
嬉しさで、高揚したリオの隣で、
その日、ラグアルが感じていた微かな心の揺れを。
教会に認められたとの報告を聞き、公爵夫妻も覚悟を決めていた。
あの2人を支えていこうと。
「ラグアルの運命の子だ。あの子なら、きっと、大丈夫だろう。」
「そうですわね。…きっと、大丈夫ですわ。」
2人は静かに、果実酒を口にした。
少し、甘く、それでいて、微かな酸味が口に拡がる。
2人は何も言わずとも、同じことを考えていた。
リオにとって、貴族となるべく厳しい教育を受けることは辛いことかもしれない。
でも、この先1番辛いことは…………
ラグアルがこれまで、こよなく愛し、慈しんできた、美しく聡明な、あの
ユアンと比べ続けられることだろう、と。
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