あまのじゃくの子

栗原みるく

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第10話

36年前の過去~体育の授業

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 私は1年1組の子供達と一緒に運動場にいた。
 
 周りにはブランコや滑り台、鉄棒、うんていなどが設置されている。



 青々とした空に絵に描いたような白い雲が浮かび、サンサンと太陽の光が
 照りつけている。



子供達は体操服に赤白帽をかぶっている。とりあえず私は用務の先生に頼んで
学校に置いてあるジャージを借りた。私と子供達はゴールとゴールのちょうど
真ん中まで移動する。しゃがんで石や砂を触る子供の姿や無邪気にはしゃぐ子供達を
眺め、私もあんな風に砂遊びをして遊んでいたなあと懐かしい光景を思い出す。




「えーと、今日はみんなでサッカーをしようと思います」

「わあああ。サッカー大好き」

 子供達は無邪気に喜んでいる。

〈チームどうしようかな…〉

私は子供達を見渡し考える。



相変わらず、雪子ちゃんは友達に囲まれている春陽はるき君から
視線を逸らして、そっぽを向いていた。


ったく、しょうがないな…。


ここは親として春陽はるき君と雪子ちゃんを同じチームにしてあげようかな…。

なんて優しい親なのかしら…

それくらいならいいよね…。

その程度じゃ未来にさほど影響ないよね…。


「それじゃ、Aチームは帽子の色は赤のままにして、Bチームは帽子の色を
白にしてください」

「はあーい」
 元気がいい子供達の返事。

「それじゃ、はじめ」

私は首から下げた笛を手に取り、思いっきり息を吹き込む。

『ピーッ』

笛は大きく運動場に鳴り響き、ゲームがスタート。

先行はAチームだ。Bチームは守りに徹している。
春陽はるき君と雪子ちゃんはBチーム。
みんな、元気よくボールを追いかけている。
さすが、春陽はるき君だ。あっという間に、相手チームからボールを
足で奪う。春陽はるき君はスポーツもできるらしい。

そして、ボールはBチームにわたり、今度はBチームの攻撃。春陽はるき君は
次々と止めに入る子供達を交わし抜いていく。

〈ポワ…なんか、春陽はるき君ってちょっとカッコいいかも…。
なんて、私はなに小学生の子供相手にトキメいてるんだ〉

いかん、いかん…今のは削除だ。

私は気を取り直して子供達について走る。



私はどっちかというと勉強より体を動かす方が好きだった。


なんか、子供に戻ったみたいで楽しい。

でも、子供の頃とは違う…体力が続かない…

「ん?」

私はふと雪子ちゃんに視線を向ける。

雪子ちゃんは春陽はるき君を見ていた。


―――その時だった、勢いよくボールが雪子ちゃんに向かって飛んできた。

「え…あぶ…ない…」
私は一瞬、瞼を閉じる。

 雪子は立ちすくんだまま動けないでいた。


―――ーーと、そこへスーパーヒーローみたいに春陽はるき君がすかさず
    足でボールをキャッチする。


〈ホッ…〉
私はひとまず安心する。

「っぶねーな、どこ向かって蹴ってんだよ」

と、春陽はるき君は空高くボールを蹴った。

「わりぃ、春陽はるき
味方の男子は手を広げて『ごめん』という仕草で合図を送る。


 ボールは味方の男子生徒が走る足元に落ち、そのまま男子生徒はシュートを決める!

「おっしゃああ…」

無邪気にたわむれる子供達の中にポツリと立ち尽くす雪子ちゃんの姿が
私の目に映る。雪子ちゃんは春陽はるき君の姿を目で追いかけていた。



キンコーンカンコーン

授業終了のチャイムが鳴る。

「はい、そこまで」



「試合は3対3の引き分けです」


 その後、子供達は散らばり教室に戻っていった。


「あ…ハル…」

雪子ちゃんが春陽はるき君に声をかけていた。

「ん?」

春陽はるき君の視線が雪子ちゃんに向く。


「さっ…きは…あ…」


春陽はるきくーん、はやくー」
遠くから女の子達が呼ぶ。

「……」

 雪子は口を閉ざした。

「大丈夫だったかよ」

 ボソっと呟く春陽はるき君の横顔は頬を赤く染め、少し照れた表情を見せていた。



え、ま、まさか…春陽はるき君も雪子ちゃんのことを……



春陽はるきくーん」

 また、遠くから女の子達が呼ぶ。



「別に…あんなボール…アンタに助けてもらわなくたって取れたっていうの!」


「え…」

ちょっと…雪子ちゃん…


「…ああ、そうかよ」


雪子ちゃんは視線を逸らし、そっぽを向いていた。
そして、春陽はるき君もそっぽを向いている。

春陽はるきー」

 今度は遠くで男の子が呼んでいる。


春陽はるき君は彼らに視線を向け「おおー」と、走っていってしまった。


ポツリと立ち尽くす雪子ちゃんの視線は春陽はるき君の背中を見ていた。


「なんで、あんなこと言ったの?」

私は雪子ちゃんの肩にそっと手を添えて聞いた。

雪子ちゃんは黙ったままだった。
その顔はやがて俯き加減になっていった。

「あ、ねぇ、今日さ、帰りにケーキでも食べに行こうか」
「……」
「ケーキ好きでしょ? 私でよければ恋バナ聞くよ」

私は雪子ちゃんを元気づけようと言った。


「なんで?」

「え?」


「……別に…ケーキなんか好きじゃないよ。バカじゃないの」


「……」

そう言うと、雪子ちゃんは早々と行ってしまった。

「……」



 ヒュルルル……
  

 私の心に冷たい風がひんやりと通り過ぎていった……





 母の天の邪鬼は幼少時代からだったんだね(笑)……。

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