あまのじゃくの子

神宮寺琥珀

文字の大きさ
上 下
58 / 59
第57話

告白ーーー社長のことが好きです

しおりを挟む
 引っ越しの時、父から受け取った母の手紙を思い出した。

 

 そこにはこう書かれていた。




 【本気で誰かを好きになるようなことがあれば好きな人に「好き」だって
 言える子になって欲しいです。それがお母さんからのお願いです】






                    (手紙の中の一部です)



 フラれてもいい…後悔したくないと思ったーーー。



 私と春陽はるき社長は駐車場まで戻って来ていた。



「社長…」


「―――ん?」


「私…社長のことが好きです―――ーー」



 気づいたら口走っていた。

「……俺はお前よりも20以上も離れてるぞ、、、、」


「かまいません。歳の離れた恋人はたくさんいます」


「やべぇ、もう限界だ」


「……?」


 春陽はるきはその仕草を逸らし、理性を保つのもこれまでかと限界の所まで
 きていた。ふっ…と気づけば、心の声がポロリと小さく漏れていた。



「え?」

  
 ドッキッ…… トクン、トクン、トクン


 心臓の鼓動が早く高鳴っている。身体中が熱い―――

 ーーー頬が真っ赤に火照てってきた。

 

 ―――その時、何が起こったのかわからなかったが私は春陽はるき社長の
 腕の中にいた。抱きしめられた体はどんどん熱くなり、心音は
 ドキドキが止まない。


 その後、春陽はるき社長は少しだけ体を離すと、優しい眼差しを
 私に向けてきた。


 ドキ……


 次第に春陽はるき社長の唇が近づいてきて…私は硬直したまま、
 その柔らかい唇の感触に覆われた―――ーー。


「!!」


 甘くてトロトロに蕩けそうなキスに私はゆっくりと瞼を閉じるーーー。



 数秒続いたキスに体の芯まで溶けていくようだーーー。


 春陽はるき社長は唇を少し離すと優しい笑みを私に向けた。


「帰るか」

「はい…」


 その後、照れ笑いを浮かべた顔を隠すようにして春陽はるき社長は
 運転席へと乗り込んだ。


 私は頬を赤くしながらも助手席へと乗る。



 〈春陽はるき社長とキスしちゃった……。もしや、これはドッキリ?〉



 この後、どうするんだろ? 私は春陽はるき社長に視線を向ける。


「あの…社長…この後は…」

「お前をお持ち帰りするーーー」


 春陽はるき社長は真顔でそう言いながら車を出した……。



 え? お持ち帰りって……?


「……」



 私の熱く火照った体はドキドキしながらも凍りつくように固まっていた―――ー。



しおりを挟む

処理中です...