追放された元・最強魔導士、辺境でスローライフを始めたらなぜか国ができました

黒川ねこ

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1章

第57話:三巫女激突、再構成領域の戦火

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空はねじれ、光と闇が交錯していた。旧王都ヴァレムの上空に広がる巨大な術式――《再構成領域:コーデックス・ゼロ》。それは世界の“法則そのもの”を書き換える、アルティナの象徴とも言える術。

「空間、完全に反転してる……! あそこに踏み込んだ瞬間、重力も時間の流れも変わるわ」

エルフィアの声が低くなる。彼女は精霊の封印術式を解析し、瞬時に構造の“異常性”を見抜いた。

「でも、それでも行くしかない。あの領域の中で人々が囚われている限り――」

「私たちが行かなきゃ、誰が行くの」

リリアは一歩、結界の外へと踏み出す。風が彼女の背に吹き、守護の紋が淡く光る。

二人の巫女が、並んで領域内へと足を踏み入れた瞬間。
重力が変わる。足元が浮き、空間が渦巻く。だが彼女たちは構わず進む。心の中にあるのは、ただ一つ――“守るべき人々”の存在。

「来たのね」

アルティナの声が響く。術式の中心に立つ彼女は、その手に構造変換の核を抱え、ゆっくりとリリアたちに向き直る。

「この街を……これ以上、弄ばせない!」

リリアが叫ぶ。風の精霊が彼女の背から飛び立ち、雷鳴のような一閃を放つ。

「……なら、見せてみなさい。あなたたちの“理想”ってやつを。私は現実主義者なの。理想を語るなら、結果で語って」

次の瞬間、空間が爆ぜた。アルティナの再構成領域が反応し、虚空から“自律型構造体”が現れる。
それは精霊の形を模した、けれど精霊ではない――世界の法則を強引に型にはめた“機械の精霊”。

「精霊ですらない存在を……!」

エルフィアが詠唱を開始し、封印術式で迎撃に入る。
構造体と衝突した瞬間、結界が砕け散り、爆風が街の中心に広がる。

「これは、単なる戦いじゃない……! これは、“世界のあり方”そのものを問う戦争だ!」

リリアが再び詠唱し、空へ向けて祈りを放つ。調停の紋が展開され、風・水・火の精霊たちが呼応する。だが、彼女の魔力の波が、アルティナの領域と干渉し、強烈な“拒絶”を生む。

「この術式領域……完全に、“理想を拒絶する空間”として構成されてる!」

「なら……その拒絶に、意志で抗うしかない!」

リリアとエルフィアの術式が重なり合い、精霊たちと共に空を裂く。その瞬間、アルティナの目が細まる。

「……ほんの少しだけ、面白いと思った」

彼女は術式核を掲げ、空間の制御をさらに強めた。

「でも、これはまだ“最初の波”よ。本番は――あなたたちが“正解じゃない”と気づいた時」

激突の中心に、三つの力が集まり始める。

調停。封印。そして、再構成。

答えなき未来に、最初の決着が迫っていた。
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