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翌朝、目が覚めると隣には裸のまま眠っている彼の姿があったので昨夜の出来事を思い出して赤面していると彼も目を覚ましたようで目が合った途端に微笑みかけられたことでますます恥ずかしくなってしまった。そんな私の様子を楽しむかのように見つめてくる彼を恨めしげに睨んでいると不意に手を握られたので握り返しながら呟いた。「これからもずっと一緒にいてくれますか?」それに対して即答されたことで嬉しくなった私は自分から抱きつくとその胸に顔を埋めて幸せを噛み締めていた。こうして、私達は恋人同士になったわけだがその後も順調に愛を育んでいき幸せな家庭を築くことになるのだがそれはまた別のお話である……。
ー完ー
「ふぅ……」
一息ついてペンを置くと背もたれに寄りかかり天井を見上げる。
ようやく仕事が終わったという達成感に浸りながら背伸びをしていると、扉がノックされて一人のメイドが入ってきた。
「お疲れ様です、お嬢様。お茶をお持ち致しました」
そう言ってテーブルの上にカップを置いた後、ポットから紅茶を注ぐとそれを差し出してくれる。お礼を言って受け取ると一口飲んでホッと息を吐いた。その様子を微笑みながら見ていた彼女に問いかける。
「ねぇ、今日の予定はどうなってるのかしら?」
その問いに彼女は手帳を取り出すと読み上げ始めた。
「本日のご予定ですが、午前中はダンスのレッスンが入っております。午後からは貴族の方々との会食の予定が入っていますね」
それを聞いて思わず顔を顰めてしまう。それを見て苦笑した彼女が慰めるように声をかけてきた。
「まあまあ、これも未来の旦那様のためだと思って頑張りましょうよ」
そう言われると何も言い返せなくなってしまうため渋々了承することにした。
その後、身支度を整えた後で馬車に乗り込むと目的地に向かって出発したのだった。

***
到着するまでの間、窓の外を眺めながら物思いに耽っていた。
(はぁ……早く終わらないかしら)
そんなことを考えているうちに目的の場所に到着したようだ。馬車を降りると目の前の建物を見上げる。そこには立派な門構えをした屋敷があった。ここが今日、お世話になる貴族のお屋敷のようだ。
緊張しながら中に入ると使用人に案内されて応接室へと向かった。そこでは既に先客が待っていたようで挨拶をするために近づいていくと見覚えのある顔を見つけて驚いた。そこにいたのは同じクラスの男子だったのだ。向こうもこちらに気づいたようで目を丸くしていたがすぐに笑顔になると話しかけてきた。
「やあ、君も招待されていたんだね」
「ええ、まあ……あなたも?」
戸惑いながらも聞き返すと頷いて肯定の意を示した。どうやら同じ目的だったらしい。
それからしばらく雑談していると部屋の扉が開いたのでそちらに目を向けると初老の男性が入ってくるところだった。男性は私達の姿を見つけると笑顔を浮かべて近づいてきた。
「ようこそおいでくださいました。私はこの屋敷の主人です。今日はゆっくりしていってくださいね」
そう言って手を差し伸べてきたので握手を交わすと挨拶を済ませてから席に着くように促されたので従うことにする。
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