「ちょ、今日のアタシのネイル見て~!“婚約破棄記念ネイル”ってやつ?ウケるでしょ?」

黒川ねこ

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新章開幕 『ごきげんよう、母は元ギャルです』

第5話 「風紀の乱れと心の乱れは比例します」

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「ごきげんよう。本日も、風紀と自律心に優れた清楚な一日を目指します……」

わたくしフレイア・アーデルは、登校前の鏡の前で深呼吸を三回。
母に教わった“伏し目がち盛れ角度”を維持しながら、今日も清楚令嬢を全力で演じる。

(あくまで“演じている”。わたくしは、ギャルではありません)

だが、内心――昨日の彼の言葉が、耳の奥でこだましていた。

「……やっぱ、俺……フレイアちゃんのこと、すげー好きかも」

(な、なんですかあの“すげー好き”って!?!? 正式な婚約申し込みですか!?それともギャル用語!?)



「よっ、フレイアちゃ~ん!」

その本人が、朝の校門前で待ち構えていた。

「……クライア様。何度も申し上げておりますが、登校路で待ち伏せるのは風紀上――」

「いや、今日一緒に登校したら“恋人っぽくね?”って思って」

「~~~~~~っ!!!////」

(恋人っぽい……!? えっ、これ夢!?現実!?これって告白!?!?)

「てか今日の髪型、ちょっと巻いてる? 盛れてんじゃん」

「そ、そそそそんなことありませんっっっっ!!!」

(※母様が「“無意識風”に巻いておけって☆」ってセットしてくれました)

クライアはパンを齧りながら、悪びれもなく隣を歩く。

「なぁ、今日の放課後、学園前の噴水のとこ、行かね?」

「そ、それはつまり……デート……っぽい、何か……ですか?」

「デート“っぽい”ってワード、可愛すぎん?」

「っ……~~っっっ!!!////」

(この人は……何もかもが風紀に悪いっ……!)



放課後。噴水前。

クライアは芝に寝転び、手を頭の後ろに組んでいた。

「ふぅ~~~。静かでいいな~。学園って意外と騒がしいし」

「……これ以上風紀を乱されては困りますので、わたくしが見張っているのです」

「優しい~。つーか、フレイアちゃんさ」

クライアは空を見上げたまま、ふいに言った。

「俺、お前といるときだけ、なんかちゃんとしたくなるんだよな」

「……へ?」

「普段、先生とかにも適当な返事しかしないし、うちの親にも“はいはい王子ですぅ~”ってふざけてるけどさ」

「……っ」

「でも、お前の前だと……ちゃんと、“王子の自分”でいたくなる。っていうか……」

「……」

「……いや、なんでもねぇや」

クライアが顔をそらす。

フレイアはその横顔を見て、静かに呟いた。

「……風紀は、確かに乱れています」

「え?」

「でも、それ以上に……わたくしの心が……もっと、乱れていますの」

「っ……!」

(これは、もう……隠しきれません。わたくし……好きなのです――!)



帰り道。
家の前で母様がスコーン片手に仁王立ちしていた。

「で? 進捗は?」

「……母様、パンを構えて詰問しないでください」

「進捗あったね!? その顔は完全に“心の乱れと風紀の崩壊”が発生してる顔だね!?!?」

「うぅぅぅ……っ!」

母様は大きくうなずいた。

「よし。じゃあ次回は“恋する女子の自爆防止講座”開きま~す!」
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