23 / 63
次元接続体
しおりを挟む
俺は眉根を寄せた。
「ぜんぶ話してもらわなきゃわからねぇぜ」
「たしかにすべてを話す時期だろう。こんなに早くくるとは思わなかったが。まずは今回の犯行についてわたしの推測を述べよう」
ここで博士はデスクからリモコンを取りだした。
それを操作すると事件発生時の画像が映し出された。
人影が飛び出し、車のボンネットが潰れる。
「まずこれだ。これは見ため通りの力を使っていると思われる。念動力か衝撃波か、手を触れずに破壊する力だ」
「……」
突拍子もない話に博士の正気を疑う。
横顔を窺うがしごく真面目な表情だった。
博士は落ち着いて続ける。
「次、警備員ふたりを倒した人物。電撃か麻酔か、この人物は人に触れただけで気絶させる能力を持つ。最初の人物の念動力か衝撃波で襲わなかったのは、このグループが殺人を望んでいないからだろう。あの力を人に振るったら死んでしまう」
「三人めは? 箱を持ってきただけだ」
「現金輸送車の後部ハッチは電子ロックされている。キーは使われていない。ハッチを怪力でこじ開けたか、電子機器を自在に操作できるか、どちらにしろやはり特殊能力を持っている」
「なるほどねぇ……」
「最後に、犯行グループはこつ然と姿を消したが、その仕組は次のどれかだ。全員が透明になったか、空を飛んだか、瞬間移動したかだ。姿を消したタイミングからして瞬間移動の可能性は低い。透明化がもっともありうる」
博士は大真面目でそう言い切った。
小学生並みに自由な推理だった。
どこまで本気なんだか。
俺は頭を抱えた。
「博士は真面目なようだけどさ、そんなことがまかり通るのか。常識ハズレもいいとこじゃないか。そんなことができるんならやつらはまるで……そう、まるで超人じゃないか」
博士の眼帯がぎらりと光ったような気がした。
「そうだ。彼らは超人だ。公式には『次元接続体』という」
「じげん……せつぞくたい……?」
「その身に多次元接続を有し、ほかの次元の物理法則、ほかの次元のエネルギーをこの世界に顕現させる。次元接続体とは漏れなく異能者であり、ひとことで言えば、まさしく超人だ」
「そんな……超人たちがいきなり降ってわいたってのか。信じられないよ」
「信じられないもなにもない。いきなりでもない。この地域では次元接続体が増加している。だから我々がいる。君の目の前にも次元接続体はいる」
俺は息を呑んだ。
「それはつまり……」
「わたしもだ。わたしも次元接続体であり、セツくんもそうだ」
セツも次元接続体だって!
どうりで強すぎると思った。
さらに博士は俺を指差した。
「そして……君もだ」
「なにぃっ!」
俺が次元接続体!?
いや、たしかに万筋服という超人の力を持ってるし、
自覚はないけどそういうことを含むのか、次元接続体ってのは……?
混乱する俺に、博士は説明を加えた。
「厳密いうと、君は次元接続体ではない。君の持つ万筋服を作ったAIを作った人物が、次元接続体だったのだよ。次元接続体のなかでも工作者と呼ばれる。現代科学の常識を超えた新成物を作りだすタイプだ」
「つまり、俺の爺さんが次元接続体だったのか……」
「だが万筋服は君と一体だ。君は次元接続体ではないが同等の能力を持っているといえるだろう」
「いったいなにがどうなってんだか……」
「わたしが思うに、君が万筋服を受けっ取ったときからこうなる運命が始まったのだろうと思う。運命論者でもないがね」
博士は両腕を広げた。
「見たまえ、君は次元接続体関連のどまんなかにいる。君は年の割には柔軟な思考力の持ち主だ。万筋服を受け入れ、セツくんの強さを受け入れ、ここのロボたちやイサムを受け入れた。だが、普通はもう少し疑問に思うはずだがね」
「俺だって疑問には思ってたよ。ただ万筋服のこともあるし、先端技術ってすごいのかなって」
「ここのロボもイサムもほかの物も次元接続体の新成物だ。わたしは工作者でね。ここは研究所と名乗っているが、なんの研究所か疑問に思わなかったかね?」
「まあ、細かいことを詮索して仕事を失うのも面倒だったんで黙ってた……」
「ここは……『次元接続体犯罪抑止研究所』だ」
「ぜんぶ話してもらわなきゃわからねぇぜ」
「たしかにすべてを話す時期だろう。こんなに早くくるとは思わなかったが。まずは今回の犯行についてわたしの推測を述べよう」
ここで博士はデスクからリモコンを取りだした。
それを操作すると事件発生時の画像が映し出された。
人影が飛び出し、車のボンネットが潰れる。
「まずこれだ。これは見ため通りの力を使っていると思われる。念動力か衝撃波か、手を触れずに破壊する力だ」
「……」
突拍子もない話に博士の正気を疑う。
横顔を窺うがしごく真面目な表情だった。
博士は落ち着いて続ける。
「次、警備員ふたりを倒した人物。電撃か麻酔か、この人物は人に触れただけで気絶させる能力を持つ。最初の人物の念動力か衝撃波で襲わなかったのは、このグループが殺人を望んでいないからだろう。あの力を人に振るったら死んでしまう」
「三人めは? 箱を持ってきただけだ」
「現金輸送車の後部ハッチは電子ロックされている。キーは使われていない。ハッチを怪力でこじ開けたか、電子機器を自在に操作できるか、どちらにしろやはり特殊能力を持っている」
「なるほどねぇ……」
「最後に、犯行グループはこつ然と姿を消したが、その仕組は次のどれかだ。全員が透明になったか、空を飛んだか、瞬間移動したかだ。姿を消したタイミングからして瞬間移動の可能性は低い。透明化がもっともありうる」
博士は大真面目でそう言い切った。
小学生並みに自由な推理だった。
どこまで本気なんだか。
俺は頭を抱えた。
「博士は真面目なようだけどさ、そんなことがまかり通るのか。常識ハズレもいいとこじゃないか。そんなことができるんならやつらはまるで……そう、まるで超人じゃないか」
博士の眼帯がぎらりと光ったような気がした。
「そうだ。彼らは超人だ。公式には『次元接続体』という」
「じげん……せつぞくたい……?」
「その身に多次元接続を有し、ほかの次元の物理法則、ほかの次元のエネルギーをこの世界に顕現させる。次元接続体とは漏れなく異能者であり、ひとことで言えば、まさしく超人だ」
「そんな……超人たちがいきなり降ってわいたってのか。信じられないよ」
「信じられないもなにもない。いきなりでもない。この地域では次元接続体が増加している。だから我々がいる。君の目の前にも次元接続体はいる」
俺は息を呑んだ。
「それはつまり……」
「わたしもだ。わたしも次元接続体であり、セツくんもそうだ」
セツも次元接続体だって!
どうりで強すぎると思った。
さらに博士は俺を指差した。
「そして……君もだ」
「なにぃっ!」
俺が次元接続体!?
いや、たしかに万筋服という超人の力を持ってるし、
自覚はないけどそういうことを含むのか、次元接続体ってのは……?
混乱する俺に、博士は説明を加えた。
「厳密いうと、君は次元接続体ではない。君の持つ万筋服を作ったAIを作った人物が、次元接続体だったのだよ。次元接続体のなかでも工作者と呼ばれる。現代科学の常識を超えた新成物を作りだすタイプだ」
「つまり、俺の爺さんが次元接続体だったのか……」
「だが万筋服は君と一体だ。君は次元接続体ではないが同等の能力を持っているといえるだろう」
「いったいなにがどうなってんだか……」
「わたしが思うに、君が万筋服を受けっ取ったときからこうなる運命が始まったのだろうと思う。運命論者でもないがね」
博士は両腕を広げた。
「見たまえ、君は次元接続体関連のどまんなかにいる。君は年の割には柔軟な思考力の持ち主だ。万筋服を受け入れ、セツくんの強さを受け入れ、ここのロボたちやイサムを受け入れた。だが、普通はもう少し疑問に思うはずだがね」
「俺だって疑問には思ってたよ。ただ万筋服のこともあるし、先端技術ってすごいのかなって」
「ここのロボもイサムもほかの物も次元接続体の新成物だ。わたしは工作者でね。ここは研究所と名乗っているが、なんの研究所か疑問に思わなかったかね?」
「まあ、細かいことを詮索して仕事を失うのも面倒だったんで黙ってた……」
「ここは……『次元接続体犯罪抑止研究所』だ」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる