妄想少女とおっさんのバリアント

進常椀富

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香華子の家へ行く

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 俺たちは状況をまとめた。
 要するに、三つの出来事が密接に絡まりあっている。

 一、香華子の未来視。焦点が俺に合っているため、次元接続体犯罪抑止研究所の情報が香華子にはダダ漏れだった。だがもう香華子の未来視は不確実なものになったし、香華子は俺たちに協力的だ。問題は小さいだろう。

 二、橘組と千垣組の抗争。なにが原因かは俺たちと関係ないが、街中でドンパチされると治安維持の観点から俺たちに関わりがある。とはいえ、本来は警察の仕事だ。ただ一点を除いては。

 三、諸戸の一味。やつらが姿を現した。やつらは千垣組についているとみていい。これは正真正銘俺たちの問題だ。放っておけば橘組が壊滅するだろう。俺たちとしてはヤクザの抗争に介入したくないが、そうも言ってられない。

 博士がお茶を飲んでひと息ついた。
「とりあえず、香華子くんはもう我々と関わらないほうがいいだろう」

 俺は言った。
「でもよ、次元接続体だし、組長の娘だし、えひめの友達だ。関わらないようにしたって関わりあいになるぜ?」
「そうかもしれんね。しかし接触は極力避けるべきだろう。もう日が暮れる。香華子くんを家まで送ってあげよう。帰ってきたら夕食をとり、会議の続きだ」
「わかった」

 俺がイサムと送っていくつもりで返事をしたがセツも声をあげた。
「わたしも付き合おう。おっさんと二人じゃ問題が起きたら困る」

 それで俺とセツはイサムに乗って香華子を家まで送ることになった。
 香華子の家も市内だ。車に乗れば大した距離じゃない。
 短い道中だったが、香華子はリラックスしたらしく、俺のプライベートをぺらぺら喋るのでセツは苦笑いしっぱなしだった。

 そうこうしていると、金のかかった塀に囲まれた豪邸が見えてきた。香華子が言う。
「あ、ここでいいです。もう襲われる心配もない距離ですから」

 だが俺は断った。
「いや、門の前まで行けイサム。門番のまんまえまでな」
「そんな! 余計なトラブルになりますよ!」
「願ったり叶ったりだね」

 セツが含み笑いを漏らした。
「ふふふ、わたしは知らないぞ。任せるからな……」

 イサムも言った。
「うぇーい、俺も知らねっとー」

 イサムはゆっくり走り、門の前でぴたりと止まった。門番の若い衆が睨みつけてくる。

「ありがとうございました!」
 香華子が慌てて車を降りる。
「お嬢!」
 若い衆が驚いていた。
 そりゃま、驚くだろう。
 組長の娘がどこの馬の骨ともわからない奴の車から出てきたんだからな。
 想定内だ。これから起こるだろうことも含めて。

 ひとりが門のなかへ走っていき、もうひとりは運転席の側に回りこんできた。
 ドアの外で怒声をあげる。
「てめえ、このやろう! 降りてこい!」

 素直に従ってイサムを降りる。
 俺はくたびれたTシャツにジャージ、サンダル履きのちんけなおっさんスタイルだ。
 香華子の関係者としてとても相応しくないだろう。

 若い衆は敵意をむき出しにしてきた。
「なんだてめえは! 汚えおっさんじゃねえか! お嬢が誰だかわかってんのか、あぁ!?」

「そいつか! お嬢に手ぇ出したのは!」
 泡を食ったように門からスーツの男が飛びだしてきた。
「てめぇ! ナニモンだ! ちょっと来い!」

 俺はいきなり髪をつかまれて引き回される。
「いててて! やめろバカ!」
「うるせぇ! こっち来いや!」
「やめて! 手荒なことはしないで!」
 香華子が抗議するが、お構いなしに引っ張られる。 

 ちくしょう、このやろう、舐めやがって!
 怒りがこみあげて万筋服が出そうになるが、まだだ。
 中に入るまで我慢しなければならない。無になって耐えた。

 俺は髪をつかまれたまま門の内側に入り、詰め所のような場所へ連れこまれた。
 そこで手荒く突き飛ばされる。
 俺は壁にぶつかって転んだ。

 よし! もう我慢も限界だ!

 怒りが開放されて身体が燃えあがる。
 内側から服が破れた。

 俺が立ちあがったとき身体は万筋服に包まれていた。絶対無敵の万筋服に。

 俺を連れてきた男の声が震えた。
「な、なんじゃこらぁ……」

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