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癒やしのむいむい2
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アマガもアイスをかじった。
その動きが止まる。
一瞬後、叫ぶ。
「おいしいですわぁぁぁ! 冷たい! おいしい! 冷たくておいしいぃぃっ!」
ひとしきり感嘆の声をあげるとアマガは説明を再開した。
「あのですね、シールドが過負荷でユニットまるごと消滅しちゃってるんです。それでシールド周辺の動力伝達系も断線となったわけです。現状、シールドユニットを直すことはできませんが、シールド周辺の動力路をつなぎ直せばまた飛べます。航行ユニット周辺には異状はないようですし。いったいどうすればこんなピンポイント攻撃できるんですか?」
進常はアイスの棒を振りながら言った。
「鈴木くんのビームだ。超体の力。鈴木くんのハゲビームはいろいろ都合のいい結果を出す、不思議なビームだ」
鈴木もアイスを食べながら、歯切れ悪く言った。
「あの、あんまり頼りにしないでくださいよ。髪の毛かかってるんだから。無駄撃ちできません」
進常が言った。
「できるだけ戦わずして勝つ。それがいちばんだ。わたしだって太るしな」
「スズキー! これどうやるの?」
メリコが微炭酸のエナジードリンクの缶を差しだしてきた。
「これはこうやるんだ。あとはきみらの飲み物と同じ」
鈴木は缶を開けてやってメリコに返す。
メリコはエナジードリンクをひとくち含んだ。
「おいしい! 甘い! 味濃い! おいしい! アマガも飲みなよ、おいしいよ!」
進常は目を細めて微笑む。
「なんでもうまいっていうな。まあいまの時代、あんまり不味いものって売ってないけど」
「進常さんにはこれです」
鈴木は冷たい緑茶を渡した。
進常は受けとって礼を言う。
「わかってるね、鈴木くん。この身体でエナジードリンクは飲めないもんなー。せっかく筋トレしてカロリー消費してるんだし」
アマガもエナジードリンクを飲んで「おいしいですわー!」と声をあげている。
メリコが缶を開けてやったらしい。
部屋は蒸し暑いが、四人は破片の少ない場所に座って、思い思いにくつろぐ。
真夏の午後にまったりとした時間が流れる。
まだ明るいが、陽はだいぶ傾いていた。
鈴木はアマガに聞いた。
「暗くなるまであと一時間てところですけど、修理はどれくらいかかりそうですか、アマガさん?」
「ぐー……」
アマガは寝ていた。
さっきまで起きてたのに。
鈴木は肩を揺すって起こす。
「アマガさん、あと一時間で修理できそうですか?」
「あ、はい、そうですね、故障の原因はわかったんですが、動力路損傷の範囲がまだつかめません。あと一時間ですと、損傷の範囲をなんとか特定して今日は終わりでしょうか。向こうのパーツでどんなものが使えるかも確かめないといけませんし」
「じゃ、あと一時間ていど、寝ないで頑張ってください」
アマガは頷いた。
「メリコ、作業を再開しますよ。手伝ってください」
「よっしゃー!」
メリコとアマガはふたたびミッションシップへ潜りこんだ。
進常は部屋の隅で大きく伸びをした。
「暇だから帰って夕飯の下ごしらえでもしたいけど、二人だけ残しておくのも不安だしな。いつ敵の新手がくるかわかんないし。本でも読んでつきあうしかないか」
鈴木も相づちを打つ。
「電気使えないとホント不便ですね。暑いしやることもないし」
「鈴木くんはあれじゃん、夏休みの課題やればいいじゃん」
「えー、この暑いのにー?」
「家が壊れたといっても課題は課題として存在するんだし、夏休みはいつか終わる。エイリアンの侵略を阻止したら、だけど」
「まぁ、それもそうですけどー……」
「宇宙からの侵略を受けながらも、夏休みの課題の心配もしなけりゃならん。悩み多き青春だな」
「はぁー……」
鈴木はため息をついたが、進常の言うことも一理ある。
いつ果てるともいえないぬるい戦いだが、地球侵略を防いでしまえば日常は続く。
夏休みもいつか終わるのだ。
「やるしかないか」
鈴木はふたたび自室へあがり、課題の山をとってきた。
リビングのテーブルでそれを消化していくことにする。
進常は雑誌をぺらぺら繰っていた。
鈴木の親が購読している自然科学雑誌だ。
前かがみになっているので、首から下げているメモ帳とボールペンが揺れている。
いつ予知が働きはじめてもいいようにという準備だ。
メリコの周りには、ミッションシップから外されたパーツがフリマのように並べられていた。
その中央からメリコが声をあげる。
「スズキ! 今日の晩ごはんなに?」
鈴木はシャーペンの手を止めた。
「ん? んん……、ごはん炊いたの食べちゃわないといけないからなー、なんかごはんに合うおかずだね。チャーハンて手もあるけど……。どうします、進常さん?」
「……」
進常は答えない。
身体を強張らせていた。
その右手が痙攣している。
鈴木は慌てた。
「だいじょうぶですか、進常さん!」
メリコも不安そうな声をだした。
「シンジョー! どうしたの?」
二人の声に応えるように、進常は身体を起こした。
首に下げていたメモとペンを手にとる
「きたきたきたーっ! 来るぞ、なにかが!」
進常はペンで書きなぐる。
メモに文字が刻まれた。
空の彼方 くる 敵機多数
進常は言った。
「敵は空からくるぞ! 鈴木くん、外へ出よう!」
鈴木、進常、メリコの三人は鈴木家の庭に出た。あとからアマガもついてくる。
空を見あげたが、赤みがかった夕日が見えるばかりだった。
特異なものはなにもない。
しかし、鈴木の額に力が集中した。
第三の眼が開く。
鈴木は視た。
二つの眼では見えないものの、第三の眼にははるかかなたの宇宙空間が視える。
宇宙空間に何機もの宇宙船が展開し、こちらへ降りてこようとしている。
鈴木は言った。
「ぼくには視えます! 宇宙から敵が大気圏に降りてきます! 三角形の宇宙船です、十機!」
アマガが言った。
「三角形! それはドローンシップです。人間の襲撃が続けて失敗したからドローンで力押しということでしょう。どうしましょう、わたくしたちには立ち向かうすべがありません」
進常が空に向かって腕を振る。
「相手は無人機だ! 遠慮なく木っ端微塵にしてやれ、鈴木くん! 連射だ!」
「おう!」
進常の案に鈴木も同意した。
取るべき方針が決まると、身体にエネルギーが漲っていく。
力が額に集中した。
臨界点をむかえて鈴木は叫ぶ。
「超壊滅! デストロイこうせぇぇぇーんッ!」
鈴木の額から一条のビームがほとばしり、夕方の空へ消えていった。
「デストロイこうせぇぇーん! デストロイこうせぇぇーん!」
鈴木はビームを連射した。
鈴木には視えた。
はるかかなたの宇宙空間で、ビームがドローンシップを直撃し、バラバラに破壊するのが。
鈴木の超壊滅! デストロイこうせんは、地上からの狙撃で大気圏を貫き、
迫りくるドローンシップをすべて撃破した。
「はぁはぁ……」
鈴木は興奮から息を荒くした。
成り行きを見守る三人に説明する。
「全弾命中。敵は一機も残っていません」
数秒ののち、夕空に大量の流れ星が発生した。
いくつもいくつも、数え切れないほどに。
それは鈴木が破壊したドローンシップの破片が、大気圏に突入して燃えあがったものだった。
メリコが鈴木の首に抱きついてぴょんぴょん跳ねる。
「スズキ、すごい! すごい! 勝った!」
女の子に抱きつかれるなんて、鈴木の人生において初のことだった。
メリコの身体の柔らかさが気分を高揚させる。
その動きが止まる。
一瞬後、叫ぶ。
「おいしいですわぁぁぁ! 冷たい! おいしい! 冷たくておいしいぃぃっ!」
ひとしきり感嘆の声をあげるとアマガは説明を再開した。
「あのですね、シールドが過負荷でユニットまるごと消滅しちゃってるんです。それでシールド周辺の動力伝達系も断線となったわけです。現状、シールドユニットを直すことはできませんが、シールド周辺の動力路をつなぎ直せばまた飛べます。航行ユニット周辺には異状はないようですし。いったいどうすればこんなピンポイント攻撃できるんですか?」
進常はアイスの棒を振りながら言った。
「鈴木くんのビームだ。超体の力。鈴木くんのハゲビームはいろいろ都合のいい結果を出す、不思議なビームだ」
鈴木もアイスを食べながら、歯切れ悪く言った。
「あの、あんまり頼りにしないでくださいよ。髪の毛かかってるんだから。無駄撃ちできません」
進常が言った。
「できるだけ戦わずして勝つ。それがいちばんだ。わたしだって太るしな」
「スズキー! これどうやるの?」
メリコが微炭酸のエナジードリンクの缶を差しだしてきた。
「これはこうやるんだ。あとはきみらの飲み物と同じ」
鈴木は缶を開けてやってメリコに返す。
メリコはエナジードリンクをひとくち含んだ。
「おいしい! 甘い! 味濃い! おいしい! アマガも飲みなよ、おいしいよ!」
進常は目を細めて微笑む。
「なんでもうまいっていうな。まあいまの時代、あんまり不味いものって売ってないけど」
「進常さんにはこれです」
鈴木は冷たい緑茶を渡した。
進常は受けとって礼を言う。
「わかってるね、鈴木くん。この身体でエナジードリンクは飲めないもんなー。せっかく筋トレしてカロリー消費してるんだし」
アマガもエナジードリンクを飲んで「おいしいですわー!」と声をあげている。
メリコが缶を開けてやったらしい。
部屋は蒸し暑いが、四人は破片の少ない場所に座って、思い思いにくつろぐ。
真夏の午後にまったりとした時間が流れる。
まだ明るいが、陽はだいぶ傾いていた。
鈴木はアマガに聞いた。
「暗くなるまであと一時間てところですけど、修理はどれくらいかかりそうですか、アマガさん?」
「ぐー……」
アマガは寝ていた。
さっきまで起きてたのに。
鈴木は肩を揺すって起こす。
「アマガさん、あと一時間で修理できそうですか?」
「あ、はい、そうですね、故障の原因はわかったんですが、動力路損傷の範囲がまだつかめません。あと一時間ですと、損傷の範囲をなんとか特定して今日は終わりでしょうか。向こうのパーツでどんなものが使えるかも確かめないといけませんし」
「じゃ、あと一時間ていど、寝ないで頑張ってください」
アマガは頷いた。
「メリコ、作業を再開しますよ。手伝ってください」
「よっしゃー!」
メリコとアマガはふたたびミッションシップへ潜りこんだ。
進常は部屋の隅で大きく伸びをした。
「暇だから帰って夕飯の下ごしらえでもしたいけど、二人だけ残しておくのも不安だしな。いつ敵の新手がくるかわかんないし。本でも読んでつきあうしかないか」
鈴木も相づちを打つ。
「電気使えないとホント不便ですね。暑いしやることもないし」
「鈴木くんはあれじゃん、夏休みの課題やればいいじゃん」
「えー、この暑いのにー?」
「家が壊れたといっても課題は課題として存在するんだし、夏休みはいつか終わる。エイリアンの侵略を阻止したら、だけど」
「まぁ、それもそうですけどー……」
「宇宙からの侵略を受けながらも、夏休みの課題の心配もしなけりゃならん。悩み多き青春だな」
「はぁー……」
鈴木はため息をついたが、進常の言うことも一理ある。
いつ果てるともいえないぬるい戦いだが、地球侵略を防いでしまえば日常は続く。
夏休みもいつか終わるのだ。
「やるしかないか」
鈴木はふたたび自室へあがり、課題の山をとってきた。
リビングのテーブルでそれを消化していくことにする。
進常は雑誌をぺらぺら繰っていた。
鈴木の親が購読している自然科学雑誌だ。
前かがみになっているので、首から下げているメモ帳とボールペンが揺れている。
いつ予知が働きはじめてもいいようにという準備だ。
メリコの周りには、ミッションシップから外されたパーツがフリマのように並べられていた。
その中央からメリコが声をあげる。
「スズキ! 今日の晩ごはんなに?」
鈴木はシャーペンの手を止めた。
「ん? んん……、ごはん炊いたの食べちゃわないといけないからなー、なんかごはんに合うおかずだね。チャーハンて手もあるけど……。どうします、進常さん?」
「……」
進常は答えない。
身体を強張らせていた。
その右手が痙攣している。
鈴木は慌てた。
「だいじょうぶですか、進常さん!」
メリコも不安そうな声をだした。
「シンジョー! どうしたの?」
二人の声に応えるように、進常は身体を起こした。
首に下げていたメモとペンを手にとる
「きたきたきたーっ! 来るぞ、なにかが!」
進常はペンで書きなぐる。
メモに文字が刻まれた。
空の彼方 くる 敵機多数
進常は言った。
「敵は空からくるぞ! 鈴木くん、外へ出よう!」
鈴木、進常、メリコの三人は鈴木家の庭に出た。あとからアマガもついてくる。
空を見あげたが、赤みがかった夕日が見えるばかりだった。
特異なものはなにもない。
しかし、鈴木の額に力が集中した。
第三の眼が開く。
鈴木は視た。
二つの眼では見えないものの、第三の眼にははるかかなたの宇宙空間が視える。
宇宙空間に何機もの宇宙船が展開し、こちらへ降りてこようとしている。
鈴木は言った。
「ぼくには視えます! 宇宙から敵が大気圏に降りてきます! 三角形の宇宙船です、十機!」
アマガが言った。
「三角形! それはドローンシップです。人間の襲撃が続けて失敗したからドローンで力押しということでしょう。どうしましょう、わたくしたちには立ち向かうすべがありません」
進常が空に向かって腕を振る。
「相手は無人機だ! 遠慮なく木っ端微塵にしてやれ、鈴木くん! 連射だ!」
「おう!」
進常の案に鈴木も同意した。
取るべき方針が決まると、身体にエネルギーが漲っていく。
力が額に集中した。
臨界点をむかえて鈴木は叫ぶ。
「超壊滅! デストロイこうせぇぇぇーんッ!」
鈴木の額から一条のビームがほとばしり、夕方の空へ消えていった。
「デストロイこうせぇぇーん! デストロイこうせぇぇーん!」
鈴木はビームを連射した。
鈴木には視えた。
はるかかなたの宇宙空間で、ビームがドローンシップを直撃し、バラバラに破壊するのが。
鈴木の超壊滅! デストロイこうせんは、地上からの狙撃で大気圏を貫き、
迫りくるドローンシップをすべて撃破した。
「はぁはぁ……」
鈴木は興奮から息を荒くした。
成り行きを見守る三人に説明する。
「全弾命中。敵は一機も残っていません」
数秒ののち、夕空に大量の流れ星が発生した。
いくつもいくつも、数え切れないほどに。
それは鈴木が破壊したドローンシップの破片が、大気圏に突入して燃えあがったものだった。
メリコが鈴木の首に抱きついてぴょんぴょん跳ねる。
「スズキ、すごい! すごい! 勝った!」
女の子に抱きつかれるなんて、鈴木の人生において初のことだった。
メリコの身体の柔らかさが気分を高揚させる。
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