23 / 35
異星からの狩人5
しおりを挟む
「やっとみつかったか。みつかったのはいいけど、また下るのも大変だよなー」
よっぽど堪えたのか、進常はまだ文句を言っている。
進常以外の四人は足早に、脱出ポッドに近づく。
鈴木が言った。
「モルゲニーちゃん、ハッチ開けて。アマガさん、すぐ調べてください」
「任せておくがよい」
モルゲニーがハッチに顔をもっていく。虹彩認証で扉が開いた。
アマガは「失礼しまぁーす」と言ってなかに潜りこんだ。
ややあって、入り口に顔を出す。
「クロンダイト合金があるとすれば内部でしょうから、ある程度バラさないとわかりません。超光速通信機が使えなくなる可能性があります」
モルゲニーは慌てた。
「なんじゃと! それは困るぞ!」
鈴木はあごに手を当てる。
「でもクロンダイト合金が手に入らないと、ぼくたちはじきに全滅だ」
進常が折衷案のようなものを口にした。
「どのみちクロンダイト合金があれば外すんだ。通信機は使えなくなるだろ。バラす前に必要な連絡があれば先にやっちゃってくれ。そのあとバラす。どっちにしろ」
モルゲニーは唇を尖らせた。
「もう、しかたあるまい。連絡するのは連邦政府への使節団の派遣と、こちらに宇宙船を送ってもらうことでよいのじゃな? あとはプライベートなことじゃ」
「それでいいよ。よろしくね」
鈴木が返事すると、モルゲニーは脱出ポッドのなかへ入っていった。
ピッピッ、カチカチという操作音のあとで、モルゲニーの声が聞こえてくる。
「モルゲニーじゃ。母上にお繋ぎせよ。そうじゃ。……あ、ママー? わらわ。いま地球ってとこにいるの……」
進常が小声でつぶやく。
「いま『ママ』って言ったぞ……」
鈴木もモルゲニーに聞こえないように言った。
「キャラ作ってたんですねー。王族も大変だ」
メリコが羨ましそうに言う。
「自分用の超光速通信機持ってるなんて、いいなー。通信しほうだいじゃない」
アマガも頷く。
「そのあたりはさすがに王族さんといったところですね」
予想していたが、モルゲニーの通信はわりと時間がかかった。
宿敵であるテホルル・ペットフーズと接触し、
それを壊滅させる手立てがあることを説明しなければならなかったのだからしかたない。
鈴木たちは山の斜面に座って、飲み物をとりながら待った。アマガは寝た。
やがて疲れた顔をしてモルゲニーが出てきた。
「ふぅー。すべての要件は終わったぞ。こちらの話を信じさせるのに骨が折れたわ。あとは腹をくくるのみじゃ。好きにするがよい」
「アマガ、起きて!」
メリコがアマガを起こす。
「あぶっ? じゃ、作業はじめますよぉー」
アマガは光線銃を抜いて脱出ポッドのなかへ潜りこんだ。
しばらく無音が続いたあと、パチパチという音と閃光がなかから漏れてくる。
光線銃で溶断しているようだ。
なかから出てくる部品のかけらを、外でメリコが受けとって地面に置いていく。
こうなると例によって鈴木と進常は暇だ。今回はモルゲニーも加わる。
進常は服が汚れるのもかまわず、地面に寝っ転がった。
「終わったら起こして。下山用のパワー貯めるから」
鈴木はペットボトルのキャップに飲み物を注いでモルゲニーに出した。
二人で飲み物を飲みながら話しこむ。
モルゲニーもしゃべることが嫌いではないらしく、鈴木の質問になんでも答えてくれた。
アンザレクトの文化、習慣などはいくら聞いても飽きなかった。
鈴木とモルゲニーは急速に親しくなった。
もう仲間といって差し支えないだろう。
そんな仲睦まじい二人を、ときどきメリコが冷たい目つきで睨んでいたが、
鈴木は気づかない。
罪作りな男である。
地球人少女にはモテないが、宇宙の少女にはモテるらしい。
三十分も経ったころ、パチパチという音と閃光が止まった。
最後に甲高い金属音が二度ほど聞こえる。
アマガがのっそりと外に出てきた。
手になにかを持っている。
アマガは手のなかの物を一同に見せた。
「クロンダイト合金が取れました。これだけあればじゅうぶんです」
クロンダイト合金は金の延べ棒くらいの大きさで、色は金より青みがかっていた。
この金属片があればメリコのミッションシップは宇宙まで行けるのだ。
進常はとつぜん両手をあげてひれ伏した。
「クロンダイト合金さまだ! みなのもの頭が高い! ははーっ!」
ひとりで盛りあがっているが、ほかの誰も追従しない。
しかたなく進常は立ちあがった。
「まったくノリが悪いな君らは。探し求めていた重要パーツが手に入った感動シーンだぞ、ここは」
鈴木は苦い顔で言う。
「表現がいちいち古いんですよ、進常さんは。誰もついていけてないじゃないですか」
モルゲニーが心配そうな声をだした。
「通信機はやっぱりダメかのう……」
アマガが答える。
「ダメですね。パワーが必要な超光速通信機のまわりからほとんど取りましたから」
「そうか……」
メリコはアマガの手からクロンダイト合金をひとつ取った。
「ほら、まだ熱いよ、スズキ!」
言いながら鈴木の頬にじゅっと押しつける。
パワーの通り道だった部分を溶断したのだから、それは熱い。
鈴木は飛びあがる。
「あっつ! あつつつつ! 熱い!」
メリコはサディスティックに微笑んだ。
「ね、熱いでしょ?」
「やけどしちゃうよ! それに確かめたくないし!」
剣呑な雰囲気になった鈴木とメリコのあいだにモルゲニーが飛びこんでくる。
「わらわの親友になにをするのじゃ!」
メリコはいい返す。
「アタシのほうがスズキとの付き合いは長いんだからね! 親友はアタシ!」
「知能が低いから勘違いするんじゃ!」
「虫ケラ!」
「なんじゃと! 王族に対して! この下層階級め!」
「なにを!」
メリコはモルゲニーを叩き落とそうと両手を振り回す。
モルゲニーは露出したメリコの顔に針を刺そうと飛び回る。
それは修羅場であった。
進常が呆れ半分、驚き半分といった声をだす。
「鈴木くん、どうやらモテてるらしいぞ、君。宇宙基準でいい男なのかな」
意外な展開に、鈴木も内心心臓バクバクだった。
「ぼくたち、一致団結しないと勝てないんですけど……」
「ぐー……」
アマガは寝ていた。
立ったまま。
興味を持てなかったらしい。
よっぽど堪えたのか、進常はまだ文句を言っている。
進常以外の四人は足早に、脱出ポッドに近づく。
鈴木が言った。
「モルゲニーちゃん、ハッチ開けて。アマガさん、すぐ調べてください」
「任せておくがよい」
モルゲニーがハッチに顔をもっていく。虹彩認証で扉が開いた。
アマガは「失礼しまぁーす」と言ってなかに潜りこんだ。
ややあって、入り口に顔を出す。
「クロンダイト合金があるとすれば内部でしょうから、ある程度バラさないとわかりません。超光速通信機が使えなくなる可能性があります」
モルゲニーは慌てた。
「なんじゃと! それは困るぞ!」
鈴木はあごに手を当てる。
「でもクロンダイト合金が手に入らないと、ぼくたちはじきに全滅だ」
進常が折衷案のようなものを口にした。
「どのみちクロンダイト合金があれば外すんだ。通信機は使えなくなるだろ。バラす前に必要な連絡があれば先にやっちゃってくれ。そのあとバラす。どっちにしろ」
モルゲニーは唇を尖らせた。
「もう、しかたあるまい。連絡するのは連邦政府への使節団の派遣と、こちらに宇宙船を送ってもらうことでよいのじゃな? あとはプライベートなことじゃ」
「それでいいよ。よろしくね」
鈴木が返事すると、モルゲニーは脱出ポッドのなかへ入っていった。
ピッピッ、カチカチという操作音のあとで、モルゲニーの声が聞こえてくる。
「モルゲニーじゃ。母上にお繋ぎせよ。そうじゃ。……あ、ママー? わらわ。いま地球ってとこにいるの……」
進常が小声でつぶやく。
「いま『ママ』って言ったぞ……」
鈴木もモルゲニーに聞こえないように言った。
「キャラ作ってたんですねー。王族も大変だ」
メリコが羨ましそうに言う。
「自分用の超光速通信機持ってるなんて、いいなー。通信しほうだいじゃない」
アマガも頷く。
「そのあたりはさすがに王族さんといったところですね」
予想していたが、モルゲニーの通信はわりと時間がかかった。
宿敵であるテホルル・ペットフーズと接触し、
それを壊滅させる手立てがあることを説明しなければならなかったのだからしかたない。
鈴木たちは山の斜面に座って、飲み物をとりながら待った。アマガは寝た。
やがて疲れた顔をしてモルゲニーが出てきた。
「ふぅー。すべての要件は終わったぞ。こちらの話を信じさせるのに骨が折れたわ。あとは腹をくくるのみじゃ。好きにするがよい」
「アマガ、起きて!」
メリコがアマガを起こす。
「あぶっ? じゃ、作業はじめますよぉー」
アマガは光線銃を抜いて脱出ポッドのなかへ潜りこんだ。
しばらく無音が続いたあと、パチパチという音と閃光がなかから漏れてくる。
光線銃で溶断しているようだ。
なかから出てくる部品のかけらを、外でメリコが受けとって地面に置いていく。
こうなると例によって鈴木と進常は暇だ。今回はモルゲニーも加わる。
進常は服が汚れるのもかまわず、地面に寝っ転がった。
「終わったら起こして。下山用のパワー貯めるから」
鈴木はペットボトルのキャップに飲み物を注いでモルゲニーに出した。
二人で飲み物を飲みながら話しこむ。
モルゲニーもしゃべることが嫌いではないらしく、鈴木の質問になんでも答えてくれた。
アンザレクトの文化、習慣などはいくら聞いても飽きなかった。
鈴木とモルゲニーは急速に親しくなった。
もう仲間といって差し支えないだろう。
そんな仲睦まじい二人を、ときどきメリコが冷たい目つきで睨んでいたが、
鈴木は気づかない。
罪作りな男である。
地球人少女にはモテないが、宇宙の少女にはモテるらしい。
三十分も経ったころ、パチパチという音と閃光が止まった。
最後に甲高い金属音が二度ほど聞こえる。
アマガがのっそりと外に出てきた。
手になにかを持っている。
アマガは手のなかの物を一同に見せた。
「クロンダイト合金が取れました。これだけあればじゅうぶんです」
クロンダイト合金は金の延べ棒くらいの大きさで、色は金より青みがかっていた。
この金属片があればメリコのミッションシップは宇宙まで行けるのだ。
進常はとつぜん両手をあげてひれ伏した。
「クロンダイト合金さまだ! みなのもの頭が高い! ははーっ!」
ひとりで盛りあがっているが、ほかの誰も追従しない。
しかたなく進常は立ちあがった。
「まったくノリが悪いな君らは。探し求めていた重要パーツが手に入った感動シーンだぞ、ここは」
鈴木は苦い顔で言う。
「表現がいちいち古いんですよ、進常さんは。誰もついていけてないじゃないですか」
モルゲニーが心配そうな声をだした。
「通信機はやっぱりダメかのう……」
アマガが答える。
「ダメですね。パワーが必要な超光速通信機のまわりからほとんど取りましたから」
「そうか……」
メリコはアマガの手からクロンダイト合金をひとつ取った。
「ほら、まだ熱いよ、スズキ!」
言いながら鈴木の頬にじゅっと押しつける。
パワーの通り道だった部分を溶断したのだから、それは熱い。
鈴木は飛びあがる。
「あっつ! あつつつつ! 熱い!」
メリコはサディスティックに微笑んだ。
「ね、熱いでしょ?」
「やけどしちゃうよ! それに確かめたくないし!」
剣呑な雰囲気になった鈴木とメリコのあいだにモルゲニーが飛びこんでくる。
「わらわの親友になにをするのじゃ!」
メリコはいい返す。
「アタシのほうがスズキとの付き合いは長いんだからね! 親友はアタシ!」
「知能が低いから勘違いするんじゃ!」
「虫ケラ!」
「なんじゃと! 王族に対して! この下層階級め!」
「なにを!」
メリコはモルゲニーを叩き落とそうと両手を振り回す。
モルゲニーは露出したメリコの顔に針を刺そうと飛び回る。
それは修羅場であった。
進常が呆れ半分、驚き半分といった声をだす。
「鈴木くん、どうやらモテてるらしいぞ、君。宇宙基準でいい男なのかな」
意外な展開に、鈴木も内心心臓バクバクだった。
「ぼくたち、一致団結しないと勝てないんですけど……」
「ぐー……」
アマガは寝ていた。
立ったまま。
興味を持てなかったらしい。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる