クロノザクロン

ジャック・アーズ

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 2章 番外編シリーズ

   -0話「繋がりの海賊達」

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 ラグナが産まれる20年前のこと
ある貴族の屋敷で…

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 俺は何時から自由を見たのだろう?
産まれた時……運命や生活…
それは決められるものなのか?
 「ビレスート!また修行をサボりおって!お前は我が家の跡取りなのだぞ…!?」
貴族の家系に産まれた俺は
ほとんど…この糞親の言うことしか動くことが出来なかった
 「………すみません、父上…」
 「全く…お前は……一族の恥だ…!剣の腕も…頭も……お前は!」

そう言いながら、親父は俺を睨み……
毎日、毎日……俺を人形のように痛めつけながら
剣技の修行とか言って、俺を殴ってストレス発散してる糞人間だった
母は優しい人だったが……
親父に奴隷のように扱われ、今は精神的に崩壊しており
技術のある街にへと兵と共に運ばれた

………俺は貴族つうもんが嫌いだ
特に…面だけはじゃがいもや玉ねぎのように皮は達者で
中はまるでカボチャを腐らしたような貴族…
まさに、俺の親父のような人間が大嫌いだ
人は名誉や称号……
そんなもんが本当に必要か?
正直、俺は戦争に行って何かの功績を残すよりは
生きてるつうことが何よりも大事なんじゃないのか?
 「…はぁ……今日はこれでいい。また明日だ…食事は机に置いてある……」
 「はい……父上……」
 「…くそ……!」
俺はこの生活から抜け出したい…
だが、例え貴族でも…母のことが心配だ
今は街に居ても、いずれは戻ってくるだろう
あの糞親父を……どうにかしないと…

そう考えているうちに…俺は部屋のベッドで横になる
食事なんて食う気になれない
俺は剣技の才能も魔術の才能もどっちもない
強いて言えば…俺には弓の才能があることぐらい
既に何度か…親父が見てない間に
勝手に動物を狩って焼いて食べることもあった
糞不味い飯より、その方が良いからな

だが…親父は俺に…剣ばかりを勧め……求めてくる
いずれ、俺も母も奴に殺される…。だから、その前に……
…母と俺が助かるには……奴を殺すしかない…!




 朝になり、俺は早速…行動をした
まだ親父が寝てる間に、弓矢を用いて森に入り
毒のある蛇を打ち抜き、その蛇の毒を丁寧に採取する……
こういう事になら…生きる為に自流で学んできた
まだ10歳だが……糞親父の虐待は
3歳ぐらいから…またはもう産まれてきた時からだろう
………さて、次は植物からの毒も採取しておこう




 そして、採取した後は
すぐに屋敷にへと走り……戻った
 「あ!び、ビレスート様…お、おかえりなさい……!」
喋りかけて来たのは…冬桜家から俺を世話しようとやって来た
星冬だ……まぁこいつは悪い奴ではないが……
……こいつ、二年前にやって来て…今は6歳…
親父め……虐待しやすい子供の女の子を…!
冬桜家との繋がりを危うくしてまでそうしたいのか…!
 「ただいま…」
 「も、もうすぐ…食事ができますよ」
何時も震えて……怯えてるように俺に話をする…
この子も…救わないといけない
何とか冬桜家に送り返せれば良いが…
主の許可なしには解禁は出来ない…俺が主なら出来るんだが…
……どうすれば…
 「…ありがとう。震えてるけど…大丈夫?」
 「い、いえ…!お気になさらず…」
 「また父上に…殴られたのか?」
 「……!そ、その…」
反応は明きからだった
親父の野郎……!!
 「…隠さなくていいよ。俺も皆も知ってるし…受けてると思うから…」
他の騎士にも当たり散らしているところを…
見たことがあるからな…
 「……………私、怖いです…」
 「…俺もだ。怖いのは当たり前だと思う…」
 「……ふ、冬桜家の務めはわかります…。けど…お家に…帰りたいよぉ…!…」
本当は…務めとかを気にしてる場合ではない……
死ぬか生きるかの問題だ…
 「……もし良ければ、俺の部屋に遊びに来ても良いから」
 「…あ、ありがとうございます……」
そう言って、俺は部屋へと戻る…
明日に行動をさらに移すとして…
食事は…普通は集まって食事をするのが貴族だろうが
俺は部屋で食事をしている
そこで…様々な準備も……


トントン…


扉を叩く音……食事か
 「び、ビレスート様…食事をお持ちしました…」
扉を開けると、星冬が待っていた
 「ありがとう。そこに置いておいてくれ」
 「……あ、あの…失礼なのですが……さっき……外に出ていったのって…本当に剣技を練習していたのですが?」
 「あぁ…そうだよ」
毒を盛るために蛇を狩りに行っていたって言うと
流石にマズイだろうからな…
 「………」
彼女は何も言わず、机に食事を置いてくれる
まぁ俺に出す食事なんて……な
 「…少し、居てもよろしいですか…?」
 「大丈夫だよ」
少しだけ震えが止まってくれたようだ
……安心してくれて良かった
 「ビレスート様は……優しいのですね…」
 「…そうでもない。俺は思ったことを体で行動してるだけだ」
実際、俺は親父を殺そうとしてる…
例えそれが、糞人間だろうとも…
殺して良いぐらいかはわかる
だが……俺からしたら死ぬべき人間だ……!
明日、俺は奴の飯に毒を盛る……



 そして、今日もクソッタレな日常を終わり…夜を迎え……



 俺はベッドで横になっていた
大丈夫、必ず成功する
逃げ道も下調べした…
……明日、どうなっているのか…わからない…
人生はわからないことだらけだ
…だが、俺は必ず………殺す…!
そう考え……俺は眠りについた……


 朝になり…


早速、俺はシェフが作る鍋に隙を見て
採取した毒を入れた
あのシェフは親父の料理を作るときは
必ず、鍋は赤いのを使っている
入れた後は直ぐにその場から離れ
部屋へと戻った


……が、数分後………


 「ビレスート!!毒を盛ったのは貴様だな!?」
親父が扉を倒すように開けて部屋に入ってくる
…なぜだ?なぜバレた…!?
 「その顔…図星だな?料理人が私の料理を味見したら、突然と倒れてな…そのまま亡くなってしまったよ。その料理を魔法で解析したら…何が出たと思う?蛇の毒やら草などの毒が入れられていたとは……ビレスート、貴様は剣の腕はともかく…狩りなどはお手のものだったなぁ…?」
 「……そ、そんな…!?」
流石に味見というのは予想出来なかった…!
 「さて……この始末…どうしてくれるのだ!!!」
俺は逃げる為に窓から飛び出す…


パキャァーリーン!!


窓から屋敷の外へと出た俺は
山を降るため、そのまま走って行った
くそ!…失敗した……!
あいつを殺すはずだったのに……!
なんで俺が殺さず逃げているんだ…!!
 「逃げられると思っているのか!」
糞親父の声が聞こえたと思ったら
次の瞬間……


シュウゥゥーン………ズボッ!


 「………あがぁぁぁぁぁ…!!??」
俺に飛んできたのは…まさかの槍だった
槍には麻痺毒が塗られ…それが俺の右足に刺さったのだった
 「あああああっ……あああああっ…!?」
感覚が麻痺したと同時に…俺の精神までもが麻痺したのか
体は動かなくなり……倒れてしまい…
俺はそのまま、山から転げ落ちて…海の近くの
砂浜まで降りていった……

もう動けない……体の感覚もない……
 「…さて、貴様は私を殺そうとしんだ。その足……二度とあんな事が出来ないように新な義足を造ってやろう…貴様の行動を制御出来る物をな…!」
ゆっくりと近づく、糞親父……
 「その前に…義足が付けれるようにその右足を切り落とさないといけんな…!!」
親父は腰に収めていた剣を抜いて
俺にまた一歩……また一歩と近づく……
そうか……生き地獄になるのか……俺………
 「ま、待ってください!主様!」
目の前に現れたのは……
メイドの星冬だった…
 「まだ証拠もないのに、ビレスート様と断定するのは……」
星冬は俺の前に立ち……糞親父の進行を妨げる…
 「冬桜家のメイドが……主に逆らうのか!」
 「そ、そういうわけでは…」
 「なら退けろ!屋敷の奴等で狩りが出来るのはそいつだけだ!」
 「で、ですけど……」
 「黙れぇ!」

ザシュゥーッ!

 「…ひがあっ!?……」
星冬は糞親父に剣で斬られてしまい
横に倒れてしまった……
くそ……!俺はこの子の生活も楽にさせるはずだったのに……
なぜ星冬が斬られないといけないんだ……!
 「あぁそうだ…商人から貰ったこの薬を……試しに飲ませてやるか…」
糞親父は…懐から……赤い液体の入った瓶を取り出し……瓶の栓を抜いた…
そして、その瓶を……
星冬の口にへと近づけ………飲ませてしまった……
 「……がっ……ぼぉ……ろ…!?」
一体…何を飲ませたんだ…!?
 「聞くとこれは…古代の魔女の血と魔獣の血を混ぜ合わせて作ったそうじゃないか…これを飲めば、どんな者にでも不老不死と怪我の傷もすぐに治ってしまうと…もしもの為、毒の場合もあるから飲ませてみたが…果たしてどうかな?」
魔女と魔獣だ……と?
そんな血があるのか?…
本物なら……魔獣の血をそんなことに使う連中まで居るのかよ…!!
 「本当の効果があるのなら、貴様達は生きる奴隷として扱っても良いんだぞ」
何処までも糞野郎が……!
貴族には貴族の誇りはねぇのかよ……!?
 「あ、あ……アアアアアアッ!?!?」
凄く苦しそうな声を星冬は上げていた…
 「痛イ…痛イィィィィ!?」
俺はただ見ているだけだった
体を動かせない………何も出来ない……
くそ………くそ……!……くそったれ……!!
 「…クソッタレェェェェェ……!!!!」
出来たことは声を出すことだけ
何もかも終わった……人生も…体も……
 「ふんっ自業自得だな。二人共、帰ったら覚悟をしておくのだな」



………………………………………………



 「なぁよぉ……さっきからうるせぇんだが……」
それは、ビレスートが完全に壊れてしまった直後のこと
 「なんだ?私の敷地内に他人が居るのか?」
 「うっせぇよ…こっちは船から落っこちて…此所で寝てたんだよ…。そうしたらなんだ…子供をそんな風に扱うなよ…寝覚めが悪くなんだろ…それでも貴族かぁ…?」
男は砂浜に居たようであり、その姿は大きく…黒い容姿をしていた
 「貴様……海賊か!どうしてこんな場所に居るかはさておき、此所は私の敷地だ。今見たことを無かったことにしないといけない」
そう言って、ビレスートの父親は剣を男にへと向けた…
 「だから…船から落ちてこの島まで何とか泳いで来たんだよ…。っておい…!?んなもんをいきなり向けんな…黙っておいてやるから、チャラにしろ…」
 「海賊風情が…黙れ!私の島に入ってしまったことが、運の悪さと思うがいい!」
そう言って、ビレスートの父親は男にへと斬りかかる

シュバ!

 「…ん?手応えが……ない?」
 「手を出したな…?」
いつの間にか、男はビレスートの父親の後ろに回っており
そのまま…ビレスートの父親を片手で持ち上げたのである
 「なっ…!?こいつ…いつの間に私の後ろに…!?」
 「……あばよ」
そして、もう片方の腕で
ビレスートの父親の体を貫いてしまったのであった…
 「…がはっああ!?……き、貴様ぁ…海賊なのに……な、なんて力………なん…………だ………」

男は……貫いた、ビレスートの父親を何処かに投げた
 「…はぁ……話さえ聞いてくれりゃあ…何もしなかったのによぉ…。おい、そこの男と女…大丈夫か?」

この時、ビレスートは既に気を失っており
星冬もあまりの痛さで気絶していた
 「………どうすっか…ほっとく訳にもいかねぇしよぉ~…」
その時である
 「おーーーい!!カウデラぁぁー!ようやく、見つけたぞぉぉぉ!」
男は声の方向を見てみると
そこには、海から島へと近づく…大きな船が向かっていた

また数分後……

船は島へと到着し、中から一人の女性が出てきたのだった
 「全く!船長が海に落ちてどーすんだい!!幸いにも、近くに島があったから良いっても……って!カウデラ!?その腕はどうしたんだ!?」
女はどうやら、男と同じ海賊らしく
容姿は同じく、黒かった
 「ん…?あぁ……ちと海賊のルールに当たってきた野郎が居てな…どうも此所は貴族の所有する島らしいな…」
 「……見た限り、なんかあったようだね…」
女はビレスートと星冬を見て男と喋る…
 「どっちも息はあるが、男の方は早いとこ治療しないと死んじまう…どうすんだい?カウデラ?」
 「そのくれぇで死ぬわけねぇだろうよ…ただの麻痺毒だ…槍さえ抜きゃあ何とかなる…。女の方はどうだ…?」
 「簡単に言ってくれるねぇ…女の方は凄い熱だ…。どちらにせよ、カウデラの撒いた種なんだろうし…見たとこ、貴族と冬桜家の野郎に見えるが……」
女は星冬の額を触りながら喋っている
 「俺が撒いた種つうか巻き込まれただけなんだがなぁ……はぁ…仕方ない、船に乗せてやれ…」
 「そうすると思ってたよ!おい、てめぇら!この餓鬼共を連れていきな!」
船からさらに男達が出てきて、ビレスートと星冬を運ぶ
 「……………ぁ……?」
ビレスートは一瞬だけ意識が戻った
 「……お前、目が覚めたんなら答えろ。生きたいか?」
どういう状況だったのか、ビレスートにはわからなかったが
彼は最後の力を振り絞り…答えた
 「………………いき……た………い……」
 「……おめぇらああああっ!運んだら出航するぞおおおおっ!!」






おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!






響き渡る男達の声……その中でビレスートは
この時、初めて自分の自由を手に入れたのであった
そして……物語に繋がる始まりでもあるということを……
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