異世界でも介護するんだってさ〜王宮の魔法と絆〜

ロキ

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異世界でも介護するんだってさ 

第七話「星降りの遺跡へ」

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悠斗たちは、北方にある「星降りの遺跡」を目指し旅を続けていた。そこには、影の教団を完全に封じるために必要な「光の結晶」が隠されているという。エルドリッチから託された使命を胸に、悠斗、リリス、ダリウスの三人は険しい道を進んでいく。
しかし、旅路は平坦ではなかった。北方へ向かうにつれ、気候は厳しさを増し、人里離れた荒野には魔物が徘徊していた。悠斗たちはそれぞれの力を発揮しながら、この試練に立ち向かうことになる。

北方への旅路
旅が始まって数日。馬車で進んでいた一行は、次第に人の気配が薄れる荒野へと足を踏み入れていた。空気は冷たく乾燥しており、遠くには雪山が見える。北方特有の厳しい環境が、彼らの体力をじわじわと奪っていく。
「寒い……これじゃ手がかじかんで魔法もまともに使えないよ……」リリスが震えながら呟く。
「ここから先はもっと厳しくなるだろうな」とダリウスが険しい表情で答える。「星降りの遺跡は、この山脈を越えた先だ。道中で魔物が出る可能性も高い。気を引き締めていこう」
悠斗はそんな二人を見ながら、自分も何か役立てることはないかと考えていた。彼は荷物から毛布や温かい飲み物を取り出し、リリスに手渡す。
「これで少しでも暖まって。僕たちが体調を崩したら、それこそ敵の思う壺だからね」
その優しさにリリスは微笑み、「ありがとう」と言葉を返した。

森での遭遇
山脈へ向かう途中、一行は深い森へと足を踏み入れた。その森は昼間でも薄暗く、不気味な静けさが漂っていた。
「この森……何か嫌な感じがする」リリスが周囲を警戒しながら呟く。
その直後だった。突然、木々の間から黒い霧が立ち込め始めた。そして霧の中から現れたのは、人型の魔物だった。それらは影のように形を変えながら近づいてくる。
「来るぞ!」ダリウスが剣を構え、一行は戦闘態勢に入った。
魔物たちは素早く動き回り、一筋縄ではいかなかった。ダリウスが剣技で応戦し、リリスが攻撃魔法で援護する。しかし、それだけでは数が多すぎた。
「悠斗! 後ろだ!」ダリウスの叫び声に振り返ると、一体の魔物が悠斗へ迫っていた。しかし、その瞬間――
「浄化の光!」
悠斗は新たに覚醒したスキルを発動した。その光には闇属性への特効効果があり、魔物たちは次々と消滅していった。
「やった……!」悠斗は初めて自分の力で敵を倒せたことに驚きつつも喜びを感じていた。
謎の少女との出会い
戦闘後、一行は森の奥から微かな声を耳にした。「助けて……」という弱々しい声だった。その声に導かれるように進むと、大きな木の根元で一人の少女が倒れていた。彼女は白いローブを身にまとい、その姿からただ者ではない雰囲気を感じさせた。
「大丈夫ですか!?」悠斗は急いで駆け寄り、彼女の脈や呼吸を確認した。幸い命に別状はないようだったが、かなり衰弱している様子だった。
「この子……誰だろう?」リリスが不思議そうに尋ねる。
「わからない。でも放っておくわけにはいかない」悠斗は持っていた薬草や水で応急処置を施した。そして少女はゆっくりと目を開け、小さな声で呟いた。
「……あなたたち……光……?」
その言葉に一行は驚きつつも、彼女が何か重要な情報を知っている可能性に気づいた。

少女・セリアとの会話
少女――セリアと名乗った彼女は、一行に感謝しながら、自分について語り始めた。彼女は星降りの遺跡近辺で暮らす古代族の末裔であり、「光の結晶」を守護する一族の生き残りだという。
「光の結晶……それなら私たちも探しているんだ!」リリスが目を輝かせて言った。
しかしセリアの表情は曇った。「結晶は確かに遺跡にある。でも、その場所には強力な結界が張られていて、普通の人間では近づけない。それだけじゃない……最近になって闇の瘴気が広まり始めている」
その言葉に一同は緊張感を覚えた。影の教団もまた結晶を狙っている可能性が高かった。そしてセリア自身も、その瘴気によって家族や仲間を失ったという。
「お願いです……私も一緒に連れて行ってください。そして結晶を守る手助けをさせてください」
セリアの真剣な願いに、悠斗たちは頷いた。一人でも多く仲間がいること、それ自体が心強かったからだ。

新たな仲間と決意
翌朝、一行はセリアと共に再び旅路へ戻った。星降りの遺跡まではあと数日の道程だった。しかしその先にはさらなる困難と試練が待ち受けていることだろう。それでも悠斗たちは決して諦めることなく進む決意を固めていた。
悠斗は馬車から見える空を見上げながら心に誓った。「この世界でも俺のできることを全力でやる。そしてみんなと一緒ならきっとどんな困難も乗り越えられる」
こうして、新しい仲間セリアと共に、星降りの遺跡への冒険はいよいよ本格化する――。
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