異世界でも介護するんだってさ〜王宮の魔法と絆〜

ロキ

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異世界でも介護するんだってさ 

第十二話「迫り来るゼルヴァスの影」

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黒霧谷での戦いを終えた悠斗たちは、影の教団幹部ヴァルガスを退け、「闇の核」の封印に成功した。しかし、ヴァルガスが残した「ゼルヴァス復活の日は近い」という言葉は、一行に新たな不安をもたらしていた。核を封じたことで一時的な平穏を得たものの、影の教団が次にどんな動きを見せるか分からない。悠斗たちは王宮へ戻り、エルドリッチと再び作戦を練ることになった。

王宮への帰還
黒霧谷からの帰路、一行は疲労感を抱えながらも少しずつ前向きな気持ちを取り戻していた。谷での戦いは厳しいものだったが、それでも全員が無事に生還できたことは大きな成果だった。
「闇の核を封じられたことは喜ばしいけど……これで影の教団が諦めるとは思えないわね」リリスが馬車に揺られながら呟く。
「そうだな。奴らはまだ他にも手を打っているはずだ」ダリウスが険しい表情で答える。「次はどこで何を仕掛けてくるか分からない。気を抜ける状況じゃない」
悠斗もまた、その言葉に深く頷いた。彼自身、黒霧谷で自分の力が仲間たちの役に立ったことに少しばかり自信を持てるようになっていたものの、それでも影の教団という巨大な脅威にはまだ力不足だと感じていた。
「僕たちにはまだやるべきことがあるね。エルドリッチさんと相談して、次の手を考えよう」

エルドリッチとの会議
王宮へ戻った一行はすぐさまエルドリッチの部屋へ向かった。そこには国王や高官たちも集まっており、黒霧谷での成果報告が行われた。
「よくやった、皆。この闇の核を封じたことで、影の教団の計画には大きな打撃を与えられただろう。しかし……これで全てが終わったわけではない」
エルドリッチはそう言うと、一冊の古い地図を広げた。それには各地に点在する遺跡や重要な場所が記されており、その中には黒霧谷以外にもいくつか赤い印が付けられていた。
「影の教団にはまだ複数の拠点がある。そして彼らはゼルヴァス復活のために『闇の核』以外にも別の手段を用意している可能性が高い。その一つが『闇の祭壇』だ」
「闇の祭壇……?」レオンが眉をひそめる。
「そうだ。それは古代魔法によって作られた儀式場で、ゼルヴァス復活に必要な魔力を集めるために使用される。現在、その一つが南東地方にある『血染めの森』に存在すると言われている」
その言葉に一同は息を呑んだ。「血染めの森」という名前だけでも不気味さが伝わってくる場所だった。
血染めの森への準備
「血染めの森か……また厄介そうな場所ね」リリスが小さくため息をつく。
「それでも行かなきゃならない。奴らが祭壇を使う前に破壊しないと、この世界全体が危険に晒される」ダリウスが力強い声で答える。
悠斗もまた覚悟を決めて頷いた。「僕もできる限りみんなを支えるよ。この世界のみんなを守るためにも……僕たちならきっと乗り越えられる」
こうして一行は再び旅立つ準備を整え始めた。エルドリッチから新しい装備や薬草なども提供され、彼らは万全な状態で次なる冒険へ挑むことになった。

血染めの森への道中
数日後、一行は南東地方へ向けて旅立った。道中、レオンが自分自身について語り始めた。
「俺も影討ち隊として色々な場所で戦ってきたけど……血染めの森だけは避けて通ってきた場所だ。あそこにはただ魔物だけじゃなく、人間すら狂わせる何かがあると言われている」
その言葉に一同は緊張感を高めつつも、それぞれ心構えを固めていた。
「どんな場所だろうと、私たちはやるべきことをやるだけよ」リリスが力強く言う。「悠斗もいるし、みんなで力を合わせれば大丈夫!」
その言葉に悠斗も微笑みながら答えた。「ありがとう、リリス。僕もみんなと一緒なら頑張れるよ」

血染めの森への突入
数日後、一行はついに血染めの森へ到着した。その場所は名前通り赤黒い霧で覆われており、不気味な静寂が支配していた。木々はねじ曲がり、その表面には無数の傷跡や血痕と思われる痕跡があった。
「ここ、本当に嫌な感じね……」リリスが震える声で呟く。
「気を引き締めろ。この先には何か大きなものが待ち受けている」ダリウスが剣を握りしめながら前方を見る。
セリアもまた緊張した面持ちで杖を構え、「闇属性魔力がかなり濃いわ。この奥に祭壇がある可能性が高い」と告げた。
悠斗もまた、自分自身への不安や恐怖を感じながらも、それ以上に仲間たちと共に進むべき使命感を抱いていた。「みんな、大丈夫。僕たちならきっと乗り越えられるよ」

森奥で待ち受けるもの
森奥へ進むにつれ、一行は次第に異様な現象に巻き込まれていった。それぞれ幻覚や過去の記憶と向き合わされ、自分自身との戦いを強いられる状況となった。
悠斗もまた、自分自身への疑念――「本当に自分はこの世界で役立っているのか?」という問いと向き合うことになった。しかし、彼はこれまで仲間と共に乗り越えてきた経験や絆によって、その迷いから抜け出すことができた。
最終的には全員がそれぞれ試練を乗り越え、祭壇と思われる場所へ到達する。しかしそこには――

新しい幹部との遭遇
「ようこそ、『血染めの祭壇』へ」
低く冷たい声と共に現れたのは、新しい影の教団幹部だった。その男――カイロンと名乗った彼は、ヴァルガス以上に冷酷そうな雰囲気を漂わせていた。そして彼は悠斗たちを見るなり、不敵な笑みを浮かべながらこう告げる。
「ここまで来れただけでも褒めてやろう。しかし、お前たちはここで終わりだ。この祭壇こそゼルヴァス復活への鍵となる場所。その破壊など許さぬ!」
こうして一行とカイロン率いる魔物軍団との新しい戦いが幕を開けようとしていた――。
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