異世界でも介護するんだってさ〜王宮の魔法と絆〜

ロキ

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異世界でも介護するんだってさ 

第十一話「黒霧谷の真実」

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悠斗たちは「闇の核」を探すため、北東地方の「黒霧谷」へと足を踏み入れた。この谷は濃密な霧に覆われ、不気味な静寂が支配する場所だった。影の教団がここに何かを隠している可能性が高いとエルドリッチから聞かされていたが、その詳細は不明だった。一行は慎重に進みながら、未知の脅威に備えていた。

黒霧谷への突入
「ここ、本当に嫌な感じね……」リリスが周囲を警戒しながら呟く。
黒霧谷は昼間でも薄暗く、視界がほとんど利かなかった。木々は枯れ果て、地面にはひび割れた大地が広がっている。霧の中からは時折、不気味な音が聞こえ、一行の緊張感をさらに高めていた。
「この霧……普通じゃないな」ダリウスが剣を握りしめながら言う。「何かが俺たちを監視しているような気配がする」
悠斗もまた、その異様な雰囲気に背筋が寒くなる思いだった。しかし、彼は仲間たちを見渡し、勇気を振り絞って声をかけた。
「みんな、大丈夫だよ。僕たちならきっと乗り越えられる。これまでだってそうだったから」
その言葉にリリスやセリアも頷き、一行はさらに奥へと進んでいった。

魔物との遭遇
谷の奥へ進むにつれ、霧はさらに濃くなり、一行の動きは次第に鈍くなっていった。その時――
「来るぞ!」ダリウスが鋭い声で叫ぶ。
霧の中から現れたのは、瘴気をまとった魔物たちだった。それらは人型をしているものの、体は影のように不定形で、目だけが赤く輝いていた。
「なんて数なの……!」リリスが驚きつつも魔法陣を展開する。「光よ、我らを守り給え! 『光壁』!」
彼女の防御魔法によって一行は一時的に守られたものの、魔物たちは次々と攻撃を仕掛けてきた。ダリウスは剣技で前線を支え、セリアは浄化魔法で瘴気を弱めていく。
しかし、それでも敵の数は多く、一行は次第に追い詰められていった。

悠斗の新たな力
「悠斗! 後ろだ!」レオンが叫ぶ。
振り返ると、一体の魔物が悠斗に迫っていた。しかし、その瞬間――悠斗の胸から眩い光が放たれた。それはこれまで以上に強力な浄化能力となり、周囲の魔物たちを一掃した。
「これ……僕の力……?」悠斗自身も驚きながら呟いた。
その光にはただ浄化するだけでなく、一時的に仲間全員へ力を与える効果もあった。ダリウスやリリスもそれによって再び立ち上がり、反撃を開始した。
「よし、このまま押し切るぞ!」ダリウスが叫び、一行は連携攻撃で次々と魔物を倒していった。
最終的には全ての魔物を撃退し、一時的な平穏が訪れた。しかし、その戦闘による疲労感は全員に重くのしかかっていた。

谷の中心部へ
戦闘後、一行はさらに奥へ進むことにした。セリアが杖を掲げながら周囲を調べる。
「この先……何か強い闇属性魔力を感じるわ。おそらくそこが目的地よ」
その言葉に一同は緊張感を高めつつも歩みを進めた。そしてついに彼らは谷の中心部と思われる場所へ到達した。そこには巨大な岩盤があり、その中央には黒い結晶体――おそらく「闇の核」が鎮座していた。
「これが……闇の核……」リリスが呟く。「こんなものからあんな恐ろしい力が生まれるなんて……」
しかし、その瞬間――

影の教団幹部との対峙
「よくここまで来ましたね」
低く冷たい声と共に現れたのは、影の教団幹部ヴァルガスだった。彼との再会に一同は警戒心を強める。前回星降りの遺跡で退けた相手だとはいえ、その実力には侮れないものがあった。
「闇の核には触れさせませんよ。それどころか、お前たちにはここで消えてもらう」
ヴァルガスは杖を掲げると、周囲に瘴気を放出し始めた。その瘴気から新たな魔物が生み出され、一行へ襲いかかる。

決戦:ヴァルガスとの再戦
ダリウスとレオンは前衛として魔物やヴァルガスへ立ち向かった。一方でリリスとセリアは後方から援護射撃や浄化魔法で支援する。しかし、ヴァルガス自身も強力な闇属性攻撃を繰り出し、一行を追い詰めていった。
「このままでは持たない……!」リリスが焦りながら叫ぶ。
その時、悠斗は胸に手を当て、自分自身へ語りかけた。「僕には戦う力なんてない。でも……みんなと一緒ならきっと乗り越えられる!」
その瞬間、悠斗から再び眩い光が放たれ、それによって仲間全員へ力が与えられた。その光によってヴァルガスも一瞬怯み、一行には反撃する隙が生まれた。

闇の核への干渉
セリアと悠斗は協力して闇の核へ干渉することになった。セリアは古代族特有の呪文で核を封じようと試み、一方で悠斗は浄化能力で核そのものを弱体化させようとした。
「もう少し……もう少しで封じ込められる!」セリアが叫ぶ。
しかし、それに気づいたヴァルガスも必死で妨害しようとしてきた。その攻防戦は激しく、一瞬たりとも気を抜けない状況だった。それでも一行全員の連携によって最終的には核への封印作業が成功した。
ヴァルガス撤退と新たなる脅威
封印された闇の核から瘴気が消え去り、谷全体にも平穏が戻った。しかし、それでもヴァルガスは悔しそうな表情でこう告げる。
「ゼルヴァス様復活の日は近い。この程度では何も変わらんぞ……!」
そう言い残し、彼は瘴気と共に姿を消した。一同には達成感と同時に、新しい不安も芽生えていた。ゼルヴァス復活という脅威――それとの戦いはいよいよ本格化することになるだろう。
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