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9. バル×ビビ①
カーター夫妻が使う休憩室から斜め向かいの予約してあった部屋。ワインに染まった奥様のドレスを紙袋に入れてしまい、新しいワンピースをハンガーにかけてくるりと振り向くと、仮面を付けたバルカスがこちらを見ている。会場から思っていたが、少し生地に光沢があるスーツが色っぽくて格好いい。世界で一番恰好いい男にしか見えない。
「あれ、どうして仮面を付けているの?」
「まだ飲み足りないから、戻って飲もうかと」
「え~! じゃあ私も行く!!」
「知ってる。仮面を付けて」
「バルカスが、付けて?」
赤毛に黄色いドレスの女がシナを作ってバルカスに近づいてねだる。会場でまぁまぁ飲んだので、ビビアンの行動にかかるブレーキは壊れていた。
もう何年も何年も大好きな、仮面を付けていたって見慣れた男の顔。
「………ビビの仮面がない。自分で持ってるだろ」
「それがいい」
どういう意味だと眉を寄せると、キラキラした瞳はバルカス自身が付けた仮面を見つめている。
「俺のを?」
「そう」
溜息をついて仮面を外すと、やっぱり大好きなうっとりするほど男前な顔が現われた。すぐに我慢できなくなって、するりと自分よりずっと高い位置にある首に絡まりつき耳を引っ張る。
「痛い、痛い! 耳を引っ張るな」
「ねぇ、誰も見てないから、キスして?」
「しない」
「ちょっとだけ!」
「ビビ。結構飲んだな」
「一回だけ。ね?」
「だめだ。誰か見てるかもしれない」
「ジェフ様の密談も? 聞かれてるかもしれないのに密談していたの?」
上司の警備もあって、本当に誰もいない状況にはしてあった。自信はある。
だが今その自信が裏目に出る。
「………」
「バルカス、おねがい」
して?
見下ろしたバルカスの視界に潤んだ瞳と誘う唇、むぎゅと押し付けられた谷間がてんこ盛りに入る。
「情報量が多すぎる」
「何の話?」
結局溜息を吐いて口を吸ってやると、見る間に蕩けていく。それはもうバルカスが舌打ちしそうになるほどに。まだ大した口づけでもないのだが。
「はい、終わり。仮面を付けろ」
「足りな~い!」
「一回だけってビビが言ったんだろ!?」
「え~。じゃあ、口は一回、にする?」
「脱ぐな!!」
器用に背中のジッパーを降ろし始める様子に泡を吹いて誰もいない休憩室を見渡す。
「誰もいないって、言ったのバルカスだよ?」
「でもだから脱ぐなって!!」
ストンと落ちた黄色いドレスを跨いで、白いスリップ姿になったビビアンは煽情的な谷間をちゃんと突き出して古今東西からのお作法通りに誘う。
「なぁんで。ベッドもあるし? こんな可愛い子ちゃんがいるんだから、据え膳食わないバルたんじゃないでしょ」
「食わん。ビビだけは食わん」
「嘘ばっかり! 本当は食べたいって、顔に書いてあるのに」
ふたりっきりでベッドのある部屋にいれるなんてまず有り得ないのだ。
思わず頬を撫でる男を馬鹿にしたような目で眺めて、『意気地のない奴』と呟く。じゃあもう暇だしひとりで寝るからアッチ行って、と手を振り、赤毛はそっぽを向いた。
「そんな恰好で一人でここで寝るつもりか?」
「そうよう。ドレスで寝たら皺になるし。でも朝方まで待つんだから仕方ないじゃない」
夜明け前まで様子を見て、無理矢理帰ったりしていなければきっと大成功。宰相と奥様がいる部屋の前にそっとワンピースを差し入れて帰るのだ。
「誰か入ってきたらどうするんだ」
「つまんないこと聞かないでよ」
おやすみ、とビビアンはベッドに入る。
バルカスの見ている前で、スリップもブラもショーツも全部ベッドから床に放り投げられた。
男は黙って暫くじっとしていたが、放り投げられた下着を一つずつ拾って畳み、ドレスを奥様のワンピースの隣に吊るす。ついでにジャケットを脱いでそのまた隣にかけた。ネクタイも抜いて、袖のカフスを外す。
小さくなって目をつむる赤毛は衣擦れの音が聞こえているだろうに、微動だにしない。
ギ、と重みで高級マットのスプリングが音を上げる
バルカスが掛布の上から肘をついて寝転ぶと、ビビアンはスススと端まで遠ざかって行く。
「いつも思うが、抱いて欲しいのか欲しくないのかどっちなんだよ」
「わかんない。でも結婚はして欲しい」
「……わがまま言うな」
「赤ちゃん作ったら、結婚できる?」
「その前に殺される」
「………」
掛布から覗く赤毛の散ったうなじは白く、その背中はよく外で遊ぶビビアンらしくセクシーなそばかすが散りばめられている。
そばかすを目で辿り、首を傾けて背中を追うが、結局いつも肝心な所が見えた試しはない。
「こっち向けよ」
「いや」
「………据え膳食って欲しいって、さっき言ったのは誰だった?」
「知らない人」
ビビアンは後ろを振り向いてバルカスと見つめ合いたい衝動に駆られるが、ぐっと我慢する。さっきからずっと心臓の音がすごい。
だってまさか、ベッドに本当に寝転んでくれるなんて思ってもいなかった。
ほんのすこし、嘘でも夫婦のカーター夫妻が羨ましくて、ちょっと調子にのっただけ。
「バルたん」
「なに」
「私、この間、二十五になったの」
「知ってる」
「今年もプレゼント、ありがと」
「それは知らん」
赤毛の肩が小さく揺れる。
「十五の誕生日から、十回目だね」
「………」
差出人のないプレゼントは、いつも同じもの。
毎年毎年たった一度だけ、嘘偽りない気持ちをくれる。
「バルカスも、もう三十一歳だね」
「ああ」
「誕生日プレゼント、何が欲しい?」
「はだか」
「………はぁ?」
「はだか見せて欲しい」
「馬鹿じゃないの」
「なぁ、ビビ、こっち向いて」
「………目隠しするなら向いてあげる」
「我儘だなぁ」
後ろで身を起こしてからゴソゴソする音がして、はい、目隠しした、と声がする。ビビアンは首を捻ってバルカスを見た。男の目はバスルームの白いタオルで隠れ、後頭部まで括ってある。
「それ、本当に見えてない?」
「どうやって見えるんだよ」
「そっか」
くるりと振り向いて、ビビアンは目隠ししたバルカスに寄って行く。
気配を感じて、バルカスの口角が上がった。
あ、珍しく笑っている。
ビビアンはまじまじと口元だけでも男前な大好きな顔を見る。
バルカスは顔が良すぎて笑わない。本心で笑うと黄色い声のご令嬢が雪だるま式に増えてしまうのだ。だから笑わないで、って昔にビビアンが言いつけた。
うっかり口元に見惚れたが、勢いで脱いでしまったのでこの隙にスリップだけでも着なければと思い出す。ビビアンは放り投げた先の床を覗き込む……が、ない。掛布から這い出して探したが、見当たらない。ドレスはハンガーにかけてあった。ということは、バルカスが下着を拾ったのだ。えっ、とバルカスへ振り向くと、男の肘下に下着が畳んで置いてあるではないか。
ぎゃあ。
信じられない!
じ~~~~~~~~~っと下着を見つめた後で、ビビアンはそろそろと肘下まで近づいていく。腕を伸ばしてスリップに手が届いたその時。
ヒョイと脇腹を持たれて、ぎゃーと叫んだ間にバルカスの腹を跨ぐ格好でお座りしている自分がいた。
「だめだめっ」
「見てない」
「触ってるじゃない!」
「誕生日プレゼントに裸をくれるんだろ」
「あげるなんて言ってないけど!? 大体、誕生日じゃないよね、今日!」
「大丈夫、そのうち来るから。今日貰っとく」
目隠しした大好きな男の上に素っ裸で跨って盛大に抗う、自分史上とんでもない事態である。
口角を上げたままの男はビビアンの抵抗もどこ吹く風で背中をすーっとなぞって黙らせる。
「………はぁんっ」
ぴっと背中を反らせて固まった身体を捕まえて抱き込む。
栗色の髪がビビアンの視界に落ちた。
柔らかい身体が寒くないように、バルカスが掛布を引っ張り上からかけてやる。
「本当は見えてるんじゃないの!?」
「見えてない。試しに目隠ししてやろうか」
「するわけない!」
楽しそうに笑う胸の中で拗ねた唇を掬って、もう一度男が口づける。長いクルクルとウェーブを巻く赤毛をかきあげて首を触ってうなじを掴み、腰を撫でて、舌は奥へと深く口内を犯した。
「ん…」
歯列をなぞり、上顎を強く押し上げ、舌を吸って一度荒く犯す。ちょっと涙目になってビビアンは大人しくなった。こんなにちゃんとキスしてもらったのは初めてだったから。
「ねぇ、なんでシャルロット様の家庭教師に呼んだの」
「予約の取れない人気講師じゃないか」
「そうだけど……他にも人気の先生はいるし……」
「なんでだろう? 人気講師なら正解も分かるだろ」
言いながら、バルカスが見えているかのように首を舐めあげる。ゾクゾクしてビビアンは真っ白なシャツを握りしめる。一度顎まで移動して、今度は丸い膨らみまで舌がチロチロと動く。
「あ」
パクリと口の中に先を全部含んだ。
「あ……あ……」
びっくりした顔をして目隠しした男の行動を見つめ、ちゅぱっと口を離された後はキスで毒気を抜かれたまま反対側も差し出した。
両方の先っぽがぷくりと立ち上がる頃には、小さな刺激で腹の奥がきゅんきゅん疼いた。股の下で硬くなっているソレに驚き焦って身体をずらそうとしたが、気が付いたバルカスが乳首を吸いながら尻を掴んで引き寄せる。
「怖い?」
「こわくない!!」
「もう二十五だもんな……ここに指、挿れたことある?」
「ある……あるけど、なんかよくわかんなくてやめた」
酔ってるからか、秘密にするような答えでも口が軽い。
よくわからんか、と言いながら長い指が口の中から涎をすくって脚の間に向かい、つぷ、と挿れた。
「ビビ、見てないから、ちゃんと脚を広げて……」
「ん……んっ」
「もっと身体の力抜いて良い」
「むりぃ、こわい!」
とうとう笑い始めて、口元が緩んで締まりのないバルカスがトンと裸の身体を押し倒す。
一本指でゆっくり狭くて緊張している潤みの洞を撫で、頭が下がって舌を伸ばす。
ビビアンの見ている前で、隠されていた硬い突起を探し当てて舌先でぺろぺろと舐め始めた。
「バル…」
惚けた顔でじっとその様子を見ていたビビアンが、次第に大きな溜息を吐いた。
はぁ……はぁん………
ぐちゅ、ぐちゅぐちゅ、くちゅ、ちゅぱちゅぱ……
休憩室には水音と吐息しか響かない。
だんだんと下腹部を支配し始める甘い気持ちよさに『あぁぁぁん』と鼻にかかった可愛い声があがる。バルカスは素直な身体にとびっきりのご褒美をあげる。
「あ、あ、あっ、バルカ、あ、バル、あ、あ……」
ビビアンが細い腰を反らせて足をきゅっと掴むように力を入れる。バルカスは唇を離して指でくちゃくちゃ奥を勢いよく撫でた。
「あ、も、も、もっ………~~~~~っ」
ちょっとだけ、バルカスはこっそりとタオルを下げる。
掛布に埋もれて世界一いやらしく身体を捩り、ビビアンは達した。
目を細めて、またタオルを上げる。
ペロッと唇を舐めて、卑猥なぬかるみから指を抜く。
力の抜けた肢体を抱き上げて、包み、ベッドに横になる。
息が落ち着いてきたと思った頃には、腕の中の赤毛は酔いの中、すっかり寝入ってしまう。
ピロートークもできやしない、なんと自由なお姫様。
バルカスは苦笑するが、タオルを取ってスリップだけ着せてやると可愛い可愛いビビアンの髪や頬をなでまくり、やがて自身も目をつぶる。
おやすみ、ビビ。また明日。
「あれ、どうして仮面を付けているの?」
「まだ飲み足りないから、戻って飲もうかと」
「え~! じゃあ私も行く!!」
「知ってる。仮面を付けて」
「バルカスが、付けて?」
赤毛に黄色いドレスの女がシナを作ってバルカスに近づいてねだる。会場でまぁまぁ飲んだので、ビビアンの行動にかかるブレーキは壊れていた。
もう何年も何年も大好きな、仮面を付けていたって見慣れた男の顔。
「………ビビの仮面がない。自分で持ってるだろ」
「それがいい」
どういう意味だと眉を寄せると、キラキラした瞳はバルカス自身が付けた仮面を見つめている。
「俺のを?」
「そう」
溜息をついて仮面を外すと、やっぱり大好きなうっとりするほど男前な顔が現われた。すぐに我慢できなくなって、するりと自分よりずっと高い位置にある首に絡まりつき耳を引っ張る。
「痛い、痛い! 耳を引っ張るな」
「ねぇ、誰も見てないから、キスして?」
「しない」
「ちょっとだけ!」
「ビビ。結構飲んだな」
「一回だけ。ね?」
「だめだ。誰か見てるかもしれない」
「ジェフ様の密談も? 聞かれてるかもしれないのに密談していたの?」
上司の警備もあって、本当に誰もいない状況にはしてあった。自信はある。
だが今その自信が裏目に出る。
「………」
「バルカス、おねがい」
して?
見下ろしたバルカスの視界に潤んだ瞳と誘う唇、むぎゅと押し付けられた谷間がてんこ盛りに入る。
「情報量が多すぎる」
「何の話?」
結局溜息を吐いて口を吸ってやると、見る間に蕩けていく。それはもうバルカスが舌打ちしそうになるほどに。まだ大した口づけでもないのだが。
「はい、終わり。仮面を付けろ」
「足りな~い!」
「一回だけってビビが言ったんだろ!?」
「え~。じゃあ、口は一回、にする?」
「脱ぐな!!」
器用に背中のジッパーを降ろし始める様子に泡を吹いて誰もいない休憩室を見渡す。
「誰もいないって、言ったのバルカスだよ?」
「でもだから脱ぐなって!!」
ストンと落ちた黄色いドレスを跨いで、白いスリップ姿になったビビアンは煽情的な谷間をちゃんと突き出して古今東西からのお作法通りに誘う。
「なぁんで。ベッドもあるし? こんな可愛い子ちゃんがいるんだから、据え膳食わないバルたんじゃないでしょ」
「食わん。ビビだけは食わん」
「嘘ばっかり! 本当は食べたいって、顔に書いてあるのに」
ふたりっきりでベッドのある部屋にいれるなんてまず有り得ないのだ。
思わず頬を撫でる男を馬鹿にしたような目で眺めて、『意気地のない奴』と呟く。じゃあもう暇だしひとりで寝るからアッチ行って、と手を振り、赤毛はそっぽを向いた。
「そんな恰好で一人でここで寝るつもりか?」
「そうよう。ドレスで寝たら皺になるし。でも朝方まで待つんだから仕方ないじゃない」
夜明け前まで様子を見て、無理矢理帰ったりしていなければきっと大成功。宰相と奥様がいる部屋の前にそっとワンピースを差し入れて帰るのだ。
「誰か入ってきたらどうするんだ」
「つまんないこと聞かないでよ」
おやすみ、とビビアンはベッドに入る。
バルカスの見ている前で、スリップもブラもショーツも全部ベッドから床に放り投げられた。
男は黙って暫くじっとしていたが、放り投げられた下着を一つずつ拾って畳み、ドレスを奥様のワンピースの隣に吊るす。ついでにジャケットを脱いでそのまた隣にかけた。ネクタイも抜いて、袖のカフスを外す。
小さくなって目をつむる赤毛は衣擦れの音が聞こえているだろうに、微動だにしない。
ギ、と重みで高級マットのスプリングが音を上げる
バルカスが掛布の上から肘をついて寝転ぶと、ビビアンはスススと端まで遠ざかって行く。
「いつも思うが、抱いて欲しいのか欲しくないのかどっちなんだよ」
「わかんない。でも結婚はして欲しい」
「……わがまま言うな」
「赤ちゃん作ったら、結婚できる?」
「その前に殺される」
「………」
掛布から覗く赤毛の散ったうなじは白く、その背中はよく外で遊ぶビビアンらしくセクシーなそばかすが散りばめられている。
そばかすを目で辿り、首を傾けて背中を追うが、結局いつも肝心な所が見えた試しはない。
「こっち向けよ」
「いや」
「………据え膳食って欲しいって、さっき言ったのは誰だった?」
「知らない人」
ビビアンは後ろを振り向いてバルカスと見つめ合いたい衝動に駆られるが、ぐっと我慢する。さっきからずっと心臓の音がすごい。
だってまさか、ベッドに本当に寝転んでくれるなんて思ってもいなかった。
ほんのすこし、嘘でも夫婦のカーター夫妻が羨ましくて、ちょっと調子にのっただけ。
「バルたん」
「なに」
「私、この間、二十五になったの」
「知ってる」
「今年もプレゼント、ありがと」
「それは知らん」
赤毛の肩が小さく揺れる。
「十五の誕生日から、十回目だね」
「………」
差出人のないプレゼントは、いつも同じもの。
毎年毎年たった一度だけ、嘘偽りない気持ちをくれる。
「バルカスも、もう三十一歳だね」
「ああ」
「誕生日プレゼント、何が欲しい?」
「はだか」
「………はぁ?」
「はだか見せて欲しい」
「馬鹿じゃないの」
「なぁ、ビビ、こっち向いて」
「………目隠しするなら向いてあげる」
「我儘だなぁ」
後ろで身を起こしてからゴソゴソする音がして、はい、目隠しした、と声がする。ビビアンは首を捻ってバルカスを見た。男の目はバスルームの白いタオルで隠れ、後頭部まで括ってある。
「それ、本当に見えてない?」
「どうやって見えるんだよ」
「そっか」
くるりと振り向いて、ビビアンは目隠ししたバルカスに寄って行く。
気配を感じて、バルカスの口角が上がった。
あ、珍しく笑っている。
ビビアンはまじまじと口元だけでも男前な大好きな顔を見る。
バルカスは顔が良すぎて笑わない。本心で笑うと黄色い声のご令嬢が雪だるま式に増えてしまうのだ。だから笑わないで、って昔にビビアンが言いつけた。
うっかり口元に見惚れたが、勢いで脱いでしまったのでこの隙にスリップだけでも着なければと思い出す。ビビアンは放り投げた先の床を覗き込む……が、ない。掛布から這い出して探したが、見当たらない。ドレスはハンガーにかけてあった。ということは、バルカスが下着を拾ったのだ。えっ、とバルカスへ振り向くと、男の肘下に下着が畳んで置いてあるではないか。
ぎゃあ。
信じられない!
じ~~~~~~~~~っと下着を見つめた後で、ビビアンはそろそろと肘下まで近づいていく。腕を伸ばしてスリップに手が届いたその時。
ヒョイと脇腹を持たれて、ぎゃーと叫んだ間にバルカスの腹を跨ぐ格好でお座りしている自分がいた。
「だめだめっ」
「見てない」
「触ってるじゃない!」
「誕生日プレゼントに裸をくれるんだろ」
「あげるなんて言ってないけど!? 大体、誕生日じゃないよね、今日!」
「大丈夫、そのうち来るから。今日貰っとく」
目隠しした大好きな男の上に素っ裸で跨って盛大に抗う、自分史上とんでもない事態である。
口角を上げたままの男はビビアンの抵抗もどこ吹く風で背中をすーっとなぞって黙らせる。
「………はぁんっ」
ぴっと背中を反らせて固まった身体を捕まえて抱き込む。
栗色の髪がビビアンの視界に落ちた。
柔らかい身体が寒くないように、バルカスが掛布を引っ張り上からかけてやる。
「本当は見えてるんじゃないの!?」
「見えてない。試しに目隠ししてやろうか」
「するわけない!」
楽しそうに笑う胸の中で拗ねた唇を掬って、もう一度男が口づける。長いクルクルとウェーブを巻く赤毛をかきあげて首を触ってうなじを掴み、腰を撫でて、舌は奥へと深く口内を犯した。
「ん…」
歯列をなぞり、上顎を強く押し上げ、舌を吸って一度荒く犯す。ちょっと涙目になってビビアンは大人しくなった。こんなにちゃんとキスしてもらったのは初めてだったから。
「ねぇ、なんでシャルロット様の家庭教師に呼んだの」
「予約の取れない人気講師じゃないか」
「そうだけど……他にも人気の先生はいるし……」
「なんでだろう? 人気講師なら正解も分かるだろ」
言いながら、バルカスが見えているかのように首を舐めあげる。ゾクゾクしてビビアンは真っ白なシャツを握りしめる。一度顎まで移動して、今度は丸い膨らみまで舌がチロチロと動く。
「あ」
パクリと口の中に先を全部含んだ。
「あ……あ……」
びっくりした顔をして目隠しした男の行動を見つめ、ちゅぱっと口を離された後はキスで毒気を抜かれたまま反対側も差し出した。
両方の先っぽがぷくりと立ち上がる頃には、小さな刺激で腹の奥がきゅんきゅん疼いた。股の下で硬くなっているソレに驚き焦って身体をずらそうとしたが、気が付いたバルカスが乳首を吸いながら尻を掴んで引き寄せる。
「怖い?」
「こわくない!!」
「もう二十五だもんな……ここに指、挿れたことある?」
「ある……あるけど、なんかよくわかんなくてやめた」
酔ってるからか、秘密にするような答えでも口が軽い。
よくわからんか、と言いながら長い指が口の中から涎をすくって脚の間に向かい、つぷ、と挿れた。
「ビビ、見てないから、ちゃんと脚を広げて……」
「ん……んっ」
「もっと身体の力抜いて良い」
「むりぃ、こわい!」
とうとう笑い始めて、口元が緩んで締まりのないバルカスがトンと裸の身体を押し倒す。
一本指でゆっくり狭くて緊張している潤みの洞を撫で、頭が下がって舌を伸ばす。
ビビアンの見ている前で、隠されていた硬い突起を探し当てて舌先でぺろぺろと舐め始めた。
「バル…」
惚けた顔でじっとその様子を見ていたビビアンが、次第に大きな溜息を吐いた。
はぁ……はぁん………
ぐちゅ、ぐちゅぐちゅ、くちゅ、ちゅぱちゅぱ……
休憩室には水音と吐息しか響かない。
だんだんと下腹部を支配し始める甘い気持ちよさに『あぁぁぁん』と鼻にかかった可愛い声があがる。バルカスは素直な身体にとびっきりのご褒美をあげる。
「あ、あ、あっ、バルカ、あ、バル、あ、あ……」
ビビアンが細い腰を反らせて足をきゅっと掴むように力を入れる。バルカスは唇を離して指でくちゃくちゃ奥を勢いよく撫でた。
「あ、も、も、もっ………~~~~~っ」
ちょっとだけ、バルカスはこっそりとタオルを下げる。
掛布に埋もれて世界一いやらしく身体を捩り、ビビアンは達した。
目を細めて、またタオルを上げる。
ペロッと唇を舐めて、卑猥なぬかるみから指を抜く。
力の抜けた肢体を抱き上げて、包み、ベッドに横になる。
息が落ち着いてきたと思った頃には、腕の中の赤毛は酔いの中、すっかり寝入ってしまう。
ピロートークもできやしない、なんと自由なお姫様。
バルカスは苦笑するが、タオルを取ってスリップだけ着せてやると可愛い可愛いビビアンの髪や頬をなでまくり、やがて自身も目をつぶる。
おやすみ、ビビ。また明日。
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