15 / 69
15. 新婚旅行②
生まれて初めての旅行だと言うのに、荷造りを自分でしないのは尻のすわりが悪くて仕方がなかったが、テルミアが全てを采配してくれるのでやることもない。シャルロットは文机の椅子に腰かけて皆が手際よくお出かけ着をトランクに詰めていく様子を見守る。
「そんなに持っていくのですか? 旅先でもこのお屋敷にいるのと同じですね」
「さようでございますよ。奥様にご不便がないように準備するのが私共の仕事でございますから」
「はぁ。あり」
また御礼を言いそうになって、慌ててパクっと言葉を食べた。
テルミアと目が合って、ふふふ、と笑う。
「まみまもーむまいまむ」
「口を閉じても御礼は結構です」
「…むむ」
「行きは駅まで車ですが、列車を一両貸し切って行くそうですよ。随分と良い列車だとか。もちろん私もご一緒させていただきます、楽しみですね」
「ええっ! 一両を貸し切りですか! すごいですね。長距離の鉄道も初めてなのに! わぁ……ワクワクします」
「列車がトンネルに入る時は必ず窓を閉めてくださいませ。お顔が真っ黒になります」
「真っ黒ですか?」
「ええ。煤が窓から入ってきてしまいますからね」
「大変ですね?」
「奥様は黙って旦那様のお側にいらっしゃれば問題はありません」
専属侍女の言葉に奥様の眉が急にハの字になる。
「おじさまのですか? 席が決まっているのですか?」
「いえ……決まっているわけではありませんが」
「ではビビアン先生の横に座ります! たくさん授業をしてもらわなくっちゃ」
「………奥様、その件はどうぞ持ち帰らせてくださいませ」
「おじさまは長旅ならきっとお酒を飲まれるでしょうから。バルカスさんがお付き合いされる方がきっと楽しいですよ?」
「しかしその、人目というものがございますし」
「貸し切りなのでしょう?」
「………」
ウィリアムから結婚祝いに滞在を贈られた別荘は小さな城であった。
「しかし古いな」
ジェフが見上げて呟く。
「素敵過ぎるぅ!!」
「こんな所に一週間も泊まれるなんて! 籤に勝って良かった~!」
「すっごいわ! なにこの景色!!」
「きゃー! 最高じゃないこれ!」
連れてきたメイド達も黄色い声を上げて喜ぶ素晴らしい古城は、普段から入れはしないものの観光スポットにもなっていて、趣ある歴史的な建造物である。
「こちらはアリンドより随分と暖かいというか…もう暑いくらいですね」
「そうだな。長袖も上着も必要ないくらいだ」
城の入り口で玄関ホールを見渡しているジェフとシャルロットを置いて、皆が荷物を片付けに散っていく。
采配を終えた大柄な男が近づいてくる。
「宰相様、陛下より皆さまのご案内を仰せ使っております、管理人のアンセルムです。一週間視察の件も含めてお世話させていただきます。どうぞ、ごゆるりとお過ごし下さい」
「ああ、君がアンセルムか。ジェフ・カーターだ。よろしく」
壮年の男、アンセルムに手を差し出したジェフがごく自然にシャルロットの腰を抱く。
「妻のシャルロットだ」
優しい顔で促され、シャルロットもビビアンから教わった通りにアンセルムに挨拶をする。
「シャルロット・カーターにございます。素晴らしいお城で素敵な旅行になりそうです! ご面倒をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくお願いいたします、奥様。アンセルムでございます。いや、可愛らしい御方だ。羨ましいですね、カーター様」
「そうでしょう」
「さぁ、どうぞお茶の用意をしております。こちらへ」
「おじさま」
自分を離さず進む夫を見上げて、シャルロットは小さな声で呼ぶ。
「シャルロット、もうソレはダメだ。ジェフと」
「ジェフ様?」
「ジェフでいい」
「かしこまりました」
ジェフ、ジェフ、と小さく何度もシャルロットが囁く。
ジェフは背中がこそばゆい。
「練習しなくていい。発音が難しい名前じゃあるまいし」
「だって慣れないから…ジェフ?」
「………」
見上げて呼びかけてみたが、夫は難し気な顔をして妻を見ようともしない。
「返事をしてくださらないと。練習してるのに!」
「んぁ」
「あ、ねぇ、お~……ジェフ。さっきのご挨拶は大丈夫でしたか?」
「あー、満点だよ」
「本当ですか!良かった」
にこにこと嬉しそうなシャルロットと共に、ジェフは促された品の良いウェルカムホールのソファに腰を下ろす。直ぐに古城のメイドがお茶を用意しにやってくる。
「このお城にもメイドがたくさんいらっしゃるんですね?」
「ああ、そりゃあそうだ、王族の城なんだから。私達は今回客人だしな。何でもやってくれる」
「ではどうしてカーターのお屋敷からあんなに沢山のメイドを?」
「そりゃ皆も泊まってみたいだろ。王族の城に泊まれるなんて一生であるかないかだ」
「あ……そういうことですか」
シャルロットは少し驚いた後で、にっこりとジェフを見る。
「なんだ」
「いいえ、何でも」
側にアンセルムが立ち、二人は揃って顔を上げる。
「良いですね! 新婚旅行! ご歓談中申し訳ございません。宰相様、視察の要綱をまとめたものです。こちらから出す警備は少なめにと伺っておりますので、二名ほど。場所は地図をご覧ください。少し距離はありますから、馬をご用意します。奥様と遠乗り、という体で?」
「ああ、合っている。こちらからは側近のバルカスも行く」
「かしこまりました。奥様、乗馬はどの程度?」
アンセルムに尋ねられ、シャルロットは一度こちらを見るジェフを見てから答える。
「習っていますので、多少は。速く駆けたりはしたことがありませんが…」
「それであれば大丈夫でしょう。では奥様の馬もご用意しておりますので」
「ありがとう。視察は四日目だな」
「はい。それまではセバス様よりスケジュールを頂いておりますので、手配は出来ております」
何気なくお茶を飲んでいたジェフが小さく噎せる。
「スケジュール?」
優雅にアンセルムは頷いて、シャルロットに微笑みかけた。
「奥様は南部が初めてでいらっしゃいますか?」
「はい」
「セバス様は、それはそれは素晴らしいスケジュールを立てていらっしゃいますので、余すことなくお楽しみ頂けると存じます」
「それは楽しみです! 楽しみですね、お…ジェフ」
おじさまと言いかけてスーッと真顔になるシャルロットに思わず笑いそうになり、脱力してジェフは頷いた。セバス一味はどうやらまた性懲りもなくしょうもないことを画策しているのだろう。新婚旅行はついでと言ったのに、全く話を聞いていない。
「そうだね、シャルロット」
「私は一階の管理人室に常駐しておりますので、何かあればお呼びください。片付けが終わられましたら皆様の分もウェルカムドリンクをご用意できておりますので、あちらのテーブルにお出しいたします」
「大勢の家人たちを連れてきて済まない。世話をかけるね」
「滅相もございません」
アンセルムは一礼をして去り、メイド達が冷たいドリンクの用意を始める。
「アンセルムさんにも契約結婚だとは内緒なのですか」
「べらべらと話すようなものじゃない。セバスが気を利かせて、テルミアなんかの一部の人間しか私と君の世話は任せていないようだから、実際のところを知っている者などこの旅行に来ている程度の一握りの人間だ。まさか公爵のところまで白い結婚だとバレるわけにはいかないからな」
「そうなのですね。じゃあ頑張って奥様します!」
「別に頑張らなくてもいい。適当に腰でも抱いていたら妻に見える。おじさまはダメだが」
「かしこまりました、では適当に頑張ります」
「そうしてくれ」
「そんなに持っていくのですか? 旅先でもこのお屋敷にいるのと同じですね」
「さようでございますよ。奥様にご不便がないように準備するのが私共の仕事でございますから」
「はぁ。あり」
また御礼を言いそうになって、慌ててパクっと言葉を食べた。
テルミアと目が合って、ふふふ、と笑う。
「まみまもーむまいまむ」
「口を閉じても御礼は結構です」
「…むむ」
「行きは駅まで車ですが、列車を一両貸し切って行くそうですよ。随分と良い列車だとか。もちろん私もご一緒させていただきます、楽しみですね」
「ええっ! 一両を貸し切りですか! すごいですね。長距離の鉄道も初めてなのに! わぁ……ワクワクします」
「列車がトンネルに入る時は必ず窓を閉めてくださいませ。お顔が真っ黒になります」
「真っ黒ですか?」
「ええ。煤が窓から入ってきてしまいますからね」
「大変ですね?」
「奥様は黙って旦那様のお側にいらっしゃれば問題はありません」
専属侍女の言葉に奥様の眉が急にハの字になる。
「おじさまのですか? 席が決まっているのですか?」
「いえ……決まっているわけではありませんが」
「ではビビアン先生の横に座ります! たくさん授業をしてもらわなくっちゃ」
「………奥様、その件はどうぞ持ち帰らせてくださいませ」
「おじさまは長旅ならきっとお酒を飲まれるでしょうから。バルカスさんがお付き合いされる方がきっと楽しいですよ?」
「しかしその、人目というものがございますし」
「貸し切りなのでしょう?」
「………」
ウィリアムから結婚祝いに滞在を贈られた別荘は小さな城であった。
「しかし古いな」
ジェフが見上げて呟く。
「素敵過ぎるぅ!!」
「こんな所に一週間も泊まれるなんて! 籤に勝って良かった~!」
「すっごいわ! なにこの景色!!」
「きゃー! 最高じゃないこれ!」
連れてきたメイド達も黄色い声を上げて喜ぶ素晴らしい古城は、普段から入れはしないものの観光スポットにもなっていて、趣ある歴史的な建造物である。
「こちらはアリンドより随分と暖かいというか…もう暑いくらいですね」
「そうだな。長袖も上着も必要ないくらいだ」
城の入り口で玄関ホールを見渡しているジェフとシャルロットを置いて、皆が荷物を片付けに散っていく。
采配を終えた大柄な男が近づいてくる。
「宰相様、陛下より皆さまのご案内を仰せ使っております、管理人のアンセルムです。一週間視察の件も含めてお世話させていただきます。どうぞ、ごゆるりとお過ごし下さい」
「ああ、君がアンセルムか。ジェフ・カーターだ。よろしく」
壮年の男、アンセルムに手を差し出したジェフがごく自然にシャルロットの腰を抱く。
「妻のシャルロットだ」
優しい顔で促され、シャルロットもビビアンから教わった通りにアンセルムに挨拶をする。
「シャルロット・カーターにございます。素晴らしいお城で素敵な旅行になりそうです! ご面倒をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくお願いいたします、奥様。アンセルムでございます。いや、可愛らしい御方だ。羨ましいですね、カーター様」
「そうでしょう」
「さぁ、どうぞお茶の用意をしております。こちらへ」
「おじさま」
自分を離さず進む夫を見上げて、シャルロットは小さな声で呼ぶ。
「シャルロット、もうソレはダメだ。ジェフと」
「ジェフ様?」
「ジェフでいい」
「かしこまりました」
ジェフ、ジェフ、と小さく何度もシャルロットが囁く。
ジェフは背中がこそばゆい。
「練習しなくていい。発音が難しい名前じゃあるまいし」
「だって慣れないから…ジェフ?」
「………」
見上げて呼びかけてみたが、夫は難し気な顔をして妻を見ようともしない。
「返事をしてくださらないと。練習してるのに!」
「んぁ」
「あ、ねぇ、お~……ジェフ。さっきのご挨拶は大丈夫でしたか?」
「あー、満点だよ」
「本当ですか!良かった」
にこにこと嬉しそうなシャルロットと共に、ジェフは促された品の良いウェルカムホールのソファに腰を下ろす。直ぐに古城のメイドがお茶を用意しにやってくる。
「このお城にもメイドがたくさんいらっしゃるんですね?」
「ああ、そりゃあそうだ、王族の城なんだから。私達は今回客人だしな。何でもやってくれる」
「ではどうしてカーターのお屋敷からあんなに沢山のメイドを?」
「そりゃ皆も泊まってみたいだろ。王族の城に泊まれるなんて一生であるかないかだ」
「あ……そういうことですか」
シャルロットは少し驚いた後で、にっこりとジェフを見る。
「なんだ」
「いいえ、何でも」
側にアンセルムが立ち、二人は揃って顔を上げる。
「良いですね! 新婚旅行! ご歓談中申し訳ございません。宰相様、視察の要綱をまとめたものです。こちらから出す警備は少なめにと伺っておりますので、二名ほど。場所は地図をご覧ください。少し距離はありますから、馬をご用意します。奥様と遠乗り、という体で?」
「ああ、合っている。こちらからは側近のバルカスも行く」
「かしこまりました。奥様、乗馬はどの程度?」
アンセルムに尋ねられ、シャルロットは一度こちらを見るジェフを見てから答える。
「習っていますので、多少は。速く駆けたりはしたことがありませんが…」
「それであれば大丈夫でしょう。では奥様の馬もご用意しておりますので」
「ありがとう。視察は四日目だな」
「はい。それまではセバス様よりスケジュールを頂いておりますので、手配は出来ております」
何気なくお茶を飲んでいたジェフが小さく噎せる。
「スケジュール?」
優雅にアンセルムは頷いて、シャルロットに微笑みかけた。
「奥様は南部が初めてでいらっしゃいますか?」
「はい」
「セバス様は、それはそれは素晴らしいスケジュールを立てていらっしゃいますので、余すことなくお楽しみ頂けると存じます」
「それは楽しみです! 楽しみですね、お…ジェフ」
おじさまと言いかけてスーッと真顔になるシャルロットに思わず笑いそうになり、脱力してジェフは頷いた。セバス一味はどうやらまた性懲りもなくしょうもないことを画策しているのだろう。新婚旅行はついでと言ったのに、全く話を聞いていない。
「そうだね、シャルロット」
「私は一階の管理人室に常駐しておりますので、何かあればお呼びください。片付けが終わられましたら皆様の分もウェルカムドリンクをご用意できておりますので、あちらのテーブルにお出しいたします」
「大勢の家人たちを連れてきて済まない。世話をかけるね」
「滅相もございません」
アンセルムは一礼をして去り、メイド達が冷たいドリンクの用意を始める。
「アンセルムさんにも契約結婚だとは内緒なのですか」
「べらべらと話すようなものじゃない。セバスが気を利かせて、テルミアなんかの一部の人間しか私と君の世話は任せていないようだから、実際のところを知っている者などこの旅行に来ている程度の一握りの人間だ。まさか公爵のところまで白い結婚だとバレるわけにはいかないからな」
「そうなのですね。じゃあ頑張って奥様します!」
「別に頑張らなくてもいい。適当に腰でも抱いていたら妻に見える。おじさまはダメだが」
「かしこまりました、では適当に頑張ります」
「そうしてくれ」
あなたにおすすめの小説
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる
狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。
しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で………
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
愛を知った私は、もう二度と跪きません
阿里
恋愛
泥だらけのドレス、冷え切った食事、終わりのない書類仕事。
家族のために尽くしてきたエカテリーナに返されたのは、あまりにも残酷な追放宣告だった。
「呪われた男にでも喰われてこい」
そう笑って送り出した彼らは知らなかった。辺境伯ゼノスが、誰よりも強く、美しく、そして執着心が強い男だということを。
彼の手によって「価値ある女」へと生まれ変わったエカテリーナ。
その輝きに目が眩み、後悔して這いつくばる元家族たち。
「エカテリーナ様、どうかお助けを!」
かつて私を虐げた人たちの悲鳴を聞きながら、私は最愛の夫の腕の中で、静かに微笑む。