私だってあなたを愛するつもりはありません、宰相殿

文字の大きさ
33 / 69

33. 夜会②

「バティーク様」
 ひとり大きな姿見の前、抜かりがないか口の中までチェックしていたところ突然声をかけられて肩が跳ねる。
「うわっ」
 こいつはいつもいつも急に現れる。
 穏やかなバティークだったが、オズワルドだけは昔から非常に容易く彼の心に波風を立ててくる天敵のような存在である。
「ノックをしろ、ノックを!!」
「三度しましたが、バティーク様は夢中で鏡に向かっていらっしゃったのか全くへん」
「だまれ」
 オズワルドは無言でバティークに近寄ってくると、ふっと腕を上げてバティークの顔の側に手を寄せた。
「!?」
「糸くずです」
「……そ、そうか。どうも」
「今日は夜会ですか……シャルロット様と」
「ああ、そうだ」
「毎日毎日飽きもせず。随分とご執心ですね、妹君に」
「悪いか」
 痛々しいモノを見る瞳が眼鏡の奥からバティークを見る。
「私にも妹がいますが、まさか成人後までエスコートなどしようとは思えません。理解に苦しむほどの素晴らしい兄妹愛だと感じます」
「シャルロットは特別だ。たぶん他のご令嬢が妹だったとしてもこんなに可愛がったりはしなかっただろうと思うよ」
「要は珍しいのですね。市井で育った庶民の女性が」
 眼鏡の物言いにバティークはムッとする。
「貴族じゃなくても擦れている女なんて沢山いる。ロティはいつも自然体で一緒にいても気疲れしないんだ。君にはわからないだろうけど」
「わかりませんね。シャルロット様は恐らく私のことはお好きでは無かったようですし。いつもオドオドされていたので自然体に見えた試しがまずありません」
「それは君のせいだろう」
 しかも好きじゃない、ではなく嫌いの間違いだと喉まで出かかったが最早どうでも良くなって口を閉じる。

「何の用だ」
「ブランドン様がお呼びです」
「わかった。用意が終わったら行く」
 ポケットチーフを広げ返事をする。胸ポケットに入れる為、一度、二度、とサイドテーブルの上で折りたたんでいたバティークは、出て行かないオズワルドに気が付いて顔を上げた。
「例えばですが」
 眼鏡を押し上げながら父の側近が低い低い声を出す。
「もし、シャルロット様に血の繋がりがなかったとしたらバティーク様はどうしますか」
「妹じゃなかったらってことか? なんだそれは。どうするもこうするも、まず考えたこともない」
「そうですか」
「何が言いたい?」

「いえ。ただ、本当の所は出産した女性にしかわからないことではないかと思いましてね。思いませんか?」
 微笑を浮かべたオズワルドが首を傾げる。
「ブランドン様の過去の火遊びなどは存じ上げませんが、別に娘に仕立て上げるなら他にもっと器量も頭も良い女性が居たのではないかと。『こんな妹が良かった』とバティーク様も願望をお持ちだったでしょう? それと比べてどうです?」
「馬鹿を言うな。妹はでっち上げるものじゃない。第一彼女は洗練されてあれだけ美しいんだ、十分じゃないか。君はマルーンに女優でも欲しているのか」
「でっちあげなど貴族社会においては目新しいものでは。養子縁組は日常的に横行していますし」

 淡々としたオズワルドの態度が兄の心にスッと切り口を作った。バティークは冷や水をかけられたように『そういう可能性もある』と気づく。誰しも血は赤いのだ。瓜二つでもなければ子供の父親など何の証拠もない。
「いや…違う! シャルロットは可愛い妹だ」
 流されそうになる思考に狼狽えてバティークは声を大きくした。
「私はご忠告申し上げているのです」
「忠告?」
「ええ。あまりにシャルロット様に夢中になられて、見ていられません。また別の妹君が現われたらどうするんです?実はこちらが本物、あちらは偽物でしたとか。そのたびに夢中になるおつもりですか」
「何言ってるんだ、そんな突然次から次へと」
「ですが、シャルロット様も突然でしたよ」
「そ」
「真偽など今となっては誰にもわからないでしょう? 偽物かもしれない女性に現を抜かすのはやめた方が良い、と忠告しているのです。今のあなたは誰がどう見ても腑抜けだ。だけどあなたのお父上である公爵は政治家でもないのに政治家以上の手腕を振るうプロの嘘つきです。ありとあらゆる嘘を」
「嘘…」

 歪んだ顔をして、バティークが離れていく眼鏡から目を逸らした。
「とにかく、今夜は大勢の人前です。婚約者も持たれず妹に腑抜けになっているなどと言う噂を立てられることのないよう、マルーン公爵家として恥ずかしくないお振舞いをなさってください」
 お前はどの立場から物申しているのだ! 去って行く後姿を睨みながらバティークは(心の中で)怒鳴った。


 父の部屋を訪れると、今日も変わらない赤い丸顔を艶々とさせて席に座れと促される。
「お話とは何ですか」
「随分とシャルロットに構っているらしいね。私に黙って」
「妹に会いに行くのに父上の断りが必要ですか?」
「そりゃあ、私の可愛い娘なんだ。夜会なんぞに連れ回すなら許可をもらってくれなくては」
「なぜです? 夫君の許可はちゃんと頂いています」
「大昔の夜会と違って確かにカジュアルにはなったが…とにかく人前に晒す時は連絡をしろ。しかも一緒にビビアン様とあの側近の子爵令息が行くと?ビビアン様はどういうつもりで」
「ロティとビビアンは親友ですから」
「目立ってかなわん。シャルロットには諸々あまり深入りさせたくないと言うのに」
 ブランドンは面白くなさそうに呟いた。
「ロティにはビビアンの希望で何も知らされていません」

「まぁいい……それより、お前にまだ伝えていない事業計画がある」
 バティークが突然始まった家業の話に顔を上げる。
「医薬品の製造工場を計画している」
「ああ、数年前から仰っていた輸入に頼らずレシピから製薬するという件ですね。工場を!」
「そうだ。主力はワクチンにした」
「ワクチンですか。良いですね。それは陛下も喜ばれたのでは」
「恐らく」
「恐らく? 事業計画の許可は申請されていないのですか?」
「いや、申請はしているが…まだ許可が下りない」
「なぜですか」
「止まっているんだ、宰相の所で。だが建設自体の着工許可は下りているから、既に基礎工事は始まっている」
「なぜそんなチグハグな。止まっているって、何が理由ですか? だんだんと国際情勢も怪しい、ワクチン輸入は難しくなってくるでしょう」
「お前でさえわかることなのになぁ。不思議だろう? どうしてだと思う」
「どこか別で製薬工場を予定している?」
「目を光らせているが、それはない。ウチ以外に製薬ができるほどの体力があるとすればザレス家くらいだろうが、あそこは目下跡継ぎの泥沼試合でそれどころじゃない。死人まで出ている。全く解体されるというのに呑気なものだ」
「解体と言っても家がなくなる訳ではありません。巨額の相続がつきまとうのですから争いにもなるでしょう。我が家が珍しいだけで」
「そうだ……私にはお前しかいない」
「………」
 妹の顔が頭を横切ったが、オズワルドとのやり取りが直前だったこともあり沈黙を選ぶ。
「可能性としては、陛下が嫌がっておられるのではないかと」
「陛下が!?」
「民主化を進めているくらいだ。ウィリアム陛下は突出した富の集中を嫌がる。カーターが気に入りなのも、彼の思想が『世の中の平均化』だからだ。まるで資本主義を否定するかのような。そこに私たちが更なる富の種を植えようとしている…気に入らない可能性は高い」
 バティークは父の話に納得した。だがワクチン事業自体は『富』の一辺倒では済まされない側面もある。
「既に着工許可は下りているのですよね?」
「ああ。事業許可だけがまだだ。これは本当に予測だが…下準備をさせるだけさせて、国が買い上げるつもりなのかもしれない。もしくは例えば複数の企業に連立させて払い下げるという手もある。これから家の解体が進めば、保有している企業体はまとめて『財閥』になる。似通った企業を持つ家同士が連立するのは悪くない話だからな」
「そんな」
「ああ、そんなことになれば困るんだ。ワクチンは…この工場は私が最後にしなければいけない仕事なのだから」
「わかりました。宰相殿の腹を探れということですね」
「やってくれるか」
「ええ。ちょうど今日はウェーバーと共に過ごします。探ってみましょう」
 父は安堵した顔をして『頼んだ』と言い、息子の肩を叩いた。


 ****

 ヘアメイクを施され、ドレスを着てパールのアクセサリーを付けると、人生の中で一番オシャレなシャルロットが鏡の中で爆誕した。
「やっぱり、可愛い~!」
「ええ、最高です! 奥様」
「ありがとうございます、テルミアさん」
「結局どちらのバッグにするかお決まりですか? 携行品はこちらにまとめてありますから、決められましたら仰ってください」
 バッグは自分が最初に良いと思った黒いクラッチとビビアンお勧めの白いポシェットで迷っている。どちらも良さがあって決めるのが難しい。
「ん~…。先にジェフの所に行ってきます。その間に決めます」
「かしこまりました。あ、奥様」
「はぁい?」
「セバスからですが」


 せっかくなのでヒールもちゃんと履き、ジェフに完璧なドレス姿を見せてあげようと執務室へと向かった。ノックをして、開いていた隙間から顔を覗かせるが誰も居ない。そのまま本棚のエリアを過ぎ、奥の夫婦の寝室へと足を進める。
 ノックすると返事が聞こえた。
「失礼します」
 焦げ茶の頭がソファに寝ころんだ姿勢から起き上がったところだった。
「お」
 遠目からシャルロットを見つけて、にやりと笑う。
「ごめんなさい、お昼寝してましたか?」
「いや、考えごとだ。気にしなくていい……準備は済んだな」
「ばっちり! どうですか?」
 ニマニマしながらソファの夫の前に近づいて、虎の威ならぬドレスの威を借りた今日だけは自信満々のシャルロットが両手を広げて全身を見せつけた。
 ジェフが眩しそうな顔をしながら、ソファの背に片肘をついて可愛い妻を眺める。
「そのままそこで回って」
「こう?」
「いや、もっとゆっくり…そう」
「こう」
「うん、いいね。君には派手なジュエリーも不要だな」
「でしょう!? 特別素敵なドレスですもの。今日の私はリンドで一番オシャレです!」
「ははぁ、そうか。リンドいちオシャレな妻か。それは光栄だな」
「嬉しいでしょう」
「うん、いいね」
「それしか言ってない、ジェフ」
 一瞬真顔になったシャルロットに慌ててジェフが口を開いた。
「あ~、可愛い、可愛い」
「本当?」
「ああ。パールも良い。君には白が良く合う」
「白ですか? ふふ」
 褒めてもらってまたニマニマするシャルロットに思わず笑い声が漏れる。ジェフは頭を掻いた後で背の高いキャビネットへと向かった。
「ちゃんと指先まで綺麗にしてもらった?」
 女は準備が多い。
「はい、薄いピンク色のマニキュアを塗って頂きました。これも、いちばん可愛いです」
「よしよし。じゃあ、左手を出して」
「左ですか?」
 爪を確認していたシャルロットが、側まで戻ってきたジェフを見上げる。
「そう、手を」
 差し出された大きな手のひらに左手を置くと、長い指がゆっくり指輪をはめる。
「あ、これ」
「そう、私たちの結婚指輪だ」
「わぁ、すご……ダイヤモンドですか、これ」
 指輪には、ぐるりと小さくないダイヤが三列に連なって付いている。
「うん」
「交換をパスしたやつですね」
 ふたりで吹きだす。
「ふふふ…でもちゃんと薬指にピッタリ。どうして?」
「あぁ、この指輪は君のところの眼鏡ザル君とウチのバルカス君の共同制作らしいよ」
 ジェフの説明に更に二人は笑った。
「あちらで服のサイズとか頭も靴も指のサイズも、確かに測ったことがありました」
「それだな。私のはどうしたんだろう」
「ジェフなんてぐうぐう酔っぱらって寝てる間にいくらでも測れますよ」
「それもそうだな」
「ジェフのもダイヤモンドが付いていますか? 見てもいい?」
「君は式の時に見たんじゃないのか」
「リングピローが出されたのはうっすら覚えてますけど、デザインまで覚えていませんよ」
 どれだけパニックだったと思っているのだ。シャルロットは唇を尖らせる。
 再びジェフがビロードの箱から、今度は大きなサイズの指輪を持ってくる。何の装飾もない銀色の輪だった。
「そっちは何も付いていませんね」
「そうだな。有っても邪魔だろう」
「綺麗ですよ」
「私に綺麗は不要だろう。とにかくそれ、今日は付けておいて欲しい」
「かしこまりました」
「お兄さんが付いているから大丈夫だとは思うが、おかしな男に捕まらないように」
「まさかそんなラジオドラマみたいなこと。ねぇ、ジェフも付けて?」
「ん?」
「つけても良い?」
 ジェフが見下ろした長い睫毛がピンクの指先で摘まみ上げた指輪を見つめ、あっという間にジェフの左手の薬指にはめる。
「今日だけ手元もお揃い!」
 互いの両手を繋いでくっつけ指輪を見て、いたずらをしたようにシャルロットが笑う。
「………」
「あ、そうだ、ジェフ」
 シャルロットが小さく両手指をぎゅっと握った。
「ん?」
「ドレス、ありがとうございます」
 ジェフの唇が微かに開く。
「私、ちょっとあんまりわかっていなくって。ごめんなさい、一番に御礼を言わなくちゃいけなかったのに。すごく、すごく高いオーダーメイドのこのドレスは、ジェフが買って下さったものだって」
「……あぁ…」
「あのお財布とこのドレスは、私の一生のお気に入り確定です。ずっとずっと、ありがとうございます!」

 ずっと、ありがとう。変な言葉だ。
 だけどジェフはちょっと、言葉が出なかった。

「シャルロット」
「はぁい?」
 ちょっとだけ、と低い小さな声が聞こえて、シャルロットはいつの間にかジェフに強くギュッとされた。ミルクティー色の頭はびっくりして動きが止まる。

(……あ)

 息をするといつものジェフの匂いがすることに気が付く。もう慣れた男の匂い。深く吸い込んで目を閉じ、大人しくじっとして腕に抱かれた。

 果たしてその時間は長かったのか短かったのか。ゆっくり夫は離れる。かすれたような声ですまんと言って。
 シャルロットは少し恥ずかしそうにして、だけどにっこり笑って首を振った。
 白い小さな頬を親指が撫でる。
「バティークとバルカスから離れるな…楽しんでおいで」
「はい!」

 ドレス姿の契約妻が夫婦の寝室を出て行く。
 ジェフは顎を触りながら閉じていく扉を見つめた。
感想 11

あなたにおすすめの小説

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!

愛を知った私は、もう二度と跪きません

阿里
恋愛
泥だらけのドレス、冷え切った食事、終わりのない書類仕事。 家族のために尽くしてきたエカテリーナに返されたのは、あまりにも残酷な追放宣告だった。 「呪われた男にでも喰われてこい」 そう笑って送り出した彼らは知らなかった。辺境伯ゼノスが、誰よりも強く、美しく、そして執着心が強い男だということを。 彼の手によって「価値ある女」へと生まれ変わったエカテリーナ。 その輝きに目が眩み、後悔して這いつくばる元家族たち。 「エカテリーナ様、どうかお助けを!」 かつて私を虐げた人たちの悲鳴を聞きながら、私は最愛の夫の腕の中で、静かに微笑む。