30歳の英雄王は転生勇者を拾い無双に育てます

蒼井青龍

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第1話:英雄の魂と新たな産声

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「あ、これ……間に合わない」

 飛鳥大和(あすか・やまと)の意識が最後に捉えたのは、夕暮れの街角で、居眠り運転のトラックが幼い子供に向かって猛スピードで突っ込んでいく光景だった。

 二十五歳のサラリーマン。趣味はアニメ鑑賞とグッズ収集。

 今日も両腕には、大事に抱えた新作アニメのグッズが詰まった紙袋があった。

 けれど、大和は迷わなかった。

 考えるより先に体が動いた。

 ドンッ、という激しい衝撃。
 抱えていたグッズが空に舞い、夕日に照らされてキラキラと輝く。

 子供を突き飛ばした直後、大和の視界は激痛とともに深い闇へと沈んでいった。

 ◇

 次に目を覚ました時、そこはどこまでも続く真っ白な空間だった。

「……ここは?」
「目が覚めましたか、飛鳥大和さん」
 鈴を転がすような透き通った声に振り返ると、そこには言葉では形容しがたいほど美しい、神々しい光を纏った女性が立っていた。
 大和は死を悟ったが、一番に確認したのは自分のことではなかった。

「……あの子は? 俺が助けようとしたあの子は、どうなりましたか?」
「安心してください。あの子は無傷です。今も健やかに生きていますよ」
 その言葉を聞いた瞬間、大和は深く、深く胸を撫で下ろした。

 女神は大和に、今の日本での再転生か、あるいは剣と魔法の異世界への転生か、二つの道を示した。アニメ好きの大和に迷いはなかった。

「新しい世界へ行かせてください!」
 女神は微笑み、大和に特別な『女神の加護』と、成長に応じて力が目覚める『段階的スキル解放』のギフトを授けた。
 眩い光が大和を包み込み、彼の意識は再び遠のいていった。

 ◇

 一方その頃、異世界の『西洋の国』の片隅。
 かつて世界を守り抜き、今は人里離れた地で静かに隠居生活を送っている男がいた。
 名を、ライ。

 剣術、体術、魔術……あらゆる武をマスターしながらも、その外見は三十歳の冴えない、温厚そうな剣士にしか見えない。

 ある夜、眠りについていたライの夢に、女神が姿を現した。

『ライよ、世界に再び魔王族の脅威が迫っています。あなたに、新たな英雄を育ててほしいのです』

 翌朝

「変な夢だったな……」
 ライが不思議な気分で散歩をしていると、ふと、草むらから生命の気配を感じた。そこには、一人の赤ん坊が置かれていた。

「……赤ん坊? 親はどうしたんだ、こんなところで」
 放っておけず、ライは赤ん坊を抱き上げて家へと連れ帰った。

 しかし、赤ん坊の扱いなど全くわからない。ライは困り果て、かつての冒険仲間であるアーシアに助けを求めることにした。

 数刻後、ライの家を訪れたアーシアは、赤ん坊とライを交互に見つめて溜息をついた。

「ライ、あんた急に何やってんのよ……。で、その夢の話、本当なの?」
 ライが夢でのお告げを話すと、アーシアの目が鋭くなった。

「ちょっと貸しなさい。……『鑑定』!」
 アーシアの瞳が青白く光る。

 鑑定スキルが弾き出した結果に、彼女は息を呑んだ。

 「信じられない……。この子、まだ赤ん坊なのにとんでもない数の『女神の加護』がかかってる。ライ、夢の話は本物よ。この子が女神の言っていた、未来の英雄だわ」

 ライはまじまじと、自分をじっと見つめ返す赤ん坊を見た。

 赤ん坊の中の魂——飛鳥大和は、目の前の男の温かな雰囲気と、アーシアの言葉に驚愕していた。

(鑑定!? 魔王!? ……ってことは、この冴えないおじさんが俺を育てる師匠なのか!?)
 ライは決意を固めたように、赤ん坊を優しく抱き直した。

「そうか……。なら、まずは名前が必要だな。今日から君の名前は『アスヤ』だ。よろしくな、アスヤ」

 こうして、最強の隠居英雄と、魂に勇者を宿した赤ん坊の、奇妙な親子生活が幕を開けた。
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