3 / 13
第3話:驚愕の才能と英雄の技
しおりを挟む
ライオがライの家に滞在して、数日が過ぎた。
豪傑ライオは、かつての戦友の息子(正確には拾い子だが)であるアスヤを大層気に入り、滞在期間中はライに代わってアスヤの剣術指導を買って出た。
「いいか、アスヤ! 剣ってのは腕で振るんじゃねえ、腰と魂で振るんだ!」
ライオの指導は、ライの論理的なものとは違い、野生の勘と力に頼った豪快なものだった。
三歳のアスヤはその幼い体で、必死に大男の動きを追い、吸収していった。
そして、ライオが帰る日の朝。
家の前の広場で、滞在の仕上げとなる「試合」が行われることになった。
「さあ、アスヤ! 最後に一太刀、この俺に浴びせてみろ!」
ライオは余裕の表情で、木剣を片手で構える。
アスヤは深く呼吸を整え、小さな木剣を正眼に構えた。
「……いくよ、ライオさん!」
アスヤが地面を蹴る。三歳児とは思えない鋭い踏み込みから、ライオの懐へと飛び込んだ。
左右、そして上下。アスヤはここ数日で学んだライオの剛剣の軌道をなぞるように攻撃を繰り出すが、ライオはそれをつまらなそうに、最小限の動きで受け流していく。
「どうした、そんなもんか! 動きはいいが、まだ俺のコピーに過ぎねえぞ!」
ライオが笑いながら、軽く木剣を払う。その衝撃だけで、アスヤの小さな体は数メートル後方へ弾き飛ばされた。
土煙の中で、アスヤは不敵に笑った。
(……やっぱり、コピーじゃダメだ。なら、あの日見た『一番すごい技』をやるしかない)
アスヤは立ち上がり、剣の構えを解いた。代わりに、剣を腰のあたりで水平に保ち、全身の魔力を一点に集中させる。
その独特な予備動作を見た瞬間、見守っていたライの顔色が変わった。
「アスヤ、まさか……!?」
「最後の一撃……はぁぁぁ!」
アスヤの姿が、かき消えた。
直後、数メートルの距離を一瞬で詰め、目にも止まらぬ速さの三連突きがライオを襲った。
空気を切り裂く鋭い音。それは、数日前にライがライオとの模擬戦で見せた、ライ独自の奥義の一つだった。
「なっ、マジかよ……ッ!?」
余裕をかましていたライオの目が、驚愕に見開かれる。
受け流す余裕はない。ライオは反射的に大剣(の木剣)を盾にするように垂直に立て、全力でその一撃を止めた。
バチンッ! と激しい衝撃音が響き、アスヤの木剣は粉々に砕け散った。
「…………」
静寂が広場を包む。
ライオは、自分の胸元で止まったアスヤの拳と、砕けた木剣の破片を交互に見て、冷や汗を流した。
「……おい、ライ。今の、お前が教えたのか?」
「……いや。一度も見せたことはないし、ましてや教えるなんて、まだ何年も先だと思っていたよ」
ライは信じられないものを見る目で、愛弟子に歩み寄った。
「アスヤ、今の技をどこで覚えたんだ?」
アスヤは砕けた木剣の柄を放り投げ、少し照れくさそうに笑って、額の汗を拭った。
「えへへ……この前、パパとライオさんが戦ってるのを見てたでしょ? あの時の動き、カッコいいなと思って、頭の中で練習してたんだ」
「見て、覚えた……だと?」
ライオが呆然と呟く。
「ガッハッハ! こりゃあ、たまげた。ライ、お前とんでもない化け物を拾ったな!」
ライオは豪快に笑い飛ばしたが、その瞳には明確な敬意が宿っていた。
ライもまた、驚きを通り越して、アスヤの底知れない才能に武者震いを感じていた。
「……ああ。どうやら俺も、のんびり隠居している場合じゃなくなったみたいだ」
この日を境に、ライのアスヤに対する指導は、それまでの「遊び」から「真の修行」へと変貌していくことになる。
豪傑ライオは、かつての戦友の息子(正確には拾い子だが)であるアスヤを大層気に入り、滞在期間中はライに代わってアスヤの剣術指導を買って出た。
「いいか、アスヤ! 剣ってのは腕で振るんじゃねえ、腰と魂で振るんだ!」
ライオの指導は、ライの論理的なものとは違い、野生の勘と力に頼った豪快なものだった。
三歳のアスヤはその幼い体で、必死に大男の動きを追い、吸収していった。
そして、ライオが帰る日の朝。
家の前の広場で、滞在の仕上げとなる「試合」が行われることになった。
「さあ、アスヤ! 最後に一太刀、この俺に浴びせてみろ!」
ライオは余裕の表情で、木剣を片手で構える。
アスヤは深く呼吸を整え、小さな木剣を正眼に構えた。
「……いくよ、ライオさん!」
アスヤが地面を蹴る。三歳児とは思えない鋭い踏み込みから、ライオの懐へと飛び込んだ。
左右、そして上下。アスヤはここ数日で学んだライオの剛剣の軌道をなぞるように攻撃を繰り出すが、ライオはそれをつまらなそうに、最小限の動きで受け流していく。
「どうした、そんなもんか! 動きはいいが、まだ俺のコピーに過ぎねえぞ!」
ライオが笑いながら、軽く木剣を払う。その衝撃だけで、アスヤの小さな体は数メートル後方へ弾き飛ばされた。
土煙の中で、アスヤは不敵に笑った。
(……やっぱり、コピーじゃダメだ。なら、あの日見た『一番すごい技』をやるしかない)
アスヤは立ち上がり、剣の構えを解いた。代わりに、剣を腰のあたりで水平に保ち、全身の魔力を一点に集中させる。
その独特な予備動作を見た瞬間、見守っていたライの顔色が変わった。
「アスヤ、まさか……!?」
「最後の一撃……はぁぁぁ!」
アスヤの姿が、かき消えた。
直後、数メートルの距離を一瞬で詰め、目にも止まらぬ速さの三連突きがライオを襲った。
空気を切り裂く鋭い音。それは、数日前にライがライオとの模擬戦で見せた、ライ独自の奥義の一つだった。
「なっ、マジかよ……ッ!?」
余裕をかましていたライオの目が、驚愕に見開かれる。
受け流す余裕はない。ライオは反射的に大剣(の木剣)を盾にするように垂直に立て、全力でその一撃を止めた。
バチンッ! と激しい衝撃音が響き、アスヤの木剣は粉々に砕け散った。
「…………」
静寂が広場を包む。
ライオは、自分の胸元で止まったアスヤの拳と、砕けた木剣の破片を交互に見て、冷や汗を流した。
「……おい、ライ。今の、お前が教えたのか?」
「……いや。一度も見せたことはないし、ましてや教えるなんて、まだ何年も先だと思っていたよ」
ライは信じられないものを見る目で、愛弟子に歩み寄った。
「アスヤ、今の技をどこで覚えたんだ?」
アスヤは砕けた木剣の柄を放り投げ、少し照れくさそうに笑って、額の汗を拭った。
「えへへ……この前、パパとライオさんが戦ってるのを見てたでしょ? あの時の動き、カッコいいなと思って、頭の中で練習してたんだ」
「見て、覚えた……だと?」
ライオが呆然と呟く。
「ガッハッハ! こりゃあ、たまげた。ライ、お前とんでもない化け物を拾ったな!」
ライオは豪快に笑い飛ばしたが、その瞳には明確な敬意が宿っていた。
ライもまた、驚きを通り越して、アスヤの底知れない才能に武者震いを感じていた。
「……ああ。どうやら俺も、のんびり隠居している場合じゃなくなったみたいだ」
この日を境に、ライのアスヤに対する指導は、それまでの「遊び」から「真の修行」へと変貌していくことになる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる