パーティー追放された少年、死に戻りからの無限魔素生成で最強の座へ 〜生き返ったら無限にMP生成できるようになってました。え?魔法は貴族特権?

阿羅リョウジ

文字の大きさ
23 / 63
第4章

第19話『瓶のカタチ』

しおりを挟む
 応接室を出たあと、ミリエルはすぐさま作業室に籠もった。

 机には紙とペン、布の端切れや空き瓶が並べられ、彼女の目は真剣そのものだった。

「瓶って、“体”なんだよね……。じゃあ、“体”って、どんなのがいいんだろう?」

 ミリエルの呟きに、隣のラティナが頷く。

「まずは丈夫さ。落としても割れない、が前提ね。次に軽さ。たくさん持ち運ぶとなると、重いのはダメ。あと——」

「あと?」

「見た目。人は目で買うの。手に取ってもらえなければ、意味がない」

「うぅ~……難しい……!」

 紙の上に描かれた幾つかの瓶のスケッチを眺めて、ミリエルは頭を抱えた。縦長、丸っこいもの、装飾がついたもの、どれもしっくりこない。

「でも、せっかくなら……オシャレなやつが良くない?」

「オシャレ……?」

「ほら、“これを持ってるとカッコイイ”みたいな! それって大事だと思うんだよねっ」

「……なるほど。それ、使う相手が貴族なら当然だけど、今回は“大衆向け”でしょ?」

「うん、でも子どもとか、女の子が持ってて楽しくなる瓶だったら、嬉しくない?」

「そういう感性……私はあんまり持ち合わせてないのよね」

 ラティナは肩をすくめる。だが、否定ではなかった。
 するとそこへ、ヴァンスが書類を持ってやってきた。

「ふたりとも、話はまとまったか?」

「うーん……まだだけど、ちょっと方向は見えてきたよ!」

「それは良かった。こちらも素材のあたりはつけてある。特殊加工の職人にも声をかけてあるが……」

 彼はテーブルの端に、別の魔素水の瓶を置いた。

「これは、既存の市販品だ。見て分かる通り、表面に刻印があるだろう?」

「……これ、魔法陣?」

「そう。“安定化魔法”が刻まれてる。瓶そのものに魔法をかけてあるんだ。これで魔素の揺らぎを抑え、輸送中の事故を防いでいる」

 ラティナが瓶を持ち上げ、角度を変えて刻印を確認する。

「なるほど……封印と、結界の応用みたいな構造ね。複雑すぎて、魔力だけじゃ維持できない構造……」

「ラティナ、分かるの!?」

「理屈だけよ。私も“刻む側”じゃないし。だけど、これは相当精密な術式よ」

「それに加えて、今回流通させるカイルの魔素水は濃度が低いものだ。安定化の術式がなければ、輸送中に瓶が割れる可能性はかなり高いだろう」

 ヴァンスは腕を組んで唸るように言った。

なら、この手の術式にも詳しいと思うんだがな。……まあ、今はただの“書庫の管理人”なんだが」

「その、カイルにも言ってた“書庫”って?」

「ベルダルク近郊にある、旧王家の魔導書庫。今はもう誰も出入りしないが、そこに住み着いてる変わり者がいてな。俺が過去に世話になった人物だ」

「なんか、すごくクセが強そうな予感がするんだけど……」

「その予感は外れないだろうな。……カイル君に行ってもらってるのは、魔素水の生成者である彼にしか通じ合えないものがあるかもしれんからだ」

 ミリエルが心配そうな声で呟く。

「カイル、大丈夫かな……」

「大丈夫なんじゃない? カイルって、なんて言うのかしら、その……妙な雰囲気があるでしょ? なんか試してみたくなるような、放っておけないような」

「あはは、わかる! ラティナもそう思ってたんだ!」

「あはは! ミリエルもなのね!」

 カイルのいないところで勝手に意気投合する二人であった。 

「きっと大丈夫ね」と、ミリエルは一呼吸しながら。「じゃあ、あたしたちは瓶の“外側”を、カイルは“内側”の問題を解決するってことね!」

「その通りだ」

 ヴァンスが微笑みながら頷いた。
 ラティナは再び紙に向かい、瓶の設計図を描き始めた。ミリエルもまた、手を動かす。

「ねぇ、子どもでも持ちやすい瓶って、どんなのだろう?」

「細めで、握るところにへこみがある形……とか? 滑らない工夫も要るわね」

「うんうん、それ、いいかも!」

 ふたりのアイデアが重なり合い、瓶の形が少しずつ形になっていく。

 ◇ ◇ ◇

 そしてその頃——。
 街の外れ、ひっそりと森の奥に佇む石造りの建物の前に、一人の青年が立っていた。

「ここが……書庫、か」

 カイルは石扉の前で立ち止まり、空を仰いだ。
 重厚な建物。苔むした壁面には、かつての栄華を示す王家の紋章がかすかに残されていた。
 入り口には誰の姿もない。代わりに、重たい扉には『立入禁止』の札と、簡易的な封印が貼られていた。

「……クセが強い、ね」

 呟いたそのときだった。
 カイルの目の前で、封印が勝手に“すっ”と剥がれ、扉が軋みを上げて開いた。
 その向こうから、ひんやりとした空気と、紙と薬品の匂いが流れてくる。

「……誘われてる?」

 カイルは一歩、足を踏み入れた。
 まだ見ぬ“クセの強い”存在との出会いが、静かに幕を開けようとしていた。

 《つづく》

────────────────────

※ここまでお読みいただきありがとうございます!
最新話は【毎日12:10】更新予定です!
「いいね」や「お気に入り追加」などしていただけると、とても励みになります!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

処理中です...