上 下
4 / 4

蝶々

しおりを挟む
あれから30年近く経った。

僕は、今でも忘れられない。

友達もいなかった僕が、

勇気を出して告白したあの日を。

彼女に花を渡してフラれたあの日を。

あの、1人で寂しく帰ったあの日を。



そして、ことを。


僕は勉強した。ひたすらに研究した。

あの子のために。

そしてこれを作り上げた。

子供になる薬。

そして、過去へと戻るタイムマシン。

あの時の僕に近づくため、子供になる薬を作った。

子供になる薬は記憶も無くなってしまう。

いつ、薬の効果が切れるか分からない。

一瞬で切れるのか、ゆっくりと薄れていくのか。

それでもいい。

あの子が死ぬ前に、薬が切れればいい。

あの子を助けるんだ。

行こう、過去へと。

もう、後戻りはできない。












消える直前。

僕は思い出した。

全てを思い出した。

彼女があの時、死んでしまったこと。

それを助けるために僕が未来から来たこと。

何もかも全て。

未来を見たわけじゃなく。

ことを。

告白が成功した今。

あの子は車に轢かれない。

未来は変わった。

そして、僕の未来も変わった。

彼女を助けたことで、タイムマシンを作らなかった未来へと。

僕はタイムマシンでやってきた。

タイムマシンが無くなった今、

僕の存在もなかったことになる。

さようなら、過去の僕。

幸せに。


その日、その瞬間。
僕は消えた。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

春秋花壇
2020.05.01 春秋花壇

現代文学のランキングみたいなはなしみたいで面白かったです。ありがとうございます。

解除

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。