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005 カロリーナの前世②
婚約者だったディルクから、最後に言われた言葉。
「さっさと連行して処刑しろ。証拠はそろっている。裁判にかける必要はない!」
その時の、ディルクの顔を思い出すと怒りが沸々と沸いてくる。これは、人格が変わる前のカロリーナの怒りだった。
なぜ兵士に連行されながら、カロリーナの人格が変わっていったのか……。それは、カロリーナのもう一つの記憶を思い出したからだった。その記憶こそが、カロリーナの前世だ。前世のカロリーナは、日本という国に生まれて実に平凡な一生を送った女だった。
真面目で、目立つことを嫌い努力の人間だった。誇れることと言ったら、密かな負けず嫌いくらいだろう。
そんな前世の自分が、傲慢で我儘なカロリーナの記憶と混ざり合った。彼女は、間違いなく悪女だった。自分の為ならば、人を犠牲にすることなんてなんとも思わない女だ。
そんなカロリーナが、可愛いだけのララ・ヴォーカーに負けたのだ。相当悔しかったのだろう。きっと受け入れられない心が、前世の自分を呼び起こした。
あの時の煮えたぎるような、カロリーナの怒りを思い出すとそうとしか考えられない。
そもそも、なぜこんな悪女であるカロリーナが、ララと王太子妃の座を取り合っていたのか。それは、カロリーナが王太子妃たる素質を全て持っていたからにほかならない。
地位も、美貌も、淑女としての力も、国を支えていく知識も学力も。婚約者だったディルク・アレン・テッドベリーは、何もかも足りない王子だった。
王の一人息子として育てられたディルクは、厳しく育てられていた。だけど、能力がどうしても国を背負っていくだけのものに育たなかった。外見だけは優れていたがそれだけの王子だった。
学力も並み、運動神経も並み、人を動かす能力も並み、それを補うためにカロリーナだった。だからカロリーナは、そんなディルクに興味がなかった。興味があったのは、国の女性の中で一番である王妃の座。
ディルクに国を治める能力がなくても、自分ならできると思っていた。だからカロリーナは、ディルクを軽く扱った。今思えは、そんなだから婚約破棄されて処刑されるような目に合うのだ。
ララは、自分の能力に限界を感じるディルクの心の闇に、上手く入っていっただけ。ディルクを傷つけるだけのカロリーナが、勝てるはずはないのだ。
「さっさと連行して処刑しろ。証拠はそろっている。裁判にかける必要はない!」
その時の、ディルクの顔を思い出すと怒りが沸々と沸いてくる。これは、人格が変わる前のカロリーナの怒りだった。
なぜ兵士に連行されながら、カロリーナの人格が変わっていったのか……。それは、カロリーナのもう一つの記憶を思い出したからだった。その記憶こそが、カロリーナの前世だ。前世のカロリーナは、日本という国に生まれて実に平凡な一生を送った女だった。
真面目で、目立つことを嫌い努力の人間だった。誇れることと言ったら、密かな負けず嫌いくらいだろう。
そんな前世の自分が、傲慢で我儘なカロリーナの記憶と混ざり合った。彼女は、間違いなく悪女だった。自分の為ならば、人を犠牲にすることなんてなんとも思わない女だ。
そんなカロリーナが、可愛いだけのララ・ヴォーカーに負けたのだ。相当悔しかったのだろう。きっと受け入れられない心が、前世の自分を呼び起こした。
あの時の煮えたぎるような、カロリーナの怒りを思い出すとそうとしか考えられない。
そもそも、なぜこんな悪女であるカロリーナが、ララと王太子妃の座を取り合っていたのか。それは、カロリーナが王太子妃たる素質を全て持っていたからにほかならない。
地位も、美貌も、淑女としての力も、国を支えていく知識も学力も。婚約者だったディルク・アレン・テッドベリーは、何もかも足りない王子だった。
王の一人息子として育てられたディルクは、厳しく育てられていた。だけど、能力がどうしても国を背負っていくだけのものに育たなかった。外見だけは優れていたがそれだけの王子だった。
学力も並み、運動神経も並み、人を動かす能力も並み、それを補うためにカロリーナだった。だからカロリーナは、そんなディルクに興味がなかった。興味があったのは、国の女性の中で一番である王妃の座。
ディルクに国を治める能力がなくても、自分ならできると思っていた。だからカロリーナは、ディルクを軽く扱った。今思えは、そんなだから婚約破棄されて処刑されるような目に合うのだ。
ララは、自分の能力に限界を感じるディルクの心の闇に、上手く入っていっただけ。ディルクを傷つけるだけのカロリーナが、勝てるはずはないのだ。
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