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007 カロリーナの前世④
カロリーナの実家である、ヴィンチェスター侯爵家には帰れない。両親共に、私が断罪された時に助けに割って入ってこなかった。きっと切り捨てられたのだ。ディルクによって暴かれた罪状は、ほぼ真実だった。
国で禁止されていることに手を出していた娘を庇うなんて、あの人たちがするはずない。庇うような素振りを見せたら、自分たちも加担していると言っているようなものだ。我儘で傲慢な娘を育てた両親だ。血は争えない。両親は、自分の身が一番な人達なのだ。
そして何より、人格が変わってしまった今のカロリーナが屋敷の人々から違和感をもたれないか不安もある。
使用人に対してかなり酷い態度をとっていたから、同じように振舞えると思えない。それだったら、心機一転修道院にでも行って静かに暮らす方が良い気がしたのだ。
「ですが……。大丈夫ですか? 修道院は……その、お嬢様が暮らすような場所では……」
騎士は、口ごもりながら疑問を述べる。きっと、カロリーナのような生粋の貴族令嬢が暮らせる所ではないと言いたいのだろう。
自分も、カロリーナのままだったらきっと無理だと思った。でも、前世の記憶を取り戻したカロリーナなら何の問題もない。
自分のことは自分でできるし、家事も仕事も一通りのことはできる自信があった。
「問題ないわ。騎士団長にああ言ったのだもの、今までの自分は捨てないと」
騎士は、驚いた顔をしたがもうそれ以上は言うことはなかった。それからカロリーナは、その騎士の家を後にする。
その時に見送りに出てきてくれた少女から、頬の傷の心配をされた。応急処置だけしかできていないから、できれば早くきちんとした医者に見せたほうがいいと言ってくれたのだ。そのままにしていたら、間違いなく跡が残ってしまうとその少女は最後まで心配してくれた。
そんな少女になにかお礼はできないかと思い立ったカロリーナは、自分の小指に嵌るピンキーリングを外した。
「この指輪、貰ってくれないかしら? こんな物でしかお礼ができなくて申し訳ないのだけれど……」
「そんなお嬢様……、私なんかにいけません」
受け取ろうとしない少女の手に、無理やりカロリーナは指輪を握らせる。
「これくらいの宝石なら、小さな店でも換金できるから。あなたの好きにしてね」
「大切にします。あの……お嬢様もお元気で」
少女は、指輪を大事に握りしめカロリーナに笑顔を送る。横に立っていた兄は「ありがとうございます」と頭を下げた。
「では、行くわね。二人とも、ありがとう」
カロリーナは笑って別れを告げた。
国で禁止されていることに手を出していた娘を庇うなんて、あの人たちがするはずない。庇うような素振りを見せたら、自分たちも加担していると言っているようなものだ。我儘で傲慢な娘を育てた両親だ。血は争えない。両親は、自分の身が一番な人達なのだ。
そして何より、人格が変わってしまった今のカロリーナが屋敷の人々から違和感をもたれないか不安もある。
使用人に対してかなり酷い態度をとっていたから、同じように振舞えると思えない。それだったら、心機一転修道院にでも行って静かに暮らす方が良い気がしたのだ。
「ですが……。大丈夫ですか? 修道院は……その、お嬢様が暮らすような場所では……」
騎士は、口ごもりながら疑問を述べる。きっと、カロリーナのような生粋の貴族令嬢が暮らせる所ではないと言いたいのだろう。
自分も、カロリーナのままだったらきっと無理だと思った。でも、前世の記憶を取り戻したカロリーナなら何の問題もない。
自分のことは自分でできるし、家事も仕事も一通りのことはできる自信があった。
「問題ないわ。騎士団長にああ言ったのだもの、今までの自分は捨てないと」
騎士は、驚いた顔をしたがもうそれ以上は言うことはなかった。それからカロリーナは、その騎士の家を後にする。
その時に見送りに出てきてくれた少女から、頬の傷の心配をされた。応急処置だけしかできていないから、できれば早くきちんとした医者に見せたほうがいいと言ってくれたのだ。そのままにしていたら、間違いなく跡が残ってしまうとその少女は最後まで心配してくれた。
そんな少女になにかお礼はできないかと思い立ったカロリーナは、自分の小指に嵌るピンキーリングを外した。
「この指輪、貰ってくれないかしら? こんな物でしかお礼ができなくて申し訳ないのだけれど……」
「そんなお嬢様……、私なんかにいけません」
受け取ろうとしない少女の手に、無理やりカロリーナは指輪を握らせる。
「これくらいの宝石なら、小さな店でも換金できるから。あなたの好きにしてね」
「大切にします。あの……お嬢様もお元気で」
少女は、指輪を大事に握りしめカロリーナに笑顔を送る。横に立っていた兄は「ありがとうございます」と頭を下げた。
「では、行くわね。二人とも、ありがとう」
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