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第三章 誰にでも秘密はある
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キャスティナが扉を出ると、アルヴィンとクラウスが待ち構えていた。
「アルヴィン隊長、もうエヴァン様は大丈夫です。矢傷はかすり傷です。熱も下がって落ち着いたみたいです。でも、二、三日は安静にさせて下さい。サディアス殿下は、お疲れだったみたいで眠ってます。中で何があったか見てません。エヴァン様の傷も重症だった事は知らないと思います」
キャスティナは、アルヴィンだけに小声で早口で説明する。アルヴィンは、驚きを隠せずにいた。でも、キャスティナの様子から急いでいる事を察しキャスティナに尋ねた。
「それで、私はどう動いたらいい?」
「私が来たことは内密に、出来れば私とアルヴィン隊長だけの秘密です。後は、サディアス殿下にうまく辻褄を合わせて下さい。そろそろ目が覚めます」
「わかった。後は私に任せなさい」
アルヴィンは、力強く頷いた。
「では、行きます。また会えたら、詳しい事をお話します」
「クラウス、キャスティナを送って来てくれ」
「はい。かしこまりたした」
キャスティナが急いでその場を離れようとし、マントのフードを被った。アルヴィンは、キャスティナの背に声をかけた。
「キャスティナ、その格好も可愛いよ」
キャスティナは、肩の力がフッと抜ける。振り返って笑みを溢す。
「流石、アルヴィンお兄様ですわ。ありがとう」
キャスティナは、前に向き直りクラウスに足早に付いて行った。王宮内でもとくに人に会うことなく、二人は馬車に乗り込んだ。キャスティナは、馬車が動き出し王宮の門をくぐった事を確認する。門が見えなくなってから、クラウスに話しかけた。
「クラウス様、申し訳ないのですがゆっくり走ってもらうように従者に言ってもらっていいですか?」
クラウスは、すぐに馬車の小窓を開け従者にゆっくり走るように告げた。キャスティナにも、馬車の動きがゆっくりになるのがすぐに解った。クラウスが心配そうに、キャスティナに訊ねた。
「キャスティナ嬢、大丈夫?」
「少し気持ち悪くて·····」
キャスティナは、具合が悪そうに俯いた。
「失礼するよ」っと、クラウスがキャスティナの横に腰掛、キャスティナの額に手を当てる。
キャスティナは、瞬時にクラウスの頭に向かって両手を出した。
「オブリシュ(忘れろ)」
キャスティナは、目を瞑りクラウスの頭からエヴァンの傷の事と今日キャスティナと関わった事柄についての記憶を抜き取った。クラウスが気を失う。
キャスティナは、馬車の扉をそっと開け回りの気配を伺う。深夜で誰もいないのを確認する。スーツケースをゆっくり地面に置くように外に出す。すぐに自分も馬車から飛び降りた。キャスティナが身軽な格好だった事、馬車を事前にゆっくり走らせた事で従者に気づかれる事なく馬車から降りた。
馬車は、そのままをキャスティナを通り越し走って行ってしまった。キャスティナは、スーツケースを拾い道路から離れ歩道に移る。キャスティナは、大通り沿いを街に向かってトボトボ歩き出した。
***************
キャスティナは、歩きながらクラウスに心の中で謝った。クラウス様、ごめんなさい。何も悪い事してないのに·····記憶を抜き取ってしまって。でも、知らずにいた方がいい事があるから·····。キャスティナは、昔を思い出していた。
三年前。家庭教師を辞めさせられてから、キャスティナは、癒し系魔法と精神に作用する魔法を一緒に調べて練習していた。精神に作用する魔法も癒し系魔法と一緒で、物語に出てくるだけの失われた魔法として広く伝わっていた。キャスティナは、癒し系魔法のリラックスさせる効果は精神的な事だと気づき、もしかしたら、精神に作用する魔法と癒し系魔法は相性がいいのでは?と考えた。
王宮図書館に通い、魔法についての本を読みあさり精神に作用する魔法についても調べる事が出来た。記憶を抜き取り忘れさせる魔法。記憶を他の記憶に塗り替える魔法。ひとの記憶を見る魔法。他にも色々出来たが、とてもデリケートな魔法で難しい。キャスティナは調べた結果、一番シンプルに記憶を抜き取って忘れさせる魔法が出来ないかと言う結論に達した。
問題は、誰にどうやって魔法をかけるかだった。癒し系魔法と違って自分にかける訳にもいかず、かなり考えた。ある日、その機会が訪れる。ベンに執事の執務室に呼ばれた。外に出て働いてる事を問い詰められ、キャスティナは咄嗟に忘れさせる呪文を唱えた。
オブリシュと。キャスティナの頭の中に、ベンの記憶が滝の様に入り混み、危うくキャスティナの方が気を失いかけた。何とか持ち直しベンの記憶から、キャスティナの外出時の記憶を抜き取る事に成功した。
成功した事に喜びを感じたが、その日は部屋に戻ると精神的な疲労が強くベッドに倒れ込むように眠ってしまった。精神に作用する魔法はその性質上、気を付けて使わなければ自分の心が壊れてしまうと実感した。
癒し系魔法と違って、精神を消耗する魔法だった。しかし、回数を重ねるうちにキャスティナも要領を得てそこまでダメージを感じる事も少なくなった。
キャスティナは、暗い夜道を歩きながら思う。身を守る為に始めた魔法を、王子にかける事になるなんてっと·····。エヴァン様の事が心配だけど、このままコーンフォレス家に帰れないと強く感じた。少し一人になって考えたかった。これからの自分を。そして、誰に何を話すのかを。アルヴィンお兄様、いきなり姿を消して怒るかなぁー。キャスティナは、とぼとぼ歩き続けた。
「アルヴィン隊長、もうエヴァン様は大丈夫です。矢傷はかすり傷です。熱も下がって落ち着いたみたいです。でも、二、三日は安静にさせて下さい。サディアス殿下は、お疲れだったみたいで眠ってます。中で何があったか見てません。エヴァン様の傷も重症だった事は知らないと思います」
キャスティナは、アルヴィンだけに小声で早口で説明する。アルヴィンは、驚きを隠せずにいた。でも、キャスティナの様子から急いでいる事を察しキャスティナに尋ねた。
「それで、私はどう動いたらいい?」
「私が来たことは内密に、出来れば私とアルヴィン隊長だけの秘密です。後は、サディアス殿下にうまく辻褄を合わせて下さい。そろそろ目が覚めます」
「わかった。後は私に任せなさい」
アルヴィンは、力強く頷いた。
「では、行きます。また会えたら、詳しい事をお話します」
「クラウス、キャスティナを送って来てくれ」
「はい。かしこまりたした」
キャスティナが急いでその場を離れようとし、マントのフードを被った。アルヴィンは、キャスティナの背に声をかけた。
「キャスティナ、その格好も可愛いよ」
キャスティナは、肩の力がフッと抜ける。振り返って笑みを溢す。
「流石、アルヴィンお兄様ですわ。ありがとう」
キャスティナは、前に向き直りクラウスに足早に付いて行った。王宮内でもとくに人に会うことなく、二人は馬車に乗り込んだ。キャスティナは、馬車が動き出し王宮の門をくぐった事を確認する。門が見えなくなってから、クラウスに話しかけた。
「クラウス様、申し訳ないのですがゆっくり走ってもらうように従者に言ってもらっていいですか?」
クラウスは、すぐに馬車の小窓を開け従者にゆっくり走るように告げた。キャスティナにも、馬車の動きがゆっくりになるのがすぐに解った。クラウスが心配そうに、キャスティナに訊ねた。
「キャスティナ嬢、大丈夫?」
「少し気持ち悪くて·····」
キャスティナは、具合が悪そうに俯いた。
「失礼するよ」っと、クラウスがキャスティナの横に腰掛、キャスティナの額に手を当てる。
キャスティナは、瞬時にクラウスの頭に向かって両手を出した。
「オブリシュ(忘れろ)」
キャスティナは、目を瞑りクラウスの頭からエヴァンの傷の事と今日キャスティナと関わった事柄についての記憶を抜き取った。クラウスが気を失う。
キャスティナは、馬車の扉をそっと開け回りの気配を伺う。深夜で誰もいないのを確認する。スーツケースをゆっくり地面に置くように外に出す。すぐに自分も馬車から飛び降りた。キャスティナが身軽な格好だった事、馬車を事前にゆっくり走らせた事で従者に気づかれる事なく馬車から降りた。
馬車は、そのままをキャスティナを通り越し走って行ってしまった。キャスティナは、スーツケースを拾い道路から離れ歩道に移る。キャスティナは、大通り沿いを街に向かってトボトボ歩き出した。
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キャスティナは、歩きながらクラウスに心の中で謝った。クラウス様、ごめんなさい。何も悪い事してないのに·····記憶を抜き取ってしまって。でも、知らずにいた方がいい事があるから·····。キャスティナは、昔を思い出していた。
三年前。家庭教師を辞めさせられてから、キャスティナは、癒し系魔法と精神に作用する魔法を一緒に調べて練習していた。精神に作用する魔法も癒し系魔法と一緒で、物語に出てくるだけの失われた魔法として広く伝わっていた。キャスティナは、癒し系魔法のリラックスさせる効果は精神的な事だと気づき、もしかしたら、精神に作用する魔法と癒し系魔法は相性がいいのでは?と考えた。
王宮図書館に通い、魔法についての本を読みあさり精神に作用する魔法についても調べる事が出来た。記憶を抜き取り忘れさせる魔法。記憶を他の記憶に塗り替える魔法。ひとの記憶を見る魔法。他にも色々出来たが、とてもデリケートな魔法で難しい。キャスティナは調べた結果、一番シンプルに記憶を抜き取って忘れさせる魔法が出来ないかと言う結論に達した。
問題は、誰にどうやって魔法をかけるかだった。癒し系魔法と違って自分にかける訳にもいかず、かなり考えた。ある日、その機会が訪れる。ベンに執事の執務室に呼ばれた。外に出て働いてる事を問い詰められ、キャスティナは咄嗟に忘れさせる呪文を唱えた。
オブリシュと。キャスティナの頭の中に、ベンの記憶が滝の様に入り混み、危うくキャスティナの方が気を失いかけた。何とか持ち直しベンの記憶から、キャスティナの外出時の記憶を抜き取る事に成功した。
成功した事に喜びを感じたが、その日は部屋に戻ると精神的な疲労が強くベッドに倒れ込むように眠ってしまった。精神に作用する魔法はその性質上、気を付けて使わなければ自分の心が壊れてしまうと実感した。
癒し系魔法と違って、精神を消耗する魔法だった。しかし、回数を重ねるうちにキャスティナも要領を得てそこまでダメージを感じる事も少なくなった。
キャスティナは、暗い夜道を歩きながら思う。身を守る為に始めた魔法を、王子にかける事になるなんてっと·····。エヴァン様の事が心配だけど、このままコーンフォレス家に帰れないと強く感じた。少し一人になって考えたかった。これからの自分を。そして、誰に何を話すのかを。アルヴィンお兄様、いきなり姿を消して怒るかなぁー。キャスティナは、とぼとぼ歩き続けた。
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