ハーフ!〜wonderland with glasses

リヒト

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(45/47)間違ってない顔

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 みんなの視線がモブ爺に集まる。
 ファーは一直線にモブ爺に向かっていく。
 そして……その毛先が触れた。
 モブ爺はゆっくりと膝から崩れ落ちた。
「モブ爺!」
 俺は思わず大声をあげた。
「はぁ、はぁ……うるさいじじいはとっとと退場してもらったわ!」
 デトックスは肩で息をしている。
 俺よ!考えろ、考えろ、考えろ!
 デトックスはなんで慌てた?なんで慌ててモブ爺を攻撃した?
 そう、モブ爺が言った言葉に慌てていたんだ。
 モブ爺はなんて言っていた?
 ……『出ずる言葉、これ全て真理なり』?
「さあこれでまたゆっくり攻撃できるというものだわ!」
 まずい。もう少し時間が欲しい。何かモブ爺の言葉にヒントがあるはずなんだ。
「リタ!まだいけるか?」
「どういうこと?」
「考える時間がほしいんだ。お前が大丈夫ならデトックスの相手をして時間稼ぎをしてほしい」
「了解!頑張れるんだよ!」
 言うが早いか、リタがデトックスに叫んだ。
「デトックス!ボクが相手なんだよ!」
「くくっ。勇気があるな、少年」
「少年?少年?……少年じゃない!あんただって、あんただだって……そうだ!あんたこそ魔人でしょ?魔人ってのは長生きなんだってね!」
「当り前さね。人間ごときの寿命の10倍は生きておるわ」
「ってことは、ずいぶん無理してるけど、もうおばさんってことね。やだやだ」
「なんてことを!この妖艶な色気がわからぬか!」
「色気?わからなんだよ?というよりさっきは動きすぎてお疲れだったみたいじゃない?はぁはぁしてたんだよ?」
「うるさい!ぺたんっ!こうしてくれるわ!「『ゴートゥヘル』!」
「『タップステップ』!」
 リタはデトックスの攻撃を華麗に避けた。
「おばさん、無理しない方がいいんだよ?そんな重そうな鎧をつけて明日筋肉痛になっちゃうんだよ?」
「うるさい!そんなことになるか!『ゴートゥヘル』!『ゴートゥヘル』!」
「『タップステップ』!『タップステップ』!あ、そうなんだよ!筋肉痛は明日じゃないんだよ、遅れて明後日とかにくるんだよ?」
「くぅ~っ!『ゴートゥヘル』!『ゴートゥヘル』!『ゴートゥヘル』!」
 いい感じにリタがデトックスを挑発して自身にだけ攻撃を集中させている。
 その間に考えないと。
 モブ爺の言葉。『出ずる言葉、これ全て真理なり』。
 この意味を。
 『出ずる言葉』は『全て真理なり』、つまり出てきた言葉は全部本当っていうことだ。
 モブ爺の言葉っていったら?
 『若い頃の苦労は大変。そして歳をとってからの苦労も大変』とか『夜には吹く風は夜風の如し』とかだったよな。
 まあ……、全部本当だよな。
 うーん、わからん。
 思えばモブ爺を初めて見たあの夜にデトックスとも会ってるんだっけ。
 あの時のデトックスデトさんは色っぽかったなあ。
 『弱い部分をつんつんされるすると腰からくだけちゃう』とか言って。
 くぅ~っ。
 『服の下で見えずへそより上にある』とかヒントまでもらって。
 『普通の肌よりもちょっと濃くて人によっては膨らんでいたり』とかさ。
 結局外れちゃったし、『トーシ・トーシ』でも調整がうまくいかなくてわからなかったけど。
 なのに『ぽんこつ君はそのままかわいいぽんこつ君でいて』とか言ってくれた姐さんだったのに、今やこんな怖い魔人になってるなんてなあ。
「ちょっと、カイ!ちゃんと考えている?鼻の下がのびているんだよ?」
「や、ごめん。ちょっと違う方向へ考えが進んじゃって」
 リタは挑発を続けながらデトックスと対峙している。
 と、その時。
「カーッ、カッカッ……その顔は間違っておらんぞ」
 あれ?その声はっ!
 モブ爺が横たわったまま静かに声を出していた。
「モブ爺、大丈夫なのか?デトックスにやられたんじゃ??」
「やられてはないのう。ちょっと疲れただけじゃ。もう枯れきっているからの。そんな欲望はもうないしのう。まあ生きたままはもう天国へはいけないと言う事じゃな」
 確かに。
 モブ爺は他の奴らと違いに崩れ落ちていたんだっけ。
「良かった。デトックスに気づかれると面倒だから、もう少しそのまま横になっていてくれ」
「だのう」
「で、モブ爺。間違ってない顔ってなんだ?」
「そのスケベそうな表情は正解じゃ。お主が思い出していたことがヒントじゃよ」
「?」
「弱点をきいておるじゃろ?ヒントまでもらって」
「弱点?」
「試されて、見抜けなかったものだからから、そのままでいてと言われたんじゃよ」
 お?おお?おおお?
「そういうことか!モブ爺!」
 よし!糸口は見つかった!
「なに?カイ?モブ爺がどうかしたの?うち、そろそろ体力的に」
「リタ!もう少し頑張ってくれ。あと、デトックスをぶっ飛ばしたくないか?」
「ぶっ飛ばしたいんだよ?だけど避けるだけで精いっぱいだし、長く伸びるファーの攻撃で近づくことができないんだよ?」
「リタのGGならいけるさ、いけるとも!その気持ち……近づいてぶっ飛ばしたいと思いながらもう少し時間稼いでくれ!」
「よくわからないけど……わかったんだよ!」
 俺はそのリタの力強い言葉をきいてデトックスを見た。
 デトックスはリタに向かってファーを振り下ろし続けている。
 『服の下で見えずへそより上に』あって『普通の肌よりもちょっと濃くて』『人によっては膨らんでいたり』な部分だな。
 そこが弱点!
 よし!
「『トーシ・トーシ』!」
 俺はデズリーこの世界に来て一番最初に手に入れたギフト名を叫んだ。
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