女児の面

らゑむ

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第一幕〈異変〉

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「いつもと違う。」
「いつもはこんなんじゃなかったよね?」
「あれ、いつもの元気は何処行ったのさ~?」
そんな言の葉が、クルクルと丸められたラップの中で渦を巻いている。
言いたいことは分かってる。
いつもはこんな暗い顔なんかしないで、できる限り普通の女子中学生としての生活を送っている。
本当の私なんて、私以外誰も知らない。
知られないようにしているからだ。

そんなことはどうでもいい。
今はただ、なぜ私がこんな病にかかったのか。
何故こんな長い人生の中で、良いことが一つもないのか。
この二つの疑問が渦を巻いているから、それを解くために今までの事を思い返してみよう。少しくらいは、何か分かることがあるかもしれないし。

私は2010年3月23日に産まれた。
病院名は確か…【真道幸総合病院】だった気がする。何でも、真藤舞衣子という少し位の高かった女性が、何かあるとこの病院を好んで選び、ここで診察を受け、ここで手術をしたそうだ。手術と言ってもそれ程大したことはない。
ただ目の整形をしただけだという。ウワサだが。
この病院は一般の怪我の対処もしながら、産婦人科もあり、整形手術を受けることができるという超ハイスペックな病院だった。
しかし、おかしい点が一つだけあることでも有名だった。何だったけ…
「……………………ッ!」
痛い。無理矢理思い出そうとした瞬間、頭をトンカチで打たれるような感覚になった。だが、これはホンの一瞬で終わった。
何だったのだろう。もう平気になったのか。
また無理矢理頭の中から記憶を辿ろうとするが、またあの痛みが来たら嫌なので、諦めて普通に家に帰る。

「……………………………ただいま。」
「あ、おかえり~!
   病院どうだった?」
「……………………………」
「ちょっと、大丈夫?」
「大丈夫っちゃ大丈夫」
「…そう。冷凍庫にアイスあるから食べてもいいよ~」
「…」
この毎日だ。今喋っている母と姉は、こんな病気だなんて知らないはず。
だから、できる限り日常を普通の顔で過ごしつつ、少しずつあの病気…【鬼怪病】について調べよう。
だから。
「ちょっと、勉強してくる」
「うぃっさー」
「ういっさーってなんやねん。」
「…わっかんね☆」
はぁ…と短いため息をつきながら、これで良いのだと思う。
パソコンを開き、鬼怪病について検索する。

中国語が出てきた。それ以外は、何一つとして
有力な情報は出てこなかった。
中国語なんて知らないから、Yahoo知恵袋で解読を求めようと思ったが、何故こんなものを尋ねるのかと聞かれたりしては面倒なので、この中国語は無視することにした。
やれやれ。
やっぱり駄目なのか。
この病は本当に、医者の言っていた通り私以外にかかっている人はいないのかも知れない。
真相は闇の中だ。
【ピーンポーン】
と、チャイムがなった。
「は~い」
「宅急便でーす。お届け物を届けに来ましたー。」
「あ、では今手が離せないので、そこに置いておいてもらえますか?」
「はーい。あざっしたー。」
宅急便の配達員が居なくなったことを確認してから、階段を登る。
届け物を届けに来た宅急便。
そいつの顔が、怪しかった。
何かを隠しているような、同時に、何かに怯えているような顔をしていた…気がする。
鬼怪病になってからはこの連続だ。
ガチャ、とドアを開けて郵便物を取る。
何だろう。やけに小さい。私の顔と同じくらいしかない。
何故だろう。
どうでもいいや。
自分の質問に即答し、届け先を見る。
春夏冬  らえん様
と書いてあった。
明らかに私向けだ。
だが、その差出人が分からなかった。
【面野  和俊】という、多分男の人からだった。
名前から推測しただけなのでワカラナイが。
だが、何か怪しそうな感じがしたので、そっと玄関の横に立てておくことにした。

それから何日かたった。
あれからも進展はなく、強いて言うなら…
シェアハウスに行くことになった、ということだ。何でも、母が仕事の関係でコスタリカに行くこととなり、戻ってくるまでの間、国が運営する国営シェアハウスというど直球なシェアハウスへと向かうことになったのだ。
「んで、どれ位で戻ってこれるの?」
「ん~…大体2ヶ月とちょっと?」
「ほぇぇ…」
また同じ会話だ。姉は物忘れが激しく、同じことを何回も聞く。認知症になったかと思ったが、どうやら本当に物忘れがヤバイだけらしい。
まぁ、いいや。
引っ越しは明日だ。
もう荷物はまとめてあるから、後は寝てまつのみ。
何か嫌な雰囲気はしているが、敢えてそれを言わずに行こう。行ったらビビらせてしまうかもしれない。
そう思いながら、最後の母の料理を食べた。
「…さようなら」
そう、聞こえたような気がした。
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